幻夢の世界で会いましょう   作:みょん!

25 / 26
第二十五話 いっしょにいたいよ

 ~sideケイ~

 

 私の役割は、王女の為の、鍵だった。

 その役割を終え、ケイという名を王女から与えられ、箱舟での出来事を経て、王女の中で幽霊のように存在していた私は。王女を視ていく中で、何時しか、一つの願いが生まれていた。

 ――王女をお守りしたい、と。

 私はずっとそう願って、願い続けて――ふとした不具合で、王女とゲームの中で一緒に冒険することになって、その願いは、叶うこととなった。

 王女に主導権を握られつづけていたという自覚はあるけれど、最終的に王女をしっかりとお守りすることができた。

 私の願いは叶った。そして全ては元に戻った。――私は、それで十分だと思った。

 

 ――けれど王女は、そうではなかった。

 

「ヒマリ先輩! キヴォアカを復活させてください! ケイと冒険したいです!」

「ですから、アリス。このゲームは脆弱性が確認され、現にアリスが――」

 論理的に訥々(とつとつ)と説明するヒマリに、王女はただ感情論で食い下がる。

 感情論で人は動かない。ヒマリは決して、そういう人ではない。

 けれど王女は、毎日のように、いや、毎日、ヒマリの元へと通う。三顧の礼は三日目で過ぎた。それが一ヶ月になり、二ヶ月になり、それでも、王女の訪問は、止まらなかった。

 ――どうしてそこまでするのですか、王女。

 私は届かない言葉を王女に発し続ける日々だった。

 王女曰く『デイリークエスト』のヒマリへのお願いを終え、部室に戻った王女は、机に座らせたロボット型のキーホルダーを指先で揺らしながら、言う。

「ケイ。アリスはケイに会いたいです。ケイにお話したいことはたくさんあります。モモイもミドリもユズも、みんな日記帳を付けてますから」

 ――視てますから、わざわざお話いただかなくても大丈夫です。王女がお元気なのは、私がしっかり視ています。仲間たちと充実した日々を迎えているのも、王女に向けて眩しい笑顔を向けてくれる仲間たちがいるのも、視ています。

 なのに、王女は。

「ケイ。また一緒に冒険しましょう。一緒にアイスも食べましょう。だからお姉ちゃんは、もう少し、頑張りますね」

 私に会いたい、と私に言い続ける。

 

 視ているだけで、満足だった。

 王女がお元気であれば、それでよかった。

 見守るだけの立場でも、十分だった。

 だけど、王女と一緒に過ごした数日間が、私の心と体に、しっかりと刻まれていて。

 時が経つにつれて、それがじわじわと、恋しくなって。

 

「アリスは、ケイに会いたいです。ケイは、どうですか? アリスと冒険、したくないですか?」

 毎日問いかけられる言葉。『会いたい』と話してくれる王女に。

 ――したいです。

 ――許せるのなら、私も、王女と会いたいです。

 

 王女が日々ヒマリに会いに行き、解決する術を探ろうとしているのを視て。

 その気持ちが芽生えてくるのに、時間は掛からなかった。

 

 ――王女と、一緒に居たい。

 ――王女と、同じ時間を、過ごしたい。

 

 守りたい、だけじゃない。

 王女と、一緒にいたい。

 

 これは、叶わない願いかも知れない。

 王女がキヴォアカに再びログインしたときに、私の姿はないのかもしれない。

 でも、日々、『ケイに会いたい』と言い、そのために、文字通り走り回る王女を視ていて、こう願わないでは、いられない。

 

 ――もし、私の願いが叶うのならば。

 ――貴女の隣に、だなんて、贅沢は言いません。貴女と一緒に、居させてください。

 

 私は、貴女と一緒に居たいです。――王女。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。