モンスターハンター―ONE PIECE―   作:サクラン

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この人達出すのもうちょい後にしようかなと思ってたけどトップ層さっさと出しといた方が色々とパワーバランス取りやすいかなと思ったので出しました。

それではお楽しみ下さい。


海の皇帝

「いやァ〜やっぱ最高だったなァ魚人島!!」

 

「……変態」

 

「まァそう言ってやるな嬢ちゃん。時にはこういう息抜きも必要なんだよ」

 

「そう言う大将も大概鼻の下伸ばしてたじゃニャいか」

 

「おめーもだろムッツリオカン」

 

 日の光も届かぬ深海、到底船など通れそうにもないが、その船は見た目だけならむしろ海上より進む姿が似合っている。

 我らの団にとっては家であり移動にも欠かせない船であるイサナ船。巨大なシャボンに包まれた船内では団員達が寛いでいた。

 

「…にしても、私魚人族や人魚族なんて初めて見たよ」

 

「まあ滅多に見ねえもんなァ。おれも魚人島以外で魚人や人魚はほとんど見たことねえし、見たとしても出身は魚人島って奴ばっかりだ」

 

 先ほど立ち寄った島のブランド品の服に身を通したフィリアは改めて先ほどの島─魚人島について思いを馳せる。フィリアも出身自体は“偉大なる航路”前半側である為、異常気象等についてはそこそこに耐性があるし、知識としても魚人族や人魚族については知っていた。だが実際に見たのは今回が初めてであった為、入ってからしばらくの間おとぎ話の世界に入り込んだような気分だった。

 

「つっても別にモンスターみたいに話が通じないわけじゃない。見た目と性質が少し人間と違うだけの…隣人だ」

 

「…そうだね」

 

 団長が少し視線を落として彼らについて触れる。その言葉には何か裏があるように感じられたが…フィリアはそのことについて当たりがついていた。

 それは魚人島、引いてはそこに住まう者達の立場についてである。魚人や人魚は200年前まで“魚類”として分類され、少数種族ということもあって差別を受けていた。しかも魚人は生まれながらにして人間の10倍の腕力を持つということや、人魚は世界一とされる遊泳速度やその美貌から攫われて奴隷にされる、人攫いの餌食となってしまうことが多くあった。

 その背景による影響は現在も続いており、世界政府加盟国となった今でも、差別的な目を向ける者達がほとんどだ。

 

「…お前はどう思った?昨日今日と過ごして話してみてよ」

 

 団長の言葉を噛み締めているとディアンが質問して来た。その声色は圧を掛けるような言い方ではないが、ちゃんと答えて欲しいという真剣さが感じられた。

 そしてその真剣さを受けて分からないほど、フィリアは短慮ではない。一呼吸置いた後、少しずつ話し始めた。

 

「…私も、これまでの印象としては世間一般とそう変わらなかったよ。そう言う種族がいて、差別を受けてて。でも怖かったっていうよりは─“そういうものなんだな”って受け入れてた」

 

 そう、フィリアにとって魚人や人魚は恐怖の対象と言うよりは、“数が少なくて、差別を受けている種族”という認識だった。歴史だとか、肌の色だとか、そういうもののもっと手前に、それが当たり前だという意識があった。

 

「だから、“魚人島に立ち寄る”って聞いた時は…正直、気が進まなかったよ。何だか、疎外感を感じる気がしてさ」

 

 フィリアが新世界に向かう上で魚人島に立ち寄ると聞いたのは4日前だったが、そこからは漠然とした恐怖感が自らの中にあった。

 “自分達とは違う。自分とは根本から異なる存在”に出会うこととして、ある種モンスターの巣窟に足を踏み入れるような気分だった。

 

「─でも、実際に会ってみたら、全然そんなことはなくって」

 

 マーメイドカフェの人魚達は美しく、喋っていてとても楽しかった。加工屋と話す魚人や人魚の職人からは、この深海に対する深い造詣を感じられた。おかみさんと魚人の職人の料理対決で振る舞われた海の幸は絶品だった。竜人商人から見せてもらった貝や珊瑚のアクセサリーは美しく、気に入って耳に付けてしまった。

 そうして過ごした2日間の中の思い出は、間違いなくフィリアにとって大切なものになった。

 

「私にとってあの島の人達は、間違いなく友達になった」

 

 そう、もうフィリアにとって魚人島の人々は、自分と異なる存在などではない。当たり前に笑って過ごせる─“友人”と言える者達になった。

 

「それでちょっと思ったんだけど…彼らの差別が今も続いてる理由が、少しだけ分かった気がする」

 

「ヘェ、というと?」

 

 予想外の視点まで切り込んだフィリアに対して、ディアンは興味深そうに続きを促す。フィリアは自分の考えを咀嚼するように視線を落としながら言葉を続けた。

 

「やっぱり、“知らない”から怖いのかなって」

 

「!」

 

 フィリアの言葉に何人かが目を見開くも、割り込むことなく話が続けられる。

 

「肌の色が違う、ヒレやエラがある、普通の人間にはない怪力がある…違う点はそりゃ多いけど、さっき団長さんが言った通り、意思疎通はできるし、何なら友達にだってなれる。なのに私は勝手に自分の中で“得体の知れない異形の怪物”っていう虚像を作って、それを怖がってた。…今は恥ずかしいことこの上ないけど、自分でも無意識の内にそれが正しいものだと思い込んでた」

 

 そう、フィリアは一昨日に初めて魚人達と出会った。それまで伝聞で知っていただけで魚人や人魚、一人一人の性格や考え方などはそれまで知れるわけがなかった。にも関わらず魚人は異形で恐ろしい怪物、“そういうもの”だと信じ込んでいたのだ。

 では何故そんな虚像を作るに至ったのかと考えると─やはり“知らなかったから”という結論に行き着く。

 

「多分、私がずっと否定され続けたり、悪魔の実を食べた人達が“怪物”として怖がられることがあるのも根本の理由は近いと思う。“自分達とは違う”…そういう点があるだけで人は理解する、知ろうとするのが途端に怖くなる」

 

 そしてフィリアも、魚人の歴史程じゃないが受け入れられず、恐れられた時期もあった。自分はただ仲良くしたいだけなのに…人々から蔑みの目を向けられ、罵倒された。あの時は理由が分からなかったが、大した理由じゃない。自分が魚人を恐れていたように、彼らもまた、自分と違う存在に対して恐怖を覚えていたのだと。違うが故に、知ることを恐れていたのだと。

 

「…今思うとバカにも程があるよ。自分も同じ立場だったのに、魚人の人達を同じような目で見てたなんて」

 

 そうしてフィリアは自嘲気味にため息を吐く。自分が恐れていたように、魚人達だって怖かったハズだ。数百年単位の差別ともなれば尚更だろう。にも関わらず、受け入れてくれた彼らの勇気には感服せざるを得ない。

 

「…ま、そうやって過去の自分を省みることができるなら十分だ。知ることができれば友達(ダチ)にだってなれるって経験ができたんだからよ」

 

 一通り話を聞いたディアンが言葉を掛ける。魚人島での様子から変に差別的な目を向けるとは思っていなかったが、この様子なら大丈夫だろうと。

 

「そうですよ。調査団の人達なんて魚人が可愛く思えるぐらいの奇人変人揃いなんですから」

 

「そりゃお前にも言えんだろ」

 

 モンスターが恋愛対象というぶっちぎりの変人であるソフィアの発言にディアンがツッコミを入れる。…とは言え調査団が変人揃いという点を否定もできないのだが。

 

「…そういう意味だと、魚人島の人達は本当にすごいよ。私一応能力者だし、もっと恐る恐るな感じで見られると思ってた」

 

 真剣な雰囲気が薄れ、一息ついたフィリアは魚人島に対する印象を口にする。流石に魚人島だと獣型や人獣型を披露する機会はなかったがし、ディアン達が面識があるという点も大きかったのだろうが、にしても魚人島の人達は暖かく出迎えてくれた。その点に関しては意外だというのが正直な感想だ。

 

「まァその点に関しては今の状況も大きいじゃろうなァ。七武海に魚人族である“海峡のジンベエ”が所属していることや、世界政府加盟国でたることもあるじゃろうが…一番大きいのはやはりあの“白ひげ”のナワバリであることじゃろう」

 

「“白ひげ”って言うと…あの海賊王のライバルの?」

 

 竜人商人からの説明にフィリアは魚人島で見た海賊旗を思い出す。

 弧を描く白いひげに十字架のようなシンボルを背負う海賊旗。

 魚人島に掲げてあったその旗から何か意味があるのだろうとは感じていたが、デリケートな問題の可能性もあった為、島内でそのことを口にすることはなかった。が、今話したことからしてあれは“白ひげ海賊団”─その海賊旗が掲げてあったのだと納得できる。

 

「そう、魚人島は今“白ひげ海賊団”のナワバリだからな。その証として海賊旗を掲げてたのさ」

 

「…それ大丈夫なの?魚人島って世界政府加盟国でしょ?」

 

 団長の説明にフィリアは訝しげに目を細めて聞き返す。

 世界政府と海賊。ほとんど正反対にも思える立場だが同時に所属することが可能なのだろうか。また可能だとして世界政府直下の国でありながら海賊に屈するようなことをして何か問題が起こらないのだろうかと、頭にはいくつもの疑問が浮かんでいた。

 

「問題ねェよ。魚人島は位置の関係で海軍を駐在させたりすることができねェし、白ひげ側もあくまで島を守りたいから守ってるから、みかじめ料やアガリを要求することもねェ。何より…変に突っついたら互いに()()()()()()()()()()から、平行線でいる方が良いんだろ」

 

「あー…なるほど」

 

 ディアンの説明にフィリアは納得した。

 政府側からすれば魚人島の立地は深海1万メートルに位置する故に手軽に行き来することができず、戦力を駐在さることが難しい。白ひげ側としてもお気に入りの島の平穏が脅かされないことが第一であり、立場や島の運営に首を突っ込むこともない。

 何より政府は海賊のナワバリであることを非難すれば実質的に白ひげ海賊団への宣戦布告となり、逆もまた然りだ。お互いはもちろん魚人島も戦争などごめんである為に、黙認しておくしかないのだろう。

 

「でもナワバリにしたのに略奪どころか対価も要求しないんだね。海賊、それも超がつくぐらいの大物なのに」

 

「そこに関しちゃ白ひげが例外だ。他の四皇は容赦なく対価や奴隷同然の扱いをするが、奴は仁義を重んじる。自分から進んでナワバリにした島からは何も要求しないし、頼まれて旗を貸した島からもその島の経済が傾く程の対価は取らない」

 

「へー…“四皇”か…」

 

 白ひげの予想外の温厚さに驚きつつ、“四皇”と呼ばれる海賊についてフィリアは考えていた。何度か聞いたことはあるが、新聞等もあまり読まない為詳しくは知らない。

 

「…ねえ、他の“四皇”ってどんな海賊なの?」

 

 だから聞いてみることにした。

 先の白ひげや魚人島のこともそうだが、“知る”ということは重要である。それにルナからも言われたように、猛者が蔓延る“新世界”に行こうというのだから、無知なままなのはいただけないだろう。

 

「お?気になるか?」

 

「いや、まあハンターとしては直接的な関係はないけどさ、一応知っておくべきかなって」

 

「良いんじゃないですか?調査団と関わるなら知っておいて損はないですし」

 

「まァそれもそうか…じゃあちょっと待ってろ。手配書取って来るから」

 

 そう言ってディアンは少し船室に降りて行ったあと、数枚の手配書を持って戻って来た。

 

「ほい、取り敢えず頭の手配書。幹部も含めると流石に多過ぎるからな。まずはここからだろ」

 

「へー…これが…」

 

 手配書を手に取り、その顔をマジマジと観察する。確かに手配書越しからでも他の者とは違う威圧感のようなものが感じられた。

 

「んじゃあ懸賞金順で行くな。まずはコイツからだ」

 

 フィリアの手から取ったのは左目に三本の傷跡がついた精悍な顔つきの青年。その髪色が通り名となっている海賊。

 

 

 

 

“四皇”

“赤髪海賊団 大頭”

“赤髪のシャンクス”

“懸賞金 40億4890万ベリー”

 

「……40億?????」

 

「あ、そう言えばアナタも賞金首でしたね」

 

「“元”、だがな…」

 

 初っ端から自分の10倍以上の懸賞金額に目が点になっているフィリアを尻目にディアンが説明を続ける。

 

「赤髪は現四皇の中だと一番年齢が若い。が、実力は本物だ。利き腕は随分前に失っちまったみてェだが…それを補って有り余る覇気の強さ。その一点だけに限るなら四皇の中でもトップクラスまである」

 

「今までもちょくちょく聞いてたけど…“覇気”って何?」

 

「それはまた説明すると長くなっちまうし、多分調査団でも習えるからまた今度な。で、赤髪は部下も腕利きで全員が名を上げてるアベレージの高い海賊団だ。少数精鋭ってこったな」

 

「ディアンから見ても?」

 

「ああ、どいつもこいつも大した実力者だ。悪魔の実も食ってねェようだがそれでも他の強者に引けを取らねェ。赤髪に関しちゃあの海賊王のクルーもやってたようだしある種納得だが─「待って海賊王のクルー!!??」

 

 しれっととんでもない情報をカミングアウトしたことにフィリアは目を飛び出させる勢いで驚いた。海賊王の死から既に20年近くが経過しているが、その間海賊王の船員が起こした事件というのは聞いたことがないが故に、もうこの世を去ったものだと思っていた。

 

「…既にこの海を制覇した船のクルーがどうして…」

 

「さァな。何か目的があるのは間違いねェと思うが…おれ達には関係のねェ話だ」

 

 フィリアは手配書に映る無愛想な顔をもう一度見詰める。何を考えているのか、何を想っているのかは手配書越しには分からない。

 

「とは言え、普通に話す分には全然問題ねェし、親しい奴に対しては年相応の表情を見せるらしいぜ。─怒らせたら手に負えねェようだが」

 

「それは全員そういう性格じゃないの?」

 

「いや、赤髪に関しては本当に容赦がねェ。一切の遊びも、情けも掛けず、敵と見なしたら()()()()()()()()。だから他の四皇と比較しても怒らせたら一際やべェのは間違いねェ」

 

 ディアンの一切嘘を言ってない表情に思わず息を呑む。見た目は少し風変わりな青年と言った容姿だが、彼は星の数ほどいる海賊の頂点に近しい存在なのだ。間違ってもナメたりするような真似はできない。

 

「…にしてもそんなとんでもない存在ですら最弱だなんて…」

 

「まあ懸賞金ってあくまで総合的な“危険度”ですから。懸賞金で劣るからと言って実力で劣るとは限りませんよ。参考程度にはなりますが」

 

 冷や汗を流し“四皇”の底知れなさに圧倒されるフィリアに対してソフィアが一応の補足を入れる。そして一段落ついたと見てディアンが次の手配書を取り出した。

 

「次はコイツだな。バケモンババアだ」

 

 

 

 

 

“四皇”

“ビッグ・マム海賊団 船長”

“ビッグ・マム”

シャーロット・リンリン

“懸賞金 43億8800万ベリー”

 

「見た目に対して名前が合ってなさ過ぎない???」

 

「「「「「「それは思う」」」」」」

 

 怪物のように大口を開けて狂笑と言える笑みを浮かべる手配書の顔に対してあまりにもミスマッチな可愛らしい少女のような名前に反射的に感想を漏らしてしまったが、誰も否定することはなかった。悲しいが至極当然である。

 

「コイツ…“ビッグ・マム”は生まれながらのモンスターとして有名だ。8メートルを越える巨体に人間離れした膂力、身体自体も鉄の風船かって思うぐらいに硬え」

 

「“人間離れ”って…この人人間なの?」

 

「ああ、正真正銘の種族“人間”だ」

 

「嘘でしょ?????」

 

 フィリアはその驚愕の事実に目が点になる。いや、人間であることは驚くべきことでも無いのだが、この存在に対しては話は別だ。

 8メートルを越える巨体にディアンをして“人間離れ”したと言える程の膂力、身体の硬度は“鉄の風船”と言える存在に対して人間と思う方が無理だし、もう一周回って人間に失礼だろう。少なくともフィリア自身の知り合いにそんな人物はいない。

 

「…動物(ゾオン)系の能力者とか…?」

 

 そこでフィリアはビッグ・マムが動物(ゾオン)系の能力者である可能性に思い至った。

 動物(ゾオン)系の能力者はどんな実にしろ力と体力が向上するものであり、鍛える程その効果は大きくなるのだと言う。ビッグ・マムの異常と言える身体能力も、動物(ゾオン)系の能力者故だと考えれば一応納得は行く。

 …にしても些か度が過ぎているような気もするが、そこはもう仕方ないと割り切った。

 

「ヘェ、今の情報を聞いてそういう考えが出てくるあたり、お前も中々鋭いな」

 

 ディアンはフィリアの考えに感心したように息を吐くも、首を横に振った。

 

「だが答えとしては違う。ビッグ・マムが食べたのは超人(パラミシア)系、“ソルソルの実”の能力者だ」

 

「“ソルソルの実”…?」

 

 フィリアはその実の名を聞いて首を傾げる。

 “超人(パラミシア)系”の能力は自由度が他の二種と比べても高い為、予想打にしない能力が多いそうだがにしてもピンと来ない。

 塩でも出せるのだろうかと頭を捻っていると、ソフィアが答えを教えてくれた。

 

「ソルソルが指すのは“(ソウル)”…それを自在に操れる能力です。他者から魂を奪ったり、それを無機物に与えて動かせるようにしたり…数多くある超人(パラミシア)系の能力の中でも特殊性が強い実と言えるでしょうね」

 

「ってことは他人から寿命を奪って自分は実質不老、なんて真似もできるってこと?」

 

「いや、奪った寿命を他の生物に与えることはできないらしいぜ。そう都合の良い話はねェってこった」

 

「…ってことはかなり使い辛いんじゃないこの能力?いや無いよりはマシだけど痒いところに手が届かないと言うか…」

 

 皆からソルソルの実の能力についての説明を聞いたが、フィリアとしてはそう強力な能力とは思えなかった。先程言ったように他者の寿命を自らのものとできればまた話は違っただろうが、それもできないとあっては正直使い所が思いつかなかった。

 

「まァ確かに、おれの能力みたいに“分かりやすく強い!”って感じはしないかもな。けどどんな能力も使いようによって一気に化ける。それはマムの使い方にも言えることだ」

 

 ディアンはそう言ってビッグ・マム海賊団への説明に移る。

 

「ビッグ・マムは防衛力、情報力が高い。他の四皇と同じようにナワバリを抑えて拠点を持ってるんだが…コイツに至っては最早国って言えるレベルになってる」

 

「国…?自分達独自で政治を行ってるってこと?」

 

「そうだ。住人からは対価としてお菓子か寿命を奪ってるみてェだが、その引き換えとして、子ども兼幹部の“大臣”達が島を防衛、管理してる」

 

「えちょっと待って。子どもってそんな小さな子が戦ってるってこと?」

 

「違う。ビッグ・マム自身のガキだから上の奴らはもう50前後だ。油断ならねェ強さの海賊達だ」

 

「…え、じゃあ今でもずっと増え続けてるの?」

 

「流石に一桁代の奴らには懸賞金も掛かってねェから分からんがな。けど今でも結婚して子どもを産むっていうムーブは続けてるハズだ。そうやって海賊団自体を自身の血縁者で固めることで生まれる結束力の強さがビッグ・マム海賊団の防衛力が高い理由だからな」

 

「…やっぱり人間扱いしちゃいけない気がする…」

 

 フィリアは怒りや呆れを通り越してドン引きしてしまった。フィリア自身に子どもはいないがそれでも母親が腹を痛めて産んでくれたことには感謝しているし、親子の仲というのは他に代えの利かない大切な繋がりだ。

 ビッグ・マムにもそういう感覚があるのかもしれないがにしても生まれながらにして海賊として育て上げ、四皇として君臨しているということは妊娠している間も戦い続けているのだろう。一度でも生命の危険に繋がりかねない出産をずっと続けていることは肉体的にも倫理的な観点から見てもまともな人間のそれではない。ディアンの言った“生まれながらのモンスター”という評価が的を得ていると言えるだろう。

 

「おれも直に会って戦ったりしたことはないから実際の人物像は知らねェけどな。けどまァ、ガキの頃から海賊として生きて来た奴だ。関わらねェに越したことはねェだろうな」

 

「…もう驚く気力もないよ」

 

 子どもの頃から海賊をやっているという重要な情報が語られたが、もうリアクションする体力も残ってなかった。何ならビッグ・マムならあり得そうと思ってしまったぐらいだ。

 

「そういうことなら、さっさと次の奴に行っちまうか」

 

 フィリアの疲れた表情を見兼ねたディアンは次の手配書を見せる。そこに映っていたのは憤怒の形相でこちらを睨みつける角の生えた大男。

 

 

 

 

 

“四皇”

“百獣海賊団 総督”

“百獣のカイドウ”

“懸賞金 46億1110万ベリー”

 

「…なんだろう、十分怪物染みてるんだけどビッグ・マムに比べたらまだマシだなって思っちゃった」

 

「紹介する順番逆にした方が良かったかもしれニャイニャア」

 

 ビッグ・マムのあまりに情報量に溢れた紹介に疲れていたフィリアはカイドウの形相を見てもあまり驚かなかった。しかし何となくそれに対して失礼だなと何故か感じたので心の中で(ビックリしてあげられなくてごめんなさい)と謝ってしまった。本物のカイドウが聞いたら激昂案件である。

 

「とは言え、コイツも中々に濃い奴だぜ。まァ四皇まで上り詰めててキャラの薄い奴なんざいねェが」

 

 ディアンが少し冗談めいた口調で身も蓋も無いことを言うと、カイドウについて説明し始める。

 

「“一対一(サシ)でやるならカイドウだろう”って言葉、聞いたことあるか?」

 

「んー…聞いたことあるような無いような…」

 

 突然の質問にフィリアは頭を捻って記憶を遡る。ハッキリと誰が言っていたか、何処で聞いたかも覚えていないが、何となく聞き覚えのある内容だった。

 

「海賊の戦いってのは単純な殴り合いってだけじゃない。海戦や海賊団としての乱戦…シュチュエーションが色々あるから偏に最強ってのは決められねェが、カイドウはこと一対一の戦いに限って言うなら…間違いなく、最強の生物だ

 

「!」

 

 ディアンの言い切った言い方にフィリアは目を見開く。

 フィリアは海賊について詳しいわけじゃないし、モンスターについての知見も多いとは言えない。だがディアンがハンターとして相当な強者であることは分かるし、その相手をしていた天廻龍も同様だ。まだ見ぬ強者もこの世界には大勢いることが予想できるが、その強者達も含めて最強だと言い切るのなら、カイドウは相当な怪物なのだろう。

 

「…白ひげやこれまで聞いてきた赤髪、ビッグ・マムですら敵わないの…?」

 

「いや、何も他の四皇すら簡単に捻れるってわけじゃない。ただもしそういう仮定の話をするならカイドウが一番勝率が高いだろうなってだけの話だ」

 

 とは言えどうやらそう単純な話でもないようだ。少なくとも同じ四皇に名を連ねるような傑物であれば十分抗戦は可能であるらしい。だが、そうなると余計に分からないのが─

 

「じゃあ一体どういう経緯でそんな噂が…」

 

「そりやカイドウ自身が辿って来た人生にある。コイツは四皇の中でも特に凶暴で一番の武闘派だが、若ェ頃からそれはもう滅茶苦茶でな」

 

 ディアンは一瞬言葉を溜めた後、また話し始める。

 

「コイツは海賊として、分かってる範囲で少なくとも7回負けてる」

 

「んん???」

 

 ディアンから続けられた言葉に、フィリアは首を傾げる。てっきりこれまで無敗という強さを強調する逸話が飛び出してくるのかと思えばむしろ全くの逆だったからだ。

 

「…それのどこが…?」

 

「言いてェことはあるだろうがまァ聞け。理由は聞けば分かる」

 

 そんなフィリアの心情を察したのか、ディアンは取り敢えず話を聞くよう諫めて続けた。

 

「一人で海軍または四皇に挑み続けて捕まった回数は18回…1000回を越える拷問を受けて下された死刑宣告は40回。沈めた巨大監獄船は9隻」

 

「…死刑宣告ってそう何度も受けるものだったけ?」

 

 フィリアはここでようやくカイドウの異常性を理解した。

 カイドウが恐れられているのは凶暴性からなる破壊力も理由だが、一番の強さはそこじゃない。数え切れない程の拷問、ありとあらゆる死刑方法、四皇や海軍と言った強者に挑んでもなおも叶わなかった─

 

 

 

 

 

 

「誰一人として殺せなかったんだよ。カイドウをな」

 

 ─その圧倒的な生命力、生物としての強さ。それがカイドウを最強たらしめる一番の理由なのだ。

 

「海賊団としても徹底的な弱肉強食主義だ。全員血の気が多いし最高幹部の懸賞金は10億を超えてる。弱者─民間人への被害も四皇の中で一番多い。それが懸賞金に表れてるんだろうな」

 

 そしてそんなカイドウに従うような者が大人しい性格であるハズもない。民間人への被害を気にするようなことはないし、むしろ嬉々として襲いに行く。政府からもその存在は警戒対象として見られている。

 

「だからあまり関わらねェ方が良いぞ。武闘派なカイドウは常に“強い兵隊”を欲しがってる。お前も能力のこと考えればぜひとも欲しがるだろうからな。渡すつもりは微塵もねェが」

 

「調査団ならしっかり守ってくれますよ。だからこそ今狙われるとちょっとキツいかもですが」

 

「ああん!?おれじゃ役不足だってのか!?」

 

「役不足云々以前にこっちが保たないんですよ!!!」

 

 そしてディアンとフィリアがギャーギャーと言い合いを始める中、フィリアは改めて“四皇”という存在について考える。

 全員個性の差や強みに違いはあるものの共通しているのは「海賊として圧倒的な強さを持っていること」、「複数の島々をナワバリとして治めていること」だろう。

 この世の三大勢力として“四皇”、“海軍”、“王下七武海”が挙げられることは知っていたが、これ程の存在であれば確かに数えられるのも納得である。

 そして“新世界”は四皇が統べる海。そんな場所でこれから生活することになるのだから覚悟は決めておく必要があるだろう。

 

「…で、まだ紹介されてない最後の四皇が…」

 

「ああ、さっき言った生きる伝説だ」

 

 ソフィアとの言い合いに一段落つけたディアンが手配書を見せる。

 三日月のような弧を描く白いひげが目立つ豪胆な大男。世界に知らない者はいないとまで言える大海賊─

 

 

 

 

 

“四皇”

“白ひげ海賊団 船長”

“白ひげ エドワード・ニューゲート”

“懸賞金 50億4600万ベリー”

 

「50億超えた…!」

 

「これを超えたのは海賊王のロジャーだけ、今生きてる海賊としては二位のカイドウに3億以上の差をつけてトップだな」

 

 フィリアはその圧倒的な金額に驚いた。

 先程の団長の説明からして白ひげは海賊としては温厚とまで言えそうな印象だったが、危険度を示す懸賞金は他の四皇を引き離して50億の大台に突入している。

 “海賊王”ゴールド・ロジャーと唯一渡り合うことのできた伝説の怪物。そのロジャー亡き今は“海賊王”に最も近いとまで言われているのは知っていたが、予想を大きく上回って来たと言える。

 

「白ひげは今いる海賊としての勢力は世界一だ。本船─海賊団としての船にいる人数は精々2000人程度だが、傘下を含めればその数は5万人にもなる。他の四皇だと平均2万程度だから、2倍以上差をつけてるな」

 

「…正直私としては2000人の時点でお腹いっぱいだよ」

 

 50億の賞金首である白ひげが5万人の軍勢を率いて来る。

 この字面だけでも絶望的過ぎるしまず生きて帰れる気がしない。確かにこれは世界最強の海賊団と言えるだろう。他の四皇も手出しできない理由が分かる。

 

「全員“新世界”の荒波を越えてきてるから雑兵ですら弱くはねェし、“不死鳥”マルコを筆頭とした隊長達の実力も言わずもがな。何より白ひげ海賊団は“家族“としての絆がある。ビッグ・マムに次いで団結力の強い海賊団だろうな」

 

 また海賊でありながら“家族”というワードが出て来たことで、フィリアは嫌な冷や汗を流す。

 

「…まさか白ひげって…」

 

「あの爺さんの名誉に誓ってそれは違うって言っとくぜ。白ひげの家族に血の繋がりはない。あくまで親子の盃を交わした仁義を介して繋がった縁だ」

 

 フィリアが嫌な予想を口にする前にディアンは先回りして否定する。その事実にフィリアはほっと胸を撫で下ろすもまた一つの疑問が生まれた。

 

「“仲間”じゃなくて“家族”なんだ。特に違いとかは無さそうなのに」

 

「そこは白ひげ自身の考え方の問題だろうな。まァどっちにしろおれ達外野が口出しするもんじゃねェよ。海賊として生きてる以上白ひげはやりたいことをやってるだけなんだろうからな」

 

 ディアンもフィリアの疑問に対して直接的な答えは言わなかったが、フィリアもそれ以上追及することはなかった。個人の考え方にまで口出しするつもりはないし、そんなことはするだけ野暮というものだろう。

 

「ただ海賊の中じゃぶっちぎりで穏健派だ。新世界で治めてるナワバリも世界政府非加盟国で小さな島がほとんどだし、その島々に対しても極端なアガリや対価も求めねェし、圧政を敷くこともない。海賊としての仁義を通して手出しは許さないってスタンスだ」

 

「…優しい人なんだね」

 

 フィリアは白ひげの在り方に思わず呟いてしまう。

 海賊でかつ賞金首である以上褒められた生き方ではないし、許されないこともしてきたのだろう。だが仲間を“家族”として慮り、力無き人々に対して確かな救いを齎すその生き方は、海賊としてだけでなく、人として敬意を払いたくなるのが個人的な所感だった。

 

「白ひげの異名の一つに“世界最強の海賊”ってのがあるが、それは強さだけじゃなく、そういう生き方に倣った部分があるのかもな。こんなクソみたいな世界でも仁義を貫き、誰もが圧倒されるような生き方を続けてる。実際、おれもすげえと思うし」

 

 ディアンも白ひげの手配書に視線を落とし、確かな敬意を伴った目で見詰めた。

 

「…ただ、だからこそ心配な部分はあるんだけどな…」

 

 そこで今まで他の団員達と一緒に話を聞いていた団長が徐に口を開いた。その思う所がありそうな言い方にフィリアは思わず尋ねる。

 

「心配…?」

 

「白ひげは確かに世界最強の海賊だし、今でも“四皇”の名に恥じない実力者だ。…だが、人である以上、いつまでもそれが続けられるわけじゃねェだろう」

 

「…ひょっとして…」

 

 団長の言い方からフィリアも何となく何が言いたいのか察しがついてしまう。

 

「ああ、白ひげはもう72歳の老体な上、重い持病も抱えてる。おれは別にディアン程強くもねェから細かくは分からんが…一番強かった頃と比較すると、間違いなく衰えてる」

 

「一応おれの意見としては、確かに覇気や肉体は四皇にしてはちょっと不足を感じるな。“蒼星”や“鷹の目”、“赤髪”と比較すると尚更。…衰えてアレってのがヤバさを増長させてるが」

 

 “悪魔”、“怪物”、“化け物”…異名を含めて白ひげの強さを示す言葉はいくらでもあるが、それでも白ひげとて心臓一つの人間一人。

 人として生活は営んでいるし、年月を重ねれば確実に衰えていくのだ。それでも多少衰えた程度であっさり“四皇”の座を譲ってしまう程、“白ひげ”の名は軽くない。“四皇”は常識から外れているからこそ“四皇”足り得るのであり、そんじょそこらの海賊相手であれば視界に入れただけでも勝負がつけられるだろう。

 

(…まァ、実際そろそろ同じ“四皇”相手は厳しいだろうなァ…)

 

 …ディアンは敢えて言わなかったが、実のところおそらく()()白ひげが同じ“四皇”を相手に勝つのは難しい。

 勝ち目が全くないわけではないだろうが、基本劣勢は避けられないだろう。実際に戦う場面を見たわけではないが、ディアンも“四皇”に匹敵する強者の知り合いはいる。相性や地の利等もあるが、やはり今の白ひげは一枚劣ると言わざるを得ない。

 ただ海賊団としての総力は他の四皇を上回っている為、やはり簡単に戦争は仕掛けられないだろう。

 

「“白ひげ”は対策とか打ってるの…?」

 

「どうだろうなァ…流石に何か考えてるとは思うが…まァ調査団も色々考えはしてるからどうにかできんだろ多分」

 

「そんな曖昧な…」

 

「まあこればかりは“白ひげ”自身が決めることだしな。手助けを求められたら力貸すぐらいで良いんだよ」

 

 不安気な様子のフィリアを諌めるように団長が宥める。

 白ひげは比較的話が分かるとは言え海賊なのだ。立場が違う者があまり深入りするわけにも行かないし、これは海賊団としての問題である。ナワバリの主導権も握っているのは白ひげだ。部外者が安々と口出しできる問題じゃない。白ひげは思慮深い者でもある為、何かあれば手助けを申し出て来るだろう。

 

「長くなっちまったが、この四人が今の“新世界”に君臨する四人の皇帝、“四皇”って呼ばれる奴らだ」

 

 ディアンが改めて手配書を並べてその面々の顔が見られるようにする。四人とも個性に溢れているが、話を聞いた後だと皆皇帝らしい威厳に満ちているように感じる。

 

「…こうして見ると“赤髪”の見た目のまともな人間具合ヤバいね」

 

「まァ他の三人が万国ビックリ人間状態ではあるよな」

 

 なおフィリアが少しズレた感想を漏らすがそこに関してはディアンも同感な視点ではあったので同調した。

 

「“新世界”は四皇の影響が大きいの?」

 

「そうだな。“海軍本部”が前半側にあるからってのもあるが、“新世界”が“偉大なる航路”の後半、つまり海賊王になる上でゴールに近付いてるってことだからな。自然とレベルも煮詰まってくる」

 

 “新世界”は本物の海賊の海とも呼ばれているが、その理由はやはり“四皇”の存在が大きい。

 前半側の荒波を越え、自らの実力に自負と自信を持った腕利きの海賊達が“四皇”の圧倒的な実力の前に心を折られるのはよくある話。他にも更に常識外れの天候や、古龍を筆頭とした更なる強さのモンスターなど、旅路を阻む壁は多くある。それらを総合して、“新世界の洗礼”と呼ばれている。

 この洗礼を越えて四皇以外に名を挙げた海賊はほとんどおらず、いたとしても四皇の牙城も崩せていない。崩せるとしたら古龍の襲撃か、同じ四皇同士の小競り合いである。そしてそれを繰り返すことで互いのレベルも少しずつ上がって行き、蠱毒めいた状態になるというわけだ。

 

「…ところで、“四皇”って四人しかいないんだよね?」

 

「ん、そりゃあ四人だから“四皇”って言われてるわけだしな」

 

「じゃあその手配書何?」

 

 フィリアがディアンの手に握られた一枚の手配書を指差す。このタイミングで出すのかと思いきやそういうわけでもない。しかしこうして持って来ている以上“四皇”と無関係でも無いのだろう。だから思い切って聞いてみた。

 

「ああ、“四皇”じゃねェんだが…まァ複雑な立場の奴でな…」

 

 複雑さを示すかのように手配書をヒラヒラと手で振りながら説明する。

 

「まず前提として、“四皇”になる上での前提条件って分かるか?」

 

「個人としての圧倒的な実力と…軍隊的な強み?」

 

 突然の質問だったが、これまでの話からして共通点は何となく分かっていたのでそれを答えてみた。

 

「まァ正解だ。この世に腐る程いる海賊の中で四人しかいないってことからも分かる通り、そう簡単になれるもんじゃねェんだよ。圧倒的な個の力と、国にも匹敵する程の数の力、それを両立させるのは難しいしな」

 

 ディアンの言う通り、四皇としての立場を確立させる程の力はそう簡単には手に入らない。一人頭抜けた強さがあろうとそれ以外が弱ければ数の前に押し潰され、いくら頭数を揃えようとも強さが無ければ一蹴されて終わりだ。

 理不尽にも程があるが、それができなければ“四皇”になる。ましてや“海賊王”など夢のまた夢なのだ。そこに一切の情けや妥協はない。それが“新世界”のレベルなのだ。

 

「そういう意味だとコイツは()()()()()()()()…単純な実力なら間違いなく()()()()()()()()()

 

 そう言って手配書をフィリアの前に投げ出す。そこに写っていたのは堂々とした立ち振る舞いの美女─

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 “新世界・とある島”

 

 その島は生命力に満ち溢れた─否、溢れ過ぎている島だった。

 緑豊かな森林地帯から始まり、砂漠のようにも思える荒野地帯、少し進めば層状に分かれ、中層部は幻想的な光景が広がる陸珊瑚地帯に、下層には死の気配が溢れる瘴気地帯と活火山のような熱さが阻む溶岩地帯、上層は吹雪に見舞われる氷雪地帯と、あまりにも荒唐無稽な自然環境と化している。

 しかも見せ掛けだけではなく生息するモンスターも多岐に渡り、その分生存競争も激しい。故にこの地に生息するモンスターからしか取れない素材もある。ハンター達からも格好の調査対象となっているが…最も意識を引いているのは、その()()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 

 

 

 “島の奥地”

 

 その島の奥地はあまりに殺風景だった。ゴツゴツとした岩肌ばかりで、手前で見られた自然豊かな光景や、危険ながらも力強い生命の鼓動が全く感じられない。しかも所々に薄い膜のようなものが見られ、薄暗さも相まって常世から切り離されたような異様な雰囲気に満ちていた。

 

「……なんだ、負けたのかワニ小僧……」

 

 日の光もほとんど届かない最下層。女性のそれにしては低く、しかしよく通る声が響いた。

 その女性─美女は鈍い赤色のドレスに身を包み、頭からは王冠を思わせる捻れた角が生えている。身長も3メートル近くあり、岩肌に身を預けているものの足を組んで優雅に新聞を読むその姿はまるで堂々とした王のようであった。

 

「……しかしいくらニューゲートに及ばす……虫けらしか狩らずに腕が鈍っていたとしても……海軍、それも中将や大将ではなく大佐一人程度に負けるものか……?……いや、こういう時の政府のやり口は……」

 

 彼女は一人でブツブツと呟くと、新聞と一緒に挟まれていた手配書を手繰り寄せ、一枚一枚を確認し始める。そうして最後の一枚に差し掛かる頃、一枚の手配書で手を止めた。

 

「……コイツは……」

 

 その手配書の写真に写っていたのは麦わら帽子を被ってにこやかな笑みを浮かべる青年。とても賞金首とは思えない見た目だが更に驚くのはその金額。

 

 

 

 

 

“麦わらの一味 船長”

“麦わらのルフィ”

“懸賞金 1億ベリー”

 

 とても1億を越えるような凶悪犯には見えない。

 しかし彼女にとっては金額は問題ではない。重要なのは()()()()()()()()()()()()()()()()と、彼の()()()()()

 

「……“モンキー・D”……くく…グヴァハハハハハ!!そうか!!!()()()()()!!!まだまだひよっ子のようだが…!あのジジイの一族となれば納得も行くな!!!」

 

 先程までの落ち着いた表情から打って変わり、何か合点の合うことでもあったのか大笑いしながら手配書を眺める。

 

「しかし見た目からしてもかなり若いな……それでいきなり“七武海”を落とすとは……まァ鈍っていたワニ小僧だったのもあるだろうが無謀さは親譲りというわけか……」

 

「親がアレなのに海賊とはな……だがまァ海に出ている以上目指すは“海賊王”の座か……何処まで上って来れるかは分からんが─」

 

 そこまで言うと彼女は岩肌から立ち上がり、両腕を広げて背中からも翼を広げた。

 見ての通り、彼女はただの人間ではない。

 

 彼女について語るならば…まず、彼女の存在は2()0()0()()()()()()()()()()()()()()

 彼女はとある国の王女だった。

 しかしある時悪魔の実を食べてしばらくした後は彼女は完全に世界政府の敵に回り、自らの国を滅ぼした後行く先々の島々の環境を好き勝手に作り変えた。

 その能力を活かして古龍の活動すら思うがままに操り、数々の事件を引き起こして来た。“大海賊時代”開幕前後に活動は特に活発になり、なんと単独で“四皇”と渡り合う暴挙まで行った。

 そうして滅ぼした島の数は100にものぼり、間接的に引き起こしたものも含めた古龍災害の数は200年で通算300回以上。

 しかし何の気紛れか、滅びかけた国を能力を使って再生させたこともある。

 誰にも縛られず、創るも壊すも自らが思うがままに行い、自らが絶対的な存在であることを示す立ち振る舞いは古龍を思わせる。そうして付けられた異名は“龍天王(りゅうてんのう)”。

 

 

 

 

 

“龍天王”

“ルオ・オルディア”

“懸賞金 46億4810万ベリー”

 

 単独でありながら“百獣のカイドウ”を越える懸賞金が掛けられた最も大きな理由はその能力にある。

 女王の食べた能力は形や模様は明かされていないが、今いるモンスターとほとんど特徴が合致するものがいることから暫定的に能力はこれだと仮定されている。

 あらゆる環境を思うがままに創造し、操るその姿は正に“古龍の王”たるに相応しい。

 

 

 

 

 

“リュウリュウの実 古龍種”

“モデル∶ムフェト・ジーヴァ”

 

「ここまで来れたなら……精々可愛がってやろう……!!!」

 

 龍王は新世界の奥地で笑う。自らを楽しませる可能性、それを新世代の若者達に僅かに見出して。




はい、今回はここまで。長くなっちゃった。


・魚人島
今作でも冷遇気味。正直本気でどうにかしようと思うと四皇クラスの強者を雑にぶち込むしか思い付かない。そう考えるとオトヒメ王妃すごい(小並感)。

・四皇達
メンツは原作と同じ。懸賞金は皆二年前と変わんないのかな?と一瞬悩んだけどもし違ったとしても「モンスター相手に実績出して上乗せされてる」って説明できるからヨシ!

・赤髪
REDやキッド相手に実力の一端は見せたけど幹部達の実力の程が分からねェ!!!せめて懸賞金だけでも明かして欲しい…そのおかげで説明する時浅いかませみたいな説明しかできない(泣)。

・ビッグ・マム
他の四皇の実力が明かされて最弱候補とか言われてたりするけど生い立ちを振り返って見るとあまりにもナチュラルボーンデストロイヤー過ぎる。ロックス時代の美女フォルムのまま年取ってたらルートも見てみたい。

・百獣
原作で色々な強者が出て来たけどなんやかんや今でもタフさはずば抜けてんなって。イム様は例外としてもロキとどっちが強いか気になる。個人的に旧四皇の中だと一番好き。

・白ひげ
過去回想でも強さと成人度合いの株しか上がらない男。生き様とか性格考えたらあまりに偉大にも程がある。それだけに老いて色々とボロボロになる戦争編がお労しい。もし戦争がなかったら後継者とかどうしてたか気になる。

・オルディア
オルビアさんとは何の関係もない()。名前はムフェトっぽいスワヒリ語を適当に組み合わせただけだから特に深読みしないで欲しい。懸賞金はかなり迷ったけど海賊団を率いてるわけじゃないから50億は越えてない。それでも能力が凶悪過ぎるから色々とやらかしてる。異名はマジで良いのが思い付かなかった。我こそはというネーミングセンス抜群ニキネキ達はぜひ案を下さい。

・ルフィ
クロコダイルを撃破して1億に。アラバスタはディアやティガ、下手すればモーラン種もいそうだから前半側にしてはかなり魔境そう。


こんなもんかな。説明もだけどいずれ四皇クラスの大怪獣バトルも書いていきたいなって。

評価、感想もよろしければお願い致します。

それでは次回をお楽しみに。
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