10ヶ月ぶりってま?
お久しぶりです。エタってましたが、気が向いたので投稿します。
相変わらずネタ切れ中です。最近は病院への定期通院も日常化していて、健康の有り難みを思い知ってます。
余計な前置きはさておき、本編をどうぞ。
これはシドが召喚された翌日、桜は学校へ行き、家にはシドが一人残された時系列の物語である。
「ふぅ、仕事で朝帰りとはな──」
数日ぶりに帰宅した雁夜の視界にはかつての相棒、自らの願いを叶えし英雄、そして自らを救い出してくれた最強のサーヴァントが映った。
10年ぶりの再開であった。桜がシドを呼び出すことは分かっていた。
故にここ数日は、仕事を口実に家を空けていた。聖杯戦争の邪魔をしないよう、極力関わらないためだ。
仕事の書類やら日用品を取りに戻ったタイミングでの邂逅に雁夜は思わず笑みが溢れた。
「久しぶりだなバーサーカー! また会えて素直に嬉しいよ!」
「あぁマスター。うん久しぶり」
「いや今のマスターは桜ちゃんだろ……?」
「まぁでも僕にとってはマスターはマスターだし」
「バーサーカー……」
「あ、ちなみに今はライダーね。そうだマスター。何処かに空き家とか無い?出来れば拠点にしても問題ないくらいの広さが欲しいんだけど」
「空き家か……間桐で所有してる物件の中にあるはずだから案内ならできるが……一体何をする気なんだ?」
「まあ着いてからのお楽しみってことで」
シャドウに言われるがまま雁夜は間桐の所有している空き家へと案内する。
冬木の御三家である間桐だが、表の顔として冬木市の地主の側面を持つ。元々は霊地を他の魔術師に貸し、その土地収入で生計を立てていた。しかし臓硯亡き今、その土地の多くは管理が行き届かないという理由から手放している。現在はそれらの土地を完全に売り払らい、そこで得た金を元手に冬木市内の建物を幾つか抑え、その所場代で生計を立てている。
これらの仕事はほとんどを雁夜が務めている。フリーのルポライターをしていた頃からしたら、とんだ出世だと内心で雁夜は自虐する。
そうこうしていると件の建物に到着する。冬木市内の中でも少し入り組んだ場所にある隠れ家的な家だ。
「──へぇ、中々良い家だねマスター。センスを感じるよ」
「それは嬉しいんだが……本当にこんな場所で何をする気だ? 秘密基地でも作る気か。」
「お、流石だね。うんその通りだよ」
雁夜は思わず苦笑いを浮かべる。いや秘密基地って何だ、と。そんなの少年の時代に終わらせた夢では無いかと問いたかったが、バーサーカーの行動に無駄は無いと信じて止まない雁夜は黙って事態を見守ることにした。
「──さて始めようか」
シャドウは静かにそう呟くと自身の魔力を練り上げていく。魔力操作においては完璧を自負するシャドウの魔力は一片の澱みも無い。美しさすらあるそれはかつて雁夜が目撃した切り札、即ち宝具の輝きに近しかった。
「かつて忘れ去られた者たち。
かつて、その存在を抹消された者たち。
邪悪なる呪いは消えども、恨みは消えず、怨讐は絶えず。
陰に潜み、陰を狩る者たちの慟哭を束ねるは、陰の実力者にして過去を招き入れる者。
ここは我らが過ごした夢想の地。
ここは我らが戦った終焉の地。
終わりは来ようと、始まりはここに。
太陽が沈むのならば、月が世界を照らし続けよう。
大きな閃光が弾け、中心となっていた場所に人影が現れた。
その数は7人。光の拡散が収まり視界が開けたところで、ようやくその7人の姿を拝むことができた。そして雁夜は腰を抜かした。
───絶世の美女が7人も現れたのだから
「私たちを呼べる人なんて一人しか思い付かないわ。ねぇそうでしょう? シャドウ」
──────────
雁夜は腰を抜かしたように地面に座り込んだ。シャドウが詠唱を始めたかと思えば、その先に待っていたのは、美女が7人という結末。お前そういう店でも始めるのかという下世話な指摘を仕舞い込んだのは正しい判断だろう。
「久しぶりだね。皆」
「えぇ本当に久しぶり。また、貴方に逢えたことを感謝すべきかもね」
「あぁ……!主様!またこのときが巡って来ようとは……!ガンマは感動です……!」
「主様の鋭い眼差し、慈愛に溢れたお言葉……! ベータ、今日ほど感激した日はありません……!」
「ボスの匂いなのです!ボスとまた遊べるのです!」
「あぁ主様! イプシロンはこの瞬間を待ち侘びておりました!」
「ま、主ならこれくらい当然だよね。──ただいま、そしておかえり」
「マスターとの再会、完成する関係、素晴らしい……」
「待ちなさい皆。シャドウが埋もれてるわ」
7人の中で唯一シャドウをそのままの敬称で呼ぶブロンドの髪を靡かせる美少女、名をアルファ。彼女の静止によってようやく他の美女たちも引き離れされた。
「それで? 彼は一体何者何かしら?」
美女たちの視線が倒れている雁夜に集中する。普通なら羨ましい案件だが、彼女らの目が自身をあまり歓迎していないことは雁夜にも分かる。身体中に穴が空きそうなくらいに見つめられて、嬉しくないことなんてあるのかと雁夜は冷や汗を流す。
「あぁこの人は僕のマスター、いやだった人、で良いのかなぁ今は」
「──へぇ、そう」
アルファ、ブロンドの長い髪が美しい女の視線が更に厳しくなった気がする。色々な意味で心臓に悪い。
「まあでも今はマスターでは無いんだけど……まぁ良いや、マスターにもちょっと協力して貰いたいんだよね」
「きょ、協力……?」
「うん、彼女たちのマスターになって欲しいんだよね」
雁夜は再び腰を抜かした。正直な話をするなら冗談ではない。
今回の聖杯戦争に関わる気は今のところ全くない。
それも召喚されたということは、彼女たちはサーヴァント。それも7騎という数のマスターは荷が重い。何より彼女たちがシャドウに向ける目は主従などを超えたナニカだ。桜のこれまでの経緯やらを考えれば自らのしていることは非常にマズイ、問題しかない。背信にも等しいだろう。
「マスターといっても魔力供給を分担するだけだから。ルール違反はしてないよ? まあ違反してたからって何がってどうって訳じゃないけどさ」
サーヴァントの魔力供給を分担する戦法は10年前の聖杯戦争でも使われている。但し稀代の天才、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトの術式による完璧な分担術込みの話である。
そもそもとして、サーヴァントがサーヴァントが呼び出すという根本的なルール違反については触れないのがシャドウでありシドである。
「アルファ、手筈通りに」
「分かったわ、シャドウ」
こうして契約を交わされた雁夜の運命は如何に。尚、美人の群れにマスター呼びされるのは悪くない気分ではある雁夜であった。
──────────
士郎と凛は士郎の自宅へと帰還した。士郎は「ほんとに着いてくる気か」と問うが、凛の返答は変わらない。「女性を怒らせたら時が経つのをひたすら待て」という養父の役に立たないと思っていた教訓に初めて理解と納得を示したくなった。
「へぇここが衛宮くん家かぁ。魔術師の工房にしては害意がほとんど無いわね。何というか温かみがあるというか……」
「──まあ色々あるんだよ」
第4次聖杯戦争が終結した後に衛宮切嗣が第二の拠点として用意していた廃屋を改築したのが始まりである。魔術師が用意した隠れ家ではあるが、切嗣が魔術世界と袂を分かって久しい現状では、工房としてはそこまで機能していない。
最近では少し珍しくなった引き戸を開けると足音と共に出迎えられる。
「お帰りなさい士郎さ──」
舞弥の言葉が不自然な場所で止まった。それは士郎の後ろに居た凛の存在に気付いたからだ。義息子が女子を連れてきた、その意味が分からないほど今の久宇舞弥は空っぽじゃない。
かつては外側だけが存在し、空っぽな器として機能していただけだったが、10年の月日は人の中身を満たすには十分な時間だ。
とはいえ義息子が聖杯戦争に参加している事実を知る舞弥からすれば、これが単に女の子を家に連れ込んだだけでは無いことは理解している。だからこそ返答に少し時間を要した。それが無言の時間として気まずさを生んでいるのだが……。
「おや、そちらの方は?」
「あぁ、遠坂とは一時休戦だ。色々と答えなきゃいけないこともあって、その……せがまれて連れてきた」
本意で連れてきたんじゃない、という義息子の目配せを受け取る。
「そうですか。遠坂の息女を拐かすとは士郎さんも手が早い」
「ぶふぅ!」
士郎は思わず噴き出す。養母の唐突な際どい発言に面を食らった。仮に飲み物を口に含んでいたなら全て吐き出しているという謎の自信がある。
「ではお二人でごゆっくりと」
僅かに微笑みを浮かべて養母は立ち去っていく。違うからなっ!という抗議も通用しない。
居た堪れない空気のまま、2人は居間へと上がっていったのだった。
次回投稿は未定です。