最強の片割れが召喚されました   作:武竹ちゃん

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 たくさんのコメントありがどうございます!
 全てありがたく読ませていただいているのですが、返答が追いついていないのが現状です……。いずれは全てに返答したいのですが、暫くは本編に対する疑問や質問、ご指摘のみに返答させていただきますので、ご容赦ください。


第10話 決闘③

 夏油の拳によって頭部を失ったワルキューレ。

 彼は追い討ちとばかりに前蹴りを胴に繰り出した。

 それを受けたワルキューレの体はくの字に折れ曲がり、そのまま後方に吹っ飛んで機能を停止する。

 蹴られた場所にはクッキリと夏油の靴跡が打ち込まれていた。

 

 

「……! ……!?」

 

「どうした、もう終わりか?」

 

「! クッ……調子に乗るな!!」

 

 

 呆気に取られていたギーシュだが、夏油の挑発で我に返る。 

 焦るように杖を振るい、薔薇の花弁を六枚振り落とすと、そこから同じようにワルキューレが六体現れた。

 今度は素手ではなく、一体一体が槍やメイス、大剣といった武装をしている。

 

 

「行け! ワルキューレ!」

 

 

 号令と共に、六体のワルキューレが一斉に駆ける。

 武器を持った青銅の人形たちが夏油を取り囲み、襲い掛かる。

 

 先陣を切った槍持ちのワルキューレが、その切先を夏油に向けて放つ。

 夏油は体を横に反らしてそれを難なく躱わした。

 そして横目で自分に対してメイスを振り上げているワルキューレを確認すると、一瞬で間合いを詰め、メイスが振り下ろされる前に腕を押さえて初動を潰す。

 すぐにそのワルキューレの鎧の端を掴み、手頃な距離にいたハルバード持ちのワルキューレにぶつけて牽制する。

 次に向かってくるのは大剣持ちのワルキューレだ。

 それは体全体を使い、夏油の足元目掛けて低く大剣を横薙ぎに振るった。

 夏油は片足を上げて大剣の側面を踏みつけると、刀身は地面にめり込み、夏油はそれをひょいと飛び越えた。

 その先で左右から短剣を手にしたワルキューレ二体が接近し、同時にそれを振り下ろした。

 夏油は敢えてその場から動かず、呪力で強化した腕で短剣の刃を受け止めた。

 

 

「ハハッ! やっぱりいいね、若い肉体は!」

 

 

 夏油は思わずそう口にした。

 十年間に渡る肉体の研鑽は、若返りとともに失われた。

 しかしそれまでに身につけた技術は健在だ。

 体術、思考の運び、呪力操作。

 学生時代とは比べ物にならないそれらの技術は、この若々しい肉体を当時以上に上手く使いこなしている。

 

 夏油は高揚していた。

 湧き上がる開放感、黒い火花を散らした時にも似た全能感。

 戦闘能力では遥か格下のギーシュ相手ではあるが、夏油はこの決闘を思う存分楽しんでいた。

 

 

「すっご!」

 

 

 後方で観戦していたキュルケは思わず感嘆の声を上げた。

 横のルイズもまたそれに反射的に頷く。

 強い、とてつもなく、曖昧だが確かなその感覚は、この場にいる彼女たち以外の全員にも行き渡っていた。

 ただ一人、タバサだけはさらに深い観点から彼らの戦闘を見ていた。

 

 

 ——素の身体能力が桁違い……体捌きも……離れて見ていても時折姿を見失う……! 一体どれだけの戦闘経験を……?

 

 

 恐らく大して歳の変わらないであろう少年が見せる動きに、タバサは困惑する。

 彼女とて若くして騎士の称号『シュヴァリエ』を与えられたエリートだ。

 彼女自身も歳の割に戦闘経験が豊富であることを自負している。

 にもかかわらず、目の前の夏油という少年はそれの上を行く。

 それに見たところ彼はまだ全く本気を出していない。

 その気になればワルキューレなど無視して一瞬でギーシュとの距離を詰め、彼は最初のワルキューレと同じ運命を辿ることだろう。

 

 遊んでいる、その客観的事実が彼女の胸を熱く高ならせた。

 

 

 ——私にもあの力があれば……もっと知りたい、彼の本気を……そうすれば私も……!

 

 

 タバサの杖を握る手に力が籠った。

 

 

 

 一通り肉体の快適さを楽しんだ夏油はついに攻勢に打って出る。

 まず手始めに自分に突き放たれた槍の柄を脇で挟むと、そのままワルキューレごと持ち上げた。

 槍を手放すと重力にそって落ちてくるワルキューレに対し、大袈裟な回し蹴りを放って胴を消し飛ばした。

 次に後方から襲い掛かるメイス持ちのワルキューレの攻撃を見ずに躱すと、両手でメイスを持った腕をガッチリとホールドして関節を固定した。

 

 

「せーのっ!」

 

 

 掛け声と共に、関節を可動範囲とは逆方向に折り曲げ、へし折った。

 追い打ちの足払いで両脚を砕き、支えを失って倒れたワルキューレの頭部を踏みつける。

 辛うじて片手だけが残った歪な銅の塊が地面に横たわる。

 

 

 ——僕は……何を見ているんだ……!?

 

 

 

 目の前で起こる出来事にギーシュは肩を震わせる。

 ワルキューレが破壊された、そこまでは納得できる。

 否定しているが、恐らく彼はメイジなのだろう。

 適当な憶測を述べるなら没落して平民となった元貴族、そんなところか。

 だから魔法を使って対抗してくるなら、それ自体には納得できる。

 しかし実際は違った。

 彼は今、魔法を扱わずに肉体のパフォーマンスのみでワルキューレたちを蹂躙している。

 その事実をギーシュは受け止められずにいた。

 

 

「……まさか、メイジ殺し……」

 

「ギーシュ」

 

「!」

 

 

 突然声を掛けられたことでギーシュの体が跳ねた。

 声を発した夏油はというと、ちょうど奪い取ったメイスでハルバードのワルキューレの頭部を砕いていた。

 そしてメイスの柄を鎧に乱暴に突き刺し、地面に叩きつけて砕いた。

 

 

「やっぱり使わせてもらうよ」

 

 

 夏油はそう言うと、さっき地面に投げ捨てた大剣の浮いた刃を踏んで柄を浮かし、蹴り上げる。

 器用に柄の尻を足の甲に乗せ、大剣全体に呪力を篭める。

 そして連なって向かってくる二体の短剣持ちワルキューレに向かって大剣を蹴り上げ、二体を串刺しにした。

 刺した大剣の柄を持ち上げ、そのまま残りの一体のワルキューレも同様に串刺しにする。

 最後にまるで団子三兄弟のように串刺しにされたワルキューレたちの塊を、ハンマー投げの要領で斜め上方向に投げ飛ばした。

 投げられたワルキューレたちはギーシュの頭上を飛び越え、輪になった生徒たちの頭上も飛び越えていき、数秒後に遠くの方で落下して砕ける音がした。

 

 

「……あ……あぁ」

 

 

 ギーシュは音の方を見ながらあんぐりと口を開けている。

 その肩をいつのまにか接近していた夏油がポンと叩いた。

 ギーシュは慌てて振り返り、情けない声をあげながら尻餅をつく。

 

 

「ヒッ……!」

 

「まだ何かあるかい?」

 

「なっ、ない! 僕の負けだ! 降参だ!!」

 

「そうか。もうちょっと色々見たかったんだけど」

 

 

 ギーシュが両手を挙げて降参したなら、夏油もそれ以上何かするつもりもなかった。

 

 

「君は何者なんだい……やっぱりメイジなのかい?」

 

「だから違うって言ってるだろ。私は……ここからずっと遠くから来た術師だ」

 

「術師か……よく違いが分からないが……どのみち同じことか。メイジの僕が魔法も使われずに負けるなんて……」

 

 

 ギーシュは負けてもなお、その言葉の奥にはメイジ、或いは貴族としての驕りが見えた。

 だがこれは特別彼が傲慢なわけではない。

 これらはこの世界に古くから根付いた支配階級によるものだ。

 

 

「君が泣かせた女の子はもちろん、シエスタにも後で謝っておくんだ」

 

「シエスタ……ああ、あの平民のメイドか……そうだね、彼女を不要に怖がらせてしまったね。あとで必ず謝るよ」

 

 

 貴族は、そして彼らに奉仕する平民でさえ、その二つの身分の間に分厚い壁を自ら作りたがる。

 別にそれも特段珍しいことではない。

 夏油の居た世界でも、それは存在した歪みだ。

 

 

「ギーシュが平民に負けたぞ!」

 

「メイジなんだから平民じゃないだろ?」

 

「貴族じゃなければ同じことじゃないか!」

 

「何やってんだよギーシュ!」

 

「そもそも魔法は使ってなかっただろ? じゃあやっぱりメイジじゃないんじゃないか?」

 

「使い魔がいただろ」

 

「ルイズが買い与えたんじゃ」

 

 

 

 そしてその歪みは、夏油自身も持ち合わせていた。

 術師と非術師、その差異に抱く歪みを。

 

 

「立てるかい?」

 

「あ、ああ、ありがとう」

 

 

 だから夏油がそれに何か言うつもりはない。

 言う資格もない。

 

 

 

 

 

 

「なぁ、ギーシュ。強い力を持つ者にはそれ相応の役割と、責任があるはずだと思わないか?」

 

「ん? あぁ……確かに君の言う通りだね。急になんだい?」

 

 

 突然の言葉にギーシュは、そして言葉を発した夏油本人が驚いた。

 

 

 ——何を言っているんだ? 私は……

 

 

 夏油の困惑に反して、その口は動き続ける。

 

 

「”弱者生存”、それがあるべき社会の姿さ」

 

 

 ——口を閉じろ……

 

 

「弱きを助け、強きを挫く」

 

 

 ——その大義はとうの昔に捨てた! 知ったような口をきくな!

 

 

「いいかいギーシュ」

 

 

 ——重ねるな……押し付けるな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

術師(メイジ)は非術師(メイジ)を守るためにある」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「勝ちましたね」

 

 

 学院長室からマジックアイテム『遠見の鏡』で二人の決闘を観察していたコルベールがおもむろにそう呟く。

 同じく決闘を観察していたオスマンもそれに頷いた。

 

 

「やはりあの力は伝説の使い魔『ガンダールヴ』の……!」

 

「そうかのぉ……? ほとんど素手で戦っておったし、武器も使ってはおったが、遊び半分で使っておったようにしか見えんし……それに使い魔らしき生物を複数使役しているのを見るにどちらかと言えばこっちの『ヴィンダールヴ』じゃないかの?」

 

「……確かにおっしゃる通りで」

 

 

 オスマンの怒濤のダメ出しに、コルベールは反論の余地もなく押し黙る。

 確かに先の決闘では、彼の推測を証明する情報は得られなかった。

 分かったのはルイズの使い魔であるあのゲトー・スグルという少年が強力な力を持ち、かつメイジとの戦いで全く本気を出していないということ。

 

 

「とにかく、お主の考えが真であろうとなかろうと、この件はワシが預かる」

 

「王宮に報告して指示を仰がないのですか?」

 

「まだ確定していない以上事を荒立てるだけじゃ。それにもし彼が本当に伝説の使い魔なら、王宮に知られれば戦に利用されかねん」

 

「分かりました」

 

「うむ……しかし、お主の言っていたことがなんとなくだが分かった気がするわい」

 

 

 オスマンは重苦しい表情を浮かべながら、それを誤魔化すようにパイプに口をつけた。

 彼の脳裏にはあの使い魔が呼び出した使い魔のような歪な黒い魚の姿が蘇る。

 

 

「なんと禍々しい……」




超えたぞギーシュッ!! ゼロ魔クロスの最初の壁を!!
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