途中で愛里や波瑠加のグループと話をして少し足止めをしてしまったが、それでも一時間もかからず指定エリアであるD7には到着した。
同時に、オレや鬼龍院の腕時計から小さな音が鳴る。昨日受けた説明の通り、到着ボーナスとして1点が与えられたようだ。念のためにタブレットで得点の履歴を調べてみると、しっかりと指定エリア到着の1点が履歴として残っている。
と、オレが得点の確認をしている内に、鬼龍院はどこかに行ってしまったようで姿が見えなくなっていた。
改めて、周囲を見てみると、意外と人の姿は見えない。だとすると、やはりもっと中央の方に移動しているのだろう。エリアの中央に居れば、次のエリアが前後左右斜めのどこを指定されても俊敏に動くことが出来る。
そう読んで、エリア中央に移動してみると、やはりかなりの生徒が集まっているのが見えた。特に1年生が多い、出発したのが1年生の方が早い以上当たり前のことではあるが、この場にいる生徒の半数は1年生が占めている。
「おはようございます、綾小路先輩」
オレが1年生の集団に目線を向けていると、こちらに気付いた七瀬が近づいてきて、いつもと変わらぬ笑みを向けてきた。
こいつは結局、原作通りに宝泉や天沢と同じグループを組んでいるようだが、宝泉にはオレと手を組んだことは内密にさせているので、おそらく話は伝わっていないと見て良いだろう。
なら原作通り、試験の半分が過ぎる頃には、こちらを襲ってくるはずだ――そこで、表面上は七瀬と和解。そして、そのまま美味しく頂くという流れである。
原作だと、七瀬はこの試験で敵対した後、しばらくオレを守る側に回るが、最終的にはオレを退学させようと動き出す。
しかしそれは、オレを憎んでのことではなく、オレがこの学校を卒業した後、親父殿のように他人を不幸にする存在になると判断したからだ。それ以外についてはむしろ好感を持っているまである。
つまり、オレがそんな人間じゃないということをわからせることが出来れば、七瀬がオレの敵に回ることはない。仮にここでやりたい放題やったとしても、最終的に七瀬を納得させることが出来れば味方に出来るということだ。
正直、安全を取るならもっと時間をかけて七瀬の気持ちをオレに傾けるべきだが、この試験は基本的に監視が少ないし、七瀬との決戦後は雨も降って都合が良い。
重要なのは、七瀬の気持ちがどれだけ松尾栄一郎に残っているか。別に忘れる必要はない。任務のためには食べられても仕方ないと思わせられれば、七瀬を敵に回すような事態にはならないはずだ。大丈夫、オレなら出来る――
「他の二人はどうしたんだ? グループは大体、固まって行動するものだと思っていたが……」
こちらの内心は欠片も表に出さず、七瀬にどうでもいい話を振っていく。七瀬も、オレが七瀬のグループのメンバーを知っているのは当然だと思っているようで、特に何か不思議に思うような素振りはなかった。
「周辺を調べてくると言って、それぞれバラバラに……私はここで他のグループがどれだけいるか確認することにしたんです」
「どれくらいいたか聞いてもいいか?」
「はい、別に隠すようなことでもないですし。今、この場にいるのはざっと20~30名程ですね。宝泉くんたちのように周囲の散策に出かけた人も混ぜても40名には届かないと思います」
生徒の数は学年全体で約470人――グループの数が仮に160だとして、一つのエリアに割り当てられるのは単純計算で、約40人。グループの人数で多少前後するとしても、やはり40人前後が一つのテーブルに割り当てられた人数と考えていいだろう。
オレと鬼龍院は、割とのんびりここまで歩いていた。1、2年はほぼ出発した後だったし、3年もCクラスが下船を終える頃だったことを考えると、遅れて出発した3年の何人かにも抜かされていると考えて良い。
と、すると、仮にまだ来ていない3年が数グループ居たてもそこまでとびぬけた人数にはならないはずだ。七瀬のカウントと、オレの推測もそこまでズレている訳ではない。
「成程、参考になった。ありがとう」
「いえ。先輩も、お一人では大変だと思いますがお気を付けください。では、失礼します」
こちらに気を使ったのか、特に長話をすることなく、七瀬は他の1年生が固まっている方へと戻って行った。
別に近くに居て貰っても問題ないのだが――と、思いながらも、そろそろ10時になり、『課題』が解禁される頃なので、タブレットを取り出していく。
次の指定エリア発表まではまだ3時間程あるので、適当に近い課題をクリアしてポイントを稼いでもいいだろう。
と、思っていると、10時丁度にタブレットの地図上に、赤い点が広がり、課題の位置や内容、報酬などが更新された。
課題は全部で14か所、オレに一番近いのは『火起こし』の課題だ。文字通り、特定の道具を使って早く火を起こした者が勝ちというルールで1位には5点が与えられる。
しかし、2位以下に報酬がないので失敗した時のリスクが高かった。次に目に入るのはE7の『英語テスト』。こっちは1位5点、2位3点、3位1点と、火起こしよりも得点が貰える可能性が高い。
他にもここに来るまでに通り過ぎてきたD8に『地理テスト』があるが、これは既にD8が指定エリアだった愛里や波瑠加のテーブルの生徒で溢れていると見て良い。原作では、C6の『握力測定』に参加しようとしたが、ギリギリで間に合わなかったんだっけか。
いや、原作ではいろいろ自重して序盤は手を抜いていたから間に合わなかったが、少し本気を出せば間に合うかもしれない。
原作と違って南雲や八神に勝つ必要があるし、拾える点は拾っておいた方が良いだろう。と、いうことで、C6で行われるであろう課題をこなすべく小走りで移動を始めることにした。
◇◆
30分程で課題の有るC6に辿り着くと、その場では2年Cクラス担任の星之宮が男性のスタッフと共に『握力測定』の受付をしていた。
周囲には1年生から3年生まで20人近い生徒がおり、須藤の姿も見える。オレも、この課題に参加すべく星之宮に接近していく。向こうもオレの姿を捉えると、何とも言えない妖艶な笑みを浮かべて迎え入れた。
「あら~、綾小路くんじゃない。こっちの課題に来たんだ」
「参加はまだ出来ますか?」
「大丈夫よ。もう少しで締め切りだったけどね」
そう言いながら、星之宮が周囲のスタッフに声をかけてオレの参加登録をしていく。そのまま、自然と体を寄せて、今度は真面目な顔でこちらに小声で耳打ちをしてきた。
「今の所、月城理事長代理に不審な動きはないわね」
少し前に星之宮と契約をした際、オレが月城理事長代理に狙われているという話は星之宮にもしている。
星之宮としても、オレに退学されればクラスの勝利はないとわかっているので、危険を覚悟で茶柱には出来ないような調べ物をしてくれていた。
「ただ、妙な点があるのよ。この試験では、いつ誰がどこで危険な目に合うとも限らないし、緊急を要する怪我をした際には小型船かヘリを使って救出に向かうことになっているの」
「まぁ、当然と言えば当然だな」
「これだけ聞けばね。でも、ヘリは1機、小型船も1隻用意するって話だったんだけど、何故か船は2隻用意されていたの。真嶋くんも知らないって言うし、まず月城理事長代理が用意させたと見て間違いないと思う」
真嶋は2年の学年主任だけあって、情報をいろいろ持っている。その真嶋が知らない時点で、星之宮はこの件を怪しいと睨んだようだった。
「勿論、救護が重なるケースを見越して――ってパターンはあるわよ。けど、それなら機動力の高いヘリを増やすべきだと思うのよね。特に今年は坂柳さんも参加しているし、もしもの時はヘリによる移動をする方が可能性としても高い」
実際、その船は原作でも月城が用意したオレを連行する(フリ)ためのものだ。正直、ここでその存在を確認できたのは大きい。これで、月城が原作通り最終日に仕掛けてくるであろうことはほぼ確定と見てよかった。
つまり、そこまでは自由に動き回れる。後は、南雲と八神がどう動いてくるかだが、これについてはもうしばらくすれば情報が入ってくる予定だ。
「何かあればすぐに連絡してあげるつもりだけど、一応気を付けておいてね」
「ああ。良く調べてくれた」
と、話をしている内に締め切りが終わったようで、星之宮の外にもう一人いた男性のスタッフが自分の近くに集まるように声を上げる。
オレも星之宮から離れて生徒が集まっている方へと移動していく。須藤たちもオレに気付いたようで、「ゲッ、綾小路も参加してるのかよ!」と、嫌そうな声を上げた。
須藤を始め、うちのクラスの生徒なら、去年の体育祭の前にやった体力テストで、オレが握力100キロを余裕で出したことを覚えていてもおかしくはない。特に須藤は、オレがまだ全力じゃなかったことも知っているので勝ち目がないとわかったのだろう。
改めてルールを確認すると、受付をした順に握力を測定していき、単純に大きい数字を出した生徒の勝利というものだ。
一番は3年生の押尾という生徒で、75㎏とかなり高い数字を出してくる。もし、ここにオレや須藤がいなかったら、トップは押尾で間違いなかっただろう。
この握力測定で貰えるのは1位5点、2位3点、3位1点なので、須藤も少しでもポイントを奪おうと意気込んでいる。どうやらオレに挑戦するつもりのようで、「勝負だ、綾小路!」と気合を入れていた。
去年の体育祭の時は85㎏だった握力は、90㎏近くにまで上昇しており、骨折していた間も勉強以外の努力もしっかりしていたのが伺える。これで、暫定1位――とはいえ、100㎏をコンスタントに出せるオレに勝てるはずもなく、最終的にはオレが1位を搔っ攫っていった。
しかし、須藤も2位で3点を貰っており、これでおそらくは指定エリアへの到着ボーナスと合わせて6点になっているはずだ。
結局、1位を取っても得点的には同じということで、改めて単独グループの苦しさを理解させられる。とはいえ、少なくとも七瀬のイベントをこなすまで一人でいる必要があった。
「……本当、君に頼る判断をした自分を褒めてあげたいわね」
星之宮も、オレの結果を見て呆れたような感心したような声を上げる。オレの学力や身体能力が高いのは知っていても、ここまで圧倒的だとは思わなかったのだろう。
実際、須藤ですら2年の中ではトップクラスの身体能力を持っているのに、オレはそれを軽く上回っているのだ。自分の体を売った相手の能力が高いことは星之宮にとっても悪くないことということで、最後には「期待してるからね」と応援の声をかけてくる。
とはいえ、当然ながらこれはオレへの応援などではなく、「私のクラスを勝たせてくれるのを期待しているからね」という意味だ。この女の興味は、茶柱に負けないこと、自分のクラスが勝つこと、Tレックスを楽しむことの三つしかない。
「試験が終わるまでの2週間。私もあちこち駆り出される予定だから、どこかでまた会うかも。上手く時間が取れれば、お相手できるかもね」
「……そうだな。状況次第ではそれも有りかもしれん」
この無人島試験の殆どを禁欲しなければいけないというのは、オレにとってかなり厳しい問題だった。混合合宿でさえ、我慢できずに途中で茶柱と遊んでしまったのだ。
やはり、七瀬や西野を上手く使って、途中でストレスを発散しないとどうなるかわからない。最悪のパターンとして、星之宮を頼ることも考慮に入れていく必要があった。
◇◆
結局、その後は原作通りに課題を回ってみたが、あまりの人数の多さに参加することも出来ずに一日は終了した。
とりあえず、午後1時に発表された2度目の指定エリアはB7で、午後3時に発表された3度目の指定エリアが1度目の同じD7だったが、どちらも原作知識で知っていたので着順報酬をしっかり貰っている。
とはいえ、あまりあからさまに原作知識を擦っても問題なので、あくまで自然に動いてもおかしくない範囲でのフライングに留めておいた。結果、2度目、3度目は、2位の5点が追加され計10点がさらに追加されている。
原作では、初日で得た得点は計3点だったが、この世界では何とか18点を獲得した――初日としては悪くない滑り出しと言って良い。
「先輩」
D7に戻ってくると同時に、朝と同じような場所で七瀬と再会した。やはり、原作通りに同じテーブルと判断して間違いないだろう。
「2回目だな」
「はい、偶然ですね。今日はどうでしたか?」
「課題に恵まれてな。何とか18点稼げた」
「凄いですね。こっちは指定エリアに関しては3人で8点……私が2回目の指定エリアに間に合わなかったんですが、参加した課題で1つ1位を取れて合計で13点です」
こうして話を聞くと、やはり人数差というのは大きなファクターだとわからされる。結果的にオレの方が得点こそ高いが、向こうは到着ボーナスだけで8点。もし、七瀬が間に合っていれば9点取れたということだ。
後半になって体力が少なくなり、課題や着順報酬で得点が取れなくなってくると、この到着ボーナスで貰える点が大きくなってくる。特に、大グループが作れるようになってからは、その恩恵を大きく感じることだろう。
「順調な滑り出しだな。そうだ、七瀬……丁度いいからお前に言伝を頼んでもいいか?」
「言伝……ですか?」
「同じグループの天沢に少し用があるんだ。この後、会うようならオレがこの近くでキャンプをしているから来て欲しいと言っていたと伝えてくれ。一応、明日の朝7時まではこの近辺にいる」
この試験で天沢にはいろいろ頼みたいことがあった。事前にトランシーバーを買っておくようには指示しておいたが、流石に一度合流してコードを交換しないと連絡の取りようがない。
そういう意味では、原作通りに天沢と七瀬が同じグループで、オレと同じテーブルだったのはラッキーだったな。
「天沢さんに、ですか? 失礼ですが、先輩は天沢さんとお知り合いで?」
「前回……お前たちにしたら前々回の特別試験で関わることがあってな。オレと天沢の共通の知り合いの件で話があると言ってくれれば伝わるはずだ」
オレと天沢の繋がりは調べればすぐにわかることだ。特別嘘を付くようなこともなく、素直に関わりを説明していく。
「そうなんですね……わかりました。伝えておきます」
七瀬も、内心ではどう思っているかは知らないが、表面上は特に疑問に思うことなく頷いてくれた。
お互いに軽い近況報告のようなものを終えると、「それじゃ、失礼します」と言って、七瀬が去っていく。時間的にもそろそろ日が落ちてくるので、オレも近くで適当にキャンプ地を決めることにした。
その後、軽い食事を取りながら天沢を待ちつつ、改めて今日の試験について振り返っていく。
今日の指定エリアは、俺の記憶にある原作通りに指定された。テーブルも七瀬や鬼龍院と同じで原作と何も変化がない。
課題についても全部で68問、その中で水が入手できる機会があったのは14回。そして、出現したエリアや時間帯が綺麗に整っており、原作通りに特定の法則があると見てまず間違いなさそうだった。
明日以降もこれが続くなら、水問題についてはあまり考慮しなくてもいいだろう。原作でも、似たような形で水を回収していたし、オレも同じ道をたどることになるはずだ。後は原作知識を使って、今日のように指定エリアへ早く着き、着順報酬を稼いでいく――
「せーんぱいっ!」
と、考えていると、テントの外から声がかけられた。顔を出すと、七瀬から伝言を受けたであろう天沢がいつもの笑みをこちらに向けてくる。
「探しましたよ、先輩。まさか、同じテーブルだと思わなくてびっくりしちゃった」
「その様子だと、七瀬から伝言を聞いたのか?」
「うん。今日だけで2回も会ってるんだってね。流石に初日の指定エリアが2度も被る可能性ってそこまで高くないし。なら、同じテーブルじゃないかなーって」
とりあえず、立ち話も問題なので、天沢をテントの中に迎え入れる。天沢も「うわぁ、先輩に襲われる~」といいながらも、楽しそうに中に入ってきた。
確かに、この試験では男女が同じテントに入るのは禁止されているが、いくらGPSがあると言っても無人島全体を監視している都合上、余程監視エリアを拡大しなければオレと天沢が一緒のテントに入っているとは思わないだろう。
それに、オレの行動を常に監視しているのは理事長代理である月城ぐらいのはずだし、あいつも別にオレを本当に退学させたい訳じゃないから、こちらが余程大きな問題を起こさなければある程度のお茶目はスルーしてくれるはずだ。
「そういえば先輩。拓也に会ったんだってね」
「向こうから接触してきた。この試験で戦うことになっている」
「……悪いけど、あたしは拓也とは戦わないよ。先輩の敵になるつもりはないけど、付き合いも長いし、あいつを裏切れない」
「わかっている。お前に頼みたいのは別件だ。八神に関わらないことなら、オレの指示を聞いても問題ないだろう?」
「それは、別にいいけど……」
最初から、天沢と八神をぶつけるつもりはない。そもそも八神の方が性能が上だし、本人の望まないことを強要してオレへの印象を下げても面倒だ。
適材適所――天沢には天沢に出来ることで、オレに貢献してくれればいい。
「トランシーバーは持っているな?」
「うん。ちゃんと買ったよ」
ジャージのポケットからトランシーバーを取り出して、証拠とばかりに見せつけてくる。
後は、コードを交換するだけだった。これで、天沢にはいつでも指示が出せるようになる。
「基本的にはオレの近くにいてくれればいい。だが、こちらが呼ぶまで接触はするな」
「オッケー。後は? 普通に試験受けてればいい?」
「とりあえずはな。後はその都度指示を出す。時間に余裕があれば、周辺の地理を頭に入れておけ」
「はーい」
「テーブルが同じなのは運がよかったな。近くに居ても怪しまれない」
「そうだね。こうして早めに合流も出来たし、本当にラッキーだったかも」
本当なら、ここで天沢を可愛がってやりたい所だが、オレから呼び出しを受けたのは七瀬も知っているし、帰りが遅くなれば不審がるだろう。
天沢も期待していたようだが、今回もお預けということで自分のテントに送り返していく。ぶーたれていたが、この試験が終わったら今度こそ本番をしてやるというと、目に見えてわかりやすくやる気を出して帰っていった。
改めて、天沢がいなくなったことで、めっきり静かになってしまったテントに身を横たえ、今日はしっかりと体を休める。明日は早い時間から1回目の指定エリアであるE8に近いて着順報酬を狙っていくつもりだ。
原作では見えない襲撃者に警戒するような一幕もあったが、月城や親父殿の裏がわかっている以上、そういう警戒はしなくてもいい。
仮に朝まで爆睡していたとしても、オレが退学する可能性はゼロだ。八神を放置していたら、寝首を掻かれる可能性もあったかもしれないが、事前の接触で上手く憎悪を消してやったおかげでその心配も無くなっていた。
と、いう訳で朝の6時半までゆっくりと睡眠をとる。基本的に、ほぼ毎日セフレと夜と過ごしているため、後天的にショートスリーパーな体質になっていたオレだが、月に何度かはこうして熟睡する日もあった。
船の個室で眠った昨日の夜もそうだったが、二日連続で熟睡出来たおかげで、本来なら疲れが出てもおかしくないにも関わらず、スッキリとした目覚めとなっている。
2日目――指定エリアであるE8とE7のギリギリで待機すると、7時になり2日目最初の指定エリアであるE8が示された。
やはり、テーブルによる指定エリアの法則は原作通りだ。朝から動いていた甲斐もあって、E8はもう目と鼻の先なので着順報酬を貰っていく。
原作知識のおかげもあって、無事に着順報酬1位の10点と到着ボーナスの1点が得点に追加された。これで得点は合計29点と、一気に上昇している。その後も、続くE6、F7と連続で1位を取り、最終的には51点と快進撃を続けていた。
しかし、問題は次だ。
1日にされるエリア指定は4回、その内1回はランダム指定となるルールである。既に3回のエリア指定は終わり、その3回は普通の条件のモノだった。
つまり、次のエリア指定は確定でランダム指定になるとわかる。勿論、原作知識があるのでI7になるということは知っているが、問題は次からは七瀬が同行すると言うことだ。
原作ではこの後、ここで七瀬と合流。オレと同じテーブルではないかと予想した七瀬がオレと一緒に行動しないかと声をかけてくる。
当然、この機会をずっと待っていたオレとしてはその提案を断るという選択肢はなく、そこから七瀬イベントへと移行していく訳なのだが、流石に七瀬が一緒では大ぴらに原作知識は使えない。あまり、大胆に使えば不正を疑われるかもしれないしな。
まぁ、でも特に問題はないだろう。
既に昨日今日だけで、原作よりも25点も多く稼いでいた。多少の失速があっても致命的な問題にはなるまい。そのために、南雲には桐山をぶつけるようにしたんだしな。
と、いうことで、桐山がしっかり仕事をしていることを祈りながらも、原作通りにE6に移動していく。ちなみにもう一人の相手である八神についても、オレのスパイである椿や宇都宮が自ら進んでマークしてくれているのでほぼ心配はなかった。
原作との変化点。
・序盤からかなり点数を稼いでいる。
原作では11位~15位くらいの間を狙っていたが、このSSでは南雲や八神との勝負もあるため最初から飛ばしてポイントを稼いでいる。原作知識があるので、次の指定エリアを先読みして順当にポイントを稼いだ。
・握力測定の参加した。
原作だと見送っていたが、少し走って参加している。本来、序盤で体力を使うのはミスだが、普段よりも早めに眠れることもあって疲れはチャラになっていた。
・星之宮の立ち位置。
真嶋ポジになった。原作で真嶋がくれる情報を代わりに探ってくれている。おかげで、最終日に原作のように襲撃を受けることが判明したのでそれを前提にスケジュールを組んでいる。
・天沢とトランシーバーのコードを交換した。
これでいつでも連絡が取れるようになった。この試験が終わったら本番と聞かされて、天沢もやる気に満ちている。
・七瀬ルート。
ここから原作通りに七瀬ルートに入る。可愛い子犬ちゃんがホワイトルーム生を警戒して清隆を守ってくれるが、代わりに二人になることで夜が熟睡できないというデメリットもある(原作清隆も、周囲に他人がいると熟睡しない)。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
基本的な行動は原作とそこまで変わっていないが、結果は全然変わっている。ここからは七瀬ルートに入るため、Tレックスも首を長くしているが相手がいないのですぐに休眠状態に入った。ステイステイ。
・鬼龍院楓花
気が付いたらいなくなっていた。気まぐれお姉さんだが、その気まぐれが上手く原作通りに左右するように清隆も祈っている。
・七瀬翼
原作通りに清隆と合流するタイミングを計っている。天沢との関係に首を傾げたが、今はまだ自分が見張れることもあってそこまで強く警戒はしていない。
・天沢一夏
清隆とトランシーバーのコードを交換していつでも話せるようになった。この試験の後にご褒美があると知ってやる気に満ちている。
・星之宮知恵
試験は公平にしているが、真嶋の代わりに情報をくれた。駒としての使い勝手は佐枝よりも上。
・須藤健
捻挫で休んでいる間も、握力を始めとしたトレーニングをかかしていなかったこともあり、原作よりも握力が強くなっている。が、流石に清隆には勝てなかった。