幻夢の世界で会いましょう   作:みょん!

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第十八話 翳りゆく光

 私の体が、重力を感じる。それ以上、何も分からない。

 

 上も下も。右も左も。分からない。

 

 音も、聞こえない。体は動かそうとしても、動かせない。

 

「……………………ぁ」

 声を出そうとして、(かす)かなものとして出てきた。

 腕を動かそうとして、ズキッと痛んだ。

「~~~~~~~~ッ!」

 全身に、悶絶するような痛みが走った。

 痛みがあったおかげで、意識が戻った気がする。

 目を開ける。空が見えた。地面に寝転がっているようだ。

 

 ――何が、あった?

 

 体がズキズキと痛む。そのおかげで意識がはっきりとしてきたのが分かった。

 何やら腹部の上に重さがある。光の剣でも乗っているのだろうか。けれど光の剣の重さは相当なものだし、こんな軽いものでは――と視線を、降ろして。

「――――――――」

 声にならない、声が出た。

「お――――――ごほっ、ごほっ!」

 私の体の上に、王女が乗っていた。

 けれど、その王女は――全身が、傷だらけで、頭から、血が流れ落ちてきていて――。

 やっと、記憶が確かになった。

 そうだ、私は。倒したボスの様子を見ていて、脇を通り過ぎようとしたら、コードが伸びてきて――。

 そうだ、王女が、王女が、私、を――――。

「王女。――――王女! しっかり、してく、ださい、王女!」

 あの音は。あの衝撃は、きっと、ボスが、自滅したときの音なのだと、今になって気づくには、全てが遅すぎて。

 体を起こす。体に痛みが走る。でもそんな痛みは、関係無い。王女は、無事? 王女は、王女は――!?

 王女の頭に、青色の四角形のヘイローは、灯っていない。ヘイローがないとき、それは本人の意識がないか、もしく、は――――。

「王女! 起きて、ください、王女。おう――――」

 頭の中で冷静な自分が問う。倒れた相手を揺さぶるな、と。

 でもそんなの知らない。王女は無事なのか、私にはそれだけだった。

「王女…………」

 揺すぶっても揺すぶっても、王女からの反応はない。先ほど密着したときに確認した心音は、と胸に手を伸ばした、その時。

「――――っ! こほっ、けほっ」

 王女の体がびくっと跳ねたかと思うと、その口から、小さく咳をする音がした。

「王女。……王女、私が分かりますか、王女」

 声を大きくしたら、王女の声が聞こえなくなる。静かに、けれどしっかりと伝わるように、王女へと、声をかける。

 うっすらと、王女の目が開く。その頭上に、青色の四角形のヘイローが灯る。しかしそれは綺麗なものではなく、所々にノイズが走っていて、色も、薄くて、今にも、消えそうで。

「………………け、い?」

「王女、私です。ケイです。……おう、じょ…………!」

 いつの間にか、視界が歪んでいた。瞬きをすると、視界がクリアになる分、頬に冷たい感覚がある。

「ケイ。…………ふふ、よか、った」

 王女は、弱々しく、けれど、私に、笑ってみせる。

「ケイが、無事で。よかった。アリス、は、ケイを、守れ、たん……ですね」

「お――――~~~~っ!」

 王女を呼ぶ声は、喉につっかえたもののせいで、上手く言葉にできなかった。

 ――どうして。私を助けたんですか。

 ――王女、貴女は元の世界に戻らなきゃいけないんですよ。

 ――私は、戻る場所がないんですよ。

 ――どうして。あんなことを。

 ――私は、王女を守るための盾なのに。

 ――王女を無事にお帰しするのが、私の役割なのに。

 ――どうして。

 ――王女、貴女は、どうして。

 王女の手が、私の頬に触れる。指の腹で、私の頬を撫でる。冷たい感覚があった。

「泣かないでください。お姉ちゃんは。可愛い妹を、守るもの、ですから」

 弱々しく笑って、言う。泣いている? 誰が?

「ケイは、アリスの、可愛い、妹です。ケイが危ないときは、お姉ちゃんが、守ってあげなきゃ、いけないんです」

「王女、貴女は戻らなきゃいけない。無事に、戻らなきゃ、いけないのに、貴女は、どうして――――!」

 顔を左右に振る。どうして、と問うけれど、王女は弱々しくほほえむばかりで。

「妹が、危ない目に、あってる、のに。心配、しない、お姉ちゃんなんて、いない、ですよ、ケイ」

 息も絶え絶えに、言う。

「ケイは、アリスの、自慢の、妹、ですから」

 弱々しく、今度は左の手も私の方へと伸ばし。両手で、私の頬に手を添える。

 感触を確かめるように、小さく抓んで、ほんの少し、左右に伸ばす。

 イタズラをする子どものように、にこりと笑った王女は。

「ケイ」

 私の名を、呼ぶ。

「ワープゲートは、その、先、です。ケイは、…………だっしゅつ、して、くだ、さ」

 その言葉を最後に。

「おう………………じょ………………?」

 王女の頭から、ヘイローが消えた。

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