10日目――昨日は最後のエリアであるD5をスルーしてしまったので、今日は最初の指定エリアであるE4は踏んでおこうと移動を始める。
その際、エリアサーチでオレの妨害をする3年や1年の行動を把握しようしたのだが、どうやらこの数日でオレの動きを止めきれないと判断して、3年生はオレを直接妨害するのを諦めたらしく、1年と一緒に課題を封殺する動きに切り替えたようだった。
単独だった頃と違って今のオレは高円寺とグループを組んでおり、その高円寺がリタイアした以上、着順報酬を得ることがなくなったというのも大きい。
また、原作と違って数が少ないのも理由の一つだろう。南雲が今使える兵隊は、3年Aクラスの生徒と1年生だけだ。
その1年たちもどこまでが素直に言うことを聞くのかもわかっていないが、宝泉や椿がこちら側にいる以上、全員が素直に言うことを聞いているとは思えない。
あまりサーチを多用したくはないが、周囲の動きを把握するのも大切なので、敢えてエリアには遠回りで動きつつ、1時間が経った頃にもう一度サーチしてオレの周囲の状況を再確認した。
やはり、直接オレを追う動きをしているグループの存在はない。課題を独占する方に人数を割いた方が良いと判断したと見て間違いないだろう。
それなら素直にエリアに向かわせて貰うか。また遠くの課題を行き来して翻弄するのもいいが、毎回毎回同じことをしていたら流石のオレも体力を消耗する。
今日は上位1位の座を奪われるのを覚悟して前半はゆっくり動くことにした。後半にはランダム指定で遠くのエリアが指定される。その時のいざこざで課題を奪っていけばいい。
「随分と遅い到着だな綾小路」
と、オレがピクニック気分でE4に入ると、先にエリアに到着していたらしい鬼龍院がそう言ってこちらに声をかけてきた。
しかし、視線はこちらに向いておらず、遠くを見るかのように別の方向を向いている。思えば、鬼龍院ともこうして会うのは初日以来だった。
「どうやらそうみたいですね」
「少し前まで着順報酬の競争相手に手強そうなライバルがいると思っていたが君だったようだな」
「オレが? まさか……今みたいに、いつもギリギリですよ」
「1位の人間の言葉ではないな。課題だけでその得点は集められまい」
「これは高円寺とグループを組んだおかげです」
「奇遇だな。私が着順報酬で1位を多く取れるようになったのも、高円寺がお前とグループを組んでからだ」
これまでは原作知識を悪用して着順報酬1位を取り続けていたが、それはつまり必然的に俺と同じテーブルの人間は2位以下にしかなれないということでもある。
おそらく鬼龍院は、自分がずっと着順報酬でほぼ2位以下しか取れないことから、上位で同じテーブルのオレに目を付けていた。
そして、そのオレが高円寺とグループを組んで着順報酬を放棄し出してから1位を多く取れるようになってオレが犯人だと断定できたのだろう。
「正直、お前が上位を狙っているというのは意外だったぞ」
「オレの方こそ意外でしたよ。先輩は順位には興味ないと思っていました」
今日の朝の時点で、鬼龍院は10位争いをしている桔梗や六角のグループを抜いて10位まで上がってきていた。これまでも上位ギリギリをうろついてはいたが、オレがいなくなって着順報酬を得られるようになったのがやはり大きいようだ。
「この無人島試験が存外に面白くてな。年甲斐もなくテンションが上がってしまった」
「年甲斐もなくって……」
「もうしばらくは今のペースでやっていくつもりだ」
「もうしばらく? 1位は狙わないんですか?」
「表彰台は全員が凌ぎを削り合って狙ってくる。私も遊びでは済まなくなるからな。しかし、お前が崩れてくるのであれば少し話は変わってくるかもしれない」
「崩れるも何も、多分今日の終わりには4位か5位くらいまで沈んでますよ」
これはおそらく間違いない。少なくとも、雪たちのグループは今日中にオレを抜くし、桐山や南雲も抜いてくるだろう。八神はギリギリかもしれないが、近い位置には付けてくるはずだ。
「高円寺とグループを組まずに、これまで通り着順報酬を狙っていればそんなことはなかったんじゃないか?」
「どうでしょうね? そう上手くはいかないと思いますが……」
実際、その可能性もあった。だが、その場合、オレがトップを独走することで南雲と八神が結託してしまう可能性がある。
今は、互いが互いを使っているという認識を持っているからこそ、1対1の状況を2つ作れているが、オレが一人では追いつけないくらいの相手だと認識したら、あの二人は勝つために協力をすることすら厭わなくなるだろう。
そうなれば、必然的に1対2の状況となり、今以上に1年生と3年生が連携を取るようになる。その場合、いくらこちらに原作知識があるとはいえ、今以上に自由に動けなくなるであろうことは火を見るよりも明らかだった。
だからこそ、高円寺とグループを組んだのだ。
一時的に1位を取りつつ着順報酬を捨て課題を少しずつ放棄し、ペースを遅らせて今日か明日には南雲と八神にオレを抜かせる。そうすれば、有利になった、逆転できたという安心感が、あいつらを協力へと走らせない。
後は機を見て、あの二人を叩くだけ――終わりまでのビジョンは既に見えつつあった。
「まぁいいさ。私としても半分はお遊びだ。これ以上、お前のことをどうこう言うつもりはない」
「……どうも」
「話を変えよう。ここまでリタイアしたグループが1つもないことについてはどう思っている?」
「どう、とは? 一時たりとも油断できない状況が続いているってことだけではなく?」
「私は昨日、スタート地点に戻って情報を仕入れた。食料や水不足に悩み始めたグループは、共倒れを避けるためにグループの一部を切り離す作戦を取って急場を凌いでいるらしい」
「賢明な判断かと」
リタイア者がいなくても、ギリギリなグループは出来つつあるということだろう。こうなってくると、下位の人間は誰でもいいからリタイアしてくれと願う――いや、願う以外にも嫌な思考へと流れていく可能性がある。
「なりふり構わなくなった人間はどんな手でも使ってくる。油断するなよ?」
「それは女子である鬼龍院先輩の方が心配すべきでは?」
「ふむ……確かに、可憐な乙女としては、危機感を覚えた方が良いかもしれんな。だが、そうだな……もしもの時は、力ずくで乗り切ることにしよう」
「可憐な乙女とは思えない答えですね。喧嘩に自信があるんですか?」
「私は淑女だぞ、ある訳ないじゃないか。精々が学校の授業で格闘技を習ったことがあるくらいだ」
そう言って、鬼龍院は笑みを浮かべながら振り返った。そういえば、原作でも人を殴った経験はないと言っていたっけか。
こちらが少し呆れた雰囲気を出したのがわかったようで、鬼龍院も「フフ、軽いジョークだよ」と、前言を撤回してくる。どちらが本当かわかったもんじゃないな。
「すまないな時間を取らせて。私も君も、一分一秒を惜しむ必要があるからな。そろそろ行くとしよう」
こちらに軽く手を挙げて鬼龍院は歩いていく。まだエリア更新の時間ではないので、課題でも受けに行くのだろう。
一緒に行ってもいいが、まず間違いなく近場の課題は1年や3年に封殺されているので、受けるのはまず不可能だった。
「君はいかないのか? 今ならまだ挑戦権は残っているかもしれない」
「遠慮しておきます。無駄なことはしない主義なんで。もしかしたら女性である鬼龍院先輩なら行けるかもしれませんが、オレはまず課題を受けることすら出来ませんから」
なので、ここで鬼龍院を見送る。オレの言葉から、妨害を受けていることを察したのか、鬼龍院が一度足を止めた。
「そういうことか――いや、敢えて直接行って確かめてくることにしよう」
鬼龍院はオレを取り巻く環境の解決札にはならない――が、この先の月城との戦いではある程度役に立つ存在だ。
既に原作と動きは変わりつつあるが、出来れば鬼龍院には原作通りにオレに興味を持って貰って後を追ってきて欲しい。これは、そのための伏線に過ぎないが、上手く作用してくれるのを願うのみだった。
◇◆
9時の指定エリアのF4を踏み、オレは大きく動き出した。13時の指定エリアは、ランダム指定のB9だ。
前にも言ったが、この島はE5から南東のI9にかけて、多数のエリアを含む大きな山があるので、F4から最短ルートでB9に向かおうとすると山越えが必要になってくる。
さらに、もし山越えをしたとしても、1時間~2時間程度のショートカットにしかならず、そこまでしてもB9まで2時間で付くのはまず不可能だった。リスクとリターンがあっていないので、普通にエリアをスルーして回って行った方がいい。
遠回りして真っ直ぐ向かう場合、オレの速度でも3時間~4時間はかかる。途中で課題を受けていくとしたらそれ以上は余裕でかかるだろう。
15時の指定エリアは隣のC9なので、最終的にそこに間に合うように動けばいいと判断して動き出したが、この日は課題運がなくオレの進む方向に多くの課題が出現しなかった。
結局、途中で受けた水の競争で3点+2ℓの水を手に入れただけで終わり、C9の到着ボーナス1点を追加してこの日は終わっている。
朝7のE4と朝9のF4で手に入れた到着ボーナスの2点と合わせても6点と、今までに比べてかなり得点が低くなってしまった形だが、これによっておそらくランキングの上位10組の立ち位置は大きく変化したはずだ。
17時が過ぎ、今日の試験は終了ということで、C9でキャンプをするためテントを設営すると、今日1日で上位10組がどう変化をしたのか確認していく。
1位は、雪グループで231点。目の上のたんこぶだった桐山を抜き去り、高円寺がいなくなったことで、この終盤に無事1位に躍り出てきた。
2位は、南雲グループで224点。大グループを作ったことで得点力も上がり、遂に抜かされてしまったらしい。南雲からすればようやくだが、オレを抜いたことで精神的な安静も生まれているはず。これで八神との協調姿勢にはならないはずだ。
3位は、オレで218点。高円寺の貯金のおかげで、何とかギリギリで3位をキープできているが、それでも安心できるような点差ではなかった。
4位は、坂柳グループで215点。大グループを作ってから、坂柳のグループは快進撃が凄い。原作より1人少ない上に真澄もいないはずだが、その分を補って余りある活躍ぶりだ。
5位は、桐山グループで212点。上位をキープしていた桐山だったが、何かアクシデントでもあったのか、雪のグループに抜かされてから転がり落ちるように下がってきている。ここで、こいつに抜けられると厳しいのでもう少し頑張ってほしいものだ。
6位は、3年の落合グループと溝江のグループが同率で209点。この二つのグループも大グループを作ったようで、大グループを作っていない他のグループを抜いて上がってきていた。
8位は、龍園グループで207点。やはり、大グループを作っていないことで他の大グループに後れを取っているように見える。このまま落ちてくれるなら嬉しいが、龍園なら何か秘策があってもおかしくない。油断はしないようにしておかないとな。
9位は、八神グループで204点。少し順位が落ちたが、このグループの場合は不調ではなく、他のグループと大グループを作ったことで得点が平均化してしまったようだ。それでも上位10組には入っているので、ここから巻き上げを測ってくるだろう。
10位は、鬼龍院で201点。しかし、オレとの点差が20点もないことを考えると、着順報酬や課題の結果次第ではいつでも上位に上がってきそうだ。この人はどう動いてくるかが全く読めない。
だが、ここでトップから降りられたのは大きかった。明日からの残り4日――南雲は順調にポイントを稼いでトップを狙いにいくだろう。
対する八神も、ここで少し落ちたが、椿の作戦でオレを削りながら人数有利を使って上手く立ち回ってくるはず。原作通りであるなら、勝負に動いてくるのは12日目から13日目だ。
そして、14日目の最終日に月城との最終決戦がある。この後半はどうしても得点が下がらざるを得ないが、最初からこうなることはわかりきっていた。
と、いうより後半に点を下げるのは予定通りだ。
仮に高円寺と合流していなくても、オレは今日辺りから動くのを自重していただろう。
南雲や八神には、まだまだ勝てるというイメージを持っていてもらわなければ困る。それは、協調されるされない以前の問題で、オレへの敵意を集中させかねないからだ。
ハッキリ言ってしまうと、やろうと思えば鬼龍院の言っていた通り、高円寺とグループを組まずに、着順報酬や課題で稼ぐだけ稼いでトップゴールするというのも不可能ではなかった。
最終日だけは得点が2倍になるので、そこの結果次第では順位が変動する可能性もあるが、少なくとも上位3位に入るのは、原作知識があるオレにしてみればそう難しいことではない。
だが、それをやってしまうと、坂柳や龍園だけでなく、上級生や下級生からも目を付けられることになり、学年を超えて協力し、オレを潰そうとする動きが出てきかねなかった。
前にも何度か言ったが、オレが進んでAクラスになろうとしないのも同じ理由であり、やろうと思えばもっと早い段階で今のクラスをAクラスに出来たが、下手に敵対心を煽りたくないから敢えて足踏みをしている。
勿論、敵対心を持たれた所で、オレが負けることなど有り得ない。しかし、他クラスや他学年の女子を食べるということに支障が出てくるのは大きな問題だった。
まだ西野や姫野を始め、手を出したいと考えている女子は多くいる。それに、茶柱と星之宮との関係を考えても、今のクラスにはもうしばらくBのままで居て貰った方が都合が良かった。
当然ながら、南雲や八神には勝つ必要がある。だが、圧倒的な勝利である必要はない。
理想を言えば、1位を雪のグループ。2位か3位を坂柳か桐山のグループが取ってくれるのが一番良かった。
最悪、2位と3位を坂柳、龍園のグループが取っても問題はないが、出来れば帆波クラスを掌握のためにも龍園には下のクラスに居て貰った方が都合がいい――と、考えていると、テント外から何やら光の点が動いているのが見える。
「……夢ちゃ~ん」
耳をすませば、かすかにか細い声も聞こえてきた。おそらく、白波がグループメンバーと逸れてこちらに歩いてきているのだろう。
正直、原作でもこのイベントはどこで起きたか明記されていないので、最悪の場合は起きない可能性も考慮していたが、無事に白波は迷子になってくれたようだった。
当然、無視をするという選択肢はない。
ここで白波を助けるということは、同じグループメンバーであるAクラスの竹中に借りを作るという意味でもあり、結果的に坂柳に借りている貸しも減らすことが出来る。
と、いう訳でタブレットの機能でライトを点け、白波をこちらに呼び寄せることにした。
向こうもすぐにこちらのライトに気付いたようで、懐中電灯の光がこちらに向けられると同時に、白波がこちらに向かって走ってくる。
「夢ちゃん!?」
「残念ながら小橋じゃない」
「あ……綾小路、くん……」
恐ろしいものを見たと言わんばかりに、白波の顔に恐怖が浮かぶ。まるで、悪魔に見つかった子供だ。
まぁ、この無人島試験が始まる少し前に、白波とはちょっとした衝突があった。それを考えればこの反応も仕方ない部分はある。
「あ、綾小路くん……こん、こんばんは……」
オレのことを嫌っているみたいが、それでも頑張って挨拶をしてきた。こんな夜に一人でいるよりはマシだと思ったようで、こわばっている表情の中にも少しの安堵が浮かんでいる。
「一人で夜中に行動するのはかなり危ないぞ。グループメンバーの小橋と竹本はどうした?」
「あ、その……場所、わからなくなっちゃって……慌てて歩いたら、方角が訳わからなくなっちゃって……」
「逸れてからどれくらい経つ?」
「どう、かな……15分か、20分くらい……?」
今、オレがいるのはC9の北西端だ。おそらく、C8の南西側に居た所を迷って南下してきたと見て良いだろう。
しかし、声が届かない距離まで来ているということは、原作通りそう簡単に合流できる状況じゃないと見て良かった。
「とりあえず、無暗に歩き回るのはさらに遭難するだけだ」
「う、うん……」
「虫も多いし、とりあえずテントに入るといい」
「えっ!?」
一応、善意で声をかけたのだが、白波はそういうことをさせられると思ったようで、恐怖心が混じったような声を上げる。そんな顔を見ると、少し虐めたくなってきた。
「一人で居たいというなら構わない。オレとしても、別に助けてやる義理がある訳じゃないからな」
「ま、待って! 入る! 入ります! ありがとうございますっ!」
オレに見捨てられると思った白波が、慌てたようにテントの中に飛び込んでくる。
どうやら、この夜の森を一人で歩くのは相当心細かったらしく、相手が嫌っているオレだとしても見捨てられるのは嫌なようだった。
「ご、ごめんなさい……休んでた所に……」
「別にいい。それより、小橋と竹本は普通に元気な状態なんだな?」
「う、うん」
「誰かが逸れた時の取り決めは?」
「な、何も、してない」
「と、すると……男子の竹本が一人で探しに来る可能性もあるが、その場合は二次遭難になる恐れがある。かといって、二人がテントと荷物を置いて探しに出るのも結構なリスクだ」
原作通りなら、竹本と小橋がテントや荷物を持って、サーチを使って探しに来るはずだ。
つまり、急いで動く必要性はないに等しい。のだが、当の白波からすれば、困った状況であることに変わりはないので青い顔をしている。
「どうしよう……」
「グループは小グループのままか? それとも4人以上に増えてるのか?」
「それは……」
タブレットでグループ編成などの詳しい状況がわかるのは、自分以外だと上位10位と下位10位のグループだけだ。後は順位くらいしか把握できない。
勿論、原作知識のおかげで、白波が小グループのままというのは知っているが、ここでオレが白波の状況を知っているのは不自然なので知らないフリをする必要があった。
「あ、えと……」
「わかった。詳しい状況は話さなくていい」
一応、この特別試験を受けるに当たって、BクラスとCクラスは協力関係にあるのだが、Aクラスの竹本と組んでいる白波としては迂闊に内情を話しにくいのだろう。
そこを配慮しての発言だったのだが、白波としては二度も反発したことで、今度こそオレに見捨てられてしまうと思ったのか――何故か、その場でいきなりジャージを脱ぎだした。
「わ、私っ、お礼するからっ! 何でもするから、見捨てないでっ!」
そう言って、上下下着姿になると、オレのジャージを降ろしてTレックスに飛びついてくる。
当然ながら、白波に何かするつもりなど欠片もなかったので、Tレックスは眠ったままだった。しかし、白波の柔らかい手の感触で目が覚めたのか、ピクリと首を上げていく。
白波は大きく口を開けて、Tレックスのお世話を始めた。とはいえ、基本的にレズで男性経験もない白波にテクニックなど有るはずがなく、前回同様に一生懸命に口を窄めるくらいしか出来ない。
前回は状況が状況であり、初めてだったということもあって興奮できたが、つたない白波の技術ではTレックスは全く元気にならなかった。
「は、はんへ?」
なんで――と、言っているのだろう。
白波もオレを興奮させるために下着姿を晒したのだろうが、もっとプロポーションのいい下着姿を知っている身からすれば、その程度で興奮はしない。
「……もういい。オレの話をひとまず聞け」
何だか哀れになってきたので、白波に止めるように言うが、白波は首を横に振って再びTレックスに奉仕を始めた。
もう面倒くさいので、このまま話を進める。
「もし、オレがお前のグループの仲間だったとすれば、今の状況にはまず気が付いている。戻る道を失って、暗い森の中を女子が一人で彷徨っていると判断するだろう」
白波は小さく頷いた。が、奉仕の手は止めない。頷いたのは一応聞いていること知らせるためだろう。
それでも、Tレックスは一向に元気にならない。
「勿論、放っておくことはしない。まずは声をかけて音での合流を図る。ただ、先程も言ったが、これで反応がないとなると次の手が必要だ。仮に、小橋が逸れたとしたら、白波と竹本はどう動く?」
「た、多分、だけど……2人で、夢ちゃんを探しに行く……と思う……」
「二次遭難ともなれば、怪我でリタイアの危険がある。それでもか?」
「と、友達だから放っておけないよ」
実際、竹本と小橋も助ける方向で動くだろう。
こちらも原作通りに迎えに行くか。仮にサーチで得点が1点、2点減った所で、もう大きな問題はないだろうし――と、考えていると、あまりにTレックスが反応しないからか、半泣きで体育座りしている白波のとある一部がうっすら変色しているのが目に入ってきた。
「……お前、興奮しているのか?」
「へぇっ?」
自覚がないのか。だが、明らかに白波は今の状況で興奮しているようだった。
おもむろに、足の指で変色している部分を押してやると、白波がビクンと体を跳ねさせる。
すぐに逃げようとしたので、「動くな」と命令を下す。同時に、白波がその場で動きを止めた。もうこれ以上、オレに逆らえないと思ったようで、恥ずかしそうにしながらも上目遣いでこちらを見上げてくる。
「質問に答えろ。お前、興奮しているのか?」
「し、してない……」
「嘘を付くなら、今度こそ見捨てる」
「ご、ごめんなさいっ! 興奮してますっ!」
「何で、興奮している?」
「わ、私、迷子になって、助けて貰ってるのにお礼も出来なくて……無様で、惨めで、どうしようもなくて……」
と、とりとめもない言葉を呟くと同時に、どんどん変色部分が増えていく。どうやら白波は、自分に対して被虐的な思考をすると興奮する体質らしい。
「だ、駄目なのに、こんなの駄目なのに……」
そう言いながら、とうとう自分で自分を慰め始めた。もはや、オレに見られているという自覚すらないのか、完全に自分の世界に入ってしまっている。
まさか、白波を助けるだけのイベントがこんな方向に変化するとは――と、何故か自家発電を始めた白波を見ていると、流石にTレックスも興味を持ったようで顔を上げた。
それから少しして白波がビクンと大きく体を震わせると、まともな思考を取り戻したようで、ハッとしたように真っ赤な顔で体を起こしてこちらに顔を向けた――と、同時に、元気になったTレックスとこんばんはする。
「あ、え、あ……?」
ずっと、元気がなかったTレックスがようやく望んだ姿になり、白波は何と言って良いかわからないようで、口をパクパクさせながら意味もない声を漏らしていた。
しかし、こちらが何も言わずにジッと待ち、Tレックスが『苦しゅうない。こちらに来るといい』と言わんばかりに首を動かすと、白波は大きな口を開けてこちらの股座に飛び込んでくる。
結局、Tレックスが火を噴く頃には、もう白波の下着は完全に下着の体を成しておらず、ノーパンでジャージを履くという謎の状態になってしまっていた。
原作との変化点。
・鬼龍院に、清隆の現状を匂わせた。
何故、着順報酬を捨てたのか、何故追われているのか、匂わせることで最終日に自分を負うように仕向けているが、確立としては半々と見ている。
・後半失速は作戦通り。
勝ちすぎると相手が結託するので適度に手を抜く必要があった。なので、ピークを高円寺とのグループ作成に持っていき、そこから少しずつ違和感がないように失速している。
・地味に、南雲が逆転して喜んでいる。
無人島試験も2/3程進み、ようやく逆転できて心の底から喜んでいる。とはいえ、表面上は予定通りとすました顔をしているが、なずなだけはその必死さに気が付いている。
・八神も今の段階では想定通り。
まだ逆転できていないが、この後に綾小路襲撃計画を椿が提案しており、それで足が止まれば逆転できると見ている。ちなみに原作では大グループを組んでいないが、このSSでは1年Dクラスの女子3人(ちゃんと優秀)なグループと組んでいる。しかし、原作通りに高橋修がうんこマンになっているのが少しネック。
・桐山クラスのアクシデント。
多分、表で書くとしてもさらっと書くだけなのでここで書くが、グループメンバーにアクシデントが起きて失速している。序盤から飛ばしてきたツケが回ってきた感じ。
・白波イベントが発生した。
地味に期待していたイベント。ここで白波を助けることで坂柳からの貸しを一つ減らす目算を立てている。残りの貸しは、タイマンを約束すれば解消できるので貸しはなくなったと言って良い。予想外にノーパン女にしてしまうイレギュラーが発生した。
今話の登場人物一覧。
・綾小路清隆
七瀬のおかげで気分がリフレッシュされていたが、おまけの白波事件でさらにTレックスがご機嫌になっている。
・鬼龍院楓花
初日振りの再会。話していて、清隆が何らかの妨害を受けていることに気付いた。原作よりも試験にのめり込んでいる。
・白波千尋
迷子ちゃん。清隆に助けて貰うということは代価が必要と勝手に解釈して、勝手に胞子を始めた。最終的には惨めな自分に興奮して自家発電して、ノーパン女になっている。当然ながら完全に手を出してはいないのでまだ処女のままである。