ぼっち・ざ・シルヴァーハンド   作:ゾキラファス

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 本日は6月9日のロックの日なので、更新します。


自分らしさ

 

 

 

 

 

 後藤家 ひとりの自室

 

(どうしよう!!本当にどうしよう!!もう5日も経過してるのに、全然歌詞書けていない!!)

 

 現在ひとりは、自宅の自分の部屋で頭を抱えて悩んでいた。

 

 事の発端は5日前。いつものようにSTARRYで喜多にギターを教え、その後にバンドメンバーでバンドミーティングをした。ミーティング内では、その変の100均で売っている結束バンドをバンドグッズにしようとしたり、年会費を払わせてバーベキューをしようとしたりなど、色んな事を話した。

 

 しかしそこでひとりは、自分がライヴで使う曲の作詞を任されていた事を虹夏に言われて、思い出したのだ。

 

 これを聞いたひとりは、最初こそ絶望したが、その後直ぐに喜多に「凄い」と言われ気を良くし、「ちょちょいのちょいで作る」と言ってしまったのである。

 

 が、それから5日が経過しているのに、全く書けない。書けたのは、将来有名になった時用にと制作した自分のサインだけ。肝心の歌詞は、全然である。

 

(どうしようどうしよう!!昨日も現実逃避して動画5時間も編集しちゃったし、こんな事してる場合じゃ無いのに…!!)

 

 本来ならもっとちゃんと歌詞を考えないといけないのだが、ひとりは度々現実逃避をしてしまっている。これでは、歌詞の完成なんて夢のまた夢だ。このままでは、バンドメンバーに失望されてしまう。

 

(あ、そう言えば…)

 

 悩んでいたひとりは、何かを思い出したように、押入れに向かう。そして押し入れの中に眠っていた、中学の頃に書いた歌詞ノートを取り出した。これを参考にして、歌詞を考えようとしたのだが、

 

「呪詛?」

 

 歌詞の内容が物騒な物ばかりであり、とてもじゃないが参考にはならなかった。

 

「おー、懐かしいなおい。お前が気分よく書いてたクソみてーな歌詞ノート」

 

「あ、あの、あんまり見ないでください…」

 

 後ろからジョニーが、歌詞ノートを見て笑う。彼に言わせれば、これはただの落書きと同じなのだ。それでも、ひとりが頑張って書いた歌詞なので、あまりバカにはしない。

 

「ひとり。言っておくが、それは捨てるなよ?それもお前の立派な財産だ。いずれ何かの役にたつかもしれない。だから取っておけ」

 

「あ、はい」

 

 そしてひとりの歌詞ノートを、捨てるなと言い出す。実際、こういった物でも今後のバンド活動に役立つ可能性はあるのだ。

 だから、捨てさせない。ひとり自身は本当は捨てたいのだが、ジョニーには逆らえないので彼の言われた通りにする。

 

(これはあのキラキラした喜多さんが歌う事になる。だから、彼女に合った明るい歌詞にしないと!!)

 

 そしてひとりは歌詞ノートをしまって、再び歌詞を考える。自分とは真逆の存在である、喜多が歌うのだ。だから、彼女にあった歌詞にしないといけない。

 

「よし!青春応援ソングにしよう!!」

 

 考えた末、ひとりは自分が好きじゃない青春応援ソングにする事にした。本当なら、無責任に現状を肯定するのは好きじゃない。

 しかし、喜多に合うと言えばこういった歌詞だろうし、何よりバンドが売れる為なら、そういったニーズに答えないといけない。だから、ひとりはそういった歌詞で行くことにした。

 

 

 

 2時間後

 

「う、薄っぺらい…」

 

 ひとりが考えた歌詞は、かなりあれな感じになっていた。「信じる」とか「頑張れ」とか「みんながいる」とか、そんな事ばかり。もし自分が落ち込んでいる時にこんな歌詞を聞いたりしたら、絶対に更に落ち込む。

 

「おいひとり。完成したか?」

 

「あ、一応…」

 

「見せてみろ」

 

「あ、はい」

 

 そこにジョニーがやってきて、ひとりは歌詞の書かれたノートを見せる。

 

「……なんだこれは?」

 

「え、えっと、歌詞です…」

 

「ほーん?なぁひとり。これは、お前が本気で考えて、心から形にしたいと思っている歌詞か?」

 

「え?あー、そう言われると違いますけど…」

 

「違うなら、どうしてこんな歌詞書いてるんだ?」

 

「え、えと、これは喜多さんが歌うから、彼女にあった応援ソングにしよかと…」

 

「お前、こういうの好きじゃないよな?ならどうして態々こんな歌詞にしてるんだ?」

 

「だ、だって、売れるならこういった歌詞にしたほうがいいのかなーって」

 

 ジョニーの質問に、ひとりはおっかなびっくりで答える。正直、こんな歌詞は好きじゃない。自分らしくないし、何よりそもそも自分の好みにずっごく外れている。でも、本気で売れるならこういった歌詞にしないとダメだろう。そうすれば、自ずとミーハーなファンも付くはずだ。

 

 そして、そんなひとりの答えを聞いたジョニーは、

 

「てめぇ、ふざけてんのか?」

 

「え」

 

 割と本気でキレだした。

 

「よく聞けクソガキ。こんな『売れるから』みたいな歌詞なんて、ゴミだ。なんの価値の無いゴミクズだ。なぜなら、これからはお前らしさを何も感じないからな」

 

 こんな歌詞、ひとりは全然好きじゃないことくらい、ジョニーだって知っている。伊達に数年、ひとりに取り憑いていないのだ。

 

「バンドが個性を出さなくなったら、そのバンドにはなんの価値も無い。ただ売れ筋の歌だけを歌う機械だ。そんなバンドはな、直ぐに誰からも見向きされなくなる」

 

所謂、量産型とでも言うのだろうか。皆が好きで売れるからと言って、そんな歌詞の曲ばかりのバンドなんて、自然に淘汰されて行く。

 事実、ナイトシティではそもそもそんなバンドは売れすらしない。売れているバンドは皆、それぞれ自分らしさのある個性を全面に出していた。ジョニー自身も、企業に対する恨みを歌詞にして曲を作り、大勢から支持されて人気となっているし。

 

「お前もバンドマンなら、自分らしさを出せ。自分の個性を全面に出せ。こんな書きたくもない、売れるからみたいなゴミクズのような歌詞なんてやめろ。わかったな?」

 

「で、ですが、それだと暗い歌詞しか…」

 

「それがてめぇのらしさであり、個性であり、強みだろうが。無理して変な事書くより、自分らしい個性を出した暗い歌詞の方が何百倍もマシだ。いいから自分の好きに書け」

 

「は、はい」

 

 ジョニーからの警告を聞いたひとりは、少しビビりながらも、2度とこういった歌詞は書かないよう心に誓う。

 

(自分らしさ…個性…)

 

 正直、自分の思いのままの歌詞なんて、暗くてジメジメして陰鬱な歌詞になるだろう。そんな物、喜多に歌わせていいのか疑問だ。

 

 しかし、それはひとりにしか書けない歌詞でもある。少なくとも、喜多や虹夏には絶対に書けないだろう。

 

(やってみよう…)

 

 自分にしか書けないなんて、ちょっとかっこいい。ならば、それでいこう。正直、出来るかどうかわからない。完成したとしても、バンドメンバー3人に受け入れてもらえるかもわからない。しかし他の手段がないし、何よりこれ以上ジョニーに何か言われたく無い。

 

 

 

 2日後

 

「で、できた…」

 

 ひとりはなんとか、歌詞を完成させていた。

 

「ほう?悪くねぇな。てめぇらしさが出ていて良い歌詞だ」

 

「え、えへへ?そうですかね?」

 

「まぁ、サムライには採用させないがな。歌詞が暗すぎる。ケリー辺りが見たら唾を吐くかもな」

 

「あ、そうですか…」

 

 歌詞を見たジョニーからも、結構な評価を貰った。ひとりは少しだけ自信を着けた。

 

(でもこれ、大丈夫かな?)

 

 しかし、やはり不安だ。ジョニーはああ言っていたが、これが他3人に受け入れてもらえるかわからない。ひょっとすると、ダメな歌詞として吊るし上げられるかもしれない。そうなったら、苦しむ前に自分で終わらせよう。

 

「ん?」

 

 その時、ひとりのスマホが鳴った。ひとりはスマホを操作して画面を見ると、

 

『ぼっちちゃん、明日下北沢まで来て。ちょっとやりたい事できたから』

 

「ひぃ!?」

 

 そこには、虹夏からの飛び出しメッセージ。これを見たひとりは、普通に血の気が引いた。思えば、全然歌詞を完成させておらず、1度も連絡をしていなかった。ならばこれは、それに対する仕置きの呼び出し。

 

(で、でも歌詞は完成させたから大丈夫の筈…!)

 

 しかし今のひとりは、ちゃんと歌詞を完成させている。ならば、例えそうだとしても大丈夫だろう。

 

(あー、でも…万が一に備えて、土下座の準備だけはしておこう…)

 

 けれどやっぱり不安なので、謝罪の用意だけはする事にした。とりあえず、紙に謝罪文を書くところから始めよう。

 

 

 

 翌日 下北沢

 

 現在ひとり達結束バンドの4人は、下北沢でアー写を撮りに街を歩いていた。昨日虹夏が呼び出したのは、これである。決してひとりに、何かしらの制裁を与えようとしたからでは無い。

 因みにアー写とは、アーティスト写真の事である。バンド活動をするなら、必須とも言える写真だ。

 

「しかし、こうして歩くと良い街だな。幽霊なのが惜しいぜ」

 

 勿論、ジョニーも一緒だ。そしてジョニーは、下北沢の街を見て割と楽しそうにしている。ナイトシティで言うと、カブキに近い気がする町並み。様々な音楽ショップや、古着屋や飲食店。幽霊じゃなければ、是非ちゃんと歩いて楽しみたい。

 

「あ!こことかどうですか?結構良さげな壁だと思いますけど」

 

 女子高生4人、幽霊1人が歩いていると、喜多がボロボロのポスターが貼ってあるれんが作りの壁を見つける。なんというか、下北沢らしい壁だ。

 

「そこ、前までよく行っていたCDショップだったところ」

 

「え?そうなんですか?」

 

「レコードショップも、ライヴハウスもどんどん無くなってるよねー」

 

「昔ながらの店が、どんどん消えていく」

 

 しかしそこは、以前までリョウが通っていたCDショップ跡地であった。時代の流れと共に、こういった店がどんどん消えていくのはやはり寂しい。

 尤も、リョウはそうなったらなったらで新しい店を探してそこに行ったりするのだが。

 

「ナイトシティでも、古い店はあまり残ってなかったな。俺の故郷のように、企業によってどんどん立ち退かされて、土地開発されていってたし」

 

「え?故郷?あの、ジョニーさんの故郷って、その、もしかして、無くなったって事ですか?」

 

「ああ。俺が戦争に行って脱走して帰ったら、クソ企業のせいで跡形も無かったよ。家族も、どこに行ったかわからなかったな」

 

 突然の事実に、ひとりはかなりの衝撃を受ける。家が無くなるじゃない。故郷そのものが無くなるのだ。そんなの、ひとりには想像できない。ひとり自身、あまり郷土愛なんて無いが、それでも間違いなくショックを受けるだろう。

 

「だが、故郷が無くなったおかげで、俺はサムライを結成できたんだ。そういう意味では、悪くなかったな」

 

 しかし、ジョニーは悲しそうな顔どころか、満足そうな顔をしてそんな事を言う。戦争と故郷が無くなったおかげで、その怒りを曲に込めて歌う事ができ、その結果信頼出来る仲間と共にサムライを結成できたのだ。

 怪我の功名と言うには、少し怪我が大きすぎる気がするが、それでもジョニーはそれで良かったと思っている。

 

 それはそれとして、企業は絶対に許さないが。

 

(ナイトシティって、本当に怖い街だよね…)

 

 ひとりが住んで生きてるこの日本とは何もかも違う街、ナイトシティ。下北沢だって治安が悪い場所があったりするが、それでもナイトシティ程じゃ無いだろう。

 そもそも、アダム・スマッシャーという化物がいる街だ。もし自分がナイトシティに行ったら、半日も持たずに死んでいるかもしれない。本当、そんな街に生まれなくてよかった。

 

(日本、ありがとう…)

 

 ひとりは、今自分がこの国に住んでいる事に感謝する。

 

(あ、あそこ…いいかも。虹夏ちゃんに言ってみよう)

 

 そしてふと見つけた壁が丁度良さげだったので、そこでアー写を撮影してみようと皆に提案してみる事にした。

 

 

 

「うん!結構いいねここ。じゃあ皆、そこに並んでー」

 

 ひとりが見つけた良さげな壁は、虹夏達にも受けが良かった。なので早速、ここで4人並んだアー写を撮る事にした。

 

「うーん。メンバーのキャラは出てるけど、イマイチバンド感は無いねこれ」

 

 しかし撮影された写真は、なんというかただの集合写真。これでは、アー写とは言えない。そして写真を見たひとりは、ふと気になる事があった。

 

(そう言えば、ジョニーさんって写真に写ったりするのかな?)

 

 幽霊であるジョニーが、写真に写るかどうかというものだ。思えば、なんか怖くて今までずっとスマホでジョニーを撮影した事が無かった。この機会に、後でこっそり写るかやってみよう。

 

「にしても、喜多ちゃんはどれも写真写りが良いねー。まるでモデルだよー」

 

「そんな事無いですよ。先輩方もすっごく綺麗に写ってますし」

 

「いやいや、喜多ちゃんは私達の中でも飛び抜けて写りが良いよ。何かさ写真慣れしてる気がするし」

 

「あ、それはイソスタによく写真をあげてるからですね」

 

「そうなの?」

 

「はい、ほら」

 

 そう言うと喜多は、自分のイソスタを見せる。その写真は、全部なんかキラキラしていた。流石SNS大臣である。

 

「ぎゅうっ!」

 

「ぼっちちゃん!?」

 

 そんな写真を見たひとりは、その場で倒れて瀕死状態になる。これまで生きてきて、集合写真以外で写真なんて撮った事の無いひとり。

 なぜなら、友達がいなかったから。その事実に耐えきれず、ひとりは瀕死になってしまったのである。今どきの女子高生で、自分と同じ子がいるのか疑問だ。てか、多分いない。

 

「そうだ!ぼっちちゃんもイソスタ始めたら?」

 

「そうだわ後藤さん!バンド活動するなら、メンバー個人のアカウントも必要だし!やりましょう?」

 

 そして虹夏と喜多のその言葉を聞いて、ひとりはとうとう限界を迎えてしまった。

 

「■■■■■■■■■ーーーー!?」

 

「どうしたのぼっちちゃん!?」

 

「後藤さん!?大丈夫!?」

 

「おお、凄い。記念に撮影しとこ」

 

 まるでバグったみたいに、奇声を発しながらその場で蠢くひとり。

 

 だってもし、自分がイソスタなんて始めたら、絶対に承認欲求モンスターになる。多分、色んな事をして大恥をかいたり、いいねの為に変な事をしてバンドメンバーに迷惑をかけるだろう。それだけはダメだ。

 

「何だこれ…まさか、サイバーサイコシスか?」

 

 そしてジョニーは、そんなひとりを見て、ナイトシティで問題になっていたサイバーサイコシスかと思う。

 しかしひとりにはインプラントなんて入っていないので、サイバーサイコシスを発症する訳が無い。じゃあ、これは何なのか。答えは誰にもわからない。

 

 

 

 正気を取り戻したひとりと共に、再びアー写撮影をする4人。しかし、中々良い写真が決まらない。

 

「あ。ジャンプとかどうですか?」

 

「お、いいねそれ」

 

 ここで喜多が、ジャンプをしてみようと提案。そして皆で並んでジャンプして、撮影をしてみた。

 

「あ、ぼっちのパンツが」

 

「とんでもない物が写っちゃったねー」

 

「あ、無価値な物写してすみません…」

 

「もっと可愛い反応期待してたんだけど…」

 

 ひとりの下着が写るというハプニングがあり、その写真は消去。再びジャンプして、新しい写真を撮る事にした。

 

「ふーん。ナイトシティじゃ、こんな撮影機器あまりなかったな。大抵誰もが目にインプラント埋め込んでたし」

 

 その時、ジョニーが写真に割り込んできた。どうせ自分は映らないだろうという確信あっての行動である。

 

「うん!今度はいいんじゃない!」

 

「ですね!バンドらしさと青春っぽさが合わさっていいですよこれ!!」

 

(やっぱり、写真には映らないんだ…)

 

 幽霊だからなのか、それとも何か別に要因があるのかは知らないが、やはりジョニーが写真に写る事はなかった。

 

 

 

 アー写撮影を終えて解散した後、ひとりは近くの公園にあるベンチに座っていた。

 

「歌詞、見せればよかった…」

 

「てめぇは本当にいつもそうやって後悔しやがる。何で行動を起こさねぇんだ」

 

「す、すみません…」

 

 折角出来た曲の歌詞。それが書かれたノートを持ってきたのに、アー写撮影に夢中ですっかり見せるのを忘れていた。しょうがないので、また明日にでも見せるとしよう。

 正直、見せるのはかなり怖い。でも、ここでずっと立ち止まっていても何も解決しない。ならば、勇気を出して歌詞を見せよう。

 

「ん?」

 

 ひとりがそう思っていると、スマホにメッセージが届く。

 

「リョウさん?」

 

 差出人はリョウであり、何やら近くになる飲食店まで来てほしいという内容だった。丁度良い。リョウなら気とか使わずに物事を言ってくれるだろうし、先ずリョウに歌詞を見せてみよう。

 

「行ってみよう」

 

 そしてひとりは、リョウが指定した飲食店まで行く事にした。

 

 

 

「へ、へい大将…やってるー?」

 

「……はぁ」

 

(ため息つかれた!?)

 

 指定されたカフェに入ったひとりだったが、どうやって入ればいいかわからずに何故か馴染みの居酒屋に入る客のような言い方で入ってしまった。そしてそれを見ていたジョニーは、ため息をつく。

 

「あ、ぼっち。こっちこっち」

 

「あ、はい」

 

 店内にいたリョウに手引きされ、ひとりはリョウの隣のカウンター席に座る。

 

「むぐむぐ…」

 

 リョウはずっと、カレーを食べている。今話しかけるのはなんか失礼だと思い、ひとりはお冷を飲みながらリョウが食べ終わるのを待つ事にした。

 

「おいひとり。俺もそのカレー食いてぇからお前も注文しろ」

 

「え?」

 

 しかし待っていると、ジョニーがカレーを注文するように言ってくる。どういう訳か、ひとりが食べた物はジョニーも味わって腹が膨れる事が可能。この謎現象があるので、ジョニーは今リョウが食べているカレーを食べたいのだ。だってナイトシティじゃ、あんな料理無かったし。

 

「えっと、あまりお金が…」

 

「早くしろ」

 

「あ、はい」

 

 あまりお腹は空いていないのだが、ジョニーに凄まれて言われると逆らえないのでひとりはカレーを食べる事にした。

 

「ごちそうさま」

 

「ご、ごちそうさまです…」

 

 なんとかカレー食べ終えて、2人は一息つく。かなり美味しいカレーだった。

 

「ふぅ…マジでうめぇなこの世界の飯は。これだけに関しては、もうナイトシティには戻れねぇわ」

 

 ジョニーも、大変ご満悦である。そして食べ終わったひとりは、そろそろリョウに聞いてみようと思い口を開く。

 

「あの、どうしていきなり私を呼んだんですか?」

 

「いや、そういえば2人で話した事なかったなって」

 

「あ、そういえばそうですね」

 

 確かに、これまでリョウと2人きりになった事はなかった。親睦を深めると思えば、何もおかしい事では無い。

 

「あと、もしかしてぼっちは、歌詞作りがかなり難航してるんじゃないかなって思っただけ。もしそうなら、話し聞くよ?」

 

「あ…」

 

 いや、こっちが本命だろう。恐らく彼女は、ひとりがかなり苦労しているのを見破ったのだ。そして同じバンドメンバーであり、作曲担当として1度話しを聞こうとしているのだろう。

 そうだとしたら、リョウは結構しっかりしているし、周りをよく見ている。ひとりはリョウを、色々と見直した。

 

「え、えっと、一応完成はしてるんですが、自信無くて…」

 

「それ今ある?」

 

「あ、はい。あります」

 

「じゃあ見せて」

 

「わ、わかりました」

 

 そしてひとりは、リョウに歌詞の書かれたノートを差し出す。

 

「個人的にこのサインは、ロックバンドとしては子供っぽい気がする」

 

「そのページじゃないです」

 

「だよなぁ。ガキっぽいよなぁ、だせぇし」

 

 でも最初の感想は、ひとりが書いたサインについてだった。

 

 

 

 その後、歌詞を何度も見るリョウと、それを隣で見守るひとり。そして後ろの空いている席でぐーたらしているジョニーという絵面がカフェ内で見られる事になる。尤も、ジョニーに関してはひとり以外には見えないが。

 

「……ちょっと歌詞暗いね」

 

「あ、ですよね…すみません…」

 

 数分後、歌詞を読み終えたリョウから出た感想は、それだった。やはりかと、ひとりは思う。

 

「で、ですが、それが私の個性と言いますか、強みと言いますか…最初は喜多さんに似合うような明るい歌詞書いてたんですけど、どうしても上手く書けなくて…だから、自分らしい歌詞を書いたら、そんな風に…」

 

 でも、これがジョニーに言われた自分の個性なのだ。今更、明るい青春応援ソング系の歌詞なんて書けないし、そんな無責任な歌詞は自分が嫌だ。

 だから、これで納得させるしかない。勿論、書き直せを言われたらそうするつもりだ。そして例えそうなっても、この自分らしさは変えない。

 

「それで良いと思うよ。ぼっちらしくてさ」

 

「え?」

 

「多くは無いだろうけど、刺さる人には刺さるんじゃないかな」

 

 しかし、リョウの評価はかなり良かった。確かに暗いかもしれないが、ひとりらしさが出ていてかなり良い。これなら、結束バンドにもってこいの曲になるだろう。

 

「だから言ったろ。それでいいって」

 

 ジョニーも、リョウに同意する。

 

「私、前は別のバンドにいたんだよね」

 

「え?」

 

 すると当然、リョウは話し出した。以前は別のバンドに所属していた事。そのバンドの、青臭いけど真っ直ぐな歌詞が好きだった事。でも売れるために、売れ線の歌詞ばかりになって、個性が死んでつまらなくなった事。

 そんなバンドを抜けたら、虹夏に誘われて結束バンドに所属した事。それら、自分に起こった出来事を全部ひとりに話した。

 

「それに比べるとさ、ぼっちの歌詞は本当に良いよ。個性の塊だもん。だから、このままで良いと私は思う」

 

「ほ、本当にいいですか?根暗で暗い歌詞ですけど」

 

「うん。だってそれ、リア充っ子に歌わせたら凄い面白いじゃん」

 

 確かに、喜多がこれを歌うのを想像すると面白い。

 

「バラバラな個性が集まって、ひとつの音楽になって、それが結束バンドの色になる。だから、これでいい。いや、これがいい

 

「は、はい!」

 

「へぇ?結構良いこと言うじゃねぇかこのガキ」

 

 リョウに言われ、ひとりはかなり嬉しい気持ちになる。

 

「え、えへへ」

 

「ふふふ」

 

「えへへへへへへへへ」

 

「ふふふふふふふふふ」

 

「気持ち悪ぃ…」

 

 そして何でか、以心伝心したように笑い合う2人。でも端から見たら、普通に気持ち悪い。良い子の皆は、場所を選んで笑おう。

 

「にしてもよかった。ぼっちが売れ線みたいな歌詞書かなくて」

 

「あ、ジョ…ギターを教えてくれた人から、そんな歌詞はゴミ同然って言われまして…」

 

「…ぼっち、その人とまだ付き合いあるの?ギター教えて貰って頭上がらないかもだけど、縁切った方がいいよ?」

 

「えっと、切りたくても切れないと言いますか…」

 

「ねぇ、やっぱりこのままDV相談窓口に行かない?私付き添うよ?店長達も相談に乗ってくれるだろうし」

 

「え、えっと、そういう事じゃなくてですね…」

 

 後、相変わらずジョニーの事になるとひとりを心配してくる。これはリョウだけじゃなく、他のメンバーも同じだ。

 確かにリョウも割とクズな部分はあるが、ひとりの言うジョニーに比べると全然マシ。そもそもリョウは、お金の管理にだらしないだけで、平気で人を殴ったりはしない。てか殴るなんて出来ない。そういう意味では、リョウは全然まともだろう。

 

「ごめんぼっち。今お金無いから、ここ奢って。今度のバイト代で返すから」

 

「え」

 

「お願い。必ず返すから」

 

(もしかして、最初から私に奢らせる為に呼んだ?)

 

 そして店を出る際、リョウにそんなお願いをされ、ひとりは致し方なくカレー代を払う事にする。2人分だったので、お財布が結構軽くなってしまった。

 

 この時、先ほどまで上がっていたひとりの中のリョウの評価が、著しく下がっていった。流石にジョニーレベルでは無いが、それでもかなり下がった。そして今度のバイト代で、必ず返して貰う事を約束し、ひとりは帰路に付く。

 

 因みにカレーを食べてしまったので、その日の夕飯をひとりはあまり食べる事が出来なかった。

 

 

 

 

 翌日 ひとりの自室

 

「うへへへへへへへ」

 

 翌日の夜、ひとりは自室でにやにやしていた。今日の昼、STARRYで結束バンド全員に歌詞を見せたら、かなり好評だったからである。

 おまけにアー写のデータも貰い、それを部屋一面に飾っている。今までこんな写真撮ってこなかったので、本当に嬉しい。まさに今の自分は、陽キャといえるだろう。これなら、今後もバンドもバイトも頑張れる。

 

「怖…」

 

 そしてそんなひとりを見て、ジョニーはドン引きしていた。だって正直、アダム・スマッシャーより不気味で怖いし。

 

 

 

 

 




 最初は結束バンドがナンパされ、それがあまりにしつこくウザかったのでジョニーがぼっちちゃんに憑依し、ナンパした奴らをボコすという展開を考えていましたが、なんかしっくり来なかったので没に。そのお話は、いずれどこかで書きます。

 次回はまたいずれ。もしくは2期始まったら書くかも。
 それでは、じゃあね。

クロス元の作品知ってる?

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