幻夢の世界で会いましょう   作:みょん!

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第二十三話 アリスが帰る場所 

 ~アリスside~

 

 アリスが目を覚ましたとき、アリスの周りにはモモイ、ミドリ、ユズがいました。

 モモイに聞くと、どうやらアリスは二日間ずっと眠り続けていたらしく、モモイもミドリもユズも、ゲームのマスターアップ直前のような顔をしていました。

 ――アリス、よかったね。戻ってくれたんだね。

 モモイはそう言って、私をぎゅっと抱きしめてくれました。

 ゲームの中で何が起きたのか、アリスはある程度話すことができました。

 けれど、ある一点を過ぎたあとから――アリスが、ケイをボスの攻撃から守ったあとからは、何も分かりません。アリスは何も分からないまま、ゲームをクリアしたことになります。

 それから先のことは、モモイが話してくれました。

 ケイが、とてもとても頑張ってくれたと聞き、お姉ちゃんとしては誇らしい気持ちになりました。

「アリスは、ケイに、ありがとうを言わなければいけませんね」

 アリスがそう言うと、部屋に居る皆が、言いにくそうな顔をしました。

「あのね、アリス。……すっごく言いにくいんだけど、あのゲーム、運用停止になったんだって」

「どうして、ですか?」

「私もヒマリ先輩から聞いた話なんだけどね。やっぱりアリスが危ない目に遭ったから、止めるんだって。βテストのゲームあるあるなんだけどさー。あーあ、せっかくいい感じななフルダイブ型ネトゲ見つけたと思ったんだけどなぁ」

「そう…………です、か…………」

 アリスの中にケイがいてくれている、というのは、ケイと話をして初めて知ったことです。

 だから今、ケイがアリスの中にいてくれるのかどうか、確認する方法はありません。

 今までと同じく、ネットゲームの中に入れば、またケイと冒険ができるかもしれないのに――。

 ふと、アリスの手の中に何かがあることに気がつきました。

 手を開くと、アリスが作ったロボット型のキーホルダーがありました。

 ――これは、アリスがケイにプレゼントしたはずのもの、なんですが。

 どうしてアリスの所にあるのか、分かりません。ケイと一緒に戻ってきた時に、アリスに返されたのでしょうか。それは、分からないけど。

 ケイだと思って大事にしていたロボットのキーホルダーが、壊れずにアリスの手にあることが、なんだか、ケイが今も元気でいてくれる証のような気がしました。――いいえ、きっとそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それからと言うもの、アリスたちはヒマリ先輩のところへ行き、なんとか復活させて欲しいと何度もお願いをしに行きました。

 時間はかかるでしょうが――とヒマリ先輩に言ってもらうまで、何日かかったかは分かりません。ヒマリ先輩と約束を取り付けて――指切りまでしたので絶対です――アリスたちはやっと、それまでと同じ日常に戻れる気がしました。

 

 アリスたちはそれまでと同じく、ケイを光の剣やモップに付けてミッションをこなし、ミッションをクリアした後は寝る前に机の上に座ったケイに向けて話しかけます。

 ――ケイと、早く会いたいです。と言いながら。

 そしてケイと会った時のための日記帳を付けることも欠かしません。ケイと会っていない時に何があったのか、ケイにお話するためです。

 ケイとゲームの中で会ったおかげか、ミドリも、ユズも、モモイも、みんな日記帳を付けていました。皆で見比べると、それぞれ言っていることが違います。

 けれどそれが、それぞれ感じたものだから、きっとそれが正解なのだとアリスは思います。

 誰の日記が一番面白いのか、ケイに見てもらって判断するのもいいかもしれません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、何ヶ月かが経って。

 キヴォアカのβ版ができたと、モモトークでヒマリ先輩から連絡がありました。

 【ベータテスターという形になりますが、いかがですか?】

 【やりたいです!】

 【はい。では、ゲーム開発部の皆さんと一緒に来てください】

 

「――というわけなのですが、行きませんか?」

「本当に、大丈夫? また、あんなことには……」

「ヒマリ先輩が言うには、『詳しいところは言えませんが、対策済みです』らしいです」

「それ言われても全然わかんないやつー! ……でもアリスが行くんだったら、私も行きたいな。アリスを一人にさせたくはないし」

「それは私も。アリスちゃん、一緒に行こ」

「わた、しは、…………皆が行く、なら。私、も……」

「よーし、皆でヒマリ先輩の部屋に突撃だー!」

 お姉ちゃんのモモイを先頭に、ゲーム開発部のみんなでヒマリ先輩の部屋へと向かいます。

 

「なーんだ、前と変わんないじゃん」

「お姉ちゃん、失礼だよ」

 部屋に入ってキヴォアカのログイン用のヘルメット型の機器を見るや否や、モモイがそう言って、ミドリが静かに注意します。

 思ったことを言うのがモモイのいい所でもあり、悪い所でもあります。

「中身は色々と変えていますよ」

 モモイの言葉に、ヒマリ先輩はいつものようにすまし顔。これがユウカだったら、きっとモモイの頭にゲンコツが入ったことでしょう。

「また四人でログインしていいの?」

「ええ、大丈夫です。アリスだけをログインさせたりしたら、皆さん心配するでしょう。――ああ、安心してください、今のところはまだオフラインですから、危険性は一切ありません。オンラインにするには、まだまだ時間はかかりそうですが」

「ま、ヒマリ先輩がそこまで言うんだったら、まぁ大丈夫だよね。さ、アリス、行こっか」

 モモイがアリスに手を向けます。おずおずと手を出すと、モモイはアリスの手を引いて、そしてモモイが寝るベッドの隣をぽんぽんと叩きます。ここに寝て、と言っているようです。

 通路を挟んで、ミドリとユズも同じようにベッドに寝転がります。

 数ヶ月前に被ったものと同じものが目の前に現れます。

「ヒマリ先輩。ケイは持っていても大丈夫ですか?」

「はい。アリスが落ち着くのであれば、持っていてもらって結構です」

「ありがとうございます。アリスはケイと一緒です」

 私は安心して、ヘルメット型のコンソールを被ります。

「それでは目を瞑って、体を楽にしてください。…………そういえば。不思議ですね。アリスが手に持っているものが、なぜゲームの中に現れたのでしょうか?」

 ヒマリ先輩の声が聞こえている中、アリスの視界は、黒から、更に真っ黒に変わっていって、そしてヒマリ先輩の声も、聞こえなく、なって――――。

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