ヤンデレストライク   作:ホーブ

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前編からかなり時間が空いてしまい申し訳ないです。後編は意外と分量少なめでした、これくらいなら一つにまとめてもよかったかもしれない.......


目醒めちゃった五大天使 後編 サンダルフォン、メタトロン、ザドキエル、カマエル、ラミエル

ラミエルの部屋から抜け出し、ホームズとの待ち合わせ場所に向う。

待ち合わせ場所につくと見覚えのあるフォルムがもう既にそこで待っていた。

 

「来たんだな、マスター」

 

「すまない、待ったか?」

 

「気にしなくていいさ。それで、最後の確認だが、元の世界に戻るためにここに来たという事でいいんだな?」

 

「その認識で構わない。」

 

「......了解した、行こうかマスター」

 

そう言って歩き始めるホームズ。

 

しかしなぜホームズはここまで俺に協力的なのだろうか。

 

ボックスのみんなが俺を好意的な目で見ているのは流石に感づく。

 

 

 

「ホームズは俺が現実世界に戻ることについてどう思ってるんだ?」

 

 

 

「........私としてはこの世界に残ってほしかったのは事実だ」

 

ホームズは足を止め少し俯き気味に呟いた。

 

「ただ、私はマスターのモンスターだ。マスターの意思を尊重するよ」

 

「ホームズ........」

 

「まぁ、マスターが気にすることはない。本来私たちは交わるべき存在ではなかったんだ。あるべき状態に戻る、ただそれだけのことだ。」

 

「まぁ、向こうに戻ったら天使達だけじゃなくて私たちの事ももっと意識してくれると嬉しいかな。」

 

そう話すホームズの瞳は少し揺れていた、そんな気がした。

 

 

■□■□■□

 

「なぁホームズどこに向かってるんだ?」

 

「あぁ、そういえば言ってなかったな。正門だよ。オーブ(これ)を使って門を二つの世界をつなぐ扉にする。」

 

「そんなことが出来るのか......」

 

「もう着くぞ、そこの角を曲がればもう正門だ」

 

「あぁ、何から何までありがとうな」

 

「いいんだ、マスターのために働けてモンスター冥利に尽きるというものだよ。」

 

 

角を曲がったその時、何の前触れもなく、彼女の背中が視界の中で静止した。

声を出す暇もなく俺の顔はホームズの背中に吸い込まれる。

 

ドン、という鈍い衝撃、顔を抑え少しよろける。

 

 

「いってぇ......おい、どうしたんだホームズ?」

 

 

痛む顔をさすりながら横にいるホームズの顔を見る。

ついさっきまで見せていた余裕のある表情はそこにはなく、険しい表情で前を見つめていた。

 

その視線の先に顔を向ける。

 

「なんで......」

 

 

 

 

そこには天使たちが門の前に立ち塞がっていた、部屋で寝ているはずのラミエルもいる。

 

なぜここにいる?まさか、中庭に出るときに誰かに見られたのか?

 

 

「やっぱり来た!メタお姉ちゃんの言うとおりだったね!」

 

「当たり前なの。私たちを置いていこうなんて、そんなの、許されるはずがないなの」

 

「グスッ、ひどいよ……マスター……」

 

「……ラミエルを泣かせるとは、一体どういう了見なんだァ?」

 

「詳しく説明してもらいましょうか。私たちが納得できるまで、じっくりと」

 

 口々に話す彼女たちの瞳は、まるで鉛筆でぐりぐりと塗りつぶしたかのようだった。光を反射しないその双眸に見つめられると、金縛りにあったかのように指一本動かせなくなる。

 

 怖い。

 本能が、心臓が、喉の奥が、ありったけの警鐘を鳴らしている。

 

 そんな俺の震える肩を庇うようにして、ホームズが堂々と一歩前に出た。彼女の背中は、この絶望的な状況下でも驚くほど静かで、凛としている。

 

「やぁ、奇遇だね。こんな時間に揃ってお散歩かい?あまり健康的な時間とは言えないが」

 

「……とぼけないでほしいなの。マスターを連れて、何をするつもりだったなの」

 

 メタトロンの平坦な声が、鋭いナイフのようにホームズを突き刺す。ホームズはふっと口角を上げ、いつもの不敵な笑みを浮かべてみせた。

 

「まぁまぁそう怖い顔をするな。私はこの世界に迷い込んでしまった可哀想なマスターを元の世界へ送り返してあげようと思ってね。……さて、君たちは何のために道を塞いでいるのかな? 」

 

「.......」

 

押し黙る天使達、そんな天使達にさらなる質問をホームズは浴びせる。

 

 

「正直に答えてくれ。この世界にマスターを呼び出したのは、君たちだね?」

 

 ホームズの問いに、一瞬の静寂が訪れる。それを破ったのは、カマエルの低く、熱を帯びた声だった。

 

「……そうさ。私たちが、オーブを使ってマスターをこっちへ引きずり込んだんだ。それがどうした? 私たちは、画面越しにしかマスターの存在を感じることが出来なかった。マスターがログインするたびに、私たちの名前を呼ぶたびに、どれだけこの腕で抱きしめたいと願ったか……お前にわかるのか!?」

 

「マスターは毎日私たちに会いに来てくれた......ボックスを開いて私を選んでくれた......クエストで勝った時、あんなに喜んでくれた......なのに......なのに……っ!」

 

「うるさいうるさいうるさい!!」

 

 サンダルフォンの絶叫が夜の静寂を切り裂く。

 

「元の世界に帰すなんて、絶対にさせない! あの世界には、マスターを傷つける嫌なことだっていっぱいあるんでしょ!? ここなら私たちが守ってあげる! 私たちだけを見て、私たちにだけ愛されていればいいんだよ!」

 

「……ホームズ、サンちゃんの言う通りなの。マスターには、もう帰る場所なんて必要ないなの」

 

メタトロンの無慈悲な宣告。彼女たちの愛はもはや信仰と言って差し付変えないレベルになってしまっているらしい。

 

ホームズは小さく嘆息し、俺にだけ聞こえるほどの囁き声で呟いた。

 

「さすがにこの状況は分が悪すぎる。ここは一旦引こう、マスター」

 

 

 

「一旦引くって、どうやって?」

 

 

 

「いいから私に任せろ、今から三つ数える、数え終わったら後ろを向いて走り出すんだ」

 

「……わかった」

 

 いち、にの――。

 

「さん!」

 

 ホームズの切羽詰まった号令とともに、俺たちは弾かれたように反転し、闇の中へと駆け出した。

 

「あ! 逃げる気なの!?」

「待って! マスターぁっ! 」

 

背後から響く天使たちの声。昼間のような甘さはそこには微塵もない。

 

 

「走れ!決して振り返るな!」

 

ホームズに背中を押されるまま、俺は全力で地面を蹴った。

向かう先は先ほどまでいた居住棟の方角だが、まともに道を行けばすぐに追いつかれてしまう。カマエルの身体能力は今日の昼間で嫌というほど思い知っている。

 

「こっちだ、敷地の外周に沿って進む」

 

ホームズに手を引かれ、俺たちは綺麗に整備された石畳の道から外れ、木々が鬱蒼と生い茂る庭園の暗がりへと滑り込んだ。

 

「ハァ……ハァ……建物の中に隠れなくていいのか!?」

 

「駄目だ、建物の中には他のモンスターが大勢いる。騒ぎになれば確実に目を覚ますぞ。そうなればどうなるか、君にもわかるだろう?」

 

「ッ……確かに……」

 

もし他の連中にも俺が帰ろうとしていることがバレたら、それこそ一巻の終わりだ。ヤンデレ化した天使五人だけでも致死量なのに。匿ってくれる可能性もあるが天使達みたいになっていないとは限らない。

 

その可能性を考えればこれが最善手なのも理解できる。

 

俺たちは息を殺し、大きな木々の陰や、建物の裏手の暗がりを縫うようにして進んだ。

夜の静寂が、今はひたすらに恐ろしい。自分たちの踏みしめる土の音や、荒くなった呼吸の音さえ爆音のように感じる。

 

『マスター?どこぉ?隠れんぼかなぁ?』

『早く出てくるなの……』

 

遠くから、サンダルフォンとメタトロンの声が聞こえてきた。

声のトーンが完全にホラー映画のソレである。

 

「クソッ、なんでバレたんだ……ラミエルにはあんなに強い睡眠薬を飲ませたのに……」

 

「彼女たちの君への執着を甘く見すぎたな。おそらく、運の悪いことに誰かがラミエルの部屋に入ったか……あるいは、ラミエル自身が『君がいなくなる夢』でも見て目を覚ましたかだ」

 

生け垣の陰に身を屈めながら、ホームズが忌々しそうに舌打ちをする。

 

「だが、あいつらも大声は出せないはずだ。これだけ夜が更けているんだ、他のモンスターを起こすような真似はあいつらとて避けたいだろう。」

 

「だからと言ってこのまま逃げ回るだけじゃ何も変わらないじゃないか。なにか策でもあるのか?」

 

「......あぁ。正門は塞がれたが、このボックスの外壁には一箇所だけ、私が調査のために使っていた古い抜け道がある。そこから迂回して正門に行こう。」

 

 

遠ざかっていく天使たちの足音を確認し、俺たちは再び暗闇の中を駆け出した。

訓練棟の裏手を抜け、弾薬庫の影を這うように進む。月明かりすら届かない深い闇の中、ホームズの紫色のコートだけが俺の道標だった。

 

「見えた、あそこだ。あの蔦が絡まっている壁の裏に、抜け道がある」

 

ホームズが指差した先には、確かに人工的な不自然な隙間があった。

いける。これなら逃げ切れる。

 

「助かった……本当に、何から何までありがとうホームズ」

 

安堵のあまり、膝から崩れ落ちそうになるのを必死に堪えながら、俺は前を歩くホームズの背中に声をかけた。

 

だが。

 

「…………」

 

ホームズは立ち止まったまま、何も答えない。

 

「おい、ホームズ?早く行こうぜ、追いつかれちまう」

 

壁の隙間に手をかけたまま動かない彼女の肩に、そっと触れた。

その瞬間、ゾクリと背筋に悪寒が走った。

彼女の身体が、まるで氷のように冷たかったのだ。

 

「ホームズ……?」

 

ゆっくりと、ホームズがこちらを振り返る。

その顔を見て、俺は息を呑んだ。

 

理性を湛えていたはずの黄金色の瞳から、完全にハイライトが消え去っていた。

代わりに、その瞳の奥にはどろりとした、底知れぬ漆黒だけが渦を巻いている。それはついさっきまで俺に向けられていたあの天使たちの目と全く同じものだった。

 

「う、嘘だろ……」

 

ジリ、と後ずさる俺。

 

「逃げ……ないで、マスター……」

 

ホームズの口から紡がれたのは、彼女の知的な声色ではなく、酷く抑揚のない、まるで誰かに操られているかのような機械的な声だった。

 

「やっと……捕まえた……えへへ……」

 

その瞬間、俺の背後から、甘く、そして凍りつくような声が鼓膜を撫でた。

 

振り返るよりも早く、強烈な力で両腕を背後に捻り上げられる。

「がはっ!?」

虚ろな目をしたホームズが、俺の腕を万力のような力で拘束していた。

 

「痛っ!おいホームズ!やめろ、目を覚ませ!」

 

いくらもがいても、女性の細腕とは思えない恐ろしい力でビクともしない。

 

「無駄だよ、マスター。人間はモンスターに敵いっこないんだから」

 

暗闇の中から、一人の少女がゆっくりと姿を現した。

城を基調とした服に水色のリボン、ふわりと浮かぶ妖精。

 

ラミエルだった。

 

「ラミエル……お前、どうやって……」

 

「ホームズちゃんにはね、少しだけ私のお願いを聞いてもらったの。マスターが逃げないように、しっかり捕まえててねって」

 

 

ラミエルの妖精が、ホームズの頭の周りをフワフワと飛んでいる。

夢や幻覚を見せる能力……うまく使えば他人を操ることが出来るのかもしれない。

 

「ホームズを洗脳するなんて......仮にも仲間じゃないのか?」

 

「洗脳とはちょっと違うかな、マスター。これはホームズちゃんが望んでいたことでもあるんだよ?私はソレを押さえつけていた理性のたかを外してお願いしただけ」

 

ここに来る前に見たホームズの瞳を思い出す。

 

「ごめんなさい、マスター。でもマスターが悪いんだからね?私を裏切った罰だよ?」

 

ラミエルの瞳には一切の光がなく、ただただ俺の絶望した顔だけが反射していた。

彼女がゆっくりと手を伸ばし、俺の頬を冷たい指先で撫でる。

 

「もう、絶対に逃さないからね。ずっと……ずぅっと、一緒だよ?」

 

ガサリ、と周囲の茂みが揺れる音がした。

見回すと、暗闇の中からサンダルフォン、メタトロン、カマエル、ザドキエルの四人が虚ろな目をして、こちらを囲むように立っていた。

 

「あぁ……」

 

ホームズに拘束され、五人の天使に完全に包囲された俺は、ただ乾いた笑いを漏らすことしかできなかった。

 

 

 

■□■□■□

 

「今日の晩御飯はメタお姉ちゃんと一緒に作ったんだ~おいしい?」

 

「あぁ......おいしいよ」

 

「よかったぁ、明日も作ってきてあげるから期待しててね!」

 

「飛び切りおいしいものを作ってきてあげるなの」

 

「......それは嬉しいな」

 

「なぁマスター食べ終わったならランニングに行こうぜ!」

 

「ダメだよカマエル、マスターはわたしと寝るんだから」

 

「ひとっ走り行った方がよく寝れるって、なぁ行こうぜ?」

 

「ラミエルも一緒に行けばいいんじゃないでしょうか、これならマスターと一緒にいる時間は減りませんし」

 

「まぁ、それなら......」

 

「いい案じゃねぇかザドキエル、そうと決まれば準備してくる」

 

「俺も着替えてくるよ」

 

「おう!いつものとこで集合な!」

 

 

 

 

 

 

あの後、天使たちに捕まった俺はそのまま夜明けを迎えた。

 

 

 

現実世界に帰ることが出来なくなった俺はこの世界で天使達とよろしくやっている。

始めは向こうの世界の事が気になっていたがもう戻れない世界の事だ、最近は頭に浮かぶことも少なくなってきた。

 

 

 

この世界は元居た世界と違ってなんでも天使達たちがやってくれる、それに怪我や病気をしてもすぐ治してくれるし、なにより可愛い子でいっぱいだ。

 

 

 

この世界の方が元居た世界よりいいに決まっている。

 

 

最近はそう考えている。

 

 

 

 

本当にそう感じているのか、それともそう思い込んでいるだけなのかわからないが。

 

 

 

 

 

俺は一体どうなってしまうのだろうか、それは誰にも分からない。

 

 

 

 

 

 

ただ一つ言えるのは俺の人生は最期のその瞬間まで彼女(てんし)らと共にあるということだ。

 

 

 




モチベーションにつながるので感想、評価よろしくお願いします。

ヤンデレシリーズ、エル、ヤクモ辺りはもうちょっとで書けそうです。

あと純愛モノとか見たい......見たくない?

たまには幸せな物語があってもいいと思うんですよ.........

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