フランクな主従関係となんでもないゴミの少女に脳みそ焼かれた王様と情がうっすい宰相とゴミと書いて少女と読む三人の話。
内容は無いよう、性癖と祈りの開示用短編です。
差別的な単語を使っています
その部屋には優しさしかないな、と私は思う。
不自然に全ての角を削られた家具、上質な繊維で織られた寝具、いつも変わりない位置に置かれている水と軽食。
一流のホテルに『何もしないで過ごしたい』と要望したらこのようになるのだろうか、いや、それにしても偏執的なまでに痛みと苦痛から遠ざけられている。
人を堕落させるには十分なこの空間の主は、端的に言えば、置物のような少女だ。
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「どうすんすかあのゴミ、国王なんすよ貴方」
「おう初手から俺の寵姫をゴミ呼ばわり、処すか?処されたいのか?」
とある新興国のありきたりな王の居室、そこでだらだらと書類を処理しながら会話する人影が二つ。
一人はその部屋の主である、まだ歳若い王様、もう一人は懐刀たる宰相だ。
語る内容は日々あまり変わらない、王が愛する一人の少女のことである。
「残念ながらこの国に事実指摘罪は存在しないっすよねぇー!! 否定してみろ女の趣味ゴミクソ国王様!」
「女の趣味がゴミクソなんじゃなくてゴミのような女を好きになったんだよ、そこんところ勘違いするな?」
「どっちにしろゴミなんすよねぇ、おかげでこの国ワンチャン壊れるんすよ、どうするんすか」
新興国らしく伸び代と勢いがある国力、しかしまだ大国と呼ばれるには足らず、どこか大国のコネが欲しい国際関係。
そして王様は歳若い、婚約者が(表向きは)定まっていない、各国の貴族の地も取り入れてない、イケメンである。
有り体に言えば全てがちょうど良い未婚の権力者だ。
「結婚しないことが単純にクソほど損失なんすよ、隣の国の第二皇女とか釣り書きが月に一回は届くんすけど丁度いいっすよ?」
「やだよ傀儡になるじゃんあの皇国の狸の娘とかさー、嫌だよ嫌、嫌っ!」
「じゃあせめて国の有権者の長女とか手頃なところで落ち着きましょうよ、これも宴会に呼ばれた時に圧が凄いんすよ、胃がペラッペラになる勢いで美女をゴリ押される私の身にもなって?」
「……まぁ現実的に考えればそこら辺なんだよな、俺の『目』から見てもそうだと思うよ」
この国の歴史はまだ浅い、最近国として認められてやっと五年が経過した。
その五年前までこの国の王たる青年はただの庶民である、あった。
興国の経緯は単純に語れば『圧政者を妥当し貴種流離譚をでっち上げ商業的な力を後ろ盾にして無理やり認めさせた』というよくある話である。
そんなよくある、しかし難しい物語を成立させたのは、ひとえに国王の『視界』にあった。
「人の能力を見抜く『目』なんてファンタジーと、それを配置するセンスがあるんすからさっさと自分に相応しい有能な女を選べばいいんすよぉ〜」
「そうなんだけどなー、何の能力も持ってない人間なんてそうそういないわけだよ、俺の目からすると全員有能に見えるわけ。見飽きた、飽きた、全員等しくただの駒に見えるんだよ……」
神から与えられたとしか思えない洞察力、その果てにある『人を鑑定するような』視界、それを使い倒して才能を勧誘し、時には脅し、弱みを握ってここまで来た男のボヤキである。
「宰相、お前はただの駒に情を抱けるか? 俺は出来れば結婚は人間相手にやりたい」
「国王なら人間らしい願いを捨てろ。 ……また整理するっすけど、なんであの何もできない女には恋できるんすか、人間だと思えるんすか」
そう、おおやけには認められないがこの国王、既に惚れている女がいる、ただその女は
盲目で、聾唖で、見た目が美しいだけの、孤児である。
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お? 俺の惚気を聞くか?聞いてくれるのか?
そうだな、俺は基本的にこの世界に飽きているし絶望してる。
だってそうだろう? 俺の目は他人の能力を見抜く、見抜いてしまう。
全ての存在の限界が見える、見えてしまう。
全てのものが想定通りの動きしかしない世界を考えてみろ?死ぬほど退屈であるぞ?
まぁ幼い頃はな? それでもまだ希望はあったんだ、何かをすれば、俺が高いところに行けば期待以上のものが見えると。
その結構がこの権力だ。ぶっちゃけ一代で築き上げられる限界だと思う。
まぁそんなことで国を作った後にな?絶望してフラフラしてたわけだよ。
もう有能なものは見飽きた、醜悪なものでも見ようとスラムに行った。
まぁそれでも大半はただの普通の人間なわけだ。ちょっと平均的な能力は低いかもな? それでも十分に使える人間達だ、ただの駒だ、見飽きている。
そんな中にな、道端でぼんやり何も見ていない少女が、あの娘がいたんだ。
一目惚れだった。だってあいつは『何もできない』んだ。いてもいなくてもこの世界に変わりない、本当の無能。
メクラも聾唖も見てきたが、そのような人たちもちゃんも出来ることはあるのに、その少女だけは何も『見えなかった』んだ。
いやもう気付いたら連れ帰ってたな、この恋は珍獣を愛でるようなものかもしれない。
でも、唯一、俺の中で駒ではない存在があの
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「うーん、何度聞いても理解出来ない、異常者って感じっすよねぇ」
「もうちょい敬ってくれない?我国王ぞ?お前の上司ぞ?」
はー、とため息をついた宰相は聞き飽きた惚気を前に指遊びをして暇を潰している。
真面目に聞く気はそんなに無い。どうやっても損得勘定で動く宰相には、人間に期待したがる王様のことはずっと分からないままだ。
人は駒、人間関係は実利を得るためのもの、それで良いじゃ無いかと心の底から考えている。
しかし、それでも、だからこそ――
「――ま、そういう希望は捨てたら死ぬしか無いのも知ってるんすよ、死んだ奴も殺した奴も自分の願いが叶えられないのが理由の大半っしたし。」
「最低限の理解はしてくれるんだよなぁ」
「そうそう。じゃあもうあのゴミは妾で満足しません? 契約婚とか最近の流行りっすよ?」
「お前俺の話聞いてた?????」
今日も今日とて話は進まず、一人の男の恋?心で壊れかけている国の駄弁り。
これはそんなどうしようもない話である。
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少女にとって世界はずっとよくわからない。
ずっと暗闇の中にいるのだから当然だ。ただ前は喉が渇いて、腹が減って、辛かった時間がとても多かった。
ある日暖かい何かに抱かれた時からそのような時間は減った。何故かいつも決まった場所に飢えと渇きを癒すものがあるし、お湯の中に入れてもらって臭く無いようにもしてくれる。
そうしてくれる時にいつもいるのは自分と同じような形の何かだ、多分ここにくる前にたまに痛みを与えていたものたちと同族だと思う。
よく分からない、前は痛みを与えていたのに、いまは何故か辛さを取り除いてくれる。
よく分からない。でも、また多分いつか辛くなるのだろう、そのように思っていた方が悲しく無い。
そう思ってまた少女は意識を手放すのだ。
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少女の寝室、そこで少女を愛でる時間が王にとっての唯一の癒しである。
愛でる少女が何を思っているかは分からない、下手したら全てを与えている王たる『俺』を認識すらしていないだろう。
それでもいい、と王様は思っている。
ただ駒ではない少女が、この世界唯一の『人間』が優しい世界に生きている、そう思うだけで救われる気がするのだ。
「……辛く無いか、悲しく無いか、怖く無いか? それならいい、俺は世界はそうじゃないって知ってるから、ずっと辛さと悲しさを振り撒いてきたから、でも、だから、ここが欺瞞の塊でいいから、お前には俺が与えられなかったものを全部あげるよ」
王様は人間が見たいという一心でこの国を作った、つまりは安定をぶち壊したわけで、救われた人も沢山いるが、その逆も勿論数えきれないほどにいる。
もしも王様が全てを始める前に少女を見つけていたら、この世界の悲しみの総量はかなり減っていた。
だからこそ、この王は少女を愛するしかないのだ。
世界の一部を壊してでも見たかったもの、それを手に入れたのだから。