「──ヘイ! みんな元気してるかい!?
常であれば、そこは
しかしこの日は違っていた。湖は荒々しく猛り狂い水飛沫を辺りに降り注がせ、周辺に住まう生物たちは、我先にとその場を離れて姿を隠している。
唯一存在する影は2つ。
一方は、短く切り揃えられた濃いめの金髪と、掛けたサングラスが特徴の青年だ。服装は飾り気の無いシャツと短パン。晒されている肌は、所々に真新しい傷が目立っている。飛沫と共に巻き上げられた、湖底に沈んでいた石やら流木などを受けてしまったことが原因だろう。
もう一方。こちらは、全身を分厚い鱗に覆われた、4足の魚みたいな生物である。平均身長よりやや高い背丈の青年と比べて見ても、その差は一目瞭然。細かな歯がびっしりと生え揃った口は、限界まで開かずとも、青年の体を丸呑みにすることは容易いはずだ。
「ぜぇ、はぁ。今日は近くの湖に釣りに来たんだが、見てのとおり水竜に
・また来週!(迫真) ・来週っつかもう来世だろこれ ・陸上向きではないとは言え、竜相手によう逃げ続けられるな ・誰か支援魔法かけてやれよ ・正確な所在も分からない配信映像越しの相手に魔法使うとか、大魔導師レベルでもない限り無理なんだよなあ…… ・救いはないんですか? ・(残念ながら)ないです ・大魔導師ニキネキ来てくれー! |
背後から唸り声を上げて迫り来る、巨大な水棲竜種。詳細な種別は不明なものの、この世界でも有数の強者たる「竜」であることに変わりはない。
すわ、ここまでか。頭の中に流れていく
窓牛 ・しょうがないなあジョニ太君は……ほい、強化魔法 |
そのコメントを認識するや否や、息も切れ切れであった青年の肉体に、有り余るほどの力が漲った。今まさに、彼のことを食い殺そうとしていた水竜の口が大きな音を立てて閉じるものの、既に青年の体はその場から消えている。
獲物である青年の、急激な加速に、竜は戸惑うばかりだ。
「う、うおお!? 急に体に力が……。誰だか分からないが助かったぜ! アンタは命の恩人だ!!」
・急激な加速で草 ・気持ち悪いぐらいスピードアップしてて草 ・水竜も完全に混乱してるじゃねーか ・竜ってあんな顔するんだなぁ 窓牛 ・礼は良いからはよ逃げえ。命を最優先や ・ニキかネキかは知らんが、大魔導師さんもよう見とる ・なんでよりにもよってこんなチャンネルにすんごいお方が…… ・さすがはヰ世界フィッシングだぜ! |
またも青年の脳内に流れ始める文字の群れ。魔法によって強化された肉体により、まるで猪の様な速度で駆ける青年の姿は、あっという間に水竜の視界から消えて居なくなる。見事、遭遇すればまず命は無いと言われている竜を相手に、彼は、無事に生還して見せたのだ。
「ふぃーっ。走った走った。ここまで来ればもう大丈夫かな? ……それじゃあみんな、ちょいとハプニングがあったから、今日のフィッシングはここまでにするぜ! 俺はギルドに水竜の報告に向かう。今後もヰ世界フィッシングをよろしく頼むぜ。それじゃあまた来週!!」
・おつ〜 ・また来週! ・今日も釣れなかったな ・いっつも魚釣れてないなこのチャンネル ・最後に釣ったのは何時でしたかね? ・先月頭のメダルフィッシュが最後っすね ・それも釣竿忘れて魚屋で買ったんだよなぁ…… ・魚屋なだけまだマシだろ。その前なんてそこら辺になぜか落ちてたやつ拾っただけだぞ? ・フィッシングとは(哲学) |
流れるコメントたちに、たはは、と苦笑いしつつ青年はギルドを目指す。かけられていた魔法の効果が切れた為ぶり返して来た重い疲労と、無数の擦り傷が発するヒリヒリとした痛みを感じながら。
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──さて。
ここはとある時代のとある場所。科学に代わり、魔法が発展したヰ世界にて。細々と配信活動をしているある青年が居た。
彼の名はジョニー。「魚を釣れない釣りチャンネル」として密かに、一部のマニアたちから注目を集めている人物である。
彼の活動は、まだまだ始まったばかりだ。
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「──ヘイ! ヰ世界フィッシングの時間だぜ! 前回は釣りが出来なくて悪かった! と言うわけでリベンジと行きたいんだが、なんと今回は火竜に出会しちまったぜ! また来週!!」
・前世で竜になにしでかしたん? ・草 |
続かない。