サムライガールの幼馴染みは王様を目指す 作:ボルメテウスさん
「さて、と」
俺は立ち上がり、ギャバリオン・トリガーを握り直した。膝の震えはもう止まっている。隣には四人のギャバン。いや、アーマイゼを含めれば五人だ。心強いにもほどがある。
「リゼヴィム」
俺は正面の悪魔を見据えて言った。
「お前の言う神器無効化ってやつ、確かに厄介だ。だがな」
「だが?」
リゼヴィムがわずかに眉を上げる。
「こいつらは神器じゃねえ。全員、俺と同じ宇宙刑事だ」
「ふん、数が増えたところで何が変わる」
リゼヴィムが両手を広げ、黒い魔力を膨張させる。アザ・ゾルスの力が唸りを上げ、周囲の瓦礫が浮かび上がった。
「私の力は神器だけじゃない。このアザ・ゾルスの力があれば、貴様ら全員まとめて――」
「喋りすぎだ、悪魔」
憐慈の声が遮った。いや、声よりも先に、彼の身体は動いていた。
深紅の装甲が閃光を放ち、インフィニティがリゼヴィムの背後に回り込む。光子エネルギーを纏ったブレードが、リゼヴィムの右腕を斬り裂いた。
「ぐっ……!?」
リゼヴィムが振り返るより早く、今度は銀色の光が正面から踏み込む。
「参る」
ブシドーの二刀が、無駄のない軌道でリゼヴィムの左腕を斬り上げた。防御の隙を与えない。一撃が決まれば、即座に次の刃が迫る。
「まだまだ!」
金色の装甲が舞う。ルミナスがリゼヴィムの頭上から降下し、片手剣を振り下ろす。リゼヴィムはとっさに魔力障壁を張ったが、その瞬間、紫の影が障壁の薄い部分を正確に射撃で撃ち抜いた。
「恐れている、お前は」
ライヤの倒置法が戦場に響く。紫色の装甲が一瞬で間合いを詰め、リゼヴィムの足元を斬り払った。
「この……小賢しい真似を!」
リゼヴィムが翼を広げ、上空へ逃れようとする。だが、そこにはすでに銅色の小さな光が待ち構えていた。
「体格差など、捜査の障害にはならん」
アーマイゼの翼刃が、リゼヴィムの翼の付け根を正確に斬り裂く。黒い翼が片方、千切れて落ちた。
「馬鹿な……!」
リゼヴィムが地面に落下する。その顔には、初めて本物の驚愕が浮かんでいた。
「ありえない……たかが五人、いや、初めての連携のはずだぞ……なぜここまで……!」
「なぜ、か」
俺はギャバリオン・トリガーを構えながら、口元を歪めた。
「お前には分からねえだろうな。俺たちはな、全員がそれぞれの世界で、それぞれの正義を背負って戦ってきた刑事だ。連携なんざ、言葉で打ち合わせるもんじゃねえ。お互いの動きを見て、必要な場所に必要な一撃を入れる。それだけだ」
「そんな……そんな理屈が……!」
「それに、もう一つある」
俺はトリガーをリゼヴィムに向けた。
「お前は俺一人を圧倒して、完全に油断した。五人を相手にする覚悟が、最初から足りてなかったんだよ」
「黙れぇっ!」
リゼヴィムが魔力を爆発させ、黒い衝撃波を全方位に放つ。だが、それも織り込み済みだ。憐慈が光子装甲を展開して最前線で受け止め、ブシドーがその背後から二刀をクロスさせて防御の壁を作る。ルミナスとライヤが左右から射撃で牽制し、アーマイゼが上空からリゼヴィムの魔力の流れを監視する。そして、俺が五人目の照準を合わせる。
「これで終わりだ、リゼヴィム」
ギャバリオン・トリガーに、五人のエモルギアが共鳴する。
「覚えておけ……私は……必ず……!」
リゼヴィムが空間を引き裂き、撤退の魔術を展開する。俺たちの一撃が放たれるより一瞬早く、その巨体は黒い裂け目の中へと消えていった。
「逃げ足だけは速いな」
俺はトリガーを下ろし、ため息をつく。
「だが、初めての連携であれだけ動ければ十分だ」
憐慈が俺の隣に降り立ち、光子装甲を解除した。
「君の指示が的確だったからな」
「俺は何も指示してねえよ。お前らが勝手に動いただけだ」
「それが君の指示だ」
駆無が紫の装甲を解除しながら、珍しく笑った。
「キングは、いつも俺たちに自由に動かせてくれる。それが、お前の指揮のやり方だ」
「意味が分からん」
俺はそう言いながらも、少しだけ口元が緩むのを感じていた。リゼヴィムは逃したが、これで憐慈たちの世界の危機は一時的に去った。そして何より、五人全員が生きている。
「さて、報告書がまた増えたな」
「ああ、それは勘弁してくれ」
俺がうんざりした顔をすると、五人のギャバンから同時に笑い声が上がった。赤黒い空の下、崩壊した都市の廃墟に、宇宙刑事たちの笑い声が響き渡る。それは、この戦いがまだ終わっていないことを知りながらも、確かな勝利を刻む音だった。
俺はギャバリオン・トリガーを腰のホルスターに収め、息を吐いた。戦闘の余韻がまだ身体の隅々に残っている。筋肉が微かに震え、指先にまで緊張の名残が這い回っていた。
「逃げ足だけは、大魔王の名に恥じねえな」
駆無の軽口に、誰も答えない。いや、答えられなかったのだ。俺たちは五人揃って、同じ方向を見上げていた。
会場の天井はすでに吹き飛び、赤黒い空が剥き出しになっている。リゼヴィムが消えた裂け目の先――あの空のさらに向こう側。宇宙の深淵に、何かがいる。
「見えるか」
俺は短く訊いた。
「ああ」
憐慈が頷く。インフィニティの装甲が微かに反応し、光子エネルギーが警戒を示すように脈動している。
「ここからが本番だな」
次回の王は
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