ぼっち・ざ・シルヴァーハンド   作:ゾキラファス

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 ぼっちちゃん。誕生日おめでとう。そんな訳で、続きです。

 遂にキタちゃん登場。


本当の気持ち

 

 

 

 

 

 バンドにとって必要なのは、主役となるボーカルである。世の中には楽器のみでボーカルのいないインストバンドというのもあるが、基本的にはボーカルが必須である。

 そしてひとりが所属している結束バンドには、現在ボーカルがおらず、絶賛募集中の状態。リョウは自分がボーカルするとワンマンになるからしないと言って、虹夏はそもそもドラムなのでボーカルが出来ない。尚ひとりは、そんな事が出来る勇気も才能も無い。虹夏から『もししたそうな人がいたら連れてきてくれていいよ!』と言われたが、そもそも学校でぼっちなひとりにそんな連れてこれるような人はいない。

 

「や、やっぱりボーカルはいた方がいいですよね?」

 

「そりゃそうだろ。ボーカルはバンドの花形で主役だ。インストも悪くねーが、本気で上に上がりたいのならボーカルは必要不可欠だろ」

 

「ですよね…因みにジョニーさんのバンドは、どんなボーカルが?」

 

「ボーカルしてたのはリードギターのケリーだな。俺の演奏でボーカルするなら、あいつ以外は絶対に認めねぇ」

 

 学校での昼休み。ひとりは階段下の使っていない机とか椅子が置かれている謎の空きスペースで、1人でお昼ご飯を食べながらジョニーと話していた。ここならひとりにしか見えないジョニーと話しても周りから気味悪がられる事が無いし、何より薄暗く静かでとても落ち着く。

 

「この間のカラオケ、楽しかったよねー」

 

「だよねー。喜多ちゃんやっぱり歌上手かったし」

 

「!?」

 

 そうやって落ち着いていると、ふいに上の方から話声が聞きえた。

 

「そういえば、喜多ちゃんって確かバンドに所属してギターも弾けるらしいよ?」

 

「そうなの?」

 

「うん。今はもうやめたみたいだけどね」

 

(バンド!?ギター!?歌が上手い!?)

 

 その会話に聞き耳を立てていたひとりに電流が走る。なんせ今の会話に出てきた人物は、まさに現在探している人物だからだ。

 

(一体、どんな子なんだろ?)

 

 ひとりは、その喜多ちゃんという子が気になった。なので机を積み上げて、その上に座って廊下の様子をそっと見る。

 

「あ、喜多ちゃーん」

 

「やっほー。どうかしたー?」

 

(な、何あれ!?すっごい可愛い!!キラキラしててなんか眩しい!!)

 

 ひとりの視線の先には、赤髪でなんかキラキラしている女生徒がいた。同性のひとりから見ても、凄く可愛い。

 

「へぇ、ナイトシティならコーポの変態共に買われそうなくらい整った顔してるな。俺の趣味じゃねーけど」

 

「……」

 

 そしてジョニーは、割と最低な感想を口にした。当然ひとりにしか聞こえていないので、その台詞を聞いたひとりは嫌そうな顔をする。

 

(む、無理…!あんな超がいくつつくかわからない本物の陽キャとも言える子をスカウトするなんて、絶対に無理…!!)

 

 自分のような陰キャがあんな超陽キャに話しかけると、それだけで逮捕されてしまうかもしれない。そもそも、話しかけても無視される可能性もある。

 

(でも、このまま待っていてもボーカルが見つかるとは思えないし…それに私が行動したら、そのままあっという間にボーカルになってくれるかもしれない…そしたら虹夏ちゃんやリョウさんも喜んでくれる筈…)

 

 しかし、このまま何もしない事もしたくない。だって、そんな運よく歌の上手いボーカルが見つかるなんて先ず無い。それに、ジョニーも言っていた。目の前にチャンスがあるのに、それを掴もうとしない奴は絶対に何も出来ないと。

 

(うん、聞くだけ聞いてみよう。そもそも、私は既にバイトもしているし、人に話しかけるくらい出来る筈。それに、この前夢に出たあの怖い人に比べたら、初対面の人と話すくらい全然怖くない行為だし)

 

 例のジョニーの記憶であろう夢のおかげで、ひとりは少しだけ度胸がついた。

あのアダムスマッシャーとかいう化け物とくらべたら、こんなの細事だ。

 

(そうと決まれば直ぐに…は怖いから、放課後に行動を起こそう!!)

 

 でも今から声をかけるのはちょっと心の準備が出来ていないので、せめて放課後まで覚悟を決めてから行く事にした。

 

 

 

 そして放課後。ひとりはなんとか勇気を出して喜多のいる教室まで来ていた。

 

(一体、どうやって声をかければ…)

 

 しかし、何と言って声をかけたらいいか全くわからない。そもそも、相手は超が付く程の陽キャ女子なうえ、自分とは初対面。いきなり話しかけたら、不審がられるかもしれない。

 

「てめぇ、いつまでそうしてんだ。声かけるならさっさとしろ」

 

「す、すみません…」

 

 直ぐ後ろにいるジョニーに急かされるが、やはりなんと言えばいいかわからない。

 

「え、えっと…2組の後藤さんだよね?誰かに用事でもあるの?」

 

(私の名前知ってくれてるんだ…!)

 

 そんな風に廊下で教室の中を覗いていたら、なんと喜多の方から声をかけてくれた。これはチャンスだ。

 

「いつもみたいに訳わかんねー事言わず、ちゃんと言えよ?じゃないとお前の体に乗り移って学校で暴れるからな?」

 

「あ、はい」

 

 更にジョニーからも冷たい目で脅される。というか、そんな事されたらもうこの学校に通えない。なので勇気を振り搾り、ちゃんとした言い方で喜多に話しかけよう。

 

「あ、あの!バンドのギターボーカルに興味ありませんか!?」

 

「え?」

 

「よ、よければ、うちのバンドでそれやりませんか!?ていうかやってくれませんか!?」

 

 そして遂に、ひとりは言った。自分の伝えたい事をちゃんと言えた。後は、喜多の返答を待つだけである。

 

「えっと、後藤さん。ちょっといい?」

 

「え?」

 

 しかし喜多は返事をする前に、ひとりの手を引いてそのまま歩き出す。そして偶然にも、ひとりがよく使っている昼食スポットまでやってきたのだ。

 

「後藤さん」

 

「ひゃ、ひゃい!!」

 

「何で、私をバンドに?」

 

「あ、あの…喜多さんは歌が上手いって聞いて、それに前はバンドにも所属してギターも弾けたって聞いたもので…!」

 

「あー、そっかー…因みに後藤さんはギター弾けるの?」

 

「まぁ、それなりには。じゃないとバンドなんて入れませんし」

 

「はは…そうだよね…」

 

 ひとりは偶然聞いた話を、そのまま喜多に説明。そして喜多は、観念したような顔をして話し出す。

 

「えっと実はね、私ギターが全く弾けないの…」

 

「え?」

 

「あ?」

 

 その喜多の言葉を聞いて、ひとりとジョニーは驚いたような顔をする。

 

「前いたバンドも、先輩目当てでギター弾けるって嘘言って加入したんだけど、結局何にも出来なくて、そしてライヴ当日に逃げちゃったんだ…」

 

 実は彼女、全くギターなんて弾けなかったのである。それどころか、ギターの基礎知識すら殆ど無い状態。ギターについているネックもただの飾りだと思っていたし、コードもまるで知らない。

 

「こいつクソだな。どんな理由であれ、バンドをやると決めたからにはステージから逃げずに最後まで戦うべきだろう。例えどれだけ演奏が酷くても、客から罵詈雑言を投げられても、死ぬ気で最後まで演奏をするのがバンドマンだ。だっていうのに逃げやがるなんて。ひとり、こいつはダメだ。他を当たれ」

 

 そしてジョニーは、そんな喜多に嫌悪感を抱く。

 

 バンドマンが最もやってはいけない事のひとつ。それは、自分達のステージから逃げる事だ。それをしてしまったら、折角のファンを裏切る事になるし、何よりそれ以降そのバンドマンには一生逃げたという肩書がついてしまう。

 そうなってしまえば、もう他のライブハウスで演奏する事も出来なくなる。それはつまり、バンドマンとして終わりだ。

 おまけに喜多は自分でバンドをやると言っていながら、土壇場で逃げている。ナイトシティだったら、撃ち殺されても文句の言えない所業。少なくとも、ジョニーのいたサムライならこんな事絶対に許されない。同じバンドマンとして、これほどムカツク事は無いだろう。

 

(にしても、あの指で弾けない?どんなクソみたいな練習してんだこいつ)

 

 同時に、喜多の指を見てそんな事も思ったりした。

 

「後藤さんは誰かにギター教えてもらったの?」

 

「あ、はい。えっとその、師匠みたいな人がいて、その人に手ほどきを…おかげさまで色んな曲が弾けるようになりました」

 

「そうなんだ!あ、よかったら私にもその人紹介してくれない?そうすれば私も」

 

「絶対にダメです。基本関わっちゃいけない人種なので。もし喜多さんがあの人に関わってしまったら絶対に大変な事になります」

 

「待って!?関わったらいけない人種ってどういうこと!?」

 

「てめぇ、言うようになったじゃねぇか」

 

 もしジョニーと関わって、喜多がタバコやアルコールを摂取するようになったら、絶対に今の綺麗な輝きが失われるだろう。それだけは避けないといけない。なので喜多には絶対にジョニーを会わせてはならない。

 最も、ジョニーはひとりにしか見えないので、紹介してくても出来ないのだが。

 

「だったら、後藤さんが私に教えてくれるっていうのは?」

 

「へ?」

 

 すると喜多は、今度はそんな提案をひとりにしてきた。

 

「私ね、今度こそちゃんとギター弾けるようになって、前いたバンドの先輩たちに謝りたいの!だからお願い!!」

 

「いや、あのぅ…」

 

「放課後とかどう!?何だったらレッスン料払うし!!」

 

「え、えっとぉ…」

 

 突然の喜多の申し出に、ひとりはたじだじだ。そもそも人と関わる事が苦手な自分が、こんな陽キャ女子にギターを教える事が出来るか不安だ。

 

「いいじゃねぇか。教えてやれ」

 

「え?」

 

「人に教えるのも練習のうちだ。それにてめぇは、いい加減のそのゴミみたいなコミュ障を治すべきだ。こいつに教えておくと、それも多少は何とかなるだろ」

 

 ここでジョニーが、ひとりに喜多の提案を受けるよう促す。正直、ひとりのこの人見知りは異常だ。このままでは、社会に出れるとは思えない。

 あと単純に、見ていてイライラする。だがここで喜多にギターを教えれば、それも改善されるかもしれない。

 

「で、でも…」

 

「やれ」

 

「あ、はい」

 

 ジョニーにすごまれ、ひとりはもう断るという選択肢が消えた。怖いから。

 

「えっとじゃあ、バイトが終わったらとかでなら…」

 

「ありがとう!!」

 

 ひとりの言葉を聞いて、喜多はひとりの手を握って喜ぶ。

 

(あれ?この指…)

 

 その時少し気になる事があったが、この時のひとりはそれを気にする余裕が無かったのでその事の追求をしなかった。こうしてひとりは、喜多にギターを教える事となったのである。

 

(そういえば後藤さん、さっきから小声で誰と話してるんだろ…?何か後ろをチラチラ見てるし。もしかして幽霊とお話とかできる子?それとも無意識に独り言つい言っちゃう子?)

 

 一方喜多は、ひとりに対してそんな印象を抱いてしまっていた。

 

 

 

 そして喜多と共に下北沢までやってきたのだが、

 

「何でもしますのであの日の無礼をお許しください!私を滅茶苦茶にしていいので!!」

 

「誤解を生みそうな言い方辞めて!!」

 

「へぇ、これが日本の土下座ってやつか。初めて本物見るな」

 

「あ、あの。あんまり見ないであげてください…」

 

 虹夏とリョウを見た瞬間、喜多が道の真ん中で土下座をしだして、辺りは騒然とするのであった。

 

 

 

 結論から言うと、喜多が逃げ出したバンドというのが、虹夏の結束バンドの事であった。ある日、路上でリョウの演奏を聴いて一目ぼれ。そこから追っかけのような真似をしていたが、リョウが所属していたバンドを辞めて新たに虹夏と結束バンドを結成。そこで偶然結束バンドのギター募集の話を聞いて、勢いのままバンドをやりたいと言ったのだ。

 しかし、ギターなんて全く弾けないままバンドに入ってしまったので、最終的にひとりが虹夏に誘われたあの日に逃げてしまったのだ。その話を聞いた虹夏は、特に喜多を怒る事もせず、今日1日STARRYでバイトする事で罪滅ぼしをさせる事に決定。そして今、なんでかメイド服を着て喜多はバイトに勤しんでいる。

 

「あれがメイド服ねぇ?ナイトシティとは随分違うな」

 

「あ、ナイトシティにもメイドっているんですか?」

 

「いるぞ。まぁ、殆どがコーポの変態役人共に雇われているジョイトイみたいな奴らだがな」

 

「じょ、ジョイトイ?」

 

「要するに性接待嬢だ」

 

(聞かなきゃよかった…)

 

 行く事なんて無いだろうが、絶対にナイトシティには行かないとひとりは決める。だってジョニーの話を聞く限り碌な街じゃないし、何より夢で見たあのアダムスマッシャーとかいう化け物がいるのだ。普通に怖くて行きたくない。

 

「あ、ぼっちちゃん。喜多ちゃんにドリンク教えてあげて」

 

「あ、はい」

 

「よろしくね、後藤さん」

 

「あ、はい」

 

 そんな事を決めていると、虹夏にお願いされ、ひとりは喜多にドリンクを教える事になった。

 

「え、えっと、お客さんから注文を聞いたら、ここにあるドリンクを渡すだけです、はい」

 

「わかったわ」

 

「あ、あと、トイレはそこの右奥進んで左なので、もし聞かれたらそう教えてあげてください」

 

「了解!」

 

 例のジョニーの記憶を見たせいで、多少は度胸がついて成長したひとりは何とか喜多に物事を教える事が出来た。

 

「ふむ…胸はでかいし年齢も20代後半らしいから良いが、顔がなぁ…ちょっと童顔なんだよなぁ…」

 

「……」

 

 因みにその頃ジョニーは、STARRYのPAさんを見ながら最低な感想を口にしていた。ひとりはそんなジョニーを無視して、喜多にドリンクを教える。そんな時、喜多に質問をされた。

 

「そういえば、後藤さんはどうしてギターを?」

 

「え?え、えっと、世界平和を訴えたくて…」

 

「そうなの?意識高くて凄いわね!」

 

 嘘である。実際は、ただ皆にチヤホヤされたいだけだ。

 

 その後、ひとりは喜多と色んな話をした。今まで部活や習い事をしてこなかったから、夢に向かって努力するバンドに憧れを持っていた事。バンドがまるで家族のようで、そこでリョウの娘になりたい事。

 

「まぁ、だからこそ。私はもうバンドなんてしないけどね」

 

「え?」

 

「1度逃げ出した無責任な私が、バンドをしたいだなんて思っちゃダメよ…」

 

 そして、自分はもうバンドなんてしてはいけないと思っている事。でもその顔は、どこか寂しそうに見える。

 

「……」

 

 それを聞いたひとりは、小さく拳を握る。何と言うか、このまま喜多を帰してはいけない気がしたのだ。多分、彼女は凄く後悔している。逃げ出した事も、バンドを出来ない事も。出来ればなんとかしてあげたい。

 

「あ、あの!喜多さんって本当は虹夏ちゃんやリョウさんとバンドしたいんじゃないんですか!?もしそうなら私が2人を説得しますので、やりませんか!?」

 

 なのでひとりは、思い切って喜多に聞いてみた。もしそうなら、自分も何とかするつもりだ。だってやりたいのにやれないって、すっごく辛い。そんな思いを、喜多にさせたくない。

 

「……ううん。私にそんな資格無いもの。でも、ありがとう後藤さん。そうやって誘ってくれるのは、本当に嬉しいわ」

 

 しかし喜多は、うんとは言わない。あくまでもう、自分はバンドはしないと言う。だが、それが嘘なのはもうわかっている。何とかこのまま彼女を引き留めたいが、良い案が浮かばない。

 

「このガキ、ムカツクなぁ」

 

「!?」

 

 そう思っていると、いつの間にかジョニーが傍に戻ってきていた。

 

「おいひとり。体借りるぞ」

 

「え!?あの!?」

 

 そして有無を言わさず、ジョニーはひとりの体を乗っ取った。

 

「何が私なんてだ。悲劇のヒロインぶりやがって」

 

「え?ご、後藤さん?」

 

 突然ひとりの口調が変わった事に、喜多は少しビビる。

 

「お前、本気でバンドをしたくないって思っているなら、わざわざギターを習おうとなんてしねーだろ。おまけにお前の指、明らかにギターの練習しないと出来ない指になっていた」

 

 ジョニーの言う通り、もし本当に喜多がバンドをしたくないと思っているなら、そもそもひとりにギターを学ぼうと頼む事もしない筈。

 それに、喜多の指の表面は固くなっている。あれは、ただ練習しただけでは出来ない。相当ギターの練習しないと出来ない指なのだ。恐らく彼女は、結束バンドに入ってからずっと陰で練習していたのだろう。本気でバンドをやりたいと思わないと、そんな真似できない。

 

「それにだ。そんな顔して言っても説得力無いんだよ。自分に嘘ついてまで生きてて楽しいのか?」

 

 そして喜多はずっと、寂しそうな顔をしていた。そんな顔でバンドをやれないとか言っても、信じられない。

 

「いいかよく聞け。自分の嘘をつくとな、自分が本当にしたい事がわからなくなるんだよ。どれが嘘でどれが本心か、その辺がごちゃごちゃになる。だから本当はやりたいのにもうやらないとか、言うんじゃねぇ。やりたいなら、ちゃんとやりたいって言え。わかったか?」

 

「……」

 

 ジョニーの言葉を、喜多は視線を動かす事無くじっと聞く。

 

(これ以上はやばい!!)

 

 その様子を見ていたひとりは、直ぐにジョニーから体の主導権を奪い返す。このままではジョニーが何を言うかわからないし、何より自分が喜多から変なイメージを持たされるかもしれない。だからこれ以上は許容しない。

 

「な、なんちゃってぇ…」

 

 体の主導権を奪い返したひとりは、何とかそう言ってごまかす。

 

(いや、無理だこれ…終わった…)

 

 だが、時既に遅し。もうジョニーが言った後なのだ。これで自分は喜多から、あんな変な言い回しをする子だと思われるだろう。

 

 ガシッ!!

 

「!?」

 

 そう思っていると、喜多が突然ひとりの手を両手で握ってきた。

 

「ありがとう。後藤さん。おかげで気が付いたわ」

 

そして目に薄っすらと涙を浮かべて、ひとりに感謝する。

 

「そうよね!本当はやりたいのに嘘ついてやりたくないなんてダメよね!私も本当はバンドやりたいの!先輩たちの説得は難しいかもだけど、何とかして2人を説得してバンドに加わってみせるわ!例え土下座したり、賠償金を払う事になっても!」

 

「あ、えっと、はい」

 

「協力してくれる!?」

 

「あ、はい。勿論です」

 

「ありがとう!!」

 

 喜多はやる気を出した。罪悪感は確かにあるが、それでも本当はバンドをやりたいと思っていたのだ。もしここで、このままその気持ちに蓋をしてバンドに参加せず帰れば、多分、いや絶対に後悔する。だからこの正直な気持ちをそのまま伝えて、バンドに参加しよう。

 

(一応、家に帰ったらジョニーさんにありがとうって言っておこう)

 

 強引な手段だったが、おかげで喜多がバンドに参加してくれるかもしれない。だからジョニーには、ちゃんとお礼を言っておこう。

 

 その後、難航すると思っていた虹夏とリョウへの説得はあっけなく何とかなり、喜多は晴れて結束バンドのメンバーへ加わった。

 

 こうして結束バンドは、メンバーが勢ぞろいし、バンドとしてようやく前進を開始したのであった。

 

 

 

 翌日

 

「もう嫌ーー!!私、ギターやめます!!」

 

(え?もう解散の危機?)

 

 喜多はSTARRYのスタジオでギターの練習をしていたが、早速根をあげていた。

 

「ねぇ後藤さん。これ実は不良品とか?それともまたベース?」

 

「あ、今度のはちゃんとギターです。あと、私が試しに弾いたら音ちゃんと出たので不良品でもないかと…」

 

 因みに今喜多が持っているギターは、リョウからの借り物だ。実は喜多がいくら練習してもギターが弾けなかった理由、それは彼女の購入した楽器がギターでは無くベースだったからである。世の中には多弦ベースという弦が6本あるベースも存在する。それを喜多は、ギターと勘違いして購入したのである。

 

 尚、この話を聞いたジョニーは『本物のアホを見た』と言って大爆笑していた。

 

「ごめんなさい。皆にここまで協力してもらっているのに弱音吐いて…」

 

「い、いえ。誰でも最初は難しいものですし」

 

 最初から全てのコードが弾ける人間など、存在しない。プロだって最初はヘタクソから始まっている。そこから努力して、皆上達するのだ。

 

 極稀に、最初から超演奏が上手い子もいたりするけどね。

 

(それにしても、懐かしいな…私も、こんな感じだったな…)

 

 ひとりは、コードに苦戦している喜多を見て懐かしむ。そして自分にも、こんな時期があった事を思い出していた。

 

 ―――――

 

『おいてめぇ、何度言わせるんだ。全然違う。もっとちゃんと指で弦を弾け。次間違えたらただじゃおかねぇぞ』

 

『す、すみません…』

 

『そもそもだ。この俺が教えてるんだぞ?てめぇのギターの才能を見込んでな。だったら俺に心から感謝しながらもっと早く上達しようとするべきだろうが。言っておくが、泣き言は絶対に言わせねぇからな?』

 

『……がんばります』

 

『は!それでいいんだ。ほら今のところもう1度だ。やれ』

 

『はい…』

 

―――――

 

(いや違う!!全然喜多さんみたいな感じじゃない!?もっと殺伐としてた!!)

 

 違った。

 ひとりはもっと、下手すると殺されそうなくらい殺伐とした空気の中ギターの練習をしていた。

 でも結果として、ひとりはかなりの早さでギターが弾けるようになったのだ。その辺はジョニーに感謝している。もう2度とごめんだけど。

 

「と、とりあえずまたFコードの練習しましょうか」

 

「うん。わかったわ。何とかしてみせる」

 

 そんな昔の事を思い出しながら、2人は練習を再開する。

 

 その後、所持金が底をついたリョウが草を食べながらやってきたのを見て驚くのだが、その辺は割愛しよう。因みに、その姿を見たジョニーはドン引きしていたぞ。

 

 

 

 

 




 ほぼ原作通りの流れになってしまった。次回はもう少し色々弄ってお話書きたい。

 次回はまたいつの日か。
 それでは、またね。

クロス元の作品知ってる?

  • ぼざろだけ知ってる
  • サイバーパンクだけ知ってる
  • 両方知ってる
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