サムライガールの幼馴染みは王様を目指す   作:ボルメテウスさん

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ギャバン集結 case3

銅色の残光が、遠ざかっていく。

 

「キング、私は北東の異常反応へ向かう」

 

アーマイゼの声が通信に響いた。小さな光が瓦礫の合間を縫って飛び去り、やがて見えなくなる。

 

「了解。俺は憐慈と合流する」

 

「健闘を祈る」

 

通信が切れた。俺は赤黒い空の下、崩れた地下街から地上へ這い出る。辺りは廃墟と化した都市だ。ビルの残骸が無秩序に積み重なり、道路は陥没し、そこかしこから煙が上がっている。そして、無数の生命反応が、徐々に消えていっているのをトリガーが捉えていた。

 

「これは……」

 

背後から、何かが迫っている。いや、すでにそこにいた。

 

俺の進路上の空間が、黒く裂けた。

 

「やあ」

 

その声には聞き覚えが、いや、そんなはずはない。だが、俺の知っている声だ。

 

「キング、と呼ばれているんだって?」

 

裂け目から現れたのは、初老の男だった。銀の混じる髪、シワの刻まれた顔、だがその目だけは異様に若く、悪戯好きの子供のように輝いている。背中には漆黒の翼。そして全身から滲み出る魔力が、周囲の瓦礫を腐らせていく。

 

「誰だ、お前は」

 

そうしながら、真っ直ぐと構える。

 

「リゼヴィム・リヴァン・ルシファーだよぉ、よろしくねぇ、ギャバン君」

 

それと共に、その手には何やら入れ墨があるが。

 

リゼヴィムは穏やかな笑みを崩さない。表情はどこまでも友好的だ。だが、その足元では瓦礫が腐り、残存していたエモルギアの粒子が黒く変質して消えていく。

 

「アザ・ゾルスの力、使わせてもらってるんだ。おじいちゃんとしては、孫が懐いてくれなくて寂しいからねぇ。こうでもしないと若い子たちは相手にしてくれない」

 

「ヴァーリの祖父が、何の用だ」

 

「用? そんな堅苦しいもんじゃないよ。ただね」

 

リゼヴィムが一歩踏み出す。それだけで、周囲の生命反応が三つ、四つと消えた。背後だ。まだ生きている人間がいる。だが、リゼヴィムが動くたびに、その反応が消えていく。

 

「君がね、ちょっと邪魔なんだよ。せっかく私が作ろうとしてる新秩序に、君は入らない」

 

新秩序。クリフォトの首魁が嘯くには、あまりにも悪辣な響きだ。

 

「君たち宇宙刑事は、秩序を守るのが仕事なんだろう?」

 

「知るか」

 

俺はギャバリオン・トリガーを抜いた。

 

「お前が守ろうとしてるもんは、どう見ても秩序じゃねえ」

 

「手厳しいなあ」

 

俺は返事代わりに引き金を引いた。光弾がリゼヴィムの胸元へ飛ぶ。

 

「だから、君は面白い」

 

リゼヴィムは片手で光弾を握り潰した。神器ではない力だ。ギャバリオンのエネルギーを、素手で。

 

「でもね」

 

黒い衝撃波が、リゼヴィムの周囲から全方位に放たれた。俺はとっさに黒金レールを展開し、身体を横へ逃がす。さっきまでいた場所が腐食し、地面が溶け落ちる。

 

「退屈されると困るんだ」

 

「上等だ」

 

俺はギャバリオンブレードを引き抜き、黒金レールを蹴って加速した。赤黒い空の下、リゼヴィムの背後でネガだまりの残滓が吸収され、巨大な王冠のような影を形作っていく。あれを完成させるつもりか。

 

「お前は俺が止める」

 

「いいねえ、そういう真っ直ぐな目。壊し甲斐があるよ」

 

俺は間合いを詰め、ブレードを振り下ろした。リゼヴィムは笑みを浮かべたまま、黒い魔力を纏った腕で受け止める。衝撃が廃墟に響き、瓦礫がさらに崩れ落ちた。

 

さて、読者諸君もご承知のとおり、唯我太郎という男は、怒りに任せて剣を振るうような戦士ではない。彼が剣を握るのは、止むに止まれぬ状況に直面した時のみ。まるで熟練した棋士が盤面を見据えるように、彼はまず敵の性質を見極め、己のなすべき一手を選ぶのである。

 

赤黒い空の下、崩壊した都市の廃墟にて、太郎はリゼヴィム・リヴァン・ルシファーと対峙していた。剣と魔力の応酬は、まさに激流のごとく続き、互いに一歩も引かぬ死闘が繰り広げられていた。

 

「いいかね、キング君」

 

リゼヴィムは、まるで日曜日の午後に茶でも飲むかのような気安さで語りかけた。その背後では、アザ・ゾルスの力が渦巻き、巨大な黒き玉座と、それを抱擁するかのような漆黒の翼が魔力として立ち昇っている。

 

「私が目指すのはね、唯一絶対の大魔王による世界なのだよ。神も悪魔も、ましてや君たち宇宙警察のようなお節介焼きも不要。私一人が全てを統べる、完全なる秩序の世界だ」

 

黒い魔力が脈動するたび、廃墟はさらに腐敗し、空には不気味な程の静寂が支配していく。

 

「それをね、私はユートピアと呼んでいるんだ」

 

「ユートピア、だと?」

 

太郎の赤き装甲に、鋭い発光パターンが走った。怒りを露わにしたような光だが、暴走ではない。制御された輝きだ。彼の意志で、彼の行く先を照らす光である。

 

「笑わせるな。お前の言うその理想は、ただの独房だ」

 

「独房? 酷い言い草だなあ」

 

「鍵を握るお前一人だけが外に立って、中の奴らは全員檻の中だ。それのどこがユートピアなんだよ」

 

太郎は冷ややかに言い放った。ロキや英雄派といったこれまでの敵とは違う。この悪魔は、他者の意思そのものを消し去り、自らの愉しみのために世界を歪めようとしている。その本質的な悪意を、太郎は肌で感じ取っていた。だからこそ、怒りに飲まれることはない。ただ、目の前の悪魔を止めるための手順だけを、冷静に組み立てるのみ。

 

「退屈しないねぇ、君は!」

 

リゼヴィムが両手を広げると、都市全体が黒いドーム状の魔力に覆われた。遠方に残っていたネガだまりの残滓さえも引き寄せられ、巨大な影となって空に張り付いていく。圧倒的な絶望の空間。その中央で、太郎の足元には一本だけ黒金のレールが残されていた。まるで、この暗闇の中で唯一彼が進むべき道を示すかのように。

 

「さあ、新秩序の完成だ!」

 

リゼヴィムの号令と共に、無数の黒槍と魔力波が同時に放たれた。それはまさに、天地を覆う黒い暴風雨。避ける場所などどこにもない。

 

「知るかよ!」

 

太郎は叫び、黒金のレールを細かく切り替えた。まるで空中に幾何学模様を描くかのように軌道を変え、槍の雨を縫うように駆け抜ける。トリガーから放たれる射撃が黒槍を砕き、ブレードの一閃が魔力波を切り裂く。赤い装甲と黒金の軌道は、暗闇の中で細く鋭い残像を残した。

 

そしてついに、嵐の中を抜けた一筋の光が、リゼヴィムの胸元へと踏み込む。

 

「ユートピアを名乗るなら!」

 

太郎はギャバリオンブレードを振り上げた。複数ヒーローの意志を束ねた赤き刃が、暗闇を灼き尽くす輝きを放つ。

 

「まず他人の首輪を外してから言え!!」

 

刃が振り抜かれた。

 

果たしてこの一撃は大魔王に届くのか。そして太郎はこの絶望のドームを打ち破ることができるのか。全ては次章にて明らかになるであろう。

次回の王は

  • 妖怪王
  • 機械王
  • 怪獣王
  • 幻想王
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