星界の輪廻   作:oosima

124 / 134
今回、ガンダムSEED本編でも特に人気のあるカップリングであるあの二人の鬱パートが多めです。


第五章 樹海で交差してゆく大勢(機動戦士ガンダムSEED)
124 流した後で知る慟哭の意味


 ○C.E(コズミック・イラ)71年4月15日昼(帝国暦952年4月15日昼) ハニア大星域 銀河中心領域付近 オーブ連合首長国近隣某星系○

 

「…な、何だぁこりゃあ!?」

 

 ザフトがアークエンジェル側の奇策でまた大混乱に陥った頃、その戦場を視認できつつも巻き込まれない距離にあった帝国星界軍(ルエ・ラブール)大艦隊のそれに対する感想は、旗艦サンカウの艦橋にいた副司令長官(ロイグラハレル)でヤーシュ・ウェフ=ザナトル・ギーズラのその狼狽に現れていた。

 

「…ど、どうやら例の銀連艦が艦の破城砲の砲撃を何らかの手段で曲げて、それでこの星系の大規模ラグナイト危険鉱石層に当てて大爆発を起こさせたようでー…」

「そんなの見りゃーわかるわボケ! 俺が聞きたいのはどうしてあ(・)の(・)二(・)機(・)がそれに加わってんだって話だ!?」

 

 ギーズラが周囲に怒鳴りながらアップした画像には、アークエンジェルのローエングリン砲が曲がっている地点にある、薄桜色の光子障壁越しで荒く見えるが薄桜色の女性的なものと二足歩行の獣の印象を与える青と白の、二機のGフレーム使用機体が映しだされていた。

 

「…あ、こちらにも数は少ないですけど隕石が向かってきてます! どうします!」

「言われなくてもわかってんだろ馬鹿(オーニュ)! 隕石は回避か撃墜! 何か飛んでくる機体とかは回収と保護だ保護!!」

「…あ! 機械甲冑機(ソウォーヴィ)が一機飛んできますけど…この桜色のってー…」

「司令長官殿下(フィア・グラハレル)より通信です! 先の爆発を受けてオーブ政府が宇宙災害救難を規定するニライカナイ条約に基づいて第12条の発動を宣言してきて、銀連とザフト双方にこの場の一時休戦を求めて我が国に救難支援要請を出してきたとー…」

 

 やがて今回の大爆発の影響はすぐに彼らも含めて周囲を大勢巻き込み始めたことは分かった。

 

「…う、うわぁ…何あれぇ?」

「マルキオ様ぁ」

 

 一方、大爆発が見えつつも星界軍とは別の離れた宙域を進む民間船があり、その中には少なくない数の子供と一人の盲目の宗教家と思わしい男性がいた。

 

「…あの婆(・)さ(・)ん(・)が関わると大抵大げさになるがなー。息子は母に似るというからその血を半分引く以上はあいつもこうなる星に生まれてるのかねー」

「さすがにそれは迷信みたいなもんじゃろーて。だがまーこんなのを見てばっかだと本(・)体(・)がそう愚痴りたくなるのをわかるっちゅーか…」

 

 ちなみに、その船の操縦室には蒼崎橙子の姿もあったが、その隣にはピンク色の全身タイツとSFテイスト革ジャンでスタイルの良い体を固めた癖の強いショート金髪で右目を隠した美少女がいた。

 

 

 

 

 

 ○C.E(コズミック・イラ)71年4月15日夕刻(帝国暦952年4月15日夕刻) ハニア大星域 銀河中心領域付近 オーブ連合首長国近隣某星系 アークエンジェル○

 

「…う…この臭いって…」

「嬢ちゃんは見るな! その齢でまだ見るもんじゃねえ!」

 

 数時間後、大爆発はまだ続いているが初めの頃よりは小さくなった現場に近いその宙域で、アークエンジェルはまだ慌ただしかった。

 

「あ、あの! ストライクはまだ戻って来てませんか!? キラがそれに乗ってるんですけど…」

「映像じゃ確認したけどまだストライクの回収は出来てねぇ…うおお! また一機戻ってきたぞぉ!」

 

 若人は特に友人の安否を気に掛けていたその時、また一機のウィンダムがボロボロの状態乍ら急に戻ってきた。

 

「あ、あれは両津中尉の!?」

「あ! 誰か一人を担いできてるぞ!」

「両津中尉! キラかリューにーですかー…!?」

 

 そのコクピットハッチが開くと出てきたのは多くの予想外にあるものだった。

 

「おい! 担架をもう一つ持ってきてくれ! この坊主も相当に重傷だ!!」

「…う…ぐぅぅ…」

 

 そのハッチから出てきた両津が担いできたのは、敵であるザフトレッドの少年の酷く血を流している姿だった。

 

「ちょっと両さん何で敵を…!?」

「こんな状況でそんなことを言ってる場合か!?」

 

 隣の異臭がしてくるコクピットブロックの取り外しがもうそろそろ終わりそうな状況で、両津は周りの疑問や不満を無視してディアッカを担いで中を進む。

 

「…う…あ…? ここは―――!?」

「よし! ようやく外れたぞ…!?」

 

 両津に荒々しく運ばれていく中でその少年の瞼がようやく開くが、そこで酷い異臭がしてきたウィンダムのコクピットハッチが取り外され、そこから何かバスケットボールサイズの何かが宙を転がるように出てきた。

 

「!? マードックさん…これ…!?」

 

 MS格納庫で早期応急処置をしていたフレイはそれに激しい現実に対する拒否感と恐怖を抱く。

 そのボールのような何かは酷い火傷の臭いはしていたが、焼けてはいない部分には血さえなければ綺麗な小麦色の肌、夏場の陽光を思わせる金髪、それとよく栄えあう青紫色の瞳が一つだけ残されていた。

 

「…う…おぇぇ!?」

「おい! すぐにボディバッグを持ってこい! ガキ達にはこれ以上は見せるなー…!?」

「―――あ…ァアア!? な…何だよこれはぁあ!?」

 

 それにミリアリアなど若いものは嘔吐を堪えなくなり、マードックは若者をこの場から退かせようとするがこの場で最も動揺を見せたのは彼らの予想外の人物だった。

 

「!? ザフトの!? 何だぁあの様子は…!?」

「! 落ち着け坊主! 鼻毛麻酔毛針!!」

「…あ!?」

 

 それにマードックが戸惑う真横を何かに気付いた様子で軽くない負傷状態のボーボボが放った鼻毛が槍のように伸びて超高速で進み、その普段の陽気な皮肉屋の様子など全く見られない顔の額にその毛先はちくっと刺さり、そこから何かの急性麻酔でも仕込まれていたのか、両津に掴まれて止められていたディアッカは意識を失った。

 

 

 

 

 

 ○C.E(コズミック・イラ)71年4月18日夕刻(帝国暦952年4月18日夕刻) ハニア大星域 銀河中心領域付近 オーブ連合首長国近隣某星系 オーブ宇宙軍医療船○

 

「……う…ここは…?」

 

 同じ隊の仲間であるディアッカが敵船の中で捕虜となった日より三日後、アスラン・ザラはオーブの船の中で目を覚ました。

 

「…気が付いたな。ここはオーブの船だ。今現在はこの星系で起きたあの大爆発に対してニライカナイ条約が適用されて、ザフトと銀連はこの星系限定でだが一時停戦だ…」

 

 アスランが目を覚ました隔離病室にはカガリの後ろ姿があった。

 

「先の大爆発で出来たと思わしい損傷を受けたイージスガンダムから意識を失っていたお前を保護した。そして…その近くの水質衛星の岩盤地表には…もっとひどい状態のストライクとバルバトスを見つけた…。どちらも中には…人が居なくて…焼けただれた…機内だけだった…。二人はどっちもまだ見つかっていない…」

「…そうか…」

「…あの時、あの二人の近くにいたんだな…何が起きたか知っているだろう…?」

「………っ……」

 

 医療品などが置かれた机を掴むカガリの手がギュッと鳴った時、アスランの口元には皮肉、自嘲、様々なものが混じった小さな笑みが浮かぶ。

 

「…あいつらなら…俺が殺した…だろう…」

「…!」

「…仲間が乗る…ベヒモスを…キラが両断して…メアリを殺した。だから…その場に乱入した…ウィンダムの一機に…俺がイージスの盾で…隕石の一つを打ち飛ばして…殺して、その連鎖で軌道が歪んだ…多くの隕石に撃ち焼かれた…」

「………」

 

 その笑みで発せられた言葉に、カガリの手は机が歪んでヒビが入るまで掴んだ後、カガリはすさまじい怒りと悲しみを抱いているのがわかる顔で振り向いた。

 

「…あいつらは…どっちも優しかった…」

「…………」

「…どっちも…普段はナヨナヨしてて…なまけ癖はあって…キラは泣き虫で…リュールは…女に弱くて…いつも…セレーナとか…私から見てもかっこいい連中に振り回されてて…」

「………」

「…なのに! 本当に危ない時は…! こっちがどんなに退いてくれって言っても…言いたくなっても…! 誰よりも苦しい所に飛び込んで! 誰よりも危険な時も周りを助けて…!!」

「…はは、変わってなかったんだな二人とも…どっちも…あの時から…“流星系”の時から…変わってない…」

「…!? 知っているのか!?」

「…ああ、地球にいた頃…同じ学校に通ってて…同じ先生の下で勉強してた…どっちもやればできるのに…夏休みの終わりの時はいつも泣き付いて来たり…愚痴ったりしてたー…!?」

 

 その言葉を吐いている間もアスランの口元には小さな笑みが浮かんだままだが、そこでカガリに荒々しく胸倉をつかみ上げられて俯いていた顔を引き上げられる。

 

「…その二人を! その友を殺して…何故!? お前は笑っていられる!? 笑いを作ろうとしてるんだ…!!」

「…じゃあ! 他にどうしろって言うんだ!? 今も…あの時も!!」

 

 そして、そこから二人は各々の立場、信じる者、守りたいもの故に押しとどめていた涙をついに堪えられなくなった。

 

「…あの二人は! あの子は…キラは…! コーディネイターなんだ! こうなった今の世界じゃ俺たちの仲間に居るのが普通なんだ! なのにあいつは…! 銀連にいて…今の俺たちの仲間を…! メアリを殺したんだ!!」

「…!!」

「…メアリは…俺より一つしか上じゃないのに…! 元々関係が無いのに…! プラントに…血のバレンタインで死んだ姉が残したものがあるから…! それを守りたいから…故郷も平和な暮らしも捨ててプラントに来て! よくケンカしてた俺とイザークをいつも取り持ってて! まだ15で故郷を守りたいって入ったニコルを良く気に掛けてて…! それで子(・)ま(・)で(・)出(・)来(・)た(・)のに…! 一緒に居たかっただろうに! その子の居場所を守りたいって…! その子を病院に預けて…! 戦場に戻って…それなのにキラに殺されて…!!」

「………」

「リュールも…いや! リ(・)ュ(・)ー(・)ス(・)もそうだ! アーヴで…しかも…本来なら俺たちなんかが出会うことも出来ないような存在なのに…! いつも危険なところへ何故か居て…最後までずっと残って! 誰もが諦めてきた状況をひっくり返して…! それが敵になったら…殺すしか…! 殺さないと今の仲間を殺されるんだ!!」

「…そんなの! あの三人も同じだったぞ!!」

「!?」

 

 そこで濡れ続けるアスランの頬を掴んだのは、カガリの懸命に震えを抑えようとしても抑えきれていない両手で、彼女の涙を禁じ得ない顔が目と鼻の先にあった。

 

「…キラは! 自分の身を知ってても受け入れてくれた友達と一緒に戦争に巻き込まれて! あの船を下りられなくなった仲間を護るために泣き虫のくせしてストライクに乗って…!」

「………」

「リュールはそのキラが放っておけなくて…! 帰ろうと思えば帰れたのに! 帰りたかったはずなのに…ずっと危険な場所に身を投じてて!!」

「………」

「…お前が殺したセレーナは…そのリュールが記憶を失ってた頃からあいつを良く面倒を掛けてて…! そのために…同胞であるはずのお前たちとも戦って…その間も! 親の都合で別れてプラントにいるっていうディアッカって言う弟をずっと気に掛けてたんだ!!」

「…!?」

 

 そして、残酷な別れをしたのが自分だけでなく今の友の一人にも居たこと、そうさせてしまったのが自分であったことにも気付かされたアスランは愕然とした。

 

「…殺したから殺されて…殺されたから殺して…それだけ繰り返せば平和になれるって…そうなれるのがこの世界なら…今のお前の顔は何だ!!」

「………………」

 

 それ以上、言葉を吐く気力も、吐ける言葉も今のアスランには残されていなかった。




次回も、皆さんの好きなキャラも混じるキャラクター達の鬱シーンが中心となる予定です…。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。