このドエロ女の乙女な部分をこう……ギュッッッッッ!ってしたSSを定期的に書きたくなるんすよね。書けてるかは別として。
――ちゅ〜っ……
「……行ってきます」
「行ってらっしゃい。今日の当番も楽しみにしてますね」
先生を見送って、私も支度を始める。
先生はかなり朝早くからシャーレで働いている。先生に合わせて早起きしなくていいとは言われているけれど、起きた時に先生が居ないなんて……寂しいではないか。
「んーっ……行ってらっしゃいのキスもしましたし、今日も頑張れそうですね」
仄かに先生の感触が残る唇にそっと指を当て、頬を緩める。
制服に着替えるために、先生のシャツを脱いだ。
――――
シャーレビルの廊下を歩く。少し遅くなってしまった。バスが遅延しただけとはいえ、もう少し余裕を持って行動すべきだったかもしれない。
「先生、遅れまし……た」
「あ、ハナコ、いらっしゃい」
「……あら、浦和ハナコさん。今日は当番、一緒によろしくお願いしますね」
生塩ノア。ミレニアムのセミナーに所属する生徒……だったはず。
何事も無かったかのように先生の肩から手を離すノアさんを見て、背中にピリッと電流が走った。
「私にも、書類いただけますか?」
「おっけー。じゃあそうだね……この辺りお願い。私でも結構疲れる内容なんだけど……頼めるかな?」
「ふふ、もちろんです。お任せ下さい」
書類の束を受け取り、ちらりとノアさんに視線を送ってから、少し離れた机に座る。
「先生、では続きを確認しましょうか」
「あ、うん」
あちらは完成した書類の内容を確認しているようだ。ノアさんはセミナーの書記らしいから、きっと仕事も早いのだろう。
「……私だって…………ぇ?」
今、なぜ。頭にかかったモヤを払うように首を軽く振った。勝手に口から落ちた小さな呟きに、大量の疑問符が生まれる。
普段ならどのような問題も障害にならないほど回転する私の脳が、熱病に侵されているように思考が鈍い。なぜ、ノアさんに対抗心を?
ドツボにハマりそうな思考を捨て、目の前の書類に向かう。放っておいても湧き出してくる疑問を無理やりシャットアウトして、意図的に意識の外に捨てる。
こんな感情、私らしくないから。
――
「先生、終わりました」
「え、もう!?流石だね」
「これくらいでしたら、特に大変でもありませんよ」
「はぁ、私もハナコくらい優秀だったらいいのになぁ……」
「私はただの問題児ですから。それこそ、ノアさんみたいに人智を超えた記憶力を持っていた方が、いいと思いますよ」
「あはは……そうかな」
先生の表情が引き攣っている。きっと、私が怖い顔をしているのだろう。何故こんなにも余裕が無いのか分からない。先生が多くの生徒から慕われているなんて、今に始まったことじゃないのに。
先生の耳元に口を寄せ、ノアさんがこちらを見ていないことを確認してから、囁く。
「……私以外に、デレデレしないでください」
「っ……はい」
「こちらの書類も私がやって大丈夫ですか?」
「う、うん……その、お願いします」
「分かりました♡」
何故だろうか。先生は私の恋人。それは間違いない。私が他の生徒へ対抗心を抱く必要はない。そのフィールドに私は居ない。
そんなことは分かっている。でも、なぜか、負けたくない。先生は私のモノだって、主張したい。
全く合理的じゃない。子供が駄々をこねるような、不快感に身を任せた感情論。ノアさんという優秀な方と自分を比較してしまっているからこその、醜い劣等感。
「……ふぅ」
クールダウンしてきた脳に対して、臟を弱火で煮込まれていような熱い感情。
もっと、冷静に。私は……感情に振り回されるような人間じゃ……
――
「では、私はお先に失礼しますね。お疲れ様でした」
「おつかれー」
「お疲れ様です」
表層に貼り付けたアルカイックスマイルで、ノアさんを見送る。
「……先生」
「ん?なに?」
「仮眠室、行きませんか」
「あー……あはは。うん、行こっか」
立ち上がった先生の腕を引っ掴み、仮眠室に連行する。入り口のドアを閉めて、施錠した。
今の私は、一体どんな表情なのだろうか。
「あの……ハナコ?」
――ぎゅっ
「……すみません」
「えっと……なにが?」
先生に優しく抱き返される。
「……私、普段はこんな……」
先生の指が、髪を梳く。
「ん……ゆっくりでいいよ。聞かせて」
「……ありがとうございます」
先生の首元に頭を埋めて、腰に回した腕に少しだけ力を込める。
「ノアさん……素敵な方ですね」
「まぁ……そうだね」
「凄まじい記憶力をお持ちで」
「たまに怖いくらいだよ」
「お淑やかで、優しくて、それに恐らく……先生の事、好きですよ」
「優しい……うーん、どうだろ。あと、私の事好きなんて、そんなわけ――」
「ありますよ」
「っ……そ、そうかなぁ」
「先生はもっと、自身の魅力を理解してくれと……何度も言っているはずです」
「それは……恋人の贔屓目でしょ?」
「……先生をモノにした自身を褒めるべきでしょうか?」
「え?どゆこと?」
「朴念仁って事です」
「えぇ……」
「先生がそんなだから……私も……」
額を先生にグリグリと押し付ける。熱くなる頬。今の顔は見られたくない。
「盗られたく、ないんです」
「とられるって……あー、私?」
「はい」
「いや、私の事好きになる酔狂な人なんて、ハナコくらいじゃ……」
「今日、何回ノアさんにボディタッチされましたか?」
「えっと……んー、えー、あはは。ごめん分かんない。そもそも触られてないと思うんだけど」
「……私が来てからは、見ていた分だけでも、8回です」
「うっそ」
「本当です。どう思いますか?」
「……ちょっと、多めかな」
「先生に好意を持っていないと思いますか?」
「ッスーーー……どうだろね」
「女性は、好きでもない男性には触れたくならないんです。絶対に」
「……とりあえず、うん、納得したよ。ノアって私の事……好きなんだ。結構意外だね」
「私、ノアさんに負けるんじゃないかって、先生を盗られるんじゃないかって……不安でした」
「心配しすぎだよ」
「……ノアさんが褒められているのを見て、心臓を掴まれたみたいに苦しかったです」
「ごめんね。でも、生徒は生徒だから」
「分かってます。全部、分かっているんです。先生がそんな薄情な人じゃない事も、頭では理解しています」
先生の身体を締め付けるように、強く、強く抱き締める。
「感情が……制御できないんです。本当に……私らしくなくて。嫌になります」
「……ハナコらしくない?」
「……はい」
「……ぷっ」
「え?」
「ごめん、いや、違う違う。バカにしてるとかじゃないの本当に。でも、ハナコらしくない、かぁ……ふふっ」
「何が言いたいんですか?」
「……ノアに嫉妬してたんでしょ?」
「……嫉妬なんて、してません」
「もしかしたら気づいてないかもしれないけど、ハナコって割と独占欲強いよね?」
「そんな……はずは」
「補習授業部のみんなと遊びに行く時とか、絶対私の隣キープするじゃん」
「……してません」
「誰も見てなかったら、すぐ手繋ごうとするし」
「それは……するかもしれませんけど」
「あと、私の事見すぎ」
「っ……」
「付き合い始めてから、ずーっとそうだよね。私としては彼女が可愛くて最高なんだけどさ」
「……からかわないでください」
「だからね、ハナコは別に、感情が薄いとか、感情的にならないとか……そんな事ないんじゃない?」
「……」
「年頃の女の子なんだから。変に大人にならなくてもいいんだよ?特に……私の前ではね」
本当に、この人は。私が変に意識して、先生に釣り合う女性になろうとして、無理に背伸びをして。
そうやって私は、必死に貴方の横に並ぼうとしているのに。ふらっと振り返って、軽い足取りで私の横に立ってくれる。
「……ズルいです」
初めて会った時とも、いつかの海の時とも違う、近すぎる距離。
――ちゅっ……
「どれだけ私を惚れさせたら、気が済むのですか?」
不器用な私にも、呆れずに付き合ってくれて。その不器用さすらも愛してくれて。
先生といると、ついからかってしまっていた以前の私が嘘のように、心が安寧を感じてしまう。いや、先生にイタズラしてしまうのも、私なりの甘え方なのだろう。
「私がどれだけハナコに首ったけか、ちゃんと理解してもらえるくらい……とか?」
「どれくらいなんですか?」
「……安い挑発だね」
「身体に教えてください♡」
「そういうのは、卒業してからね」
「……キスで、いいですよ」
「……もう」
仮眠室に誘った理由を理解したのだろう。抱き締められたまま、ベッドに押し倒された。
――――
先生は、こんな私でも好きだと、愛してくれると言った。
「先生、私以外見ないでください」
「待ってハナコ……すぐそこに生徒いるから」
廊下の壁に背中を預けて、先生を逃がさないように、腰に腕を回す。先生の両手が、私の頭を挟むように壁に突いている。いわゆる壁ドンの体勢。
「……先生が、マリーさんをいやらしい目で見ているからです」
「いや見てないけど……」
下半身を密着させるように引き寄せる。
「そういう目で見るなら、私じゃダメですか?」
「だから……は、ハナコしか、見てないから」
「本当ですか?」
「……あんまり、ハナコの事もそういう目で見ない方がいいかなって、思ってはいるんだけどさ」
「けど?」
「ハナコみたいな可愛い子に誘われたら……私だって少しは揺らぐんだよ」
「そうなんですね♡」
嫉妬する自分を認められたから、少しだけ……素直になれる。先生を欲する心に、正直に従える。
「……襲っても、いいんですよ?」
「卒業するまで待ってって、言ってるよね」
「はい♡」
「キスで我慢して?」
「キスも好きですが……先生が我慢できなくなってしまえば……関係ないですよね?」
先生の返答を待たず、口を塞ぐ。
「ん〜っ!?ハナコ!学校ではダメだって!」
「先生の身体で隠れているから大丈夫ですよ」
「そういう問題じゃ……」
「それに、私は見られてもいいですよ?」
「いやいやいや!ダメでしょ!?」
「……先生が誰のものか皆さんに知ってもらう、いい機会かもしれませんから」
私の瞳に吸い寄せられるように、視線が絡み合う。
「……普段は乙女で可愛いのに、結構貪欲だよね」
「先生が、そんな私も愛してくれるせいですよ?」
「……だって、どんなハナコも好きだって感じちゃうんだもん」
「っ……♡」
先生の愛が、ゾクゾクと私の乙女心を撫で回す。あぁ、本当に。先生の事になると感情を抑えられない。
好きという、こんな単純な思考が、制御できない。
「……補習授業部、行きますか?」
「えっ?あ、うん。元からその予定だったし」
――
「ふー、涼しい」
補習授業の休憩中。アズサちゃんがバッサバッサとスカートをはためかせる。
「アズサ!?えっ、エッチなのは駄目!!ヒフミも止めて!」
「あはは……アズサちゃん、先生もいますから……」
「むっ?スカートは蒸れるんだ」
「あらあら♡私もしちゃいますかね?」
「だ、駄目っ!アズサはともかく、ハナコはスカート短いから!ぱ、ぱ、ぱんつ……見えちゃうでしょ!?」
「確かにそうですね」
隣にいる先生に目を向ける。
「……ん?え?私?」
「そ、そうよ!先生もいるし!!」
「パンツ……見えちゃいますね?」
小指だけを繋ぐように、先生の指を絡め取る。ピクっと、先生の手が強ばった。
「そっ、そこ!えっちな雰囲気になるの駄目!!しけぇ!!」
「あらあら、パンツが見えるだけでえっちなんですか?そんなこと言ったら、合宿では下着姿でプールに入ったではありませんか」
「あ、アレは水着って決着がついたでしょ!?」
「やはり下着だったのか!」
「水着よ水着!!」
「ま、まぁまぁ!私達も水着でしたし!」
「どうですか?水着でしたか?」
「いや私に聞かれても……」
「……知ってますよね?」
先生だけに聞こえる声で、ポツリと呟く。
「……あまりドキドキさせないで」
「〜♪」
繋いだ小指を握るように手で包んで、ゆっくりと扱く。
「今夜、着てあげましょうか?」
「……その話は後でね」
「ふふっ」
「あ!水着で思い出しました!」
ヒフミちゃんが大きな声を上げる。
「この前はプールでしたけど、今度は海に行きませんか!?補習授業部の皆で!」
「む!いいな!」
「わ、私も……それは賛成かも。え、えっちなのは駄目だけど……」
「それはいいですね♡もちろん、先生も来ますよね?」
「皆がいいなら……?」
「そうと決まれば!そのうち皆さんで水着を買いに行きましょう!!」
「水着なら前回のがあるぞ?」
「アズサちゃん……ちょっと、ほら、成長しててキツそうだったじゃないですか」
「まだ着れると思うのだが」
「小さめの水着なんてえっちよ!ちゃんとサイズ合ったの買って!」
「あはは、私も少し……腰周りが……」
「あら……残念です。私は一緒には行けませんね」
「え?ハナコちゃんも一緒に選びましょうよ!」
「みんなと行きたい気持ちはあるのですが……」
机で隠れている。見えないはず。
先生と指を交差させる。
「あいにく、先約がありまして」
先生の手をきゅっと握った。みんなで選ぶのも、きっと楽しい。大好きな友達とのショッピング。ワクワクしないわけがない。
――けれど、私は……選んでもらいたいのだ。
ハナコがやる中で一番えっちなアピールは、「他の生徒がいる時に、バレないように恋人繋ぎしてくる」だと思うんですよね。異論は認めます。
皆さんもハナコをすこれ。ハナコについてよく知らない人は、ハナコのヘイローの位置を調べて、ハナコの性格と照らし合わせてください。私は絶叫しました。