最強の片割れが召喚されました   作:武竹ちゃん

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第11話 虚無の曜日

「そもそもさぁ、”帳”ってそこまで必要?」

 

 

 白髪の少年、後に現代最強の術師となる学生時代の五条悟がそう言う。

 

 

「別に一般人に見られたってよくねぇ? 呪霊も呪術もみえねぇんだし」

 

 

 彼の不始末に対する指導で出来たたんこぶを不満気にさすりながら、しかし飄々とした態度で文句を呟く。

 生まれ持った強大な能力、それに見合わない軽薄な人格、傲慢。

 しかしそれらは全て五条悟を形作るのには不可欠な要素に他ならない。

 

 

「ダメに決まってるだろ。呪霊の発生を抑制するのは何より人々の心の平穏だ」

 

 

 向かいに座る夏油が諭すように言った。

 

 

「そのためにも目に見えない脅威は極力秘匿しなければならないのさ。それだけじゃない——」

 

「分かった分かった」

 

 

 夏油の言葉を五条は鬱陶しそうに遮った。

 彼らは根こそ似通ってはいるものの、表に出す意見は真逆のことが多々ある。

 故に彼らの間に対立は付きものだ。

 それでも尚彼らはお互いを親友と認め合えるのは、彼らが二人とも他とは隔絶した存在であり、彼らが二人で最強であるという自覚があるからだ。

 

「弱い奴らに気を使うのは疲れるよホント」

 

「”弱者生存”、それがあるべき社会の姿さ。弱きを助け、強きを挫く」

 

 

 夏油の掲げる思想はいわゆる強者としての責任、弱者に対する慈悲、ハンディを背負う義務だ。

 ある意味傲慢とも言えるその思想は、夏油という人間を保つために必要不可欠な大義だ。

 

 そして、それに綻びが生じた時、彼は……

 

 

「いいかい悟」

 

 

 

 

 

 

 

「◼️◼️◼️……?」「傑」「自分にできることを精一杯頑張るのは、気持ちがいいです」「もっと皆と……一緒にいたい」「◼️◼️◼️!!」「コイツら、殺すか?」「それは”アリ”だ」「◼️◼️◼️!!」「傑」「◼️◼️◼️◼️!!」「もうあの人一人で良くないですか?」「お母さん……だっこ……」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「傑」「どちらも本音じゃないよ」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「それ、本当に必要か?」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「君がこれから選択するんだ」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「傑」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️……?」「どーせ誰も理解してくれないって腐るのも、それなりに子供だと思うけど?」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「傑」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「無理に決まってんだろ!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「傑」「◼️◼️◼️!!」「呪術も使えねぇ俺みたいな猿に負けたってこと、長生きしたきゃ忘れんなよ」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️!!」「傑」「◼️◼️◼️!!」「◼️◼️◼️……?」

 

 

 ——こみ上げてくる、この肉体に刻まれた呪いが

 

 

 ——私の本音はなんだ?

 

 

 

 

 

 

「猿め……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「スグル……?」

 

 

「!?」

 

 

 

 声をかけられたことで夏油は飛び起きた。

 ここはルイズの部屋、すでに時間は深夜にまわり、彼はルイズの椅子の上で腰かけて眠っていた。

 部屋の主はベッドから上体を起こし、眠たそうに眼をこすりながら使い魔を見ていた。

 

 

「……やあ、どうしたんだ、ルイズ?」

 

「どうしたもこうしたも……あんた、魘されてたわよ」

 

「そうだったかい? すまない、起こしてしまったようだね」

 

「……大丈夫なの? 決闘の時からあんた少し変よ」

 

「……そんなことないさ」

 

「でも……」

 

「さ、もう寝なよ。それ以上背が伸びなくなっても知らないよ」

 

「うるさいわね! ふん!」

 

 

 ルイズは怒りながら布団にくるまって背中を向けた。

 それを見届けた夏油もまた目を閉じる。

 

 ……眠れない。

 

 夏油はあの決闘の後のことはよく覚えていない。

 ルイズやキュルケの追求を上手く相手取りながら、シエスタに自分が貴族ではないことを説明していた気がする。

 確かあの眼鏡の少女、タバサという少女が紙を持って礼をしてきたような気がしたが、やはりよくは覚えていない。

 

 夏油の頭の中ではあの時ギーシュに言った言葉が反芻される。

 

術師(メイジ)は非術師(メイジ)を守るためにある。

 

 夏油は込み上げてくる吐き気を感じた。

 まだこの世界をあまりにも知らない彼にとって、あまりにも薄っぺらい、傲慢で、押し付けがましい言葉だ。

 にもかかわらず、あの時自然と口が動いた。

 その言葉の意味は弱者救済。

 強者が弱者を軽んじる言動に、よりによって昔の親友を無意識に重ねてしまった。

 その事実が、夏油をさらに苛立たせた。

 

 

 ——ふざけるな……! 十年拗らせた思想を、一度死んだ程度で覆してたまるか!

 

 

 瞼と共に思考を塞ぎ込む。

 しかしそうすればするほど、この肉体に刻まれた記憶が蘇ってくる。

 

 

「クソッ……」

 

 

 夏油は思わずそう呟いた。

 踏ん切りをつけたはずの本心が、今の今になって分からなくなった。

 もうそんなものは必要ないのに。

 

 

「……」

 

 

 ルイズは眠ったふりをしながら、背後で苛立ちを募らせる使い魔のことを考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「虚無の曜日?」

 

「そ、今日は待ちに待った休日の曜日。だから街に買い物に行くの」

 

 

 そう使い魔に説明しながら、ルイズは身支度を整えている。

 あの決闘の日から数日が経った。

 虚無の曜日とは、夏油のいた世界で言うところの日曜日のようなものだ。

 当然ルイズを含めた学生の授業はない。

 

 

「ちなみにそれは私も同行するのかい?」

 

「当たり前でしょ? 使い魔は主人を護るのが役目なんだから。わかったならあんたも支度しなさい」

 

「いや、持ち物これしかないし」

 

「そうね、だからあんたの服とかもついでに買うわよ。傍にいる使い魔が見窄らしい格好してたら主人の恥でしょ」

 

 

 夏油はそう言われて自分の服装を見た。

 見窄らしいだろうか、確かに華やかな学校ではないが、一応この制服は彼自身が高専に指定したものだ。

 まぁしかし、機能性を重視したデザインは、貴族の趣向に合わないのも仕方ないのかもしれない。

 

 

「でも私手持ちないよ?」

 

「買ってあげるわよそれくらい。使い魔に身嗜みを整えるくらいの甲斐性はあるわよ」

 

「それは助かるね」

 

 

 二人は会話を交わしながら、ルイズは硬貨の入った小袋を懐にしまう。

 そして意気揚々と夏油の方に見た。

 

 

「行くわよ!」

 

 

 そう言って胸を張りながら部屋の扉を開けて廊下に出た。

 夏油もそれに続いて部屋を出る。

 二人は学院の馬小屋に向かうとルイズが自分の分の適当な馬を見繕う。

 次に夏油の馬を決めようとした時にあることに気づく。

 

 

「あんた馬は乗れるの?」

 

「何度か乗ったことはあるが、あまり長距離移動をしたことはないね。街まではどれくらいだい?」

 

「大体三時間くらい」

 

「きびしいなぁ」

 

 

 そう、夏油に大した乗馬技術はない。

 なんせ彼がいた世界には馬に頼らなくとも、それ以上に優れた移動手段に事欠かなかったからだ。

 もっとも、夏油は高専から離反後は出来得る限り非術師の作った物には頼らないようにしてはいたが。

 

 

「まぁしかたないわ、アンタは私と同じ馬に乗せるわ。腰につかまる以外は変なところには触らないでね」

 

「体格差があって流石に危ないよ……それよりもっと良い移動手段があるよ」

 

 

 夏油はそう言うと、ルイズの肩を持って馬小屋の外へと促した。

 

 

「ちょっと、押さないでよ! 馬以外でどうやって街まで行くっていうの!」

 

「まぁまぁ」

 

 

 夏油は胡散くらい笑みを浮かべながら、主人を押して馬小屋を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 学院から街までの道中、その上空を一羽の鳥が飛行していた。

 しかしその姿はどこか異様だ。

 本来あり得ない四つの翼、目の焦点は合っておらず、何より鳥にしてはとてつもなく巨大だ。

 嘴は長く、下嘴から喉にかけて巨大な袋を待っている。

 そしてその嘴の隙間から、ルイズが顔を出してはしゃいでいた。

 

 

「すごい! すごいわ!!」

 

 

 初めこそ鳥の嘴の中に入ることを渋っていたが、いざ飛んでみるとこのはしゃぎようだ。

 魔法を使えない彼女にとって、空を飛ぶ経験はとても貴重なものだ。

 

 

「スグル、あんたこんな凄い使い魔持ってるなら先に言いなさいよ!」

 

 

 何よりこれが自分の使い魔の力であることが嬉しいようだ。

 ルイズは満面の笑みで横に腰掛ける夏油に話しかけた。

 そう、このペリカンは夏油が呼び出した手持ち呪霊だ。

 

 

「喜んでくれたようで何よりだ」

 

「ええ! このジュレイ? とにかくこれならあのツェルプストーのサラマンダーにも見劣りしないわ! ねぇスグル、あんたもしかして他にもたくさん使い魔持ってるの?」

 

「待ってるよ」

 

「何匹くらい?」

 

「……百体以上は持ってるよ」

 

「百!? ……やっぱりあんた、ギーシュ相手にも手加減してたのね」

 

「あんな人が多い場所で手の内を全て晒すわけがないだろう」

 

「……私相手でも?」

 

「さあね?」

 

「……ふん!」

 

 

 ルイズはまた頬を膨らませて外の景色を眺め出した。

 

 とある呪術師の言葉にこんなものがある。

 呪術師は嘘ついてなんぼ、だ。

 たとえそれが主人であってもだ。

 

 しばらく経つと、ルイズの視線の先に街が見えた。

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