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「…よぉし! いいぞぉ! このまま足付きを落せぇ!!」
スメラギから一部メンバーにとんでもない負担が掛かる作戦が託されて数分後、彼女達が乗るアークエンジェルにモラシム率いるザフト艦隊は猛撃をかけ続けていた。
「提督! 例のバルバトスがアージェイトと共に足付きから別方向へと離れていっていますが…!?」
「どういうつもりか知らんがあのすばしっこい獣に離れられれば好都合だ! まず足付きを落せば補給を失った連中を日干しにするなりしてあれはじっくり捕まえられる!」
当然、そうなればアークエンジェルは激しく揺れ続けて乗員の負担も強まっていく。
「う! うわぁアア! もう駄目だ~~~!!」
「も、もううぅ終わりだよおお!!」
艦橋ではカズイ・バスカーク、MS格納庫でところ天の助がそれぞれ泣き顔になる。
「…! バルバトスとアージェイトが指定ポイントへ○○秒後に到達しそうです!!」
「よし! 両機が指定ポイントにカーブ状シールドを張ったらそこ目掛けてローエングリンを全力斉射!!」
そのストレスと疲労を最も受けつつも苦虫を噛んだ表情で耐えていたスメラギは、やっと到着したその報せですかさず指示を出す。
「む、無理です! 今現在の艦が取れる角度ではあそこへローエングリンを当てるのはー…!」
「…バレルロールすればいける?」
「…え!?」
「マリュー! 今現在の状況で我が艦がバレルロールを行える時間を算出して!」
「えええ!? しし司令!? わ、我が艦は至近の水質衛星の重力圏に捕まって艦内重力にも影響が―――!?」
「出来なければ沈むわよ!!」
「―――あ…本艦はすぐにバレルロールを行う! ローエングリン砲口を指定ポイントに合わせて! 艦内中に警告放送を!!」
「は、はいいいい!!」
それを受けたスメラギの指示にアークエンジェル艦橋に悲鳴が木霊するが、艦長もこの状況から司令に付くと操舵手アーノルド・ノイマンは悲鳴じみた声で応答しながら舵を取り始める。
「…はぁ!? この状況で40秒後にバレルロール!?」
「何の冗談だ!? ここは地上じゃないっつっても重力に引っ張られてるんだろ!!」
当然、そうなれば艦内の彼方此方から悲鳴交じりで不平不満の声が上がる。
「おいイイいいイイいい! お前らデカいもんはすぐに固定しろ! 特にMSはぶっ倒れたりしないようにしろぉ!!」
「あーもー! すぐに重傷者とそのベッドは床や柱に縛り付けて動かないようにして! 棚は全て閉めてロック! 立てる軽傷者の人達は悪いけどそれぞれ壁の取っ手や手すりにしがみついて!!」
その中で一番不満の声を上げつつもマードックとフレイは即座に動きながら適切な指示を出す。
「…よし! 着いた! 日光! 全リソースを屈折シールドにつぎ込んでー!」
「も、もうこれが終わったらぁ…もう当分は立ち上がれなくなる自身がありますが…領域エネルギー質量角度調整…!!」
一方その頃、リュールが駆るバルバトスとそれに半ば引きずられてきたアージェイトに乗る日光は、アークエンジェルとザフト艦隊の戦闘宙域を見上げられる水質惑星に内包された巨大鉱石の地表に降り立つと、アージェイトの翼パーツが分解してそれぞれが拡大化されて地表の各所に展開されていく。
「…超広域重光子領域障壁展開!!」
「バルバトス全エネルギー注入!!」
そして、日光が機内で残された力を搾りだしたような暗い顔でそう叫んでアージェイトのバリア機能を最大限で発動すると、細長いカーブを描いた皿のように超広範囲の薄桜色のエネルギーバリアが地表を覆い、そこへリュールと彼が乗るバルバトスもエネルギーを大量に注入し始めた。
「司令に艦長! バルバトスとアージェイトが予定ポイントに反射鏡を設置しました!」
「艦の角度変更!」
「バレルロールできるのは五秒だけよ! 一度で当ててね!」
ミリアリアがそれを確認した報告を受けてアークエンジェルは敵の砲撃でやばいものは避けつつも大きく動き出す。
「ぬおおお!? 本当に回りやがったー!」
「み、皆ー! しっかり掴んでー!」
地上の重力圏内ほどでは無いが水質衛星による重力を受けていた艦内は大きく傾き、乗員は視界が逆さまになったような心地で床から壁伝いに天井へものがゆっくりと落ちていくという状況に四苦八苦する。
「艦首砲! 座標を捉えました!!」
「! ローエングリン! 撃てーーーー!!」
そして、ザフト艦隊の包囲網の隙間も重なったその時、アークエンジェルで最も破壊力を持つ破城砲二門が同時に発射させられた。
「!? うおおおお! 来るのは知ってたけど来たーーーーーー!!」
「づぅうううううううううううううううううううううううううぅ!!」
その砲撃の着弾点に位置していたアージェイトとバルバトスは必死に桜色の粒子で出来た光学粒子障壁で受け止め、ローエングリンの軌道を別の水質衛星に内包された巨大特殊鉱石層へと変えた。
「…な、何のつもりだ? あれは―――!?」
『おい! すぐにこの場から逃げるぞ!!』
それはアークエンジェルを重力で捉えている水質衛星の裏側で大規模支援砲撃任務に回されていたガルマにも見えて不審を覚えていたが、メアリの何かに気付いて血相を変えたのがわかる声がそこで割り込んできた。
「―――あ…!? メ、メアリ!?」
『すぐに逃げないと石焼にされるぞ…!?』
メアリのその警告の途中で、アークエンジェルのローエングリン砲撃を受けて爆炎を上げていたその水質惑星が、青い噴火を起したような更なる大爆発を起こした。
「のわぁ!? な、何だぁ!?」
「お、おい! こっちにまで迫って来てるぞぉ!」
その大爆発で大量かつ高熱の火山弾の如き隕石が生じ、それらはメアリ達が居る砲撃用拠点とそこから大きく離れたアークエンジェルを中心とする戦場まで超高速で降り注いでいき、ザフト側の多くは大混乱に陥っていく。
「本艦及び全機ともに予定通りの安全ポイントまで退避ー!!」
「ぬおおお!」
「ひいい!」
事前にそれを作戦で知っていたアークエンジェルもあまりに派手且つ大規模な光景に驚きつつも、予定通りその隕石群を避けられる水質衛星表面の巨大山岳状隆起地帯に逃げ込み、MS部隊もそこへ逃げ込んでいく。
「…Nジャマーキャンセラーでも動かせるけど製造に高コストになるので今では軍艦にしか優先的に供給されない、ラグナイト式レーザー核融合炉に用いられるラグナイト鉱石層…この星系の環境の難しさとこの地の鉱石層の不安定さからほぼ放置されていたものをこうまで使うとは…」
「…その場の即興でこんな作戦をあそこまで細かく思いつくなんて…ノリエガ司令マジパねえ…隠れコーディじゃねってなる光景だよ…」
「…いや、あれだけ追い詰められていた状況であんな偶々見つけられたものに意識が良きあなたの発想力もあれだと思いますけどー…」
その中にはバルバトスとそれに手を引かれる形で連れていかれているアージェイトの姿も混じっていた。
「うわぁアア!?」
「た、助けてくれー!」
一方、逆に自分達が大きな罠にはめられた形となったザフト側はオープン回線で繋がって流れてくる分だけでも大混乱に陥っているのがわかった。
「…向こうは地獄絵図ですけど…」
「もう何処の現場も嫌っていうレベルでお互い受け合っているけどね。これ以上の地獄をー…!?」
その音声と画面越しに見える周囲を漂う無残な屍に日光が苦渋の色を強め、リュールがそれに諦観が強い言葉をはいたその時、彼の身に懐かしいが今は強い敵意を帯びた悪寒が走った。
「…危ない!」
「…え!?」
バルバトスがアージェイトをアークエンジェル目掛けて豪速でスローイングした直後の一瞬の合間に、日光はそのバルバトスの手が戦斧で斬り飛ばされたものを目にした。
『…お前という男はいつも人の意識が他所に向いた頃に敵味方問わずろくでもないことをしてくれるなぁ!!』
先の大噴火状大爆発で混乱真っ最中となった味方の救助に向かっていたベヒモスガンダムが、巨大な戦斧をその手に取って襲い掛かってきて、それに乗るメアリが懐かしさとそれ以上の脅威に対する恐怖に基づく敵意を宿した咆哮を浴びせてきたのである。
(…あ、やばい…これ…さっきの様子からして多分発せられている生け捕り的な命令が無ければ僕の正体を知った上で確実にぶっ殺しに来ている状態だなー。まあ…ここまでしてきたんだから…こういうオチになっても仕方ないか―――!?)
そのベヒモスが巨躯で大戦斧を振り下ろしてくる光景に、リュールは何故か妙な納得と解放感を覚えるも、巨躯の背後に今この場では轡を並べる幼馴染を載せた機体が現れた。
「やらせない!!」
キラが駆るソードストライク装備ガンダムがベヒモスの背後に、先の大噴火状爆炎で生じた
「…!?」
メアリがストライクの接近に気付いた時には、それが振るう15.78㎜対艦刀シュベルトゲベールがベヒモスの腰のその背後から深々とその刃をめり込ませた時だった。
「―――あ!?」
「…え!?」
間近のバルバトスから見ていたリュールと、アークエンジェル攻撃に加わっていたが火山弾状隕石群をどうにか回避して味方の救助をしていたイージスに乗るアスランがそれに気づいた時には、ベヒモスの胴がストライクの対艦刀で真っ二つにされてしまった。
「…あ…」
メアリがスローモーションのような感覚に陥ってそれに気づいた直後、それかもしくはそこで着弾してきた火山弾状隕石の爆発の閃光で彼女の視界は埋め尽くされた。
「…メ! メアリイイイイイイイイィ!?」
「…え!?」
そのアスランが思わず出した悲痛な叫び声はオープン回線に載せられ、キラの鼓膜も振るわせて嫌な既視感を覚えさせ、リュールとのオーブでのやり取りの記憶をよみがえらせる。
それは、オーブで秘密の軍事技術開発協力をさせられていた頃、バーリトゥード要素強めビーチバレーを終えた時の話であった。
『…リュール、このエルフかアーヴの女の子の水着電子画像集は何?』
『…あ、いやー…キラー…(電脳でこっちにその場で即興ハッキング!?)これはやましい気持ちだけじゃなくて―…』
『やましい気持ちがあるのは否定しないんだ…』
『そそそれは違う…ってそれどころじゃなくてー! この子は故郷にいた頃の幼馴染でー…けれどー…気になることがあったからー…』
『気になるって何が?』
『…うん、何と言うか…昨年にゼミーシュルが巻き添えで吹っ飛んだ時…マリルってお姉さんが死んだから…それで故郷を飛び出してザフトに入ったって聞いたからー。故郷の友人の話からしてー…向こうでも友達が出来て上手くやれてるらしいけどー…』
『…え? リュール…その子ってー…!?』
『あーうん、名前はメアリって言ってー…』
その時の幼馴染が電脳上で見ていた美女は、フェンス越しに再会したもう一人の幼馴染の傍にいた女性と同じ顔で、そして今では叫ばれた名と同じ存在であったからだ。
「リュール君にキラちゃんぼっとしないで! 急いで船に戻らないと焼き豚になるわよ!!」
そこでセレーナが駆るウィンダムがビームライフルを撃ち込みながら現れた。
「…っ!!」
それを回避しながらアスランはイージスの盾で火山弾状隕石の一つをウィンダム目掛けて撃ち飛ばした。
「…え!?」
周囲にそれ以上のサイズの火山弾状隕石の雨が飛んでいるので下手な回避運動は取れないセレーナのウィンダムの腹部に、アスランが打ち飛ばしたそれの小さな一つは命中し、ウィンダムはそこから煙を上げながら遠くへ飛んで行った。
「…!? のわぁアアアア!?」
その煙と火を上げながら飛んでいくウィンダムがビリヤードボールのように周囲の火山弾状隕石の軌道を変え、その一つを何故か動揺した声の様子なディアッカが駆るバスターガンダムに激突し、両機は同じ方向へと飛んで行った。
「…え!? セレーナ…!?」
その現実の時間では数秒に満たない濃密且つ凄惨な玉突き現象に、キラがスローモーションのような感覚に陥ったその時、ストライクが映し出した画面上でリュールが駆るバルバトスは同じ玉突き現象で起動が歪んだ火山弾状隕石の複数に挟み撃ちされる形で衝突されてそれが爆発しただろう紅蓮の炎に包まれ、その炎は閃光となって画面上を埋め尽くすと熱と衝撃を纏ったガラス片となってキラに襲い掛かって彼女の意識を奪った。
次回、色々なキャラを曇らせる後始末のパートに入る予定です。