自分の末路を知って、精神が壊れかけの先生。
そんな先生の事も、カヨコは愛している。

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たまに頭ぶっ壊した文章書きたくなるんですよね。でもちゃんと狂った事ないから上手く書けなくて悲しい。
カヨコ、こんな私も愛してくれる?


第1話

 

「おはよ、先生」

 

「うん」

 

「……先生?」

 

左腕……ある。大丈夫。動く。アレは夢。ただの、夢。

 

「……壊れてる日かな」

 

死なない。まだ、大丈夫。使ってない。最近は使ってないから。まだ私は――

 

「せーんせ」

 

「……カヨコ」

 

「おはよ」

 

「おはよう」

 

両頬を挟まれて、強制的に目を合わされた。カヨコの真っ赤な瞳。綺麗。

 

「怖い夢見たの?」

 

「……見てない」

 

「嘘つかないで。ほら、ギューしてあげるから」

 

「……うん」

 

――ぎゅっ

 

あったかい。心拍数が段々と下がってきた気がする。力の入らない腕で、カヨコを抱き返した。

 

「……腕がね」

 

「腕?」

 

「痛くて……左腕が、根元からもぎ取れる夢だった。すごく、痛かった」

 

「……そっか。教えてくれてありがと」

 

カヨコの手が、そっと左腕に触れた。

 

「ひぅ……」

 

「夢でよかったね」

 

「……よかった」

 

「先生は大丈夫だよ。私が傍にいる」

 

「ありがと」

 

カヨコの手が、優しく腕をさすってくれて、少しくすぐったい。

 

「腕……痛かったりとか、しない?」

 

「……ちょっと過敏になってる気はするけど、痛くないよ」

 

「そっか。じゃあ、今日は沢山腕に触っちゃおうかな」

 

「うん、いいよ」

 

片腕で私を抱き寄せながら、左腕を優しくさすられている。血流が止まったように痺れていた腕が、少しずつ落ち着いていく気がした。

 

「朝ごはんどうする?」

 

「……あんまりお腹減ってない」

 

「シリアルとか、ゼリーとかなら食べれる?」

 

「ゼリー食べる」

 

「分かった。一人で大丈夫?」

 

「……一緒に居て」

 

「……そうだね。ずっと隣にいる」

 

手を繋ぎながら、キッチンを物色する。

 

「カヨコはご飯食べた?」

 

「ん?まだ。適当にシリアルでも食べようかな」

 

「牛乳あったっけ」

 

「……ないかも」

 

「ごめん、買い忘れてた」

 

「ううん、仕方ないよ。今日は牛乳なしで食べる」

 

カヨコの手がそっと頭を撫でる。

 

「今日は一日中家でゴロゴロしようね。せっかくの休みだし」

 

「うん。そうする」

 

――

 

「〜〜♪」

 

「かっこいい曲」

 

「でしょ。今度ライブ一緒に行く?」

 

「……あんまり大きい音聞きたくない」

 

「そうだったね、ごめん。曲変える?」

 

「んーん、これがいい。カヨコが好きなの聞きたい」

 

「ふふ、分かった。ありがと」

 

互いに寄りかかるように肩をくっつけて、ソファで寛いでいる。左手を繋いで、右手でスマホを持って動画を観る。

カヨコの体温を感じられて、すごくほっとするのだ。

 

「カヨコ」

 

「なに?」

 

「ごめんね」

 

「……なにが?」

 

「私……いつもこんなんで」

 

「……ううん。将来の自分が、あんな事になるかもしれないなんてさ。どれだけ心が苦しいか……私には分からないよ」

 

「でも……迷惑かけてばっかりで」

 

「私は、こうやって先生の助けになれるの、嬉しいよ?あと……こういう時しか、先生のこと可愛がれないし」

 

「……私の方が大人なんだけど」

 

「ふふ、頭もっと撫でてあげる」

 

「もぉ……」

 

カヨコにされるがまま、撫でる手に合わせて首をクラクラと揺らす。

 

「……ありがと」

 

――

 

「っはぁっ!!はぁっ……はぁっ……!」

 

「先生、大丈夫?」

 

「カ……ヨコ」

 

意志と関係なく、周囲の情報を集めようとして眼球が揺れ動く。私のをのぞき込むカヨコ。リビング。ソファの上。

砂漠じゃない。

 

「汗……すごいね」

 

「っ……ふー……」

 

カヨコの手のひらが、そっと頭を撫でる。

 

「今日、一緒に寝よっか」

 

「……うん」

 

「昼寝でも上手く眠れないなら……病院も考えないとね」

 

「……カヨコと離れるのは嫌」

 

「ありがと。私も先生の隣に居たいよ」

 

カヨコの手が頭を包み込み、優しく唇を重ねた。

 

「一緒に、いるからね」

 

――

 

私が居なければ、そう。それで未来が変わる。きっと。何もかも上手くいくんだ。私が居るせいで全部、全部全部。

あんな死に方をするくらいなら、自分の手で――

 

――ガチャ

 

「先生」

 

「っ!」

 

「……なに、してるの?」

 

普段よりも随分と目線の低いカヨコと向き合う。いや、私の目線が高いだけだが。

 

「や、やぁ。別に何もしてないよ?」

 

「それ、なに?」

 

「……なんでもない」

 

「死ぬ気、なの?」

 

「……うん」

 

「なんで?」

 

「その方がいいから」

 

「……とりあえず降りて」

 

「嫌」

 

「ダメ。降りて」

 

「嫌だ」

 

「落ちたら危ないから」

 

「大丈夫」

 

「大丈夫じゃない。なんで死のうとか考えたの?」

 

「……私のせい、だから」

 

「先生のせい?」

 

「分かったんだ。私はこの世界では異質なんだ。だから変なカードも使える。おかしいでしょ?ねぇ?だからさ、私が居なくなれば、きっと、平和になるよ。異常が居なくなれば、それで――」

 

「なに、言ってるの?」

 

「っ……全部、良くなるはずなんだ」

 

「……根拠は?」

 

「ない。でもっ――」

 

「そんな事で解決すると思ってるの?」

 

「する!!」

 

「しないよ」

 

「するんだ!するんだよ!そうじゃなきゃおかしい!なんで私が!こんな苦しくて痛くて気持ち悪くて死んだ方がマシなくらいボロボロになってまで!この世界に必要とされるのか!意味が分からないんだよ!」

 

肩で荒く息をする。感情をむき出しにしたせいで、バランスを崩して椅子から落ちそうになった。

 

「それは」

 

「存在が罪だからだ!罪を償うために!苦しむ必要があるんだ!」

 

「先生」

 

カヨコが椅子に近づく。

 

「だから!私が!死ねばいい!そうすればきっと……シロコも、助かる」

 

「先生」

 

カヨコの手が、ロープを掴んでいた私の腕を引く。

 

「降りよ?少しだけ話したい」

 

「嫌だ」

 

「少し話したら、もう止めないよ」

 

カヨコの瞳が、静脈血のように深く、黒い紅に染まっていた。

 

「……分かった」

 

椅子を降りて、二人でベッドに座る。

 

「どうしても、死にたいの?」

 

「もう、辛い」

 

「……私じゃ、ダメだったんだね」

 

「カヨコのせいじゃない」

 

「でも、私が側にいても、意味が無かったね」

 

「違う、違うよ」

 

「少しは……上手くできてると思ったんだけどな」

 

「カヨコが居なかったら、もっと早く死んでた」

 

「……私、先生の事、好きだよ」

 

「……私も好き」

 

「でも、私を残して先に死ぬんだね」

 

「……っ」

 

「嫌だな。先生の死ぬところなんて、絶対に見たくない」

 

「でも……もう……」

 

「だからさ」

 

カヨコが私の腕を掴み、仰向けに寝転がる。体勢を崩した私は、カヨコに覆い被さるように倒れ込んだ。

 

「ね、私を、殺して?」

 

「い、嫌だ」

 

「でも、先生がいない世界で生きるなんて、きっと何も楽しくないよ。ここで死んでも同じ」

 

私の手を包むように握って、首元にあてがった。

 

「きっとまたいい人が――」

 

「根拠は?」

 

「……ないけど」

 

「ふふ、ほら。このまま力を入れれば……」

 

力が入らない私の手を、その上から更に自分の手で首を絞めるようにして握る。

 

「やめっ……カヨコっ……」

 

「んっ……けっこぅ……くるっ、し」

 

カヨコの細い首に私の指が食い込み、カヨコの生命を奪おうと、呼吸を止めようと、気管を絞め上げる。

 

「やだよ、ダメ、カヨコ!」

 

「でも……この後っ……先生も死ぬんでしょ?」

 

薄らと笑いを浮かべ、更に首を絞める力を強めた。

 

「ダメ……カヨコ……本当に死んじゃうから」

 

「そのっ……つもり」

 

カヨコの目の焦点が合わなくなってきた。口が軽く開いて、苦しそうな息が喉を擦るように漏れている。それでも、少女がするとは思えない程、重い覚悟を決めた表情で、決して手を離さない。

 

「やめてっ……!やめて!!」

 

目から大粒の涙が落ち、カヨコの顔を濡らす。無理やり腕を引き抜こうと藻掻くが、キヴォトス人に力で敵うはずがない。

 

「ひゅっ……わ……かる?大事な……ひぃ゙とが……死ぬ、怖さ」

 

「分かったから……もう、死ぬとか言わないから」

 

カヨコの手から、ふっと力が抜けた。

 

「よかっ……」

 

カヨコが目を閉じる。

 

「カヨコ!」

 

力が抜けたカヨコの手を振り払い、カヨコの口を唇で覆う。顎を持ち上げて鼻を軽くつまみ、息を吹き込む。

 

「ゲホッ!ゴホッ!待っで先生!」

 

「っ!生きてる!」

 

「エホッ……生きてるよ。人工呼吸は、自発呼吸ある人にしちゃダメだから」

 

「ご、ごめん……」

 

「人工呼吸はダメだけど……キスならいいよ?」

 

「えっ?」

 

――はむっ……

 

身体を支えていた腕を払われ、二人の距離がゼロになる。首にカヨコの腕が回って、器用に唇を奪われた。

 

「先生」

 

「なに?」

 

「……私、先生には生きて欲しい」

 

「うん」

 

「これは、完全に私のわがままだから。先生が本当に死にたくなった時は、また、一緒に死のう?」

 

また、一緒に。私が死のうとしたら、何度でも一緒に死のうとするんだろう。

カヨコは一度決めたら、その信念を貫き通すだけの強さがある。

 

「……私だって、カヨコには生きて欲しいよ」

 

「じゃあ、利害は一致してるね」

 

だから。安易に死のうとすることすら出来ない。愛する人の死を、私は受け入れられない。

 

「……私、どうしたらいいのかな」

 

「……先生は、私には想像もつかないくらい苦しんでるんだと思う」

 

「……」

 

「だから、私に教えて。沢山ぶつけて。全部、受け止めるから」

 

「迷惑かけたくない」

 

「ううん。私にだけ教えてくれるなら、迷惑じゃなくて……愛だと思う」

 

「なんか、あんまり綺麗じゃないね」

 

「綺麗じゃない私は嫌い?」

 

「……どんなカヨコも、愛してる」

 

――ちゅっ……はむ……んむ……

 

互いに強く抱き締めあって、ベッドの上で求め合うように愛を押し付け合う。

唇を離して、少しの時間、瞳を合わせた。

 

「少しは、落ち着いた?」

 

「ありがと」

 

「正直、私の方が多分焦ってた」

 

「……ごめん」

 

「……もう、しないで?」

 

「……うん」

 

「自信なさそう」

 

「衝動的な行動は……止めるのって難しいんだよね」

 

「じゃあ、もっとずっと私が隣に居ないとね」

 

「……側に居たいだけでしょ?」

 

「……まぁ、そう」

 

「私の事好き過ぎ」

 

「うん、大好きだよ。あ、そうだ。仮に私を殺す前に自殺しても、絶対に後追うから」

 

「……分かった」

 

「私から逃げようなんて、思わないでね」

 

「怖いね」

 

「みんなから怖がられてるし、今更かな」

 

「私は……カヨコの可愛いところとか、優しいところとか、沢山知ってる」

 

「大切な人だから、見せちゃうのかも」

 

カヨコの頬がほんのりと紅潮し、私を見つめる目は愛おしそうに細められている。

 

「……その表情は、私にしか見せないで」

 

「……え?」

 

「……なんでもない」

 

「ふふ、私どんな表情だったの?」

 

「教えない」

 

「ひどーい」

 

私の頭を胸に抱き込み、つむじにキスをされる。

 

「……このまま、眠っていい?」

 

「うん、いいよ。眠れそう?」

 

「カヨコの心音……落ち着くんだ」

 

「胸小さくて良かったかも」

 

「そういう事じゃないんだけど……」

 

「冗談。私が居るから、ずっと抱きしめてるから、安心して。悪い夢なんて、絶対見ないよ」

 

「……うん」

 

「おやすみ、先生」

 

「……おやすみ」

 

ほんの少し高い体温と、規則的な心音。

カヨコの優しさと愛に包まれて、ゆっくりと意識が溶け落ちた。




この先生はもう精神が安定しないので、カヨコは幼児退行した大人を相手するような気持ちで見ています。
プラトニックに、でもズブズブに共依存して欲しい。依存書くのって難しいね。
なお、ミサキだとマジで二人とも死ぬからバッドエンドです。

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