幻夢の世界で会いましょう   作:みょん!

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第二十六話 私たちの旅とエピローグ。

「さぁー、今日も冒険の旅に出かけよー!」

 ログインを終えるなり、モモイが両手を上げながらそう叫ぶ。

「モモイは、今日も騒がしいですね」

「元気なのはいいことですよ、ケイ」

 独り言を呟いたはずなのに、王女には聞かれてしまっていたようだった。少しだけ恥ずかしい。

「ケイは元気そうですね」

「ええ、毎日こうやって王女と会えていますし、不都合ありません。ログインしないときでも王女を通して視てますので、状況把握には事欠きません。…………ただ」

「ただ。……なんですか?」

「…………」

 言わなくてもいいことを言ってしまった気がした。けどここで誤魔化せば、逆に違和感が生まれてしまうから、言うしかないのだけれど。……なんだか毎日王女とお会いできるというだけで、気が緩んでしまっているのかもしれない、と思った。

「…………こうして、王女とお会いできることは。…………嬉しい、です」

「………………」

 口にしてしまった。言わなくてもいい思いを、口にしてしまって。

 王女の顔が見られない。王女の口から、何も言葉が返ってこないことに、段々と不安になってきて――

「むぐっ!?」

 後頭部に手が当たる感覚があったかと思うと、私の頭は王女の胸の中にあった。

「ケイは可愛いですね。本当に可愛いです。そんなケイのお姉ちゃんで、アリスは嬉しいです」

 ――ですから私は貴女の妹ではありません! そして離してください何も言えません!

 そう言おうとしても、王女の力は思いのほか強く、私の力では解放されそうもなくて。

「アリスちゃん」

 囁くような声が聞こえたかと思うと、後頭部への圧力が少なくなった。

「ケイちゃん苦しそうだよ」

「ぷはっ」

 王女の胸から解放された私が見えたのは、困ったように笑うユズの姿。

「ごめんね、ケイちゃん。アリスちゃん、ここにログインできるようになってから、毎日そわそわしてて……」

「ええ、分かってます。皆さんの反応を見れば、おおよそは」

 王女を介して視ているし、聞いているから、それがどれだけ嬉しいか。どれだけ私にとって救いになっているかは言うまでもない。

「私も、皆さんと冒険するのは、楽しいですし…………」

 ユズや王女になら、言えると思う。少なくとも、あの騒がしいお姉ちゃんよりは――

「ケイ、嬉しいこと言ってくれるじゃんー!」

「ぐふっ!」

 背中に、バシンという音と共に、程ほどの衝撃。

 こんなことをするようなのは一人しかいない。

「モモイ。…………急に人を叩くのを止めてくださいと何度言えば分かるのですか。蹴りますよ」

「なんでよー? ケイが嬉しい事言ってくれてるんだから、私も応えようとしただけだよ!」

 しっかりと聞かれてしまっていたらしい。――なんとも、今日は緩みっぱなしだ。言動に注意しようと思う。

「さぁ、今日はどこ行く? ワープゲート通って、昨日進んだところの先に向かってみようか?」

「お姉ちゃん、大丈夫? 町に着くだけで大変だったのに、レベル足りてない?」

「妹よ、案ずるなかれ。私たちは五人パーティだよ。足りないものは連携で補えばいいの!」

「昨日、そう言って連携崩れてたじゃん……」

「だいじょーぶだいじょーぶ! 皆と一緒ならきっとできるし、きっと楽しいよ! というわけで、しゅっぱーつ!」

 モモイはそう言うやいなや、ワープゲートを潜り、見えなくなった。

「ちょっとお姉ちゃん! ……もう!」

「じゃあ、私たちは行ってるからね。アリスちゃんたちも来てね」

「はいっ!」

 ミドリも、ユズも、ワープゲートを潜っていった。

 そして、王女と私だけが残される形になる。

「さぁ、ケイ。私たちも行きましょうか。冒険の旅へ!」

 王女が、私に向けて手を伸ばす。

 その動きは、これまでと変わらない、王女の姿で、そして、お姉ちゃんの姿で。

 私は、王女の手を掴む。にぃっと、王女が朗らかな笑みになる。

 

 今はまだ、ゲームの中だけ、だけれど。

 いつか、現実の世界でも。こうやって手を繋いで行けたら、と思う。

 

「ええ、行きましょう、王女。共に、冒険の世界へ」

 二人並んで、ワープゲートに入る。

 一瞬の視界のブレの後、新たに見えた景色の中に、先にワープしていったモモイ、ミドリ、ユズの、ゲーム開発部の頼もしい仲間たちの姿が見えた。

 

「さぁ、わたしたちのクエストを、開始しましょう!」

 王女の朗らかな声が、キヴォアカの空へと、響いていった。

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