相変わらず話が進みやしませんが、投稿です。
夜の帳3巻、良かったですね。亜夜子が婚約者に求める条件とかもさらっと分かったり、ビルの4階がダミー部屋だと分かったり、使えそうな設定が沢山です。
でも亜夜子と文弥のお母さん生きてたの?!ってなってます。だって追憶変化どっかでもう亡くなってるって言ってたじゃないか!
あ、御託は良いので早く見せろと言う事ですね。
はいごめんなさい。
てなわけでレッツラゴー!
焔矢の基本的なルーティーンは、大概ヨルの散歩という名のランニングから始まる。
もちろん日によって異なる時もあるが、おおよそそうだと言えるだろう。
心に生徒会長になるぜ宣言を噛ました翌日もそれは変わらない。
朝の5時半、秋の現在少し日が出るのは遅くなっている今日この頃。
今日は1人と一匹で寝た焔矢は運動着に着替え、ヨルにリードを付けてポーチにペットボトルやら情報端末やらを入れて一緒にビルのエレベーターへと向かった。
黒羽に狙われる前、中野の家にいたころは情報端末を持って行く事は殆どなかったのだが、このビルに住む事になってからは持ち歩くように亜夜子に言われているからだ。
言うまでも無いが、彼の位置把握と会話盗聴の為である。
この時間でも影の護衛はついているらしいが、亜夜子が個人的に知っておきたいだけらしい。
「よし、行くか!」
「わん!」
最近はすくすくと身体が大きくなり始めているヨルだが、元気もいっぱいだ。
心なしか毛並みとかが綺麗になっているのは、焔矢がいない隙に癒されに来た亜夜子がブラッシングしているからである。
あと愚痴も色々聞かされているヨルであった。
ビルのエントランスを抜け、外に出ようとした時…焔矢の足は止まった。
エントランスの出口で、亜夜子によく似た中性的な男性がストレッチをしているところだったからだ。
その人物の事を、焔矢はあまりよく知らない。
何事も無く、亜夜子と結婚する事になれば義理の兄になる人だがこれまでプライベートでは殆ど関わった事が無い。
なんとなく、彼も自分とは関わり合いを避けているように感じているのは間違っていない筈だと思う。
彼は焔矢に気がついたのか、一瞬女性と勘違いしてしまいそうな笑みを浮かべて
「おはよう、焔矢君、ヨル」
「わふ!」
ヨルは彼を…文弥を見つけたことを嬉しそうに笑いテクテクと彼の足元へ歩いていく。
強制的にあるかされた焔矢もまた文弥の前へと歩いていく。
文弥は膝を折って駆け寄って来たヨルの頭を慣れたように撫でる。もっと撫でろと、ヨルは身体を丸くしてしまう。
「おはようございます、文弥さん。珍しいですね…?」
亜夜子から文弥の話を聴くときは大概朝からいないだとか、夜は”仕事”だとかで家にいるイメージが焔矢の中に余りなかった。
朝のこの時間に彼と会うなんて考えたことも無かった。
彼は彼で黒羽家を継ぐため日々鍛錬している事は、一時期護衛についてくれていた黒川が教えてくれたからその一貫だろうかと思った。
そして、文弥自身も異論はないのか苦笑い気味に
「ちょっとね。僕も散歩、ついて行って良いかな?」
珍しい事もあるものだと思いながらも、焔矢の方にそれを断る理由はない。
「割と走りますけど大丈夫ですよね?」
ついて来れるか?という意味合いだが、文弥には愚問であることを知っている。
もちろん、と笑う彼に苦笑いをしながらも焔矢はヨルを連れてビルを出た。
最初こそはヨルも道端の匂いを嗅いでいたが、途中飽きたのかだっしゅを始めた。
ヨルの隣を焔矢と、文弥が並走する。
「いつも走ってるのかい?」
「はい、あいつらと違って俺は体力が必要なので」
聡たちは精神体、精神的な疲れは存在するが物理的な体力、スタミナは無尽蔵と言ってもいいだろう。
しかし焔矢は生身、おまけにセンターのボーカルだ。
体力がないとやってられない。
「あとヨルが走るの普通に好きなので」
「なるほど」
先頭をちょこちょこ走るヨルは心底楽しそうに多摩川へ向けて走っている。
最近は大きくなって来た手足がぴょこぴょこ跳ねている。
草木の匂いがヨルのお気に入りなのかもしれない。
「ああでも、亜夜子との散歩のときは歩きますよ」
というよりも、亜夜子がヨルを歩かせている。
「訓練以外ではあまり動きたがらないから姉さんは」
苦笑い気味に文弥が言って、確かに亜夜子ならそのタイプかと納得する。
(…)
ヨルと並走しながら、焔矢はなにか視線を感じた気がして一瞬背後を見るがそこには誰もいない。
気のせいか、はたまた…分かりはしないが今は文弥もいる。怖がることはないだろうと走り続けた。
2人と一匹はそうして多摩川までやってくると、ヨルが疲れたとばかりにベンチを目指す。
そのベンチは、大体亜夜子と焔矢が一緒に散歩する時の場所だ。ヨルの中でもトレードマークとなっているのかもしれない。
「ふぅ…やっぱりこの位じゃ息の1つも乱れませんね」
一匹ベンチに上って休み始めたヨルを尻目に、背を伸ばして文弥に言うと男女どちらか分からなくなる艶やかな笑みで答えた。
「まあね。そういう焔矢君こそ、まだまだいけるんでしょ?」
「そりゃ行けますけど、今日は学校も練習もありますから配分は考えますよ流石に」
そう言って焔矢はヨルを抱っこしてベンチに座った。
その隣には文弥も、一瞬ためらいながらも座った。
しばらく2人して川のせせらぎに身を委ね、時間が過ぎていく。
「あー、うん。焔矢君の最近の調子はどう?」
その無言の時間に耐えられなかったのか、文弥は当たり障りない問いかけをする。
どっかの英語の教科書かと一瞬思った焔矢だったが、彼の状況を考えれば致し方無いと思った。
「割と絶好調ですよ。次の曲もほぼ出来てますし、ライブももうそろそろ決まるだろうって聞いてるんで楽しみな事しかないです」
「LSF以外の?」
「LSFに出るからと言って他のライブをやってはダメなんて事は無いですよ。むしろ、勝率を高めるって意味ならガンガンライブする人はするんじゃないかな」
俺達も本当はそうしたい…とは言えない。
レーベルに所属した以上、個人でやっていた時のように簡単にライブの日程を決めることは出来ない。
アマチュアでは出来ないステージを、レーベルに所属する事で出来るようになるのは分かっている。それがプロとして得られる事の1つでもあるのだから。
けどライブの手軽さを失ったのは割とでかいと思ってしまっているのだった。
「たしかに、知名度があった方が本番を見に来てくれるファンが増えるからね」
「あと純粋にレベルアップですね。どの世界でも同じじゃないですか、本番を沢山経験しろって言うのは」
事前にファンが多ければ、予選から目当てに来てくれるファンが増えて結果的に投票数も増える。
SNSでの宣伝や広告の他にその機会が増えるのはやはり純粋にライブだろう。
昔ほどの敷居が今のライブハウスにはない。偶々見たバンドがドストライクの場合も多々あるだろうというのは焔矢も経験則から分かっていた。
…まあ、大体バンドといっても作詞作曲はAI任せだったりするが。
なんなら本番も打ち込みオンリーで楽器は見せかけの場合が多い。何度落胆させられたのか数えきれない。
「それもそうだね」
「俺も普通に予選から出たかったなー」
因みにこの言葉の意図は文字通りである。
ただただライブがしたいが故の愚痴にも似たような言葉だ。
普通なら地域予選からではなく地区予選から参加であれば喜びそうなものだが、生憎焔矢は予選だろうが決勝大会だろうが負ける気が微塵も無い。
だったら純粋に1回でも多くライブをやりたいというのが本音だった。
ソロ時代、Alter Egoがアマチュアの時代は一カ月に難ドライブしたかすら数えきれないくらいだった。
「負ける可能性だって高まるのに?」
そんな焔矢の愚痴に、文弥は余り理解が出来ないようでつい問いかける。
もしも予選からとなったら、当然負ける可能性だってある。
いったいどこからダークホースが出るか分かったものではないからだ。
それこそ焔矢だって音楽界にいきなり現れたようなものなのだから。
けど――
「負けませんよ。俺達の音楽は、誰にも。」
丁度太陽が昇り、朝日が焔矢の横顔を照らした。
牙をむき出しにして、心底音楽を愛して、それゆえの絶対的自信。
亜夜子が彼に惚れた自分を信じ、仲間を信じるからこその芯の強さ。
言葉の中に溢れている力強さと焔。
(ああ、なるほど)
亜夜子がどうして彼に惹かれたのか、その一端を垣間見た気がした。
もちろん、彼に対しての負い目もあるのだろう。
賢いからという評価もある。ファッションはアウトだが、それ以外の事は常に真っすぐで…闇の中でねじれている自分達黒羽とは真逆の生き方。
稀有な能力?
それもあるかもしれない。
だけど、間違いなく彼のそういう所に惹かれたのだと文弥は思えた。
「…所で文弥さん」
「ん?なんだい?」
少しの沈黙の時間だったのだが、焔矢が思い出したかのように声を上げた。
文弥はてっきり亜夜子関連の話を聴きたいのだろうかと思ったが、予想の斜め上を行っていた。
「途中の道から誰かついて来ているんですが、知らないふりの方が良いですかね」
「…」
文弥は少し…いやかなり驚いた。
彼が視線の類には敏感だと、亜夜子から教えられていた筈だがそれを間近で見せつけられたようだ。
「気がついてたのかい?」
「そりゃ気がつきますって。黒服さんが何もしていないって事はまだ怪しい事をしていないだけでしょうけど、流石にこうも長いと気になりますよ」
焔矢に対する攻撃は基本的にその兆候が見られた時にしか防衛しない事になっている。
本人もそれは分かっているからこそ、自分が気がついた視線が永遠に消えない事がまだ怪しい事をしていないという結論になっているだけだ。
「まあ、なんか今はこそこそ俺らを見ている様ですけど」
と言っても多摩川じたいに隠れられる場所はそう多くはない。
焔矢も視線を動かせば恐らく姿は見えるだろう。
「うん。ミラーを使えば分かるけど、いるのは子供だよ」
「…え、子供?」
言われたように、情報端末を取り出して鏡として使ってみると確かにいた。
古き良き多摩川の案内板の陰に隠れている、小さな影。
ここら辺では見たことが無い子供のようだ。
小学3年生くらい、日本人の男の子が伺うようにこちらを見ていた。
「焔矢君、見覚えは?」
「いえ、ここら辺でも中野でも見たことないですね。俺が視界に映さなかっただけかもしれませんが」
焔矢の映像記憶は見なければそもそも覚えられない。
必然的に覚えていない事になる。
「君のファンだったりしてね」
「…いけないな、最近こそこそしてる視線が全部邪な奴に見える」
自戒するように言う焔矢だけど、それは焔矢が悪いわけではないと思うと文弥は思った。
「どうする、このまま帰るかい?」
しかし、慰めはせず問いかけた。
彼がどういう選択をするのか文弥には興味があった。
「いえ、ちょっと俺とヨルだけにしてもらって良いですか?あの子の出方を見たいので」
「僕が言うのもなんだけど、魔法師なら子供もあまり関係ない。もしかしたら自分を危険に晒す行為だと分かっているかい?」
「分かってますよ。亜夜子に知られたらあとが怖いですが、ここで止まってる方がダメな気がします。」
なにも無いのならそれでいい、そう焔矢は付け加えた。
「それに、今は文弥さんがいるじゃないですか」
ついでに、茶目っ気のある笑顔を見せたのだった。
*
文弥が去った(ようにみせかけた)多摩川で、焔矢は日課の発声練習を始めた。
ヨルは相変わらずベンチの上で寝そべっている。
そんな一人と一匹に近付く小さな影。ヨルがその影を認め顔を上げると、ヨルに繋がれたリードからそれを感じた焔矢も振り返る。
「…おはよう、坊や」
出来るだけ優しく、目つきが悪くならない感じで挨拶を言ったが優しく出来たかは自信がない。
振り返った先、男の子は挨拶をしてもらえるとは思っていなかったのか目を丸くしていた。
しかし、次の瞬間には何かを迷うように眼をうろうろさせ…
「お、おはようございます!お、音羽さん…ですよね?Alter Egoの」
「ああ、そうだよ」
彼にも何か退けない理由があったのか、うろうろさせた焦点を焔矢に定めていた。
そんな顔を、焔矢はどこかで見たことがある気がした。
(ああ…そう言えば、紅羽と会った時の俺もこの位のガキだったっけ)
その郷愁が過去からくるものだと気がついて――
「ぼ、ぼくに曲の作り方を教えてください!」
腰が折れるんじゃないかってくらい、勢い任せの礼をされた。
「…ん?」
そこで初めて少年の言ってきた事を飲み込むことが出来て…
「え、なぜに?」
そうして、焔矢と少年の奇妙な師弟関係が幕を開けたのだった
…帰ってすぐに亜夜子に呆れられた
お疲れさまでした!
文弥と焔矢が少しお話、そして新キャラというか文化祭編のサブキャラ?キーキャラ?の爆誕です。
いうてそんなにお話使う訳でもありませんが。
という訳で原作感想の続き、亜夜子と空澤の絡みが中々に面白かったですね。
正直この小説ってまだ夜の帳が1巻の時に書いた奴なので時系列の矛盾点とかそう言うのは見逃してくれると幸いです。
突然ですがアンケートしたいと思います!達也&焔矢、空澤&焔矢、貢&焔矢の中でお話作るのならどれが一番見たいかなというアンケートです。
機嫌とかは決めていないのでみたらどしどし投票してください。ネタに困った時に使います()
ではでは!
どのお話見たい?
-
達也&焔矢(UBW強化話?)
-
空澤&焔矢(亜夜子についてあれこれ話す)
-
貢&焔矢(修羅場)