運命に抗うただ一匹の   作:鴬の囀り

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後ろ向きだけど前向きな1歩

 

 『───ニュースをお知らせします、原城高校の生徒20名が下校途中で倒れているのが発見され駆け付けた医師によりその場で全員の死亡が…』

 リモコンでチャンネルを変えればどんな無情な現実もすぐ明るいものへと変わる。

 

 「楪、お弁当は?」

 「玄関に置いてあるよ」

 「ありがと〜いつも助かる〜」

 

 もぐもぐとトーストを食べながら顔も向けず、かけられた声に返答をしてテレビの中で美味しそうなグルメを紹介する番組を見る。支度をしなきゃなとか思うんだけどどうにも足が重かった。

 嫌なニュースを見てしまったからだと分かってる。でもどうにもならなかったのだから仕方ない。

 

 「ごちそーさまでした」

 ぱんっと両手をあわせて食べ終わった食器を重ねるとシンクに入れて水を溜めておく。これからすべきことは沢山あるし、相変わらずついて行くのに必死だ。

 

 だけど仕方ないじゃない。

 誰も彼もが諦めてる世界なんだから、私も諦めるしかない。

 諦めて、“喰いつく”と決めたのだ。

 

 鏡の中で制服姿の自分を見つめ、その場でくるりと回っておかしなところがないか確認してカバンを持つ。ずしんとくる重さはそのうち慣れるんだろうなと思う。

 

 「いってきまーす」

 誰もいない家にそう告げてから玄関を出る。眩しい朝日に照らされてシダレヤナギの校章がきらりと光を反射する。

 

 昨日が入学式。今日が柳高校での私の生活一番最初の日である。踏み出したこの一歩は後ろ向きなけれど前向きな一歩だということを私だけは覚えていよう。

 

 

 ──────────────

 

 柳高校は戦闘科に特化した高校だ。全ての生徒が異能、もしくは戦闘能力に秀でた生徒で構成され、卒業後は多くがハンター協会へ属する。

 

 メビストを殺す人間を育てる高校だ。

 

 私が死ぬ前に選んだのは白雪高校、白雪高校はとにかく普通。勉強も難しくなく、異能なんて持っている人はほとんど居ない。そのくらい普通な高校だった。

 

 志望校をずっと白雪高校にしていたのに中3の進路相談で急に柳高校に志望校を変えたものだからとにかく周りは驚いた。

 

 メビストが溢れるこの世界で異能を戦闘能力を持たない人間はただ殺されるかそれらを持っている人間たちに生かされるかどちらかしかないのに。

 

 危ないから辞めるのだと説得されたのを振り切って柳高校へと受験した。

 

 この世界に迷い込み、以前の世界と異なることに気付いたきっかけはとにかくお腹がすいたことだった。

 

 最初何かの病気かと疑ったけど特にほかは健康体で、くしゃみをした時何かが抜け落ちた感覚がした。

 思わずくしゃみを抑えた手を見るとそこには銃弾があったのだ。

 

 信じたくなくて見ないようにしようと思った。だけど興味本位で手を銃の形にして軽くばんと口に出した時。

 

 それは壁に深くめり込んでいた。

 

 私には異能があったのだ。それは前回死ぬ前にもわかっていた。抗おうと思えば抗えたのだろう。だけど学ぶことを放棄した私の異能なんて精々自分を少し長く生き残らせることしか出来ず、みんなが死んだという事実を受け入れる勇気もなかった。

 

 だから私は学ぶ。今度は喰われるのではなく、喰うために。

 

 

 

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