2日目の後半――3回目の指定エリアであるF6を1位で到着し、休憩しながら七瀬のことを待っていると、原作通りに七瀬が現れてこちらに歩いてくるのが目に入った。
これで試験が始まって3回目の遭遇だ。
1度や2度ならば偶然ということもあるかもしれないが、3度目ともなれば偶然とは言い難い。昨日の時点で既にわかっていたが、まず間違いなくオレと七瀬は同じテーブルだと判断して良いだろう。
正確にいえば、オレの警護&監視のために、月城が意図的に七瀬を同じテーブルにしたというべきか。
いろいろと原作を変化させているせいで、この組み合わせが変化してしまわないか少し心配していたが、どうやら月城は原作通りに七瀬をオレに付ける判断をしてくれたようだ。
と、思惑を全て見透かされているとは欠片も思っていない七瀬が「綾小路先輩、またお会いしましたね」と声をかけてくる。
正しくは、お会いするためにわざわざ来るのを待っていたのだが、ここは原作通りに偶然を装っておく。すると、七瀬が「もしかして、私たちは同じテーブルなんでしょうか?」と、わかり切っていることをあたかも今思いついたように呟いたので、こちらも「かもな」と、何も知らない演技をして返した。
お遊戯会をしている気分だが、これは七瀬攻略のためにも必要なことだ。今はこの女の演技に騙されているフリをしていないと、後々面倒くさいことになる。
ここでオレの方から「一緒に回らないか?」と誘えれば早いのだが、流石に理由がない。受け身に回りたくはないが、どうしてもここは七瀬の方からオレを誘うのを待つしかなかった。
「あの、綾小路先輩……お願いがあるのですが?」
「お願い?」
軽い会話を済ませると、七瀬が本題とばかりに声をあげる。とはいえ、七瀬としても、学年が違うのに行動を共にさせて欲しいというのは無理があるとわかっているのか、まるで告白するかのような緊張した表情を浮かべていた。
「もしお邪魔でなければ、これからしばらく綾小路先輩に同行させて貰えませんか?」
「同行? どういう意味だ」
当然ながら、同じテーブルとは言っても、学年同士で戦っているという側面が強いこの試験で2年と1年が行動を共にするメリットはない。
七瀬としては、自分に課せられた仕事の都合上、一緒に行動した方が都合がいいのだろうが、そんなことは口が裂けても言えないはずなので、何とかオレを納得させる必要があった。
「実は、昨日の夜に話し合いで問題が起きたんです。宝泉くんと天沢さんのお二人が、単独で行動する方が良いと言い出してしまい、バラバラになってしまったんです」
ちなみに、これは本当だ。
正確には着順報酬を捨てて、個別に『課題』をこなした方が得点を稼ぎやすいと宝泉が提案し、それを天沢と七瀬が飲んだ形となっている。天沢には既にオレの周囲にいるように指示を出していたので、その提案が丁度良かったのだろう。
当然ながら、今話したことについても、朝に天沢がしっかり報告してきたので、事情は全て筒抜けだった。
「昨日から合わせて3回、先輩とお会いしましたが、1回目を除き2回とも綾小路先輩の方が指定エリアに到達するのが早かったと記憶しています」
原作知識を擦っているからな。手を抜いた一日目でも2位だったが、二日目に至っては全部1位になっている。
「おそらく、私一人ではすぐに指定エリアに追いつけなくなると思うんです。なので、先輩と一緒に行動できれば、マイナスを回避できるのではないかと思いました」
「学年が違うグループの同行なんて、とても賢い提案とは思えないな」
「わかっています。着順にも影響が出ますし、課題で競合するケースが出てくるから――ですよね?」
「そうだ。残り一組しか参加できない課題に当たれば、その時点で揉め事に発展する」
本来であれば二つ返事で受け入れたい場面だが、流石にそんなことをすれば七瀬もこちらを疑ってくるので、ここは心を鬼にして七瀬に問題点を突きつけていく。
「私は全て綾小路先輩の次で構いません。先輩が先に指定エリアに入り、着順が確定したのを確認してから踏み込むことにします。これなら、綾小路先輩にもデメリットはありません。課題に関しても、エントリーが残り1枠であれば全てお譲りします」
「七瀬が得る得点が必然的に少なくなる。宝泉や天沢にも迷惑をかけかねないぞ?」
「このまま一人で居ても、私は多分到着ボーナスすら手に入れられません。それなら、先輩と一緒に行動して適切なルートを選んでいただければ、到着ボーナスだけは手に入りますし、その方がグループにも迷惑をかけないと思うんです。綾小路先輩の身体能力は宝泉くんとの一戦で証明済みですしね」
「仮にオレが適切なルートを選んだとしても、それにペースを合わせられるのか? それに、険しい道を選ぶことだってある。ついて来られるのか?」
疑っている――と、七瀬に思わせる。
本音を言えば疑いたくないが、まだオレと七瀬にはそれだけの信頼関係がなかった。早くこのイベントを終了させて、この子犬ちゃんをオレ色に染め上げてやりたい。
「体力には自信がありますので……ご迷惑、というよりも信用できないでしょうか?」
「それはそうだろう。自分を退学にしようとしている人間を信用する人間なんかいない」
「そう、ですよね……」
「だが、それはそれとして、困っている後輩を見捨てるのも気が引ける。貸し一つで、行動を共にしても良いと思っているが、受け入れる気はあるか?」
「……わかりました。貸し一つで、お願いします」
少し悩んだ(フリ)をしながら、七瀬がホッとした様子で笑みを浮かべて頭を下げてきた。
これで貸しを一つ作ることが出来た――真面目な七瀬を攻略するのに、この貸しは重要な意味を持ってくる。が、とりあえず、しばらくは真面目に試験攻略だ。
「ただ、本当にテーブルが一緒かどうかは確認しないといけない。わかるな?」
「はい。偶然、同じ指定エリアだった――と、いうことも考えられますし、それは当然のことかと。この後はどうするんですか? まだエリアの指定が出るまで時間があるようですが……」
と、七瀬が疑問の声を出すと同時に、タブレットに新しい課題がいくつか出現したようで通知音が鳴った。
確認してみると、近くで参加できそうなのはF8の『クイズ』か、E5の『リフティング』だ。確か、原作ではE5は少し遠いと判断して、F8のクイズに行ったんだっけか。
「そうだな……E5の『リフティング』か、F8の『クイズ』を狙おうと思う」
「私はどちらでも構いません」
「そうか? なら、『クイズ』でもいいか? E5までは少し距離があるし、参加できるかどうかは五分だ。その点、『クイズ』は12組まで参加できるので狙いやすい」
「ですが、課題のハードルが高いのでは?」
「それはそうだが……そういう意味では『リフティング』もどっこいだ。もし、サッカー部の奴らがいればまず勝てないだろうしな。それなら、ジャンル次第で勝てる『クイズ』の方がまだ勝率がある」
「わかりました。先輩がそう判断されたなら従います。ですが、もし私に気を使ってのことなら、私は勝手にお供をしているだけなので普段と変わらない選択をしてください」
「念を押されるまでもない。報酬に関してだってクイズの方が上なんだ。難易度という点に目を瞑れば、『クイズ』を選ぶのは間違いじゃないだろう」
そう七瀬を納得させて、早速移動を開始することにした。ちなみに、『クイズ』を選んだのは別に七瀬に気を使ったとかではなく、原作で選ばなかった『リフティング』に参加できる保証がなかったのと、『クイズ』ならばワンチャン勝ち目があると思っただけだ。
勿論、前世のアニメ知識は俺のおかげで豊富に持っているが、この世界のアニメについては欠片もわからない。
だが、このクイズは4択形式で1/4で正解が選べる。原作のオレは、何の知識もなかったが、前世の記憶があるオレならばその知識から確率をさらに少なく絞れるはずだ。
例えば、第一問は、『テレビアニメ機動従士ボムダム第十三話のタイトルは次の内どれ?』という問題なのだが、『1・さらばボムダム』、『2・燃えろボムダム』、『3・叫べボムダム』、『4・ボムダムの涙』という四択で、何の知識もない原作のオレは唯一ボムダムの名前が先に来ているという理由で4番を選んでいた。
しかし、アニメの知識があれば、まず1番の選択肢がないことがわかる。ボムダムというのはまず前世で言うガンダムに相当するアニメで間違いないだろう。
つまり、基本的に全部で50話前後の作品と考えて良い。その13話というのはまだ話としては序盤だ。さらば、なんていうタイトルが付くのは、まず最終回に近い話と見て良い――まず序盤で起きるような話ではない。
これで確率は1/3に絞れた。こんな感じで、前世の知識を利用して可能性を減らしていけば全問正解は無理でも、ある程度の問題は正解できるはずだ。
事実、原作でのオレの正答率は25%しかないが、もし1/3なら確率は33%、1/2なら50%にもなる。後はその確率を少しでも上げてやれば、運次第では上位入賞も不可能ではないだろう。
◇◆
「おう、綾小路! 後3組までだから登録急げよ!」
そんなこんなで七瀬と共に課題のエリアに着くと、オレたちの存在に気付いた須藤がそう声を上げてこっちにこいと手招きしてくる。
無視する訳にもいかないので、駆け足で登録をすませると、そのまま須藤や池、本堂のグループと合流するように七瀬と一緒に歩いて行った。
「よう、綾小路。昨日は負けたけど、今日は負けないぜ」
原作と違って、須藤とは昨日の握力測定で一緒になっている。本来であれば、須藤が取るはずだった1位を掻っ攫ってしまったが、当の須藤は気にした様子もなく笑みを浮かべていた。
また、試験前は篠原と揉めて、原作でも上の空な池も、この世界ではいろいろと腹をくくっているのか、原作ほど酷い状態ではなさそうに見える。
今も、本堂といつものようにどうでもいい話をして笑っており、多少そわそわしているようには見えるが、少なくとも試験に影響が出る程ではなさそうだった。とりあえず、近くにいる須藤に試験の様子を聞いてみる。
「調子はいいのか?」
「得点は順調だよ。今日は1回指定エリアで3位を取ったし、課題も3回1位とったぜ」
「昨日も握力測定で2位だったしな。順調そうで何よりだ」
「お前にはしてやられたけどな。グループとしては順調そのものだ」
「しかし、お前らがクイズに来るのは意外だった。こういう問題は苦手だろう?」
「三人寄れば文殊の知恵ってな。ジャンル次第じゃ上位だって難しくないぜ」
「確かに、オレもジャンル次第だ」
ちょっとした対策があるとはいえ、アニメの問題では絶対に上位を取れる自信はない――と、考えていると、須藤が周りの様子を見ながらこちらに顔を寄せてくる。
「……なぁ、綾小路。この課題、俺たちと組まねぇか?」
オレにしか聞こえないような小声で、須藤がそう提案してきた。原作にはない動きだ。
「組む?」
「基本的に、別グループの奴らは敵だけどさ。俺らは同じクラスだろ、談合ってやつだ」
まさか、あの須藤から談合なんて言葉が飛び出てくるとは――予想外過ぎて流石に驚きを隠せない。
だが確かに、これは特別試験だが、テストのように他者との協力が明確に禁止されている訳でもなかった。原作でも3年はグループ同士で課題を独占していたし、教師に談合していることが表向きわからなければ、そういう選択肢も有りかもしれない。
「実は昨日の課題で、3年生が別グループと組んで課題に挑戦しててさ。先生たちも気づいてなかったみたいで注意もされなかったんだ。どうやら、バレなきゃそういうのも有りらしい」
成程、既に桐山たちが似た方法で得点を稼いでいたか。どうしても他のクラスに比べて能力の低くなりがちなDクラスのメンバーをフォローするという意味でも、協力して課題に当たるという策は悪くない。
うちは既にBクラスだが、中身はほぼDクラスと言って良いレベルだ。談合して上位が目指せるなら、協力するべきだろう。それに、これはオレにとって都合がいい。
「俺たちが得意な問題が出たら、俺がお前にサインを出す。お前が得意な問題が出たら、俺にサインを出してくれ」
「池や本堂はそれでいいのか?」
「ああ、昨日の夜にそういうことをしようって話はしてある。実は今日の課題の1位も一つは同率でさ、平田たちと談合したんだ」
成程。既に、経験済みということだな。
何というか、素直に感心してしまった。原作よりも須藤にしたたかさがある。特別、そういうことを躾けた訳ではないのだが、須藤も須藤で原作と違った成長をしているな。
「わかった。オレも一人だから、協力できるなら助かる」
「まぁ、お互いに得意なジャンルが選ばれるかは運次第だけどな」
オレが協力の言葉を返すと、須藤は誤魔化すようにそう言って離れた。そのまま、視線がオレの後ろでちょこんと立っている七瀬に向く。
「そういや……前に2年のフロアに来た1年、だよな? 名前はなんつったっけか……」
「七瀬です、須藤先輩」
「お、おう。で、その七瀬とお前が何で一緒に居るんだ?」
「同行したいって言われただけだ。同じテーブルの可能性が高いからな」
「おいおい、今回の試験で他学年は敵だぞ。お前だって一人で余裕ないだろうに、いくら可愛いからって後輩一人抱きかかえるのはきついだろ……」
「かもな。だが、放置するのも可哀想でな。貸し一で手を貸した」
「……まぁ、お前が大丈夫ってんなら信じるけどよ。なんか困ったことが合ったら言えよ?」
そう言って、須藤がもう一度七瀬に視線を向ける――が、特に何も言わずに池と本堂に合流していった。
上級生にガンを付けられた形だが、当の七瀬は気にした素振りはなく、むしろ柔和な笑みを浮かべている。
原作と違って、須藤の方に七瀬を敵視する理由がないので、七瀬も素直に須藤がオレを心配しているだけと言うのがわかったのだろう。
「良い人ですね、須藤先輩」
「ああ、上級生になってさらに面倒見が良くなった」
「実は話が少し聞こえてしまいました。先輩たちは談合するんですよね? 私は少し離れて、先輩たちが見えない場所に居ようと思います」
七瀬が気を使ったように、ぺこりと頭を下げて少しオレから離れた。同時に、最後の1組の登録が終わったようで、課題のスタート準備が始まる。
この間に、池や本堂も須藤から話を聞いたようで、こちらに小さく手を振ってきた。オレも、サインを受け取れるように少しだけ須藤たちの方に寄っていく。しかし、対策してきたという程ではないが、これで俺の知識はまるで意味のないものになってしまったな。
改めて、参加者12組が登録したタブレットを取り出し、課題の開始時間を待つ。
ここからは池と本堂の独壇場だ。オレは、須藤からくるサインを見逃さないようにするだけでいい。
そして、時間になると、一斉にタブレットにクイズのジャンルが発表された。やはり、ジャンルは『アニメ全般』で、第一問は原作通り機動従士ボムダム第十三話のタイトルとなっている。
須藤が一度こちらをチラッと見たので、首を横に振った。これで、オレがこのジャンルが苦手だということが伝わっただろう。
対する本堂は「こんなの超簡単じゃん!」と興奮したように叫んでおり、しばらくすると須藤がこちらにだけ見えるように二本指を立ててきた。2番ということで、タブレットを叩いて2番を選んでいく。
制限時間が来ると、答えが表示され、『正解・2番・燃えろボムダム』と表示された。
後は、須藤の出す指の数にだけ注意して答えを打ち込んでいくだけでいい。10分、全20問の問題を終えると、1位は同率で須藤たちとオレのグループだった。
七瀬は原作通り、正答率25%程度で、「難しい問題ばかりでした」と呟きながら、とてとてこちらに歩いてくる。オレも、まさか1位を取れるとは思わなかった。これも須藤のおかげだな。
1位が同率ということで、オレと須藤たちのグループに同じく8点が追加される。また、『クイズ』は『リフティング』と違って追加報酬があり、新たに水を得ることが出来た。
これで、オレの得点は59点。
おそらくはかなり上位と考えて良いだろう。とはいえ、油断は出来ないので、出来るだけポイントは稼いでおきたい所――と、考えながら、追加報酬を受け取って七瀬の元に戻る。
「得意分野を生かせば戦えるというのがこの特別試験なんですね。学校の力の入れようを感じ取れます」
「無人島を貸し切りにするだけじゃなく、様々な生徒の長所と短所が浮き彫りになる大掛かりな仕掛けを作る程度には、力を入れているんだろう」
実際、この特別試験は過去最大級と言って良い規模だ。大型船に備品、人件費――一体、いくらの金がかかっているのか、想像することすらできない。オレたち庶民では、まず手出しできないような大金が行き来しているのはまず間違いなかった。
とはいえ、実際にオレたちが支払っている金はゼロであり、頑張って試験を行う以外に今の所はやることもない。
須藤たちのおかげで、予想外のボーナス得点も得たことだし、そろそろ時間的に次の指定エリアが発表される時間だ。時計で時間を確認しつつ、タブレットを取り出すと、今日最後の指定エリアはやはりI7となっていた。
「出発しますか?」
「その前に七瀬、お前の指定エリアは?」
「そうでしたね。まだ同じテーブルだとは決まっていませんでした」
そう言って、七瀬もゴソゴソと自分のバックパックからタブレットを取り出して地図を見せてくる。まぁ、確認するまでもなくわかっていたが、やはり七瀬の次の指定エリアも、オレと同じくI7だった。
正直、見なくても良かったのだが、あまりオレが無警戒過ぎても七瀬の印象が悪くなりかねない。適度な有能さを見せつけながらも、オレを助けたいと思わせる必要があった。
「やはり、先輩とはテーブルが同じだと思われます。次はどうしますか、最短距離を進みますか?」
「……そうだな。E4からI9にかけて斜めは全て山道になっている。間に合わない可能性が高いが、出来れば今日中にI7についておかないと明日以降が辛くなる」
原作ではI7には向かわずに須藤や池たちとキャンプしていたが、この世界の池はフォローしてやるほど精神的に不安定じゃないし心配は無用だろう。
それよりも、明日の第一指定エリアがH7になるので、出来れば今日中に指定エリアには行っておきたい。
原作通りH9でキャンプした場合、H7に真っ直ぐ向かうには厳しい山越えか遠回りが必要だ。仮に到着ボーナスが貰えなくとも、今日中にI7に着いておくべきだろう。
と、いう訳で、速足でI7に向かっていく。途中、G8では『数学問題』、G9では『英語問題』の課題が行われていたが、やっていくかどうか迷う必要はなかった。
まだ二日目ということで、まだまだ生徒たちはバラけきっていないのだろう。あまりにも多すぎる生徒のせいで、エントリーが間に合わないのは原作知識がなくても一目瞭然だ。
結局は、真っ直ぐにI7に向かうことになり、当初の予定通りにG9からI9まで回ってI7に向かう。しかし、I8の北東辺りを歩いている間に17時になり、残念ながらエリア到着には間に合わなかった。
とはいえ、最初からそれは考慮済みということで、もう少し歩いてI7のエリアに入っておく。また、明日のH7に備えて、キャンプ地を探すという名目でH7側に移動しながら広い場所を探すことにした。
時間も時間なので、そう遠くには移動せず、今日はI7とH7の間をキャンプ地とする。
急いでテントを設置していくが、本来男女が近くでテントを立てるなど食べて下さいと言っているようなものだ――が、今の段階で手を出すのはまだ早かった。
手を出すのは、七瀬がオレを襲って表向きにでも罪悪感を覚えても仕方ない状況になってからだ。
ここは我慢ということで、代わりに夕食を食べて精神を落ち着けていく。七瀬は、今日あったことについてあれこれ話しながらも、周囲を警戒する様子を見せていた。
実際、何も知らなければ、夜はオレを襲う絶好の機会でもある。オレの護衛でもある七瀬としては気が休まる暇もないだろう。これが原作通り、須藤たちと一緒に居たのなら、まだ襲われる危険もあって安心できたかもしれないが、二人きりである以上そうはいかない。
結局、オレがそう進んで話をする方でもないということで、20時過ぎにはお互いにテントの中で休むことになった。
しかし、耳を澄ませても寝息のようなものは聞こえてこない。明日以降も試験があるので休む必要はあるはずだが、結局朝になるまで七瀬が眠ったような様子はなかった。
原作との変化点。
・七瀬に貸しを付けた。
明確な貸し借りにすることで、七瀬としても心苦しさが減っている。
・須藤たちと談合した。
原作と違って、須藤がちょっとこざかしくなっている。結果、本来であれば負けていたクイズで勝つことが出来た。七瀬は気を使って下がっている。ちなみに、同率一位で得点が同じなのは独自解釈。
・池たちとキャンプをしなかった。
そのため、七瀬が泣くシーンがカットされている。代わりに、次の指定エリアに着いた(時間内に間に合っていないので到着ボーナスはなし)ことで、明日の動きが早くなった。
・七瀬警戒中。
WR生のような刺客から清隆を守るために気を張っている。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
美味しく頂きたいくらい七瀬が隙だらけだが、流石にまだ手を出せないので我慢している。須藤のおかげで思わぬ得点を稼げた。
・七瀬翼
原作通り、何とか清隆と一緒に行動できてホッとしている。結構無理をして最後の指定エリアに向かったため疲れているはずだが、それでも自分の仕事をしっかりする可愛い子犬ちゃん。
・須藤健
知力がついてきた。周りをよくみて学べるものを学んでいる。
・池寛治
篠原に自分が頼りになる所を見せようと気合を入れている。原作と違って集中できているため、活躍もしっかりできている。
・本堂遼太郎
唯一の見せ場。オタク無双した。