サカキの娘だけど気ままに旅したい   作:秋塚翔

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前回も語りましたが、こうした転生ものに際して原作を見直して構成練ると、別に気になってもなかったはずのキャラが急に愛着が湧く現象にハマり気味。


不意の出逢い

 翌朝。友達のよしみで泊まらせてくれたハヤトの屋敷を後にし、私は早速次の町を目指す。

 もう少しキキョウシティの風情や、マダツボミの塔やアルフの遺跡なんて名所巡りもしてみたいとは思うが、そろそろワカバタウンから戻ってきた兄さん――シルバーがやって来る頃だろう。ああして別れた手前、すぐ近くの町で出くわすのはお互い気まずい。だからジムという用が済んだからには、ここは先を急ぐべきだ。

 なんなら『おかしな木』を突破するルートもあるが……流石に無粋がすぎる。気ままに旅したいけど、別にRTA(リアルタイムアタック)がしたい訳ではないからね。素直にヒワダ行こう。

 そう考えながら、道中に備えてフレンドリィショップで買い出しをする。ポケモン用アイテムに限らず、人間に必要な雑貨や食料とかも。ゲームではそこイージーだったけど、リアルで冒険となれば真っ当な準備だろう。あらかじめ資金多く貯めといて良かった。

 あらかた買い揃え、ショップを出る。さて行くかと意気込んだところで、ちょうど店に入ろうとしてきた客とぶつかりかけた。

 

「っ!」

「あ、すみま――」

 

 言い切る前に、その客の正体に気付いた。

 おさげ髪にキャスケットを被り、赤いトップスにサロペットを着ている少女。愛らし気な顔は、私にぶつかりそうになり大きなあどけない目を丸くする。

 その見覚えしかない容姿は、まさしく金銀リメイク――HGSSにおける女主人公そのものであった。

 

「――」

 

 一瞬、思考が停止してしまうのは無理ないことだろう。

 これまでシルバー()サカキ()、ハヤトたちを見てきてはいるものの、ここでポケモン世界の原作主人公と出会うのは新鮮な感動を覚えるものだ。これが某超有名魔王討伐RPGなら勇者、某世界的海賊漫画なら麦わら帽子の少年と遭遇したのと同義。千差万別はあれど、少なくとも私は感情を揺れ動かされていた。具体的には「すげー! 主人公だー!」というポケモンファン魂。

 いつか何処かで会えるとは思ってたけど、まさかこんな最序盤にとは。何か言うべきだろうか、いやいや初対面で何を言うんだよと自問自答していると、対する少女の方から食い気味に詰め寄ってくる。

 

「あ、あの! 昨日ジムリーダーに勝った人ですよね!?」

「え? あ、ああ。そうだけど」

 

 ぐいっと顔を寄せて問いかけてくる少女に、なんとか平静を装い首肯。少女は話しかけたのが目的の人物で安心したように言葉を続けた。

 

「その、私、ワカバタウンから来たカナデっていいます。昨日ジムに挑戦したんですけど、ジムリーダーの人に全然敵わなくって……それで、その前にジムから出てきたお姉さんに勝てる方法を聞こうと思って探してたんです。もう町を出たのかと諦めてたけど、会えて良かったあ」

「なるほど。これからジムに再挑戦するのか」

「はい。だけど勝てそうになくて……」

「ひぽぅ」

 

 思い出して落ち込んだ様子の少女――カナデ。するとその後ろにいたポケモンが慰めるように鳴く。ヒノアラシか。だとすると兄さんはワニノコと……ふふふ、何がとは言わんけど良いチョイスだ(後方何様面)

 話は戻して。私は経験の差で勝ったが、実際ハヤトと素で戦うのは最初の難関だ。草タイプはさることながら、ヒノアラシなら弱点のどろかけで命中下げられるし、等倍の飛行技でもかなり削られる。マダツボミの塔でもらえるはずのフラッシュで対抗しようにも、命中下がらない特性持ちのポッポやピジョン相手では意味ないだろう。普通なら厳しすぎる。

 それでも措置はある。せっかく主人公ちゃんから頼られたし、一つ先生ムーブで指南してあげるか。

 

「分かった。良いよ。そう急ぐ旅でもないしね」

「! 本当ですか! ありがとうございますお姉さんっ!」

 

 帽子を振り落としそうな勢いで頭を下げてくるカナデ。いいなあ、若いって。純粋で。まあ私も今は同じくらいの年なんだけど。それでもこの純粋さは眩しいわ。

 

 

 

 

 

 指南と言っても、つまりは原作知識だ。

 キキョウシティを南下して一度町を出た32番道路。そこにいるはずだ。

 

「メリープは電気タイプ。ハヤトの使う飛行タイプに強いんだ。この辺りにいるから捕まえてみてごらん」

「はい! ギンカさん!」

 

 すっかり生徒気分のカナデが意気揚々と草むらを探索する。因みに来るまでで自己紹介は終え、『お姉さん』から呼び方は変わっていた。名前呼びでいいけど、変わってしまうとお姉さんも捨てがたい……

 そういや私も、前世でゲームプレイした時はここで詰まってたなあ。そんでメリープ捕まえたもんだ。金銀プレイヤーの多くが通る道だと思う。ポケウォーカーがあるHGSSではまた違うんだろうね。あれも当時は画期的ではしゃいだもんだよ――

 と、自分語りしてたところで、ふとカナデが足を止めた。

 

「ギンカさん、いました!」

「ああ、どれどれ――ぇっ?」

 

 なん……だと……?

 あ……ありのまま今見てる事を話すぜ! 私はメリープを確認しようとしたら、そこにいたのはピンク色の羊だった。な……何を言ってるのかわからねーと思うが――とか回りくどく言ってる場合じゃねえ。

 カナデが指し示した方向。そこにいたのは、()()()()()()()()()()()()だった。

 

「色違い、だと……一発目で豪運すぎだろこの子……!」

「あの、あれですよね? 捕まえてもいいですかっ?」

「あ、ああ、後は任せるぞ」

 

 かくして、ありふれた工程を経て、カナデは無事メリープ(色違い)をゲットした。

 他人事なのに内心ハラハラしたのは仕方ないことだと信じたい。だって色違いだもの。最新の方じゃわりかし簡単に入手できるようだが、最終はUSUM止まりの私だとかなり奇跡に等しい遭遇だ。言い過ぎかもしれないけど、マジで心情的にはそんな感じ。だからギリギリまで弱らせて捕まえようとするカナデには相当心穏やかでなかったわ。ヒノアラシ、良い仕事したぞ。

 

「ありがとうございました、付き合ってもらって……!」

「お安いご用だよ。ここからちゃんと育てて、ジム頑張ってね」

「はい! また会えたらお礼させてください!」

 

 また元気よく頭を下げてくる。そんなカナデの腕の中では、例のピンクメリープが「メイィ」ともう懐いてる様子で収まって鳴いていた。流石は主人公……と慄きながらもカナデに別れを告げ、32番道路から早速次の目的地を目指す。

 

「ふぃおおっ」

「ああ、次はツクシのとこだ。また厳しい相手になるけど、頑張ろうな」

 

 連れ添うリーフィアに頷きを返し、ヒワダへと続く草の道を突き進むのであった。




HGSSで初のランダムエンカ色違いは、虫取り大会に参加して一発目で出てきたコンパンでした。

〇カナデ
HGSSにおける原作女主人公。最初のパートナーはヒノアラシ。一発で色メリープを見付ける主人公ならではの豪運の持ち主。まだ原作同様新米なので、これからが期待の逸材である。
名前は公式ネームのマイナーチェンジのようなもの。

次回もお楽しみにしていただければ。良ければ感想や評価をいただけると非常に励みとなります!
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