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「…シートが焼けただれてるけどよー、装甲パーツ…特に関節部分の摩耗と内部の金属筋肉の疲労もやべーぞ…」
「そうかなぁ? 魔術アレルギーが未だに強い銀連圏にしたら良くここまで持たせたと思うけどー…」
アスラン・ザラとカガリ・ユラ・アスハの慟哭の再会から三日後、帝国軍艦隊は緊張と慌ただしさが支配していた。
理由は先のラグナイト大鉱石層大爆発が原因でザフトと銀連がこの星域で一時停戦となり、オーブと帝国がその間を仲介することとなって、
但し、こういうのは見返りが必須なのが暗黙の条項なので、パナマ近くの星系で行われる予定だった、帝国人や銀連軍非参加国出身アークエンジェルクルーの除隊及び解放、バルバトスとアージェイトの返還などはこの星系で行われることになったのだ。
「…そうー、やっぱり両さん達と銀さん達はパナマまではアークエンジェルに残るとー…」
一方、アークエンジェルの帝国軍艦隊に向かう連絡艇に乗り込む面子の中にネーナもいた。
「おうよー、満期終了じゃないと報酬を貰えん約束だからなー。しっかり取り立ててやらんと気がすまん」
「俺もさー久々のパナマ産砂糖使用南国パフェを現場でまた食いたい気分だからなー。もう少しは付き合ってくるわー」
今まで口はどうあれ戦友として共に戦ってきた面子は別れを惜しんでいた。
「やっぱり薄情だと思うかしら?」
「別に構わねーヨーステラ。金の切れ目が縁の切れ目って言葉もあるんだから、戦場なんてストレスマッハで下半身もマッハになる環境じゃー棒が無くなったんなら止めてもいいんじゃネ」
「ちょっとそういう生々しい方はしないで上げて!」
但し、そんな中で神楽の毒舌ぶりは相変わらずであった。
「そう言えばこの場に自分らだけ逃げる気って言いそうなあのドクツ女はどうした?」
「…それがねー、リュールのMIA認定を受けてから落ち込んだままの様子ねー…。文句は一番言ってたけどあの子が一番彼に教えてくれってお願いしてたしー…」
「そのたびに毎日の練習にはもう死にかけの状態になってたけどねー。日光の方は軽い運動をした後みたいな感じだったけど、おかげであの状況でも機体は損傷しただけで中身も意識を失ってた状態で故郷の人達に保護されて帰国が早まったって状況だしー…」
そんな別れの場面でも意外な反応があったりもしたが話の大筋は流れもしない。
「…リュール達の仇討ちとかはしないの?」
「無いわけじゃ無いけどさーフレイ、そういうのしてあの馬鹿女をスピーカー程度にしか使ってない連中を喜ばせるのはもっと嫌よ」
「それを副艦長さんにも言って苦い顔をさせたわよねネーナ」
そんな中でネーナは懐から一枚の写メを見せてそのデータを残留組に転送する。
「ああ、それと
「船を降りる? 僕たちはどっち道は向こうで降りる予定で…」
「そうだと良いんだけどー、何かさー向こうに着いたらそれでもう終わって感じにはなりそうにはー…」
だが、若人たちを中心とするその別れの場面にも不穏な影がその魔手を伸ばそうとしていた。
「あ、歩けるようになったのねアスラン君」
「コモリ、負傷したと聞いたけど…」
一方、ザフトの方の若人の間でも別れの時は来ていた。
オーブ側の医療船からザフトの艦隊に戻ってきたアスランは同じ隊の同僚に出迎えられていた。
「痛みはあるけど軽いし歩けるわよ。つーかもう…あの状況じゃ生き残った時点でもう幸運よ…」
「…ああ、そうだな…」
「あんな状況でストライクとバルバトスを落してメアリの仇を討ったんだから君は凄いわ。まーあの状況と大人の事情で向こうのほとんど自爆ってことに公表されるらしいけど…ありがとう」
「…っ…コモリ…それはー…」
生還出来た友人もいたことにアスランは喜びつつ、その相手から出た無神経と受け取れる言葉に棘を覚えるが、後ろからガルマに肩を掴まれて止められる。
彼ら二人にとってはもうその手で討つしか止める方法などあの頃には見えなかった友は、その事情を知らないコモリには仲間を大勢殺してきた脅威に過ぎず、それから解放された安堵は当然のもので、彼女からの感謝に悪気などあろうはずがない。
「…クルーゼ提督から次に功績を上げればもうネビュラ勲章は確実だろうって」
「…そう…か…」
そして、友を殺した証拠であるそれも、上層部からすれば自国の勝利に大きく貢献して大勢の味方を救ったものへの当然の褒章であることも理解できたので、アスランはそれへの拒否感を言葉に示すことも出来ずにいた。
「コモリ、他の皆はどうなったかわかるか? 私は今日に目覚めたばかりだからまだー…」
「…ディアッカ君は今朝に言った通りMIAのままで、イザーク君はデュエルの足が吹き飛んだけど無事、パトリック君はこの私達の中で唯一本人は無傷で機体のレイダーも小破止まりだったから今も行方不明の味方の捜索と救助で飛び回っていて、ルイスちゃんの方は山場をどうにか越したけどまだ意識は戻っていないわ…」
「…そうか…」
「ニコル君の方はメアリちゃんの遺品整理の方も終えて今は落ち着いているわ」
「…ああ…」
「それと、イザーク君の方から伝言が一つ」
「イザークから?」
「…次は俺が隊長になって、その先の提督には俺がまずなる。俺の部下になるまでは死ぬな。そして部下になったら死なせんって…」
「…はは、彼らしいな…」
故に、少しでも前を向ける理由を探して前を進むしか今の彼らには無かった。
○
「…そうか、アスランは負傷したが生還したと…」
「そちらの御子息だけでも生きて帰ってこられただけでも…良かったですな…。まあ、そちらのご自宅にはなかなか難儀な道を辿っている子が来そうですが…」
アスラン達が仲間達と共に頭を上げなおそうとしていた頃、その彼らの故郷であるプラントの中枢の一角で、クライン派の面々が集っていた。
「…悪いが今はその話をしている暇はない。今月の初めに提出されて今の議長殿に通されたスピットブレイクの件だ」
「…でしょうなぁ…」
そこには最高評議会議長職を退任して今は民間人となっているが 今でも評議会を始めプラント各界に強い発言力を持つシーゲル・クラインの姿もあったが、温厚な人格者としても知られる彼も含めてその場に集う者達の顔は重かった。
「…昨年の血のバレンタインでメイアが向こうに着いたのを切っ掛けに、
「ああ、それでマルキオが持ってきた“オルバーニの譲歩案”に市民は今もこのご時世に板のプラカードや紙の横断掲げてデモ行進中だしなー…」
その場に集う穏健派の要人達も難しい顔を浮かべていたのは、銀連とプラント、中立各国に太いパイプを持つ宗教家マルキオが使者として持ってきた、銀連からの和平案“オルバーニの譲歩案”であった。
内容はプラントにはある程度の自治権は認めるものの、防衛戦力は解体して再び銀連の管轄下に入れるというもので、戦前のまだ銀連支配下にあった頃ならまだしも、戦況が表向きはプラント優勢な現状ではプラント市民が受け入れないだろう。
「…戦前の利権に固執する銀連財界、その中の重鎮でブルーコスモス強硬派のアズラエル家がこの案の策定に関わったようでー…」
「エイプリールフール・クライシスによる経済破綻とBETA侵攻によって生活が破綻した向こうの国民の怨嗟を上手くこっちに向けてるようでー、まー核やG弾なんてのにまた攻撃されないようにとはいえNジャマー撒いたのがこっちですからねー…」
「戦前は自治化に協力的だったブルーコスモス穏健派のジブリール家は先代の当主がG弾でザビ先々代議長と共に吹き飛んだし、その甥である今の当主殿は若いですからねー…」
「…ウズミ前代表も含めて、中立連合の重鎮は講和の仲介のために今もあちこちを回ってくださっていますけどー…」
「…オルバーニ案を出したタイミングとその内容を公表したことからして、もう銀連も銀連で反撃の態勢を整えつつあるから、その時間稼ぎをしているというのが実態でしょう…」
「…もう、どっちもなるべく早く“自分の勝ち”に持ち込もうとしている状況です…」
敵味方どちらも穏健派が退潮しつつある状況を改めて認識することしかできず、シーゲル達は改めて眉間の皺を増やす。
「…やはり、
故に、彼らの意識は今現在のこの人類宇宙で最も強大な勢力であり、その経歴から今も浅くはない縁が続いている面々も混じるために
「…“アーヴ”ですな…」
「…前の大戦の時もそうだった…」
「“銀河規模ベトナム戦争”と言われた第三次大戦の時も、アーヴの協力が無ければ停戦を決めることも出来んかったわい。あれがあったからこそプラントも完成させられた以上、戦争を続けるにしても止めるにしてもアーヴの力は無視できんのだ」
「本来ならここプラントの建設も、その帝国含めた各国の友好の深化と長期化のために建設が始まったものなんですけどねぇ…」
「その権益をめぐって対立が限界点を越えたのが今の状況だからなぁ…」
「BETAなんてものが無ければもう帝国の大艦隊が銀連領に雪崩れ込んで何十って星が阿鼻叫喚の焦土ですよ」
「その奴さん達にすりゃあ、今の状況はもういつ背後から刺してくるかわからんのももう隠さなくなった連中が勝手に潰し合ってくれてるんだから、自分から進んで仲人しようなんて気にはならんでしょう。あの国は半分立憲君主制だが、もう半分は軍人叩き上げが前提の教育となっているアブリアル一族が今も大きな力を持つ半権威主義だ。そのアブリアルの
「…逆に皇帝さえ説得すれば、今の政権を担う政盟会が右派で対銀連強硬派であっても講和の仲介に大きく動かせられるんだがー…」
「だが、その線も去年のG弾でゼミーシュルごとアブリアル含めて政財官軍四界の重鎮やその子弟も大勢吹き飛んだから、絶望的とー…?」
だが、その件に触れれば周囲の多くは威力こそ絶大だが取扱超危険でいつ爆発するかわからない危険物に対峙したような爆発物処理班の如く、ストレスで胃がマッハな心地になる。
「………………」
そんな状況で周囲が言葉を重ねれば重ねるほど却って表情を重くしていく中で、同じ顔を浮かべつつも一人だけ何も口を開いてない、ジラルハネイゆえの濃い顔立ちと巨躯も重なって存在感が半端ない男がいた。
「…カドル老人、ずっとさっきから何もしゃべっていないけど…今回の集まりも貴方の呼びかけで皆は来たのになぜ…?」
クライン派のナンバー2で今も最高評議員の一人をしているアイリーン・カナーバが怪訝な顔で問うたその男は、この場では唯一のナチュラルだが帝国で武官文官どちらの時代でも実績を積んだ身で、公務員を退職した後はジョージ・グレンの呼びかけで創建の頃よりプラント建設に携わって貢献したことで、プラント市民から広く慕われているカドル・ボルジュ=ディマル・ディマールスである。
「…皆が知っての通り、この戦争でこれ以上犠牲を出さずにプラントが戦前の状態に戻らず自由と独立を得るには、帝国の仲介で講話を結ぶのが一番早く確実であり、それをなすには皇帝か
「だが…皇帝とそれを動かせる存在の多くは昨年の血のバレンタインで態度を硬化させたままで、野党の立憲連合党の方は同事件で漏れたスキャンダルで未だに失墜した影響力を回復させてる途中だぞ…」
「そんな状況で、仲介に動くよう働きかける存在がー…」
その出自のため、本人個人の感情は別として今でも帝国とは太いパイプがあるカドルに皆は注目し、故にすく馴れすら帯びている諦観の色も見せ始める。
「…ディマールス、
「「「「「…??」」」」」
「「「「「………」」」」」
その中でシーゲルは何かを察した険しい顔を見せるが、その他の面々は気づいていないか、気付いてはいるが口に出すのも躊躇っていそうな難しそうな顔になる。
「…それはそうだが…その
「「「「「!!!??」」」」」
だが、気付いていそうな顔の面々はカドルの言葉の続きに多くがギョッとする。
「…実はパトリックの息子アスランと君の娘ラクスがこの前、クリュセで私の所に来ていた時…今でこそ
「「「「「……………」」」」」
その大本に気付いているものと気付いていないもの双方の注目を集める中、懐からある斧を取りだす。
「…あの皇帝ラマージュでさえ扱いに頭を悩ませている帝国内第三勢力の使者としてこちらを届けにな!!」
「「「「「…!!??」」」」」
そうしてカドルが取りだした書簡には、本来なら帝国の公文書では皇帝とそれに許されたものしか扱えない、
何だか、どっかの春秋戦国漫画で見たような展開が出てきましたが、こっちの方のシーゲルさんは原作よりも味方がいますけど、その分以上に胃痛的な意味で鬱要素が増えていそうです…。