マクスウェル著作
『ティエラとテスラ 愛の反逆』の版権が消えたので投稿を開始します!

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俺は書くぞ!遅くなるけどな!


プロローグ

 ───ティエラとテスラの2人の関係の始まりはテスラの一目惚れからだった。

 国でも名の知れた賢者の息子として生まれたテスラであったが、残念ながら魔法の才能は引継いでいなかった。家族や使用人に賢者の後継者として期待され育ったテスラであったが、神によって使える魔法を教えて貰いそれが使えない事に気付いた時の絶望を彼は忘れていない。

 優れた魔法使いになる為に必要な魔力がテスラには足りていなかった。それからだろう。父である賢者に彼が見放されたのは。

 賢者はテスラに失望したらしい。期待していたのに裏切られた。時間の無駄だった。そう言って、自分の前から立ち去る賢者にテスラは何も言えなかった。

 それまでは研究をしながら時間を作ってはテスラを可愛がった賢者であったが、それ以降はずっと部屋に篭もり家族の前にすら姿を滅多に現さなくなった。

 不愉快ではあったが、嫌っていた父に出会わなくて済むのは彼にとっては好都合だった。

 

 『このまま部屋に篭ってずっと研究でもしていろ。俺は俺で自分のやりたい事をする』

 

 魔法の才能がなかった為彼は魔法の研究は出来ない。だが代わりに彼は頭が良かった。賢者が研究に没頭して家の事を疎かにしていたが、代わりに彼が賢者に変わって当主として仕事を始めた。

 最初こそは慣れない事ばかりで失敗もあったが、次第に仕事にも慣れてきた。

 彼が14歳の時に部屋に篭もりっぱなしの賢者を心配して家族が奴隷を買ったが、賢者に出来るだけ関わりたくなかった彼は関心を示さなかった。

 彼が没頭したのは領地を豊かにする事だった。魔法は使えない。だが、代わりに人を笑顔にすることは出来る。

 魔法を絶対視する者が多く、それの重要性も分かっている。だが、治める領地の領民を無視してまで研究をするのは間違っているとテスラは賢者を軽蔑していた。

 2人の溝はどこまでも深かった。

 

 

 

 4年が経過した頃、彼にとっては不愉快な話が耳に入ってきた。嫌いな父である賢者と奴隷が魔法について語り合っていたというものだ。

 奴隷は魔族の女らしい。テスラと同じで魔法が使えない者だ。それなのに魔法使いとして名の知れた父と魔法について語り合っていた?

 込み上げてきたのは怒りか? それとも嫉妬か? ただただ不愉快だった。父である賢者にも、その奴隷の女にも会うことはないだろう。

 そこにあったのは拒絶だ。二度と父の顔を見たくない。その思いで彼は別邸を建て、父との関わりを絶った。

 領地を豊かにする事が楽しみだった。領地を自分の足で歩き何が足りていないか、何が必要かを探っては改善する日々を続けていた。

 父が病に倒れたと家族から連絡がきたのはそれから7年後の事だ。テスラも既に25歳。研究しか脳がない賢者に代わって当主の仕事をしてきたつもりだった。

 

 

 

 彼にとっては不愉快なのは今の今まで頑張ってきたテスラの功績を誰も見ようとしなかった事だ。賢者が倒れた事でテスラは漸く次期当主として認められた。

 

 『次期当主? 今までその男の代わりに領地を統治してきたのは俺なのに?』

 

 それほどまでに魔法の有無は大きかったが、それだけで納得出来るほど人間は出来ていない。怒りを通り越して殺意すら覚えた。

 ベッドに横になって弱っていく賢者を見て早く死ねとテスラは願った程だ。賢者が死ねば次期当主ではなく、正真正銘の当主だ。

 誰もが嫌でも認めるだろうと。

 

 

 

 嫌いな父を見舞う事すら拒否したいのに、その父に命令された時は本当に殺してやろうかとテスラは思った。

 

『お前ではない!お前のようなボンクラに用はない。ティエラをここに呼んでこい。もう直ぐ魔法の答えを見つけられそうなのだ!』

 

 目が血走っていた。まるで正気ではない。まるで魔法に取り憑かれているようだ。ここまでくると哀れにすら思える。

 こんな男が俺の父親か。どうせは先は長くないだろう。ならば望みを叶えてやろうと父の言葉に従いティエラを探しに行くことにした。

 名前だけは知っていた。魔法が使えない癖に賢者と魔法について語り合う不愉快な魔族の女だ。顔も見たことはないが、それだけでテスラはその女を毛嫌いしていた。

 賢者が死んだらその女も殺してやろうか? 歪んだ嫉妬は殺意に変わろうとしていた。 

 

『お前がティエラか。父がお前に用があるそうだ』

 

 

 

 声を掛けて振り向いた彼女を見た時、テスラは心臓を鷲掴みにされたような感覚を覚えた。ドクンっと強く胸が鼓動した。

 

『畏まりましたご主人様』

 

 

 

 耳を通る美しい声をずっと聞いていたいと思った。同じ種族ではない奴隷の女だ。大嫌いな父と大嫌いな魔法について語り合う不愉快な、不愉快で仕方ない魔族の女だ。

 そんなテスラの思いすら全て消してしまう程に彼女は美しかった。見惚れてしまった。初めて人を見て美しいと感じた。

 その赤い瞳で自分の事だけを見つめて欲しいと、らしくもない欲が湧いた時にテスラは認識した。自分はこの女に惚れてしまったのだと。

 

 

 

 賢者の息子───『暗愚の暴君』と呼ばれたテスラ・スレイプニルはこの時初めて運命の相手と出会った。

 その相手は自分が嫌って憎んでいた筈の魔族の女。奴隷の女と次期当主。

 彼にとっては最愛の妻となる魔族の女性、ティエラ・デュランダルとの出逢いはなんて事はない主従の会話から始まった。 

 

 

彼は一目惚れした─つまるところティエラにとっては『ただ仕えるべき主』としか思われなかった彼は─ティエラ・デュランダルについて調べ始めた。買われた過去。自身の父が魔法の真理について聞き始める過程。現代で言うパーソナルデータ。その全てを集めようとしたが、結論から言えばそれはほぼ不可能だった。というより、そこまで深掘りするほどの事情はなかった。

奴隷商人モウケガ・ナイヨが初の奴隷を増殖させる酷く人道にもとる行動をした時に産んだ母親と父親の名前を使っただけ。彼らに話を聞こうにももう既に貴族によって痛めつけられて殺されていた。

ティエラは当初はテスラが思っていた通りただの生活の細々とした行動をやっているだけの奴隷であった。だが、年齢の割に聡明であった─もしくは一度死んでから蘇ったかのような知識の求め方で─賢者の書斎を読み漁り、それによって魔法の知識を蒐集していた。それを賢者に見られ、しかし彼は研究のパートナーを求めていた。

結果として家族にも頼れなかった賢者である愚者は最も身近にいた存在の奴隷を使った。幸いにも真実を知っている存在は愚者しかいなかった為、誰かが見たとしても単なる噂話として捉えられ─もしかすると指摘しても利益がないからなのか─最後のテスラが聞いたときのみ、ティエラと会った時しかそれは確信しなかった。

ここまでのことを一息に話し終えた秘書は、余りにも冷えた目線をテスラに向けてきた。最後に秘書は、こう言い放った。

 

『なぜ道具の過去を知る必要があるのでしょうか?』

 

テスラは答えることもできず、ただ頭を抱えながら執務室に居座った。彼の目には今正にパートナーとしての仕事を全うしているであろう未来の妻にしたい麗しい少女の幻と、ただ無機質に置かれた書類の現実だけが写っていた。

問題は、山積みである。




本編まるまる使ってる馬鹿がここにいるみたいですよ(申し訳ありません)

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