幻夢の世界で会いましょう   作:みょん!

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第八話 アイスクリームふたつ

 キヴォアカはフルダイブ型のネットゲームだ。

 フルダイブ型は通常のゲームとは違い、ゲームの中に入り込むことで、ゲームに没入することができる。

 視覚や、聴覚、触覚や、嗅覚、味覚まで、現実で感じられる五感の全てを、このゲームの中では感じ取る事ができる。

 それはまるで、現実の世界にいるかと錯覚できるほどで――。

「ケイ、気をつけてください。落とさないでくださいね」

「大丈夫ですよ、王女。私はモモイではありませんから」

「ふふ。モモイは一度、アイスを落としたことがあります。よく覚えていますね、ケイ」

「視てましたから」

 私は王女とともに、三段重ねのアイスを手にしながら、ゆっくりと歩いていた。

 コーンに乗った三色のアイスは、ずっしりとした重量感がある。左右交互に載せられた三段のアイスは、大きめのコーンの中にバランスを取るように乗せられているけれど、ちょっとした衝撃や傾きで、簡単に重力に引かれて落ちてしまうだろうと思われた。アイスを食べるのなら、落下を気にすることのないよう、紙製のカップに入れてスプーンで食べればいいと思うのだけれど、王女は『コーンに載せた三段アイスだからいいんです!』などと非効率なことを言っていた。

 ――なお、アイスを買うときに、突然ヒマリから通信が入り【このアイスはミレニアムの購買で売っている某高級アイスが元となっているため、美味しさは保証します。ゲームの中でもグルメを楽しんでもらいたいですから】とのこと。

「はい、ではここのベンチに座ることにしましょう。座るときも気をつけてくださいね」

「分かってます」

 このゲームで王女とご一緒するようになって、王女はやけに過保護だ、と感じる事がある。

 まるで自分の子どもを扱うように、まるで自分の妹と接するように。そんな扱いを、私に施す。――何度か、『ケイは、アリスの妹のようなものですから!』と言っていたのも、きっとそのせいなのだと思う。

 確かに私は、この世界で肉体を持って生活したことはない。全ては王女を通して観測してきた中で得てきた知識だけだ。

 今のところ、この世界にそぐわない行動はしていないつもりではいる。けれど王女は、ゲームの中で何回か見た、『この世界が初めてのキャラクターに優しくする主人公』のような、行動を私にしてくれる。

 王女に大事に思われることは、決して、嫌いではない。むしろ、嬉しいまである。それでも私は、王女を補佐し、王女を守り、王女のためにある存在だから。できるのなら、逆の立場でありたい、と思う。不安定で、危なっかしくて、お人好しで、他人のためになら命を賭すことも辞さない、優しすぎる王女を、私は――――。

「ケーイ」

 目の前に王女の顔があった。思考の処理に集中していたため、意識がそちらに向いてしまっていたのだろう。隣に王女が座っていることすらも、意識の外にあった。

「考えごとはよくないです。美味しいものが目の前にあるんです、今は美味しいものを食べることだけに集中しましょう」

「…………すみませんでした、王女」

「はい。せっかくのアイスです。溶けないうちに食べましょう。……ケイ、アイスの食べ方は分かりますか?」

「分かります。大丈夫です」

 過保護だと思う。でも、その一方で、嬉しいとも思う。王女が、私を見てくれているのだと分かるから。

「はい。では食べましょう。アイスが逃げてしまいます」

 ――アイスは逃げません、と言いかけて、私は口を閉じた。

 アイスは逃げない。けれど、すぐに溶け落ちてしまう。だから王女はきっと、アイスが『逃げる』と表現したのだろう、と思う。

「…………んー、美味しいです。一番上のドクペも、二番目のストロベリーも、三段目のチョコミントも。それぞれの味わいがあって、冷たくて、おいしいです」

 ぺろり、と、それぞれの色が異なるアイスを舐めた王女は、頬に手を当てて嬉しそうに頬を緩める。王女の目で世界を観測している時は、もちろん王女の顔なんて見えない。王女と直接対面したときは、悲しそうだったり、決意を秘めていたり、優しそうだったり、凜々しかったりとしていたから、このような、緩んだ、幸せそうな顔をするのを見るのは、初めてで――。

 なんとなく、体温が熱くなっているような気がして、私も王女をまねて、アイスを舐める。じんわりと口の中に、冷たさと甘味が広がっていくのを感じる。ただ、舐めただけでは全く体温は下がってくれなくて、王女の見よう見まねで、一段目のアイスを囓ってみる。固形物としてのアイスが喉を通り過ぎていくと、体の熱が少しだけ下がった気がした。

 ふと、口元に指の感触。隣を見ると、王女の指が私の口元にあって――そして触れた指を、自分の口に咥えた。

「ふふ。ケイ、アイスが付いてました。溶けないうちに、とアリスは言いました。でも落ち着いて食べてもいいんですよ」

 だなんて、そんなことを言いながら、ころころと笑う。優しく、穏やかな、幸せそうな王女の顔が間近に見えて。……なんだか、胸が締め付けられるような気がした。

「ケイ。それでは、こちらをどうぞ!」

 王女が私の顔を見てきて、目が合ったかと思った瞬間。王女は突然、私に持っていたアイスを突き出してきた。

 行動の意味が、分からない。

「…………どうぞ、とは?」

「食べあいっこです! モモイとミドリがよくやっていました!」

 そう言ってまた、ずい、と私の方へとアイスを突き出してくる。ほんの少し顔を動かせばそれだけでアイスが口につきそうな距離。王女はにこにことしながら、私の様子を(うかが)う。

 王女の行動。そして『食べあいっこ』という言葉が持つ意味。

 ――それは、つまり。……王女が先ほどまで食べていたアイスを、私が食べる、ということで。

「…………いい、の、ですか?」

「はいっ! アリスのアイスも、おいしいですよ。さぁ、ケイ。さぁ!」

 にこにことした王女の目が、爛々と輝くのが見えた。これは、断れないものだな、と悟る。

「………………」

 王女が食べたものに口を付けるという、不敬で無粋で野蛮な行為。けれどそれを望んだのが王女自身なのだから、きっとそれらの罪には当たらないのだろう、と思う。

 舌を伸ばす。ほんの少し出しただけで、舌先にアイスが触れた。

 先ほどとは違う風味が、口の中に、広がって――――

「――――!? げほっ、お、王女、こ、これ、は……!?」

 思いがけない独特の風味に、思わず咳き込んでしまう。王女の食べ物を食べて咳き込むなど、不敬極まりない。しかし私の体はどうしても反応してしまう。先ほど私が食べた『バニラアイス』とは全く異なる、甘みではない、口の中に広がる、刺激。同じアイスだとは思えない、その風味。

「これはドクペ味です。モモイがよく飲んでいる飲み物が、そのままアイスになりました! アリスも大好きです!」

 王女は自慢げに言うけれど、これは果たして食べ物なのか、と思えるほどだった。やっと舌の感覚が戻ってくるのを覚え、私のアイスを舐めることで舌の感覚を取り戻す。

「…………」

 ふと隣を見ると、王女がにこにことした顔で私の方を見ていた。一瞬何を――と考えかけて、『食べあいっこです!』という王女の言葉が頭を過ぎった。

 ――ああ、そういうこと、ですか。

 おそるおそる、王女の方へとアイスを向けると、王女の笑顔がより深くなる。

 大きな口を開けて、一段目のバニラアイスを頬張る王女。緩んだ口元に、細くなった目。王女が心からリラックスしているのが見て取れた。

「ケイのアイスも、おいしいです」

 王女はそう言って、ほう、と満足げに息を吐いた。そしてにこにことした顔のまま、大きな口を開けて、一番上の――ドクペ味(げきぶつ)を囓り取る。王女の口角が上がるのが見えた。

「――――ふふ、ケイ、もう一口食べたいって顔してますね」

「いえ、結構です」

 私の視線を、そのような意味と取ったのか、王女は私の方を向いたかと思うと、再び私に手にしたアイスを向けてくれる。一番上にあるドクペ味は今も健在で、再びそれを舐めようものなら、また咳き込んでしまいそうで――丁重にお断りをする。

「食べたいときはいつでも言ってくださいね。二段目も三段目も、アリスが好きな味です」

「…………分かりました」

 そんなやりとりをして、再びお互いのアイスへと向き合う。

 アイスが口の中を通り過ぎ、甘味を摂取した、という信号が脳に伝わる。体の外では風が吹いて、私たちの髪や服の裾を揺らす。風の音に混じって、時折王女の美味しそうな声なき声が聞こえてくる。

 戦闘の音もなければ、回りからの殺意も敵意も、感じることはない。鉄の匂いも火薬の匂いも、硝煙の匂いも、もちろんすることはない。

 あまりにも、平和で、穏やかな時間が流れているのを自覚する。

 戦いもなければ、滅び行く世界もなく、いがみ合う存在も居なければ、世界を滅ぼす役割も存在しない――。

 あの時と、今の状況はまったく違う。

 あの時の王女は、もちろん私も、自身が果たすべき役割と、存在意義や生まれた意味との間で彷徨(さまよ)い、抗っていた。――なら、何もない今はどうなのだろう、と。純粋な疑問が湧いた。

「…………王女。今の貴女は、幸せ、ですか?」

 ……気がつけば、そんな問いを投げかけていた。

 アイスを舐め終えて、何もなくなったコーンを手に持っていた王女は、私の顔を見てから、それにざくりと噛みついた。ゆっくりと咀嚼した後で、うん、と一つ頷いて。

「はい、幸せです。ケイと一緒に、アイスを食べられていますから」

 幸せと言うには、あまりにも日常的すぎるその事象。それが幸せだと、王女は言う。

「アリスは――ケイと一緒に、こうやって、当たり前のことがしたいなって、ずっとずっと、思っていました」

 王女は顔を上げて、遠くを見ながら、言う。

「ケイとまた会ったらあれをしよう。これをしよう――。アリスは、ケイと一緒にやりたいことを、たくさんたくさん、考えていました。アイスを一緒に食べることは、その一つです。ケイとやりたいことが叶いました。だからアリスは、今、幸せです」

 にへ、と私に向けて笑みを浮かべて、王女は言う。

「……そう、ですか」

「はい。そうです」

 にこやかな笑みを浮かべた王女は。「付いてますよ」と、また、私の口元を指で拭った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ケイ、アイスはおいしかったですか?」

 王女は突然、そんなことを言う。三段分のアイスを溶ける前に食べ終え、王女に遅れること数分、手に残ったコーンも王女を見習って食べ終えた後のことだった。

 王女の言葉に、すぐさま反応ができなかった。甘味を摂取したことで、頭が少しだけ緩んでいるのを自覚する。

「え、ええ、おいしい、です。冷たくて、甘くて、……何と表現すればよいのでしょうか、新鮮な、気持ちです。――王女やゲーム開発部の皆が食べているのはこのようなものなのか、と、やっと、感じる事ができました」

 ふふ、と王女が小さく笑う。

「はい。ケイのその言葉が聞けて、アリスは嬉しいです」

「…………?」

「今、ケイが食べているアイスは、アリスたちが『ゲームで勝った方が買ってもらう』と言って、ゲーム開発部のみんなで食べるアイスです。それとまったく同じ味です。ケイにも、アリスたちが食べているアイスのおいしさを、知ってほしかったんです。ケイに、アイスがおいしいと言ってもらえて、アリスは嬉しいです」

 王女は目を細めてにっこりと笑みを見せたあと、安心したように息を吐く。

 

「だって――――アリスは、ケイのおかげで、モモイたちと過ごせてるんですから」

 

「――――――」

 突然の王女の言葉に、私はうまく言葉が返せなかった。私にできたことは、ぎょっとして、隣に視線を向けるだけで。

 隣を見ると、王女の視線は私にではなく、空に向けられていた。

 ――ケイのおかげで。

 王女が言ったことが、どこか引っかかる。それは、まるで――。

「あの日。舟の中でケイがしてくれたことを、アリス、知っています」

「…………え」

「ケイが、アリスを助けてくれたこと。ケイのおかげで、アリスが目を覚ましたときにアリスでいられたこと。そしてアリスが目を覚ましたときに、アリスの中にケイがいなかった訳。全部、知っています」

 私の視線を一身に受ける王女は、言い終えたあと私に視線を向けて、力無く笑う。

 ――ウトナピシュティムの箱舟の中で行われたことを、王女は、知っていると言う。

 王女を喪わせたくないという一心で、確かに、私は喪われるという『役目』を王女と替わった。

 でもその時には、王女は意識を失っていて、それを知る由は無いはずで。私の思いも、私の決意も、全て、私の中だけに眠らせておくべきもので――。

「だから、アリスは。ケイに、ごめんなさいを言わなければいけませんでした。……ふふ、これを言うのは、二回目ですね。一回目はケイと向き合わなかったことで、アリスはケイにごめんなさいをしました。そしてこれは、二回目です。――ケイ、ごめんなさい」

 王女はそう言って、私に深く深く、頭を下げる。

「………………」

 ――王女は、何を謝ることがあるのですか。それは、私が勝手にやったことで。貴女が謝る必要性は、何一つありません。

「ケイが、アリスと替わってくれて、助けてくれたから、アリスは、アリスでいられます。本当なら、ケイがモモイたちと過ごすはずだったのに、ゲーム開発部のみんなと、ゲームをする楽しさを、ゲームから得られる感動を、ゲームから得られる知識を、アリスがもらってしまっています」

 ――私に、謝らないでください。私は、貴女を守りたくて、私の意志で、王女と替わったんです。

「ドラゴンテスト、トールズ・オブ・フェイト、ファイナルファンタジア、テイルズ・サガ・クロニクル――人生の全てがつまっている、名作の数々をプレイする経験を、モモイたちと過ごす時間を、ケイの代わりに、アリスがもらってしまっています」

 ――私に、謝らないでください。貴女は悪くない。私は、王女が生きてさえいてくれていれば、それでよかったんです。

「モモイやミドリと、アイスを賭けてプレイするゲームの緊張感を、勝っても負けても笑顔でおいしいと言い合えるアイスのおいしさを、アリスが感じられているのは、ケイのおかげです。――だから、ケイ、ごめんなさい」

 ――私に、謝らないでください。王女が生きていることが、王女が元気で健やかにいることが、私の幸せなんです。

「ケイとここで会えて、やっと、言えました。いつか、言わなきゃいけないと思っていましたから。――このことも、ケイが起きたらやりたいことの一つです。これも今、叶いました」

 顔を上げた王女は、儚い笑みを、私に向けてくれる。

「おう、じょ…………」

 口から言葉が、出てこない。

 ずっと、王女の目で観測だけをしていたせいか、思考と発声器官とが、うまく繋がっていない。感情と体の反応が、うまく繋がっていない。

 何を言えばいいか分からない。どう言えばいいか分からない。どう王女に接したらいいか分からない――。

 私の中にあるはずの演算機能は、原因不明の動作不良を起こし思考がまとまらない。自分の意志で動くはずの手は、ぴくりとも動かせない。

 私の目は、私の方を見る王女を映すだけ。何も、声も、行動も起こせない私に、王女は。

「ケイに、ちゃんとごめんなさいを言えたら。アリス、次に言いたい事も、決めていました。――ケイ」

 王女はまっすぐに私を見たまま、言葉を句切って。そして。

 私の頭を、胸に、抱き寄せた。

「アリスは、ケイに、お返しをしたいです。ケイがアリスと替わってくれたおかげで、アリスはアリスでいられて、モモイたちや、ユウカやネル先輩や、大好きなゲームから得られる経験値を、たくさん、もらいました。ちょっとだけ、レベルも上がっています。……でも、その分、ケイには経験値が入っていません。ゲーム途中で加入するキャラクターみたいに、経験値がゼロの状態です」

 王女が言わんとすることは。

 王女が私の代わりに得た経験を、私にもしてほしい、と。そういうことで。

 そう思うと、王女のそれまでの行動の意味も繋がってくる。王女が、モモイからされたことを、今度は、私にしてあげるのだ、という王女の意志の元の行動であるならば、それも頷ける。

「だからアリスは、ケイと一緒に色んなことをしたいです。アリスが、モモイやミドリやユズと、ゲーム開発部の皆と遊んで得た経験値を、ケイにも、獲得して欲しいです」

 そして王女は、立ち上がって、私に視線を下ろす。丁度王女の頭と太陽が重なって、王女の姿に後光が差しているようにも見えた。

「だからケイ、これはアリスのわがままです。せっかく、ケイと一緒になれて嬉しいって思っている、お姉ちゃんのわがままです。――ケイ、アリスと一緒に、この世界で冒険してくれませんか?」

 王女は私に向けて、手を差し伸べる。言葉の途中には少々意味が分からない部分もあったけれど、大枠は理解した。

「――――」

 思えば私は、これまでは完全に受け身に回っていた。今が初めて、選択をする時だと悟る。王女の手を取るか、取らないかの、二つの選択肢。

 王女の言葉を理解した上で、私は答える。

「…………王女は、ずるいです」

「はい」

「そして王女はモモイに似て、わがままです」

「モモイには負けます」

 ――そう言う意味ではなく。

 これまでの話を聞いて、王女が私に向ける感情を聞いて。その上で判断を私に委ねるというのは、ヒマリ以上にずるいと思う。

 私がどれだけ王女を大事に想っているのか。それを王女は知っているのですかと、問いたくなる。

「私は、王女が大事です。何よりも、私にとっての最優先は、王女です」

「はい。その気持ちは嬉しいです。でもアリスも、ケイが大事です。最優先です」

「…………っ、真似しないでください」

「ふふ、偶然ですね」

 王女はころころと笑う。王女のペースに乗せられそうになる。

「私は王女をお守りしたい。そうずっと思っていました。今も、そう思っています。それが私の役割だと思っています」

「役割も大事です。ロールプレイングゲームですから。ここはゲームの世界です。ここでなら、ケイは何にだってなれます。勇者にだって、なることができます。ケイがなりたいのは、シールダーということですね?」

 ――概念的な話なのに、王女が言うと陳腐に感じてしまう気がして。私の覚悟が、弱まってしまう気がする。でも、この空気感が、王女だとも思う。

「…………ええ、もう、そういうことで結構です」

 私は、自ずから、王女の手を取る選択肢を選んだ。

「はい! それでは改めて」

 こほん、と王女はわざとらしく咳払いをし。

「パンパカパーン! アリスはケイとパーティを結成した!」

 そう、高らかに宣言する。

「ケイのその発言を同意と見なします。これからケイはアリスの妹です」

 ――つい先ほど、貴女は『パーティ』と仰いませんでした?

「それではケイ、早速レベリングと行きましょう! 大丈夫です、お姉ちゃんが付いています。ケイはお姉ちゃんに着いてきてください!」

 私が取っていた王女の手に力が入り、ベンチから引っ張り上げられる。

 そして王女は、私の手を引いて、歩き始めた。

「行きますよ、ケイ! モモイたちが来るまでにレベルを上げて、皆を驚かせましょう!」

 振り返った王女の眩しい笑顔は。

 確かに姉の――モモイやユウカの――面影があった、気がした。

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