八神の憎悪を消し、純粋にオレに挑戦する後輩に仕立て上げた。これで、原作のようにオレを退学させるために裏から仕掛けようとする――なんてことはしてこないだろう。多少の妨害をすることはあっても、基本的にストレートに結果での勝負をしてくるはずだ。
これで1年の動きについてもほぼ掌握したと言って良い。2年で敵になるであろう坂柳と龍園についても対策は考えているし、3年も既に南雲包囲網を完成させつつある。
そんな感じで準備が着々と進む中、後一週間程でグループ作りも終わりになろうというギリギリのタイミングで、ようやく南雲の停学が終わった。それと同時に、オレの携帯に南雲から呼び出しがかかる。丁度、連絡を取ろうと思っていたので逆に有難かった。
放課後になると、呼び出しを受けたケヤキモールのカフェへと向かう。停学が終わったばかりなので今日は学校には行かなかったのか、オレがカフェに着く頃には既に私服姿の南雲が優雅にティータイムを楽しんでいる姿が目に入ってきた。
「よう、綾小路。堀北先輩の卒業式以来か……」
「そうですね。お久しぶりです」
「久しぶりに店の紅茶を飲んだが、やはり美味いな。刑務所上がりで初めて外食をした人間の気持ちってのが良く分かったぜ」
翻訳すると、「良くもやってくれたな。混合合宿での借りはきっちり返させて貰うぜ」――と、いう所か。
まずは軽く様子見という感じだな。しかし、いくら南雲でも、停学中に出来たことなどタカが知れているはずだ。
大きくクラスメイトを動かせば、桐山辺りが南雲の介入を学校に指摘していただろう。そうなれば、停学している意味がないと、もっと大きな罰則を受けることだってあった。出来たのは精々、頼れる数人を動かして情報を集める程度だと見て良い。
「それで、何の用でしょう?」
「俺がお前を呼び出すんだ。要件なんか一つしかない。今回の無人島試験で俺と勝負しろ」
正直、向こうから提案してくれるとは思わなかった。しかし、南雲は自信に満ち溢れている。何か、オレに勝つための勝算があるということだろうか。
「いいんですか? 先輩は停学明けですし、準備期間も少ない……それに今の3年のAクラスとBクラスはCP差が少ししかなかったと記憶していますが」
「確かに、俺がいない間に桐山が頑張って追いつこうとしていたようだが、追いつけていない時点で勝負にならない。それよりも、俺が作った体制に穴が空いた方が問題だ」
「穴、ですか?」
「おいおい、ここまで来て誤魔化すなよ。お前が帆波を使って、3年C、Dクラスの生徒を俺の派閥から離反させたのはわかってるんだ。帆波は基本的に保守的な性格をしている。誰かの指示なしでこんな大胆な動きをしてくる女じゃない」
半年ほど一緒に生徒会で仕事をしていただけのことはあって、流石に南雲を欺くのは無理だな。
だが、現実として、3年Bクラスは反旗を翻し、Cクラス、Dクラスの大半も南雲との契約を破棄している。
純粋に損得なしで動く駒なんて数が知れている今、3年で南雲が動かせる人間はクラスメイトを含めて良い所40人いるかどうかだろう。こうしてみると多く見えるかもしれないが、クラスメイトが30人ちょっとだとして他が10人いるかどうかのレベルだ。
「なら、猶更まずいんじゃないですか? 他の3年がほぼ全て敵の状況でオレと戦うなんて、自殺行為としか思えませんよ」
「お前が桐山と組んでいるからか? どっちにしろ、心配は無用だ。お前は約束通り、ただ俺と戦えばいいんだよ」
そう言われると何も言えない。去年、クラス内投票で帆波のクラスを救うために、南雲には1000万を利子なしで貸して貰った。
条件は、南雲との勝負の場を作ること――つまり、南雲が今回の無人島試験で勝負を求めている以上、オレはそれを断ることが出来ない。まぁ、断るつもりなど最初からないが。
「約束ですからね。無人島試験で競うのは構いません。ルールは単純に、どちらの順位が上かを競うってことで問題ないですか?」
「ああ、それでいい」
当然ながら妨害有り、何でもありのバトルだ。純粋に得点だけ稼げば勝てるとはオレも南雲も思っていない。お互いに手持ちの駒を利用したバトル――いわばチェスに近い。
「……それと、最後に一つ条件を付ける」
これで話は終わり――と、思っていると、今までになく真剣な表情を浮かべた南雲がそう口を開いた。
条件か。まさか、ハンデが欲しいという訳でもないだろうが、どんな条件が付けられるのか少しワクワクしていると、南雲の口から飛び出たのは意外な言葉だった。
「俺がこの勝負に勝ったら、なずなに手を出すのを止めろ」
オレとなずなの関係は別に隠してはいないが大きく広めている訳でもない。故に、南雲が気づかなくても不思議はないと思っていたが、しっかり幼馴染の変化には気づいていたようだ。
「手を出す……とは?」
「今更隠すな。お前の部屋になずなが入って行ったのを見たってやつが何人かいるんだ。思えば、去年の冬くらいからなずなの様子が少し変だった。それも、お前と関わりを持ってからだ」
成程、確証はないが疑ってはいるという感じか。
それなら、もし南雲が今回の試験で勝負を挑んでこなかった時用に用意していたこれが役に立つかもしれない。
携帯端末を取り出して、一つの動画を再生して南雲に見せる。流石にこんな場所では音声は流せないが、映像だけでも十分なインパクトを与えることが出来るはずだ。
「手を出すというのはこういうことですか?」
「ッ!!」
そこには、Tレックスの猛攻を受けながら背を反らして髪を乱しているなずなの姿が映っていた。当然、お互いに全裸であり、なずなの後ろから撮った映像なので局部は映っていないが、体が動く度に大きなメロンが揺れる煽情的な姿が映っている。
音声があればなずなが喜んでいるとわかるだろうが、音声がないと顔が見えないせいで、明るい髪の女性が無理やり後ろから襲われているようにしか見えなかった。
しかし、南雲は長年の付き合いから、すぐにこの映像に映っている女性がなずなだと確信したようで、咄嗟に席を立ち上がってこちらに手を伸ばそうとしてくる。
「綾小路っ!!」
「おっと、静かに。騒ぎを起こしていいことなんてありませんよ」
停学明けの南雲にとって、暴力沙汰なんて起こした日にはそれこそ一巻の終わりだった。
こちらの襟首を掴もうとした手はギリギリで拳を握り、宙を彷徨っている。何とか腕を引っ込めるも、それでも憤りは隠しきれないようで、勢いよく椅子に座りながらこちらを睨みつけてきた。
「お前っ! やっぱり、なずなとっ!!」
「別に問題はないでしょう。南雲先輩と朝比奈先輩……いえ、なずなは付き合っている訳でもないんですから」
「お前がなずなの名を呼ぶな……っ!」
「南雲先輩がいけないんですよ。混合合宿で橘先輩をハメようとするから……なずなは最後まで、『雅はそんなことしなくても堀北先輩に勝ってくれる』と言っていました。もし、自分の言葉通りにならなかったら何でも言うことを聞くとまで言い切ってくれるくらいに」
実際は微妙に違うが、なずなが最終的に堕ちるキッカケになったのは、混合合宿での奴隷契約だったので間違いではない。
南雲も、なずながこんな目に合っているのは、暗に自分の撒いた種のせいだとわかると、音がするくらい強く歯を食いしばっている。過去の自分の行いを後悔しているのだろう。
もし、自分が真正面から堀北兄と戦っていればこんなことにならなかった。自分の欲を優先して、遊び半分で橘をハメようとしなければ、なずながオレに付け入られるようなことはなかったかもしれない――と。
「今のなずなは、オレの犬ですよ」
そう言って、裸エプロンで猫耳を付けながら、尻に猫の尻尾を付けているなずなの写真を見せてやる。猫耳カチューシャを付けて、真っ赤な顔で快感に耐えるなずなの姿は、一見すると痛みに耐えているようにも見えた。
「失礼、猫でしたね」
「俺が勝ったらなずなを開放しろ! その写真や動画も全て削除して貰う!」
「構いませんよ。ただし、こちらからも条件をつけます。勝負は今回の一度きり、南雲先輩が負けた場合、先輩の在籍するクラスの生徒全員は手持ちのPP含め、卒業まで入ってくる全てのPPをオレに譲ってもらいます」
「クラス全員のPPだと!?」
「別に問題ないでしょう? 勝てばいいんですよ。嫌なら別に拒否して貰って構いません。当然ながら、その場合はなずなはオレのペットのままですが……」
まぁ、仮に何かの間違いでオレが負けることになったとしても、混合合宿で結んだ奴隷契約が解除されるだけで、なずな自身がオレから離れるかどうかは保証しないがな。
何しろ、あくまで条件はオレからなずなへの命令権の破棄であって、なずな側からオレに近づいてくるのを禁止するものではない。勝っても負けてもオレは痛くも痒くもなかった。
「……いいだろう。乗ってやるぞ、その賭けに」
「では契約書を用意しましょう。後で問題になっても困りますし」
――契約。
・無人島サバイバル試験の結果で南雲雅が勝った場合、綾小路清隆と朝比奈なずなとの間で交わされた契約を破棄する。同時に、現在綾小路清隆が持っている朝比奈なずなに関係するものも全て破棄する。
・無人島サバイバル試験の結果で綾小路清隆が勝った場合、試験後から南雲クラスの生徒の持っているPP、以後卒業までに手に入る全てのPPを綾小路清隆に譲渡する。PPの受け渡しはPPが振り込まれた瞬間、自動的に綾小路清隆に譲渡されるように設定する。
「覚悟しろよ……お前に勝って、なずなを開放するっ!」
「では、オレが勝った時にはなずなの躾に南雲先輩を招待しますよ。丁度、無人島試験に行く時のクルーズ船で個室を借りる予定なので、楽しい宴をお見せできると思います」
見せるだけだけどな。
「お前っ――なかなかの挑発だぜ。ここまで俺を怒らせた人間はお前が初めてだ。精々、残り少ない日を楽しく生きるんだな。絶対に後悔させてやる……!」
「そうですね。なずなと一緒に楽しく過ごさせて貰いますよ、では、失礼します」
と、挑発をしつつ南雲の鋭い視線を受けながら、ケヤキモールの喫茶店を後にする。これで、全ての準備は整ったと言って良いだろう。
さて、なずなには表向きオレに無理やり襲われているように演技しろと言わなければ――まぁ、オレに逆らえないであろうなずなに、南雲が情報を共有するとは思わないが、少なくともなずなが裏切り者だと疑われる心配はなくなるはずだ。
◇◆
「おや、そこにいるのは綾小路か?」
南雲との勝負を決めた足で、ついでに買い物を済ませてしまおうと同じケヤキモール内にあるスーパーへと向かうと、たまたまケヤキモールを歩いていたと思われる鬼龍院に声をかけられた。
思えば、彼女と最後に話をしたのは混合合宿が終わった後なので、こうして会うのは実に半年ぶりとなる。
「お久しぶりです」
「久しいな、活躍は聞いているぞ。学年末試験で保険もなしに負けたら退学の勝負をしたり、難問のテストで満点を取ったりと大暴れしているらしいな」
大暴れ――まぁ、学年末試験で危ない橋を渡ったのは事実だが、あれも勝算あってのことだし、難問のテストで満点を取ったのだって別にそこまで凄いことでもない。
「鬼龍院先輩の興味を引くほどではないのでは?」
「そうでもないさ。お前の話を聞く度に楽しませて貰っている。次の無人島サバイバルが楽しみなくらいだ」
「ご期待に添えられるかどうかはわかりませんが……」
「謙遜するな。お前の能力なら1位だって余裕で狙えるだろう?」
「流石に1位は無理だと思いますが、いい成績は取りたいと思ってますよ」
「フフ、私も同じだ。上位に入ればPPが手に入る。こう見えて、手にした金は使ってしまうタイプでね、常に金欠なのさ」
と、話しながら一緒にスーパーに入って行く。鬼龍院は別にスーパーに用はなさそうだが、オレとの会話のためについてきたという感じだ。
「次の試験では南雲や桐山たちも当然1位を狙っている。後輩たちの中にも、それなりに有能な連中も揃っているのだろう? 次の試験は学校での1位を決める戦いでもある。が、前に聞いた君の性格的に、あまり興味のそそられるものではないようだな」
「前にも言いましたけど、オレはオレが楽しいと思えることをしたいだけです。学校での1位なんかに興味はありません――が、訳あって南雲先輩には負けられないんですけどね」
「ほう? 痴情のもつれか?」
「少し違いますが……まぁ、似たようなものです」
問題が起きているのはオレと南雲の間であって、なずなは何も関係がないので、正確には痴情のもつれとは言わないが、説明するのも面倒なのでそれで納得して貰う。
話しながら特売の商品をメインにカゴに入れていく。どうやら鬼龍院は普段、スーパーをあまり使わないようで、物珍しそうなものを見るかのようにカゴの中を覗き込んできた。
「手慣れているな。あまり自炊するようには見えないが、人は見かけによらないともいうからな」
「そういう先輩は料理しないんですか?」
「小さい頃、両親を喜ばせるためにチャレンジしたが、それ以来さっぱりだな。特別美味しい訳でも、まずい訳でもなく、両親も味よりも気持ちを喜んでくれたが、私はそれで料理にのめり込むほど殊勝な人間じゃなかった」
「まぁ、喜んでくれる顔が見たいというのは良く聞く理由ですけどね……」
鬼龍院はそういうタイプじゃなかったということだろう。
ちなみにセフレの中には、オレの食べる顔が好きで料理を作ってくれる層が一定数いる。名前を出すなら鈴音がそうだ。あいつは意外とオレの食べている顔が好きらしい。
「私の場合、日頃からコンビニか学食だ。スーパーに寄るのは総菜コーナーで出来合いのものを買うくらいだな」
「PPに困らないっていうのは羨ましいですね」
「君だってそこまで困ってないだろう?」
「今はそうですが、最初はDクラススタートでCPも80でしたからね。自炊して食費を浮かせるのは必須技能でしたよ」
そういえばPPで思い出したが、クラス内投票で南雲から借りた1000万PPはまだ返済していなかった。今回の無人島試験で勝てば、実質返す必要性もなくなるのでこのまま踏み倒させて貰つもりでいる。
「そういえば、そんな話を聞いた記憶があるな。しかし、その最下層クラスが今ではAクラスと僅差のBクラスか……改めて、君の特異さが浮き出て来るな」
「今のクラスになれたのは、別にオレだけの力ではないですけどね」
実際、特別試験で結果を残せたのは、オレの命令に従って動く駒が居てこそだった。結局、オレ一人で出来ることなどタカが知れている――まぁ、基本的にCPに興味がなく、ソロプレイしかしない鬼龍院に言った所で詮無きことかもしれないが。
「それに、鬼龍院先輩だって、やろうと思えば似たようなことは出来たでしょう?」
「そうだな。やる気の有無はともかくとして、今のクラスをAクラスのまま維持することは出来ただろう……だが、それは私がAクラスだったからだ。流石の私も、底辺から一年でその地位までクラスを引き上げるのは至難の業と言わざるを得ない」
謙遜か? いや、でも確かにオレも雪や桔梗という駒があったから上手く立ち回れたが、居なかったらもう少し苦労をしていただろう。
桐山は不才という訳ではないが、雪や桔梗に比べたら何枚も落ちる。南雲を相手に0からAクラスというのは、流石の鬼龍院でも難しいか。
そういう意味ではオレは幸運だった。
今はまだBクラス止まりだが、やろうと思えばAクラスにだってなれていただろう。それこそ、坂柳、帆波、龍園が手を組む可能性を考慮して自重したが、干支試験で後のことを何も考えずにCPを稼ぎに行けばもっと簡単にAクラスになれていた。
とはいえ、仮にそれでAクラスになっていたとしても、その後に各クラスに集中狙いされ、今のようにクラスとして成長する前に撃ち落されて戦意喪失するのが見えていた――仮に同じCPが残っていたとしても、クラスとしての内情は全く別物だったはずだ。
そう言う意味では、やはり今の動きが最速で最高と言って良い。クラスの成長を図りつつ、CPも稼ぐ。原作の未来予知があるからこそできる、最短ルートを上手く進んでいた。
「……オレの買い物を見るのは構いませんが、鬼龍院先輩の買い物はいいんですか?」
あらかた買うものを選んだので、そう声をかけると、鬼龍院は気にした様子もなくレジへ行くように促してくる。
「私は久しぶりに会った君を見て面白そうと思ったから追いかけて来ただけだ。特にスーパーに用事はない」
「別に面白いものなんてなかったでしょうに……」
「そうでもない。お前は自覚していないようだが、傍から見る分にはお前ほど面白い奴はそういないぞ」
「それは……褒められているのか、そうでないのかわかりにくいですね」
「これでも褒めている。それこそ、次の無人島試験の動き次第では、君のいう体の関係になってもいいと思うくらいには気に入っている」
それは、意外な言葉だった。
こう見えて、鬼龍院はかなり身持ちが固い。原作でも、当然ながらそういう話は一切出てこないし、オレもこの人を食べるのを今年の目標にしているくらいだ。
「意外そうな顔をしているな……別に私だってそういうことに興味がない訳ではない。今までは私に釣り合う相手が居なかったからそういう経験をすることはなかったが、それに見合う相手が居れば興味も出てくるというものだ」
「オレは先輩に好意を持っている訳ではありませんが……」
「それは私も同じだ。別に、色恋の関係になろうと言っている訳ではない。互いの利害が一致しているなら、体だけの関係だって悪いものではないだろう」
基本的に、世間では体だけの関係というのは嫌煙されがちだが、鬼龍院はそういう偏見は持っていないらしい。
実際、別に誰に迷惑をかけている訳でもないのだから、互いに問題がなければ鬼龍院の言う通り、体だけの関係というのは悪いものではないだろう。
「……それを聞いたら少しやる気が出てきました」
「それは重畳。だが、下手に結果だけを求めてくれるな。私が楽しみにしているのは、君が私の興味を満たしてくれるかどうかなのだから」
「曖昧な評価基準ですね。あまり期待しないでおきます……」
期待するだけさせて煙に巻かれそうだ――と、思いながらも、レジで商品を清算していく。
そもそも鬼龍院自身、体の関係になることを口にしてみたものの、まだ現実感がある訳ではなさそうだった。今の時点で意外と評価が悪くないというのは良かったが、だからと言ってすぐに食べられるというほどではないようだ。
正直、無人島サバイバル試験も、七瀬関係もあるので途中までは原作をなぞるつもりでいるが、終盤になったらどうなるかはわからなかった。
原作のように、最終日に月城と司馬に誘いをかけられたとしても、鬼龍院がオレに興味を持たずについて来ないという可能性だってあるし、そもそも月城が別の手段に出てくるという可能性だってある。そうなれば鬼龍院の興味が原作通りになるかどうかすら不明だ。
もはや、原作が崩れつつある以上仕方のないことではあるが、ここは今の評価が悪くないことを純粋に喜んでおくくらいで、下手に期待は持たない方がいいだろう。
「ではな、綾小路。無人島サバイバル試験での君の動きを楽しみにしているぞ」
オレが買い物を終えるのを見届けると、軽く手を挙げて鬼龍院はケヤキモールの外へと歩いて行った。
引き留めるようなことはしない。下手に未練がましい動きを見せても、幻滅させるだけだろうし、オレとしても鬼龍院にこれ以上何か用がある訳でもなかった。
下手に鬼龍院を意識してイレギュラーが起きても面倒だ。今回の話は聞かなかったことにして、オレはオレらしく、いつも通りに結果を出せばいい。
とりあえず、南雲と八神の勝負に勝利する。今、考えるべきはそれだ。最悪の事態も想定しつつ、二週間という無人島サバイバル試験をクリアしなければならない。
しかし、今回の試験は混合合宿とは違う意味で面倒だった。二週間も、全生徒がいる無人島で過ごさなくてはいけない以上、どうしたって去年のように隠れて遊ぶことも難しい。
見つかる危険や聞こえる危険など、考えれば考えるだけ萎えてくる。結果を出さないといけないというのはわかっているが、それでも進んでやりたいと思えるような試験ではないのだけは確かだった。
原作との変化点。
・南雲の停学が明けた。
半年は長すぎたかも。3か月くらいでも良かったかと少し後悔しているが、やることは変わらないので良しとした。南雲側から勝負を仕掛けられている。
・現状の南雲。
クラスメイトたちが頑張ってPPを貯めてくれていたおかげもあって、まだそこそこのPPを使える状態。今までの貯金含めて、1000万PP前後。これが最後の資金。ただし、自クラス以外の3年は大半が敵に回っているため、持ち駒はかなり少ない。
・南雲との勝負。
原作では結局行われることはなかった。正直、鈴音と帆波の生徒会総選挙をやればよかったのにと思ってはいる。このSSでは、なずなとのいざこざも含めて無人島試験で決着をつけることになった。俺がなずなを救うと意気込んでいる。
・鬼龍院と再会した。
内容的にはこれも冬の内容を先取りしている。清隆本人も特に何かを意識している訳ではないが、何故か鬼龍院からは興味を向けられている。
・幻となった生徒会総選挙について。
原作だと、桐山のせいでなくなった戦い。知らない人のために説明すると、冬頃いい加減生徒会も世代交代しろと学校側からせっつかれ、南雲と綾小路が決着をつけるために、鈴音と帆波の二人に次期生徒会長を決める生徒会総選挙をさせてどちらが勝つかを賭けることになっていた。
綾小路側の条件は無記名投票にすることだけ。その後は、鈴音と帆波のどちらを選ぶか決める前に桐山のせいでうやむやになっっている。が、(IFとして)もしこの戦いが続いており、綾小路が先にどちらが勝つか選ぶとしたら、やはり同じクラスであり兄の意志を継がせてやりたい的な意味でも鈴音を選ぶのではないかと推察。
仮にそうなった場合、鈴音&清隆、帆波&南雲という組合わせで戦うことになるが、人気や人望、PPの差などの問題から真正面から戦ってはでは勝てないという状況になる。
では、どう勝つのか。
私が作者なら、南雲が綾小路2000万チャレンジに肩入れしていた事実を暴露して帆波と南雲の間に亀裂を作る。証人として七瀬がいるので立証は可能。私は原作の七瀬生徒会加入は、元々この伏線だったのでは? と、推測しており、南雲が否定しても帆波は信用しないと見ている。
また後ろ盾の南雲に暗い噂が立った以上、必然的に帆波の人気や人望にも陰りが出てくるし、無記名投票なら南雲を裏切る人物が出て来てもおかしくない。後は鈴音が持っている兄への気持ちを素直に吐き出せば、これで勝負は五分になると見ている。
まぁ、確実に勝つなら原作2年生編後半のように精神的に帆波を追い詰めて、帆波が自分から辞退させる手段もあるのだが、それすると今後に影響でるなぁで生徒会総選挙編はなくなったのかもしれない――と、何故今こんな妄想を吐き出しているのかというと、うちのSSでは既に状況が違い過ぎて書けない内容だったからです。お蔵入りさせるのは勿体なくて吐き出した。誰かこの設定使って二年生編の生徒会総選挙編書いてくれ。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
南雲との勝負に乗った。借りているPPもこれで踏み倒せるし、今後の収入の目途も立ってうはうは。鬼龍院に関してはどうすればいいのか珍しく対応に困っている。
・鬼龍院楓花
南雲との話の後にたまたま出会った。原作では清隆の隠していた実力に興味を示していたが、この世界では底知れぬ実力を見せる清隆に興味を示している。
・南雲雅
現状、清隆の準備が万端なことを考えても勝つのは不可能に見える。が、本人もそんなことはちゃんと理解しており、勝つための策を考えていた。NTR作品の主人公みたいだが、本気で勝つつもりの南雲は相当厄介。原作の無人島では高円寺に負けているが、あれも半分は遊んでいたからでやろうと思えば勝つのは難しくなかったらしい。
※昨日はお気持ち表明すみませんでした。
これを書いている時点ではまだわかりませんが、大体お気持ち表明すると荒れるので先に謝っておきます。ごめんね!
何というか、みんな言葉が強いんだよね。だからつい反発しちゃった! もうしないとは言わないけど気にしないようにはするね。