ギターヒーロー、人理修復へと旅立つ   作:ヘル・レーベンシュタイン

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今回の話でも、挑戦してみた要素があります。


第四十五話

 

 メイブ消滅する前に、エジソンたちが率いる兵士達が突如大木の様に伸びた異形の存在に目を奪われていた。

 

「なんだ、ありゃ……」

 

 そう一人の兵士がつぶやいた直後、その兵士から発火音が聞こえた。

 

「え?」

 

 隣の兵士が音の元を見たら、そこには頭部のない死体が立っていたのだ。しかも、それで終わりではない。二人、三人……僅か数秒で自分以外の周囲の兵士たちが血の池に変わったのだ。

 

「ひ…….あ、助け」

 

 踵を返して逃げようとしたが、直後に首から感じる熱。意識が途切れる前に見えた、先の尖った鉄。それが背後からケルト兵が投擲した槍だと気付きがながらその男の意識は途切れた。

 

 

 複合魔神柱「二十八人の戦士(クラン・カラティン)」の出現により、ケルト軍の攻勢が激化。エジソンら英雄による懸命の撤退支援も虚しく、合衆国北部方面軍の2割を消失、事実上の潰走を始めた。

 

不毀の極槍(ドゥリンダナ)!!!」

鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)!!!」

 

 ヘクトールが投擲した壊れずの槍、そしてエリザベートが放った超音波が魔神柱を破壊する。

 

「やったわ!?」

 

 しかし破壊の直後に破損部分から枝が伸び、再生を始める。

 

「再生!?」

「アタシ達の力じゃ、倒しきれないってこと!?」

 

 魔神柱の目が煌めき、エリザベートの足元が爆破するもロビンが咄嗟に抱え直撃を避けた。しかし事態は好転しない。

 

「いや、どうすりゃいいんだよ!?」

「戦うのよ!

アタシ達が生きてる限り、コイツはアタシ達を狙う!そうやって兵士共(ブタども)の逃げる時間を稼ぐの!!」

「驚いた…お前さんが人間を守ろうなんて」

「サーヴァントだって変わろうとするの!それに!」

 

 エリザベートの記憶に浮かぶは、散っていった微笑む白き皇帝(ネロ)の顔だ。

 

「“宿敵(友達)”が守ろうとしたモノを守れずに“アイドル”なんて名乗れないわ!!」

「………しょうがないですな」

 

 そう誇らしく叫ぶ彼女の姿を見て、ロビンは呆れつつもどこか微笑ましく感じ……

 

「これも腐れ縁だ、オレも付き合いますよ」

 

 そう言いながら構えようとした、が……

 

「は?アンタの宝具は対人用じゃない、要らないわよ」

「え?」

「ですなぁ、罠も効かんでしょうし」

「ええ!?」

 

 エリザベート、だけでなくヘクトールにすらダメ出しされてしまう始末だった。しかし非情なお役御免ではなく……

 

「アンタは撤退の手助けに行ってくれ、ジェロニモが守りたかったものを守りませんと」

 

 そう、守るべきものを託されたのであった。

 

 

 

 

 

「た す け てぇ!!」

「くそぉぉぉ!!」

 

 ケルト兵の猛攻に、機械化兵が蹂躙されていく。エジソンとエレナはどうにか迎撃するものの被害はまるで止まらない。

 死んでいく、血が広がり生命が潰えていく。

 

(どうすればいい!?どうすればいいのだ!?

兵士は恐怖に侵されて戦える状態ではない!!魔神柱もいつまでも抑えられるものではない!!だと言うのになんも打開策が思い浮かばん!!)

「エジソン落ち着いて!」

「カルナ君、私は一体どうすれ……グォっ!!」

 

 背後からの奇襲でエジソンは激しく飛び、後方まで下がってしまう羽目となった。

 

「大統王閣下ご無事ですか!?」

「ぐ……」

(隊列の後方まで吹き飛ばされてしまった……早く戻らねば兵士達が……)

 

 そう思考を巡らせながら立ちあがろうとした刹那、彼の目に止まる光景があった。

 

「ヒッ……ヒッ……」

 心配しかけ寄る兵士の間の先、大人達に抱き抱えられ顔を青ざめながら泣き噦る少年の顔が。

 

(子供、それもMs.後藤よりも明らかに幼いこんな子供が戦場に……)

 

 刹那、裡から燃え上がる嚇怒。大統王と名乗りながら己の不甲斐なさに激怒と激情が爆発する。

 

(私が、巻き込んだのか!!!)

 

 これも理性一本だけで止めるなんて不可能だった。

 

「GAAAAAA!!!」

「ケルト兵の隊列に!?無茶はやめて!!」

 

 エジソンは攻撃を繰り返した、エレナの声すら届かないほどに。

 

(私のせいで彼らは戦う羽目になった!!ならば償わねばならぬのだ!!)

 

 その獅子の顔、目端から雫が浮かぶ。

 

(たとえ、この命を燃やし尽くそうとも!!!)

 

 だが、その混乱を断ち切るかの如く誰も予想しなかった爆破が発生した。

 

「爆発!?ケルト兵の進軍が止まったわ!!」

「やっぱ雑魚には効くんだよなぁ、オレの罠。」

「あなたは……」

「よっ、合流すんぜ」

 

 エレナの背後から、そんな皮肉を込めた様な言葉を口にしながらロビンが現れた。

 

「役立たずと言われましてね、それに…ジェロニモが守りたかったのは、国じゃなくて人でね。」

「___」

「オレ達が殿を務める、アンタら機械化歩兵は生身の連中を守りながら後退!できるよな!?」

「……ハ、イェッサー!聞いたな?後は彼らに任せよう!」

 

 兵士達はアーマー越しではあるが、顔を見合わせながら言葉を交える。

 

「ああ、英雄達に任せておけば大丈夫だ!俺たちは安心して……逃げ、れば……」

「?」

「……………違う」

「何……?」

 

 しかし、その動きを止めてそう呟いた。その奇妙な様子にロビンは眉を顰める。すると、一人の兵士が一歩前に出て語り始めた。

 

 

「聞いてほしい…‥オレは、重傷して入院している親友から、手紙が届いたんだ。それは『桃色の髪をした、奇妙な楽器を持つ少女と話してほしい』と……」

(それは!)

(カルデアのマスター、Ms.後藤!)

「だから俺は、昨日の晩にその子と会って話したんだ……」

 

 

 

 

 

決戦前夜、後藤ひとりがナイチンゲールとの語らいを終えて寝室に戻ろうとした時だった。

 

【待ってくれ】

【えっ】

【君が、俺の友達の言ってた子だな?桃色の髪と、奇妙な楽器を背負ってるって……】

【あ?え……】

 

 後藤ひとりは困惑しつつも記憶を探る。この人物はおそらくエジソンの率いる機械化歩兵の一員であり、自分の事を知ってる人物と繋がりがある。しかし、歩兵個人と直接会話した記憶はほぼないが……ふと、手足を失ってでも助けた人物を思い浮かべ、青ざめる……

 

【も、もしかして……あ、あの人の……】

【……ああ、君の認識通りだ。俺の友人は君を庇って重傷を負った。だが待ってくれ!別に復讐しようとかそんなんじゃない!頼まれたんだ、君と話してほしいと!】

【え?私、と……ですか?】

【………正直、こうして会うまで何を話そうか頭を悩ませてたけどね。だけど、ようやく定まった。】

 

 兵士は冷えた汗を流しつつ、躊躇いつつも、それでもとついに口を開けた。

 

【俺たちの国は、もしかして君達の国と戦争したのか?】

【あ……………】

 

 後藤ひとり、生まれは平成。戦争の経験があるのは彼女の祖母くらいのものであるが、学校教育でそうした話くらいは聞いたことある。

 例え、学校の成績が悪くとも日本とアメリカが戦争したという印象くらいはある。

 

 

【えっと………その………】

【……そうか、予感だったんだがな……俺は兵士だ、未来の戦争だろうと自国の勝利を望む。だけど、俺個人の言葉で言うから……すまない、俺の知らない未来とはいえそんなことが……】

【あ、いえいえそんな、私世代じゃないし!多分、お婆ちゃんより前の世代のことですから!】

【……それでも君は、この国のために戦ってくれるんだな】

 

 そう言いつつ、彼は彼女の背負ってるギターを見る。

 

【確か大統王の話だと、その楽器は俺たちの国が作ったんだよな?】

【あ、はい……確かギターの原型はアメリカから出来たはずです。】

【何故だ………どんな結末になったか知らないが、俺たちの国は、アメリカは君たちに牙を剥いた。なら、そんなものなんて目にも向ける必要なんてないだろうに……アメリカを見捨てていい、いや見捨てる権利だってある。俺たちの子孫が、君の先祖に苦痛を与えたのかも知れないのだから。】

 

 仮にも兵士らしさをかなぐり捨てた言葉だが、同時に友人の救った少女がどんな想いで戦っているのか気になったから出た言葉だろう。

 すると、後藤ひとりはギターを抱えながら呟く。

 

【……さっきも言ったように、私は世代じゃないのでアメリカと日本が戦争したという事実しかわからないです。だけど、もしかしたら……例え、戦争を体験したとしても、もしも生き残れたらまたギターに手を伸ばしたと思います。】

【………】

【私、何をしてもダメダメだったけど、ギターだけは諦められなくて、とても大好きだったから……あ、もちろん戦争に生き残れたらなんですかど……えへへ】

 

 その言葉を聞いて、兵士は涙を流した。その様子を見て後藤ひとりは戸惑い声にならぬ悲鳴をあげれば、ギターを自分の腹へと向けた。

 

【ご、ごごごごめんなさい!あははは、ば、ばかな私の命をもって償いを!】

 

ギターで切腹しようとする、直後兵士は止めた。

 

【ま、待ってくれ!そんな血迷った真似は辞めてくれ!これは、嬉しくて泣いたんだ!】

【え、なんで……】

 

 兵士は涙を拭い、そして笑顔を浮かべながら言った。

 

【……ありがとう、君がいてくれたおかげで戦う覚悟が固まったんだ】

【……?】

 

 そう言い残して兵士は踵を返し、後藤ひとりを別れて夜明けを迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、兵士はその過去を思い出しながら叫んだ。この地に自分自身を刻み、うちに抱いた誇りを燃やしながら。

 

「あの子は、世代じゃないとしてもアメリカの作り上げたもので笑顔になってくれていた。なら、この国で生まれた俺が、都合良く尻尾を巻いて逃げてる場合じゃないだろう!?

 

 

俺達は怒らなければならなかった!アメリカが滅ぼうとするこの理不尽に、恐怖に!

 

アンタ達英霊が、この国を滅ぼそうとする怪物と戦う方が、この戦争に勝てるかもしれないんだろ!?

 

俺たちがこの瞬間に死んで、或いは誰かが生き延びてこの国に、この大地に次が訪れて……

 

 

“あの子”にギターを届けれられる“未来”があるかもしれないんだろう!?

 

俺の友達が体を失いながらも救ったあの子が、笑顔を咲かせれるんだろう!?

 

例え辛い戦争が訪れて、最悪な悲劇が現れようとも、俺は未来のある方を選びたい!

 

例え生きる時代、立場が違おうとも、俺もあの子も求めてるのは同じだ、同じだったんだ!」

 

 生まれた国も、性別も、人種も、果てには生きる時代も異なれど、変わらぬ祈り(願い)はあるのだと。

 

「善き(未来)に行きたい、それだけのことだったんだ!」

 

 彼の魂の叫びに、ロビン、エレナ、エジソン……そして他の兵士たちも言葉を失っていた。

 だが、兵士達は顔を見合わせてそして意を決して口を開けた。

 

「ミスター・プレジデント(エジソン)。初めて貴方の命に背きます。我々は、我々だけでこの撤退戦を完遂してみせます。」

「君たち……」

「____」

 

 すると今度は、エレナが目を閉じて意を決して口を開けた。

 

「先に行くわエジソン、私も私のできる事をします。」

「エレナ君!!」

 

 彼女は宙を駆けながら、展開した本から発する光線でケルト兵達を駆逐していく。

 そして思い返す、エジソンと自分の関係を。

 

 互いに友人関係であり、オカルティストと発明家。あまりにかけ離れているのに友情が生まれた。

 彼は隠秘(オカルト)を信じながらも隠秘(オカルト)に縋らなかった。未知を未知と認めた上で、未知の先にある未来へと手伸ばす。

 

「!!」

 

 魔神柱の眼光が煌めき、その脅威がエレナへと向く。

 

「………立って戦うことの、なんと難しいことか。」

 

 しかしその危機を押し除けた。そう、彼女は信じている。彼は落ち込んでも必ず立ち上がる、そう言う人物だと。

 なぜなら彼は、彼の一番有名な言葉通りこの大地で誰よりも、諦めの悪い男なのだから。

 

「エジソン……」

「それを彼らに、偉大なるアメリカ人の先達に教えられたよ。」

 

 その瞳、顔つきに最早混乱や迷いはなかった。

 

「チーフ・グリーン、行ってください。我々は……」

「いや、守られたって託されたんですわ。この大地に生まれた男達に。」

 

 そして同時に、兵士達がロビンにそう声かけるが彼はマントを外しながら応える。

 

「命を、いや戦う意志を……なんで、一緒に戦いましょうや、兵隊さん」

 

 獲物を構えながら、彼は決意する。

 

「アーチャー・ロビンフッド、騎士見習い……参る!」

 

 兵士、サーヴァントたちの奮起により、士気が向上し少しずつ流れが変わりつつあった。更に……

 

「2人共戻ってきたか……いや、正直ありがたいんですが」

 

 ヘクトールがそう呟き、視線の先には迸る電流が煌めいていた。

 

「こいつはちょっと、凄すぎじゃないですか!?」

 

 それは二十八人の戦士(クラン・カラティン)を包めるほどの電気の檻が展開されており、流石のヘクトールもそう叫ばざるを得ないほどの光景だった。

 同時に、エレナが呟く。

 

「……凄いわね、電流の檻で魔神柱を閉じ込める。エジソン、いつの間にこんな発め」

「チッ!」

(舌打ち?)

「全く忌々しい、電力の同調を完全に丸投げ。私がこの場にいなければ、少しでも同調に失敗していれば、辺り一面、焦土と化していたところだ。」

 

 電流の檻、その上空から人影が現れた。それを見てエジソンは不愉快さを感じさせるほどに顔を歪めていた。

 

「そして何よりも腹正しいのは、せっかくの私の見せ場……それをぶった斬りやがったな!!この異常者がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「ハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 エジソンの怒りの叫びを、まるで肯定するように高笑いしながらニコラ・テスラが姿を現した。

 

「主役ハ遅れて来るものだ、そしてニコラ・テスラの“電気檻”ならば!

このような怪物、抑えることなどと容易いもの!」

 

 そしてテスラが手を翳し

 

「無論、凡骨との共同作業など吐き気がするが!」

 

 同じくエジソンもまた手をかざし

 

「こちらこそ、だが!!」

 

 同時に叫んだ

 

ギターヒーロー(後藤ひとり)には借りがある!!!」

(綺麗に声が揃った……)

 

 そんな奇妙な共鳴を、エレナは呆れつつもそう思った。エジソンは鼻を鳴らしながら言う。

 

「……フン、だがわかってるぞ。この出力では長くは保たん、兵士たちを死なせぬためにはコイツを倒すよりない!」

「この天才に用意がないとでも?」

「何!?」

 

 ニコラ・テスラが不敵に笑いながら、両手を広げ語り始めた。

 

「全く、妙な男に召喚されたと思えば、古き遺物、その担い手の手伝いとはな。業腹だが天才にしかできぬと言うなら、やってみせよう!」

 

 直後、暗雲から雷鳴が轟き始める。

 

「多くの戦いがあった。

 

多くの死があった、多くの愛、多くの悲劇があった。

その果てに今、人々が自らの意思で戦うならば

 

英雄の時代がここに終わると、断言して見せよう……

 

だが、禍つなる者が!大いなる理不尽が!なお人々の意志を呑み込むのならば!!」

 

 雷鳴が轟き稲妻が落ちれば、稲妻が階段の形を成した。

 

「我が“大雷電階段(ベルクナス・ラダー)”が大峡谷より彼の者を呼ぼう!!」

 

 そして階段の登頂、暗雲を裂くかのように煌めきが放ち始めた。

 

「雷霆の子! 戦争を終わらせる者! “輝く王冠(キリーティー)”!

 

さぁ……“英雄”が来るぞ!!!」

 

 その叫びの直後、天から堕ちたものが電気檻に落ち衝撃を撒き散らし煙を広げた。

 

(何故私の名を呼んだ? 何故またお前は最後に微笑んだ?)

 

 その煙を祓い現れたのは……

 

(私にはまだわからない、それでも……)

 

 失ったはずの腕が戻り、万全な状態で再び姿を現したアルジュナだった。

 

 

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