南雲雅?俺じゃん。   作:ざったなっつ

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40話「南雲銀行の総資産」

 

 

 網倉と小橋とは集合時間を決めてから一旦別れ、自室に戻って私服に着替えた俺は、録画していたアニメを見ながら適当に時間を潰していた。

 

「……っと、そろそろ時間か」

 

 気が付けば約束の時間の15分前。

 2年生寮から1年生寮までは2分もかからないためまだまだ時間に余裕はあるが、早めに出て一階のロビーで寛いでいてもいいだろう。

 

 そう思いながら1年生寮に到着すると——

 

「あっ、南雲会長」

 

 ——見覚えのある女子生徒が、見覚えのない格好で入り口の前に立っていた。

 

 白のショートパンツに白のキャミソール。その上から薄手のカーディガンという火力高めな装備一式を身に纏い、元気よくこちらに手を振っているのは、1年A()()()()のリーダーを務めるピンクルームの最高傑作——一之瀬帆波だ。

 

「おっふ……」

 

 手を振るたびに踊るように揺れるストロベリーブロンドの長髪と……おっきいおっぱい。

 男のIQを著しく低下させる絶景を前に、思わずおふってしまった。眼福だ。

 

「南雲会長、どうかしました?」

「ああ、いや、なんでもないよ。それより、わざわざ待っててくれたんだね。寒くはなかった?」

「大丈夫です。今日は比較的暖かいので」

 

 そう答えながら太陽のような笑顔を見せる一之瀬。

 眩しいっ、時刻は夕方なのに気分は正午だ。

 

「そういえば、今日は普段見ない服装だね」

「あ、はい。えと……実はこれ、部屋着なんです。南雲会長も来るって聞いて、もっとちゃんとした服にするつもりだったんですけど、夢ちゃんたちにこの服の方が絶対いいって言われちゃいまして……」

 

 一之瀬はそう答えながら、少し恥ずかしそうにカーディガンを羽織り直した。

 なるほど、部屋着だったからいつもより山々が雄大に見えたのか。この選択に至らせた小橋たちにはグッジョブと言わざるを得ない。

 

「お見苦しい格好ですみません」

「いやいや、そんなことないよ。その部屋着も一之瀬によく似合ってるし、むしろ普段見れない姿を見れて得した気分だ。部屋着姿もそんなに可愛いなんて、一之瀬は本当におしゃれさんだね」

「〜〜っ!」

 

 耳まで赤くした一之瀬に顔を背けられてしまった。

 褒めすぎるのも良くないと先日学んだため、本気の1割程度の出力で褒めたのだが……それでも少し多かったらしい。

 加減って難しいね。

 

「えと、そ、それじゃあ部屋に行きましょう!こちらです!」

「あっ、うん」

 

 顔の熱を冷ますように手をパタパタさせている一之瀬に続いて、エレベーターに乗る。とりあえず寒くはなさそうで安心した。

 

「ここです。どうぞ」

「おお、ここが……お邪魔しまーす」

 

 一之瀬に急かされるまま部屋に入ると、キッチンで食器の準備をしている小橋がいた。

 

「あっ、さっきぶりです南雲先輩」

「さっきぶり、小橋さん」

「みんなー!南雲先輩きたよー!……って、帆波ちゃん顔真っ赤だけどどうしたの?もしかして……エッチなことした?」

「してないよ!もぅ、行きましょ南雲会長」

 

 一之瀬に背中を押されながらリビングに入ると、中では4人の女子がお菓子やデザートをテーブルの上に並べているところだった。

 部屋着うんぬんの話をした時からそうではないかと思ってたけど、今回のお疲れ様会に俺以外の男子はいないようだ。

 

「南雲先輩、さっきぶりです」

「うん、網倉さんさっきぶり。白波さんは、久しぶりだね」

「お久しぶり、です……」

 

 明るい笑顔の網倉と暗い笑顔の白波に挨拶を交わした後、初めましての女子2人へ視線を向ける。

 

「君たちは……」

「あっ、えっと、二宮唯っていいます。よろしくお願いします」

 

 初めましての女子1人目は、原作の2年生編において学力A -の評価を受ける一之瀬クラスの秀才の1人——二宮唯だった。

 緑がかった髪色のポニーテールに整った顔立ち。挿絵とかなかったから分からなかったけど、こんな容姿だったのか。美人だ。

 

「私は安藤紗代です。よろしくお願いします」

 

 初めまして女子2人目は、2年生編3巻のカラー挿絵にも描かれていた高身長ショートヘア女子——安藤紗代だ。

 原作では活躍描写が少ないものの、バレー部所属で運動神経が高く、同じクラスの柴田に恋心を抱いており、一之瀬に匹敵するほど豊満な胸部を持つという設定盛り盛りな女子生徒である。

 

「二宮さんと安藤さんか。南雲雅です、こちらこそよろしくね」

 

 そう返しながら、ふと疑問を覚えた。

 一之瀬、網倉、小橋、白波の4人はよく一緒にいるイメージだけど、そこに二宮と安藤が加わっているのは少し違和感がある。原作では見たことのない組み合わせだ。一体どういう集まりなんだろ?

 

「今回はペーパーシャッフルの問題作成に関わったメンバーだけでのお疲れ様会なんです」

 

 俺の疑問を察したのか、一之瀬が説明を始めてくれた。

 

「神崎くんと浜口くんも問題作成を手伝ってくれたので、お疲れ様会に誘ったんですけど……クラス全員での打ち上げもあるから今回は遠慮するって言われちゃいまして」

「なるほど、それでこの6人の集まりになったのか」

 

 そして、そこに野生の南雲が参加することになって、ハーレムお疲れ様会になっちゃったわけね。

 

「今更だけど、俺が参加して本当に良かったの?女子だけで話したいこととかもあったんじゃない?」

「私は南雲会長が参加してくれて嬉しいです!」

「私もでーす!」

「女子会は時々開いてますからね〜」

「えっと、私も嬉しいです!」

「南雲先輩と話せる機会なんて滅多にないもんねー」

「私も……嬉しい、です」

 

 一之瀬だけでなく、小橋と網倉と二宮と安藤も俺の参加を心から喜んでくれているようだ。ありがたい。

 白波の言葉だけは全く心がこもってなかったけど、空気を読んでくれただけでも非常にありがたい。

 

「それでは、ペーパーシャッフルの問題作成……お疲れ様でしたー!」

「「「「「「お疲れー!」」」」」」

 

 こうして始まったお疲れ様会は、予想以上に楽しかった。

 網倉と小橋が一之瀬のドジ可愛いエピソードを教えてくれたり、二宮が勉強のコツを聞いてきたり、安藤がバレー部の話をしてくれたりと、みんなが積極的に話しかけてくれるお陰で何の抵抗もなく輪の中に入ることができたためだ。

 

 そして意外なことに——

 

「帆波ちゃんは優しくて、可愛くて、お話も上手で、本当に天使のような存在なんです」

「わかるよ。努力家で、勉強もできて、笑顔も素敵で、魅力に溢れてるよね」

「そうなんです!」

「一之瀬は仕事が早くて丁寧だから、生徒会でもみんなに頼られてるよ」

「そ、そうなんですか!?生徒会での帆波ちゃん……」

「良ければ色々話そうか?」

「是非お願いします!」

 

 ——一之瀬という共通の話題のおかげで、白波との会話も相当盛り上がった。

 未だライバル視されていることには変わりないが、それなりに仲を深めることはできたと思う。

 

「ううぅ……」

 

 ちなみに、俺と白波が楽しげに話す時間を邪魔したくないと思ったのか、一之瀬は黙ったまま延々とベタ褒めされ続けていた。

 最後のほうは顔を真っ赤にして布団に頭を突っ込んでいたため、相当恥ずかしい思いをさせてしまったようだ。すまない一之瀬、今度何か埋め合わせをするよ……。

 

「あっ、そういえばこの前の事件なんだけどさ」

 

 そんなこんなで話が盛り上がっているうちに、いつの間にか先日あったとある事件へと話題は移り変わった。

 

「まさか龍園くんがちょっかいかけてくるとは思わなかったよね〜……」

「ほんと、びっくりしたね」

「帆波ちゃんは大丈夫?あの後は何もされてない?」

「大丈夫、何もされてないよ。心配してくれてありがとね」

 

 その事件とは、ペーパーシャッフルの期間中に1年生全員のポストへ『1年Bクラス一之瀬帆波が不正にポイントを集めている可能性がある。龍園翔』というプリントが入れられていたというものだ。

 原作でも同様のタイミングで発生していた事件である。

 

 なお、この事件の真犯人は容疑者X小路であるため、厳密には龍園も被害者なのだが……俺はX小路と敵対するつもりも龍園を庇うつもりもないため、この事件に関して余計なことを言うつもりはない。

 原作通り、今回の事件の真相は闇の中へさようならだ。

 

「たしか、一之瀬が持ってる大量のプライベートポイントに関する話だよね?翌日に学校へ事情を説明して、すぐに疑いを晴らしたんだっけか」

「南雲会長も知ってたんですか?」

「報告書で見たからね」

 

 今回の一件は審議が開かれるほどの問題ではなかったが、報告書は学校からもらっていたため内容は全て知っている。

 まぁ、原作知識で前世から知ってはいたけども。

 

「先生方に説明したらすぐに納得してもらえて驚きました。後から噂で聞いたんですけど、私と似たような方法でポイントを集めている先輩がいるみたいで、その先輩の前例があったお陰で話が早かったんだと思います」

「似たような方法でポイントを集めている先輩……」

 

 それ、絶対俺のことじゃん。

 まさかそんな噂が流れていたとは……。

 

 まぁでも、南雲銀行の存在は2年生の間では周知の事実だし、特に隠している情報でもないため、普通に考えれば広まっていてもおかしくはない。

 むしろ俺の名前が広まってないことのほうが驚きだ。

 

「南雲会長、どうかしましたか?」

「いや、それ俺の話だなーって思ってね」

「えっ!?」

 

 驚く一之瀬たちを見ながら言葉を続ける。

 

「俺も一之瀬と同じで、クラスのみんなから毎月一定額のポイントを集めて貯めてるんだ。退学者が出た時の対策としてね」

「そうだったんですね!南雲会長と同じ考えだったなんて、嬉しいです!」

 

 ただでさえキラキラしている目をより一層キラキラさせながら、一之瀬は喜んでいる。

 だが、すまない一之瀬。南雲銀行は俺が考えたものではなく、原作のキミの作戦をもろパクリしたものなんだ……。

 謎の罪悪感が胸を締め付ける。

 

「南雲先輩はいつ頃からポイントを貯め始めたんですか?」

「たしか、去年の8月からだったかな」

 

 網倉の質問に答えながら記憶を遡る。

 

 創業1年ちょっとの南雲銀行は、去年の無人島試験の翌月(1年目の8月)が開設日だ。

 最初はクラスのみんなから1人5万ポイントずつ集める形で始まり、今年度の初めに1人10万ポイントずつへ設定額を変えながら貯蓄を続けている。

 他にも、B、C、Dクラスから毎月徴収していたポイントも全て南雲銀行に貯蓄しているため、現在は中々のポイントが貯まっていた。

 

「去年の8月からってことは、もう1年以上貯めてるんですよね?どれぐらい貯まってるんですか?」

「ちょっ、夢ちゃん」

「な、南雲先輩が困っちゃうよ」

 

 どストレートな質問を投球してきた小橋を、安藤と二宮が注意してくれている——が、総ポイント数なんて知られても特に問題はないため、俺としては教えても全然構わない。

 一之瀬のアイディアを使わせてもらったお礼も兼ねて、「頑張って貯めたらこれくらいになるよ〜」という基準を見せるのは全然アリだ。

 

「知りたいなら見せてもいいよ」

「えっ!いいんですか?」

「隠すほどの情報でもないからね」

 

 小橋にそう返しながら学生証端末を操作していると——

 

「もう2000万ポイント以上貯まってたりして……」

「流石にそれはないんじゃない?」

「でも1年以上だから、1000万ポイントは超えてるかもよ?」

「い、1000万……」

「1人当たり毎月2万ポイントって考えたら、確かにそれくらいかも」

 

 ——一之瀬を除く5人が貯蓄ポイントの考察をしながら、好奇心に溢れた目で俺の学生証端末をチラチラと見ている。

 小橋を注意してくれた安藤と二宮もやはり気になっていたようで、ワクワクした表情を隠せていない。

 その気持ちわかるよ。他人の貯金額とかってちょっと気になるよね。

 

「南雲会長、本当に見せてもらっていいんですか?」

「全然いいよ、知られても問題ない情報だからね。それとも、頑張ったらどれくらいポイントが貯めれるのか、一之瀬は気にならない?」

「えと……気になります」

「素直でよろしい」

 

 申し訳なさそうな表情の一之瀬に笑顔を向けた後、みんなに学生証端末の画面を見せた。

 

「はい、これが2年Aクラスで貯めてるポイントだよ」

「えっと……いち、じゅう、ひゃく、せん……えっ?」

「773万……?」

「ま、麻子ちゃん、もう一つ桁上かも」

「な、7730万……!?」

「えっ、だって、クラス全員から毎月10万ポイントずつでも足りないんじゃ……」

「な、ななせん、ななひゃくまん……」

 

 一之瀬たちが驚愕の表情で見つめる学生証端末の画面には、7730万(端数は割愛!)という数字が表示されている。

 これが南雲銀行の現在の総資産だ。

 

 なお、この中の168万ちょっとは俺の個人資産なため、実際のクラスのポイントは約7562万である。

 現時点で退学者を3人まで救済可能なポイントだ。

 

「あの、南雲会長のクラスは毎月何ポイント集めることにしているんですか?」

「以前は1人5万ずつだったけど、今年度からは10万ずつにしてるね」

「えっ、でも、それだと計算が……」

「実は他にも収入源があるんだ」

 

 試験内容についてはぼかしながら、契約によって他クラスからも毎月140万ポイントの収入があったことをみんなに説明した。

 まぁ、今はBクラスからの毎月40万ポイントだけになったけど。

 

「す、凄すぎ……」

「これが歴代最高のリーダーなんだ……」

「同じ学年じゃなくて助かったかも……」

「ほんと、1年の他のクラスに南雲先輩がいたら絶望してたかもねー」

「これが、南雲先輩の実力……むぅ」

 

 網倉たちは諦めに似た表情で感想を言い合っている。

 モチベーションの向上に繋がればと思って見せたのだが、逆に自信をなくさせてしまったかも知れない。しくじったな……。

 そう思っていると——

 

「あの、南雲会長!」

「ん?なに?」

「南雲会長のようになる道筋は、今の私には()()見えないですけど……でも、諦めるつもりはありません。私も南雲会長みたいなリーダーになれるように頑張りますので、その……見ててください!」

 

 ——一之瀬が揺るぎない眼差しで決意に満ちた言葉を伝えてきた。

 良かった、一之瀬のモチベーションはちゃんと上がったようだ。さすがは作中屈指のつよつよメンタル持ちである。

 

「頑張ってね。ずっと見てるから」

「はいっ!」

 

 そんな言葉を交わしながら微笑み合う俺と一之瀬を、網倉たちは優しい目で、白波は複雑な感情が入り混じった目で、静かに見守ってくれていた。

 

 






〜ちょこっと解説〜

・一之瀬の部屋着
 2023年くらいに発売されていた抱き枕カバーの姿。エロい。

・二宮唯の姿
 アニメ4期の無人島試験において、深緑色の髪をポニーテールにした姿で登場していた……と、思う。人違いだったらすみません(;´д`)

・南雲銀行の総資産の内訳
 自クラスの全員から毎月5万ポイントずつ(今年度からは毎月10万)。
 B、C、Dクラスから毎月140万(現在はBクラスからの40万のみ)。
 無人島試験でDクラスが獲得したポイントから約400万を徴収。
 桐山の退学回避のためにBクラスへ貸した500万はすでに回収済み。
 綾小路からの過去問代やら体育祭のボーナスやら夏祭り試験のボーナスやらその他諸々で+113万5千ポイントくらい。
 生徒会業務や授業中のボーナスなどなどで、南雲くんは月平均5千ポイント程度の収入あり。
 毎日無料品コーナーを漁りながら節約しているため、南雲くんの支出は月平均1万ポイント程度。

 結果!2年生編12月現在のポイントは……。

 南雲銀行の総預金額→約7730万ポイント。
 南雲くんの個人資産→約168万ポイント。

 大雑把計算なので間違ってたらすみません(;´д`)
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