その血が歩む道すじ   作:亞忌羅

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 戦闘シーンって難しいですよね。


百十五話

「ええなぁ恵君、お姫様(・・・)同伴かいな」

「!! 直哉さん、なんでソコに」

「んなもん決まっとるやろ、アレコレ探すよりついてきた(・・・・・)方が楽やろ」

「え、何君達知り合い? なら尚更仲良くしようよ」

「ついてきた……」

 

 直哉の存在に驚き、しかし言葉の意味(・・・・・)をすぐに理解し玉犬(ぎょくけん)(こん)〉を呼び出す。

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「つまり、敵でいいんですね(・・・・・・・・)?」

「どやろな、でも、気ぃ抜いとったら死ぬで?」

 

 言うや否や腰に提げるホルスターから拳銃………DG-Yを抜き放ち恵の後ろから現れた術師目掛け発砲する(・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

 それを合図に恵は変わった服装……レジィ・スターに玉犬(ぎょくけん)(こん)(けしか)ける。

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「アカンわ、ドタマ狙ったんやけど外れたわ。これ扱い難いねん」

「使っているんですね」

「当然やろ、蓮クンが意味もなくこないなモン渡さへん。せやけどまだ慣れんわ」

「君は何を! クッ……」

「俺はただついてきただけや、仲間になる(・・・・・)とも、味方になる(・・・・・)とも言うとらへん」

「兄さんに似てきましたね」

「それは最高の褒め言葉や」

 

 直哉が恵に近づき「殺す気でやらなあかんで」と言いながら自身が撃った術師を探すと、術師はマンションから吹き飛ばされマンションの下まで落ちていたのを見て、「コレにソコまで威力あるんかいな」と頭を傾げる。

 そして同時に息を合わせるかの如く恵はレジィ・スターには玉犬(ぎょくけん)(こん)〉を(けしか)け、襲わせている。

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「簡単についてきたから何か怪しいとは思ってたけどそう言う事か、ついてきた君は殺す気できてるけど……式神使いの君、殺す気無いね。イヤ、殺せないのか。俺達の持ち点欲しいもんね。

 でぇもぉ、彼が言ってる通り殺す気でやんないと、死んでから後悔するよ?」

 

 その瞬間建物の上から何かが落ちてくる。

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「遅いねん!」

 

 しかし、直哉が術式を使い『ぬるり(・・・)』と動き出し、落ちてきた何かを撃ち抜きながら「下は任せぇ、オマエはその変態の相手しいや」と落ちていく。

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「すまんなぁ、アンタにはここで死んでもらうわ」

「誰が死ぬかよ」

「違うねん、そやないんや」

「何が、言いたい」

「死ぬしかない言うとるんや、極ノ番・(みょう)(じょう)

 

 僅か二秒で直哉の眼前は扇状にアスファルトは成分が化学変化を起こして黒光りする滑らかな『黒曜石(ガラス)』のような鏡面と成り、そしてドロドロに溶けたであろうアスファルトが同心円状の波紋の形のままで一瞬で冷え固まっているが未だ熱を放ち陽炎が立ち込める。

 コンクリートのビルや鉄骨構造の建物は、まるで『バターを熱したナイフでくり抜いた』かのように完璧な円柱状の穴が滑らかに撃ち抜かれ断面は熱でガラス化し、白く結晶化してギラギラと太陽光を反射している。そして、術師を含めたその場にあった電柱や街路樹は『影』だけがまるで写真のネガのように黒く焼き付いている。

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「せやねん、これが普通の有り様なんや。あん時の呪霊おったらアカンやろ」

『五点が追加されました』

 

 

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「外が一瞬真っ暗になったかと思えばなんだいアレ」

「本人に聞いてください」

「じゃあ君を殺して聞きに行こうか」

「行けたらな」

「(アレは、何を……)」

「俺は、コレ(・・)が使えるようになってから兄さんから地獄みたいな特訓を受けた。

 でもまだ結界術ってのがよく分かってなくてな、兄さんが言うには自分の世界を拡げろって言うんだ」

「(まさか、できるのか?)」

「兄さん曰く『未完成、しかし結界術さえ使いこなせるようになれば完成する』らしい。だから、この体育館の空間(スペース)を俺の領域の外殻に転用し、閉じ込める」

 

領域展開

嵌合暗翳庭(かんごうあんえいてい)

 

「俺は別に、大技が無いとは言ってねぇよ」

 

 恵の領域の発動と同時に両手の指を重ね合わせ結界術を発動させる。それはーー

 

奥義

彌虚葛籠(いやこつづら)

 

 レジィが使った『彌虚葛籠(いやこつづら)』はシン・陰流『簡易領域』の原型、即ち領域を中和し必中効果を打ち消す結界術。

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「残念でした」

 

 余裕の笑みをもって領域を中和する。がーー

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「ソレ知ってるよ、シン・陰流の『簡易領域』の原型、『彌虚葛籠(いやこつづら)』だろ」

「……勉強熱心だね現代の術師は」

「だから欠点(縛り)も知ってんだよ。掌印、維持し続ける必要があるんだろ? これならどうだ、(かん)(ぎゅう)

 

 領域を展開してすぐに領域の端で走らせ続けていた式神・貫牛(かんぎゅう)を自身の真横から出現させレジィに突撃させる。

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「ソイツは走れば走る程に突進の威力が跳ね上がる。気を付けろ、術式を使わねぇと死ぬぞ」

 

 影から影へと走り続けていた貫牛(かんぎゅう)の破壊力は晴蓮が使う防御術式を貫通できるまでになっていた。

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「ッ! 再ッ契象!」

 

 彌虚葛籠(いやこつづら)を解き、身に付けていたレシートを取り外して術式を使い貫牛(かんぎゅう)の突進力を幾分か弱めたが、それでも止めきれずに大きく弾き飛ばされる。そしてーー

 

第二ラウンドの火蓋が切られた

 

 

 

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【同時刻京都結界(コロニー)に禪院直毘人及び禪院扇現着】

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「扇、アレを見ろ」

「加茂晴蓮から渡されていた絵に描かれていた呪霊だな」

「任せた」

「ああ」

「あら、片方は逃げるのね」

「違う。お前の相手は私だけで事足りるだけだ」

「傲慢ね」

「であればその身を以て知ると良い」

 

 火炎呪術師禪院扇と氷の自然呪霊銀崩(ぎんほう)との呪い(殺し)合いが始まる。

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「さて、覚醒呪術師と受肉体呪術師の排除だったな。で、お前さんはどっちだ?」

「どっちでも良いんじゃない? 結局は殺し(呪い)合うんだから」

「違いねぇ」

 

 そう言うや否や術式を使い瞬く間に呪術師へと接近し触れ、有無を言わせずフリーズさせ攻撃する。

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「あッ、が……」

「覚醒呪術師か、ならすぐ終わりそうだな」

「グッ……舐めないで」

 

 膝に手を置き立ち上がり術式を使うが、投射呪法を使った直毘人には当たらず何もできずに倒れ伏す。

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「ま、こんなもんか」

『五点が追加されました』

 

 

 

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【仙台結界(コロニー)の展開は早く、東京結界(コロニー)のそれを遥かに凌駕し苛烈を極めた】

 

 

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【ドルゥヴ・ラクダワラ所持得点(ポイント)91点、二度目の受肉。倭国大乱にて単独で劣等制圧を成し遂げた宿老。自立型の二種の式神、その式神の軌跡を自らの領域とする】

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石流龍(いしごおりりゅう)所持得点(ポイント)77点、泳者(プレイヤー)随一の呪力出力を誇る大砲】

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烏鷺亨子(うろたかこ)所持得点(ポイント)70点、元藤原氏直属暗殺部隊・日月星進隊とうしちょくぞくあんさつぶたい・じつげつせいしんたい隊長。『空』を操る術式を持つ】

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黒沐死(くろうるし)所持得点(ポイント)54点、羂索が黒沐死(くろうるし)の呪物を還魂(かんごん)操術で解放した蜚蠊(ゴキブリ)呪霊。等級は特級〔登録済〕。導入条件の消失まで休眠中】

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【同盟はなく拮抗した実力と、錯雑した相性による三竦みの四巴。だが、その一角が墜ちる】

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【乙骨憂太所持得点(ポイント)35点、高専転入当時から五人目の特級術師として君臨。五条悟、加茂晴蓮に次ぐ現代の異能、『式神・里香及び美香(・・)』と共に居る亜種式神使い(・・・・・・)

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「(ドルゥヴの式神が消えていく!)」

「コガネ」

 

 石流(いしごおり)の呼び掛けに軽い返事をしながら式神・コガネが現れる。

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「仙台結界(コロニー)で一分以内に(ポイント)に動きがあった泳者(プレイヤー)をだせ」

「かしこまり~」

 

 そこに表示されたのは乙骨憂太の名前を見て「乙骨……」と呟き、空に浮かぶ泳者(プレイヤー)烏鷺亨子(うろたかこ)も確認していた。

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「(最近(ポイント)を上げてた奴ね、鬱陶しい式神が消えたのはいいけど問題はこれでーー)」

「(俺がここまで近づいても反応がなかったのは乙骨で手一杯だったって訳だ、恐らくこれでーー)面白くなるな。(黒沐死(くろうるし)が動く!!)」

「(黒沐死(くろうるし)が動く)チッ! 最悪」

 

 

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「(出力はまぁまぁ、驚くべきは呪力の総量!!)」

「(底が見えない! 式神? も強力! ドルゥヴ殺しもマグレじゃない!! つーかやっぱ黒沐死(くろうるし)キモッ)」

「コガネ、アレも泳者(プレイヤー)?」

『あぁ!! 黒沐死(くろうるし)ってんだ』

 

 

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黒沐死(くろうるし)はドルゥヴ・ラクダワラとの相性を悪いと見るや否やドルゥヴの結界(コロニー)内での生存を休眠導入条件として眠っていた、無限の食欲を持ち食べただけで単為生殖を行う黒沐死(くろうるし)の覚醒直後の飢餓状態。

 黒沐死(くろうるし)は食事を妨げる乙骨を本能のまま、貪り喰う事を決めた】

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「(物資が有限な以上結界(コロニー)の出入りを可能にするルールをいつかは追加しなければならない。だがーー)呪霊の泳者(プレイヤー)も居るのか。(ドルゥヴや黒沐死(くろうるし)のように攻撃範囲が広く、無差別に人間を襲う泳者(プレイヤー)を結界の外に出す訳にはいかない。他の結界(コロニー)にも似た泳者(プレイヤー)は居るかもしれないから、それらを全て排除してからになる。

 結界(コロニー)同士の連絡は不可欠、恵君が提案した二つのルール、更に連絡手段の確立。結界(コロニー)の出入り、事態の収拾には最低でも四回のルール追加が必要だ。皆は渋谷で消耗している……体にも、気持ちにも余裕がない。それに……加茂先生、先生に友人を殺させない、羂索は僕が殺す。僕一人で400点獲る)」

 

 目の前に居る蜚蠊(ゴキブリ)呪霊はどこからか鉈のような呪具らしきモノーー『爛生刀(らんしょうとう)』を取り出した。

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【『爛生刀(らんしょうとう)』は生と死が交雑する『魔剣』】

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 鉈の一振を容易く躱し鉈のを持つ手を斬り飛ばし、斬り飛ばした腕を地面に転がる石に刀ごと突き刺して懐に入り、シン・巌流〈貼山靠(てつざんこう)〉を叩き込み吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた黒沐死(くろうるし)は虫の翅で羽ばたき空へと飛び上がるが引き抜きていた刀を投げ斬りつけ瞬時に近づき刀を掴み上段から斬り下ろす。

 だが、黒沐死(くろうるし)は無数のゴキブリを壁にし防ぎ飛び退く。

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「(見られている、恐らく得点(ポイント)の高い泳者(プレイヤー)二人。黒沐死(くろうるし)は呪霊だ、以前虎杖君にやったようにたいないに反転術式の正のエネルギーを撃ち込めば確実に払える。

 でもーー僕が反転術式を使える事をこの二人に知られたくない。今の『里香』ちゃんは戦闘向きじゃないしスタジアムで皆を守ってもらっている、『美香』は戦闘向きだけど美香と反転術式を使わずに黒沐死(くろうるし)を祓いたい)」

「何故、邪魔、ヲスル。何故わ我々ヲ殺ス」

「それはこっちが聞きたい」

「? 私ハ、鉄ノ味、ガ好キ、ダッ。『(くらい)』『(くらい)』『(くらい)』………『土虫蠕定(どちゅうぜんじょう)』」

 

 

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 乙骨の周りを浮かぶコガネが「五点が追加されました」と得点(ポイント)の加点を教えた。

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「(反転術式! しかもそれをアウトプットできるのか手掌と脳から最短の口から正のエネルギーをマウストゥマウスで黒沐死(くろうるし)の頭部に!)思い付いてもやんねぇわな」

 

 一人呟きながらリーゼントの先端(ポンパドール)が呪力が迸っていた。

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「(はぁはぁ……取り敢えず一匹倒した(祓った)次はーー)」

 

 一息ついていた乙骨の後ろから「そう、使えるのね………反転術式」と、聞こえ振り向こうとすると空間が歪み『バキッ』の音と共に吹き飛び、「(なんだ今の……打撃? …………)」と考えていると目の前に拳が現れ躱しカウンターを撃ち込む。しかし術師が何もない所を掴み引っ張ると空間が『ぐにぃ』と乙骨の腕ごと歪み顔面に肘鉄を喰らう。

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「(腕が変形した!? でも腕が戻ってる…………異常無し痛みも何もない。多分空間をイジる術式、でも空間ごと相手を潰したりはできないのかな? レンズの歪みみたいなエラーを作り出している感じかな)コガネ、一応聞くけど泳者(プレイヤー)でいいんだよね」

「そうだぜ、烏鷺亨子(うろたかこ)っつー泳者(プレイヤー)だ」

「(烏鷺亨子(うろたかこ)……見ていた泳者(プレイヤー)の一人かな)」

 

 腕を降りながら立ち上がり攻撃してきた術師を見る。性別は女性、そして全裸だった。しかし大事な(・・・)部分は透けて奥の建物が見えている。

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「私の術式は『空』を『面』で捉えるの」

 

 術式開示と共に『空』を掴み「こんな風にね」と腕を動かすと『空』は『ぐにぃ』と引っ張られる。

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「(術式の開示!)」

「(『空』………『空間』を『面』でか。二度の攻撃(呪術)……どちらも防御(ガード)しても吹っ飛ばされた、その辺も『面』ってのに種があるのか)」

「(早く撃ってこいよ……)」

「一応聞くんですけど殺されても文句ない人ですよね、力のない人なら必死になるのは分かりますけど、アナタみたいな強い人なら獲りたい時に点を獲れる。積極的に戦う理由はなんですか?」

「(……コイツ)何? 今の術師の受肉ってそんなにカジュアルなの? 私らにとっては黄泉返りよ、黄泉返り!! (なんか、ムカつくな……)一度目の人生に悔いのない奴が羂索の誘いに乗るわけないだろ。

 死滅回游は二度目の人生の第一段階にすぎない、なんせ手引きしてるのが羂索なんだからね。あらゆる事態を想定して点は獲っておくべきよ」

 

 烏鷺(うろ)の吐露に対し「友達とか、恋人とかいないんですか?」と率直に思った事を聞いた。

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「…………は?」

 

 それは無意識に出た声だった、今もなお話し続ける乙骨にどんどん顔つきが険しくなり、幾つもの青筋を立て止めの一言「なんで自分なんかの為に必死になれるんですか?」を言われ「オマエ、藤原の人間か!!」と、怒りを隠さず声を荒らげる。

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「藤原? 違いますよ、僕は菅原道真公の子孫です」

 

 その言葉に怒りが少し収まり「菅原? オマエは菅原道真の子孫なのか?」と聞かれ「はい、加茂先生がそう言ってました」の言葉を返し「加茂? 誰だそいつは」と御三家を知らない烏鷺亨子(うろたかこ)は自然と聞き返していた。

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「古くから呪術界にある呪術師の家系です」

「なんだそれは、加茂と言う奴は誰だ」

「先生が言うには陰陽道……陰陽師の家系で、確か……賀茂氏にルーツがあると言ってました」

 

 すっかりと怒りは収まっており「加茂? あの男か?」と、顎に手をやり思い出していると遠方から極大の呪力砲が二人を襲う。

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「(あの屋上か、かなり近くにいたわね)」

「(攻撃範囲が広い……石流(いしごおり)って人か……。スタジアムに居る人達は里香ちゃんが守ってるから問題はない、できれば『美香』はあまり呼びたくない。このレベルの攻撃(呪術)が直撃すれば里香ちゃんが防ぎきれず何人かは死ぬかもしれない、先ずは石流(いしごおり)って人からーー)」

「(黒沐死(くろうるし)とドルゥヴが消えた今、石流(いしごおり)を泳がす理由はない。乙骨諸共ーー)」

 

「(狩る!!)」

「(狩る!!)」

 

 すぐさま呪力砲がきた方角へと走りだすと間髪いれず呪力砲が次々と襲い掛かってきて、それを器用に避け橋の下に逃げ込む。

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「おいおいガッカリさせんなよ。(……! いねぇ!! そうか! あそこはさっき乙骨が穴を……)」

 

 そう考えていると後ろから乙骨が現れ格闘戦へと入り、「もう少しコンパクトに戦ってください」と言うと「それで、腹一杯になんのか? 乙骨」と返された。

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「コンパクトに戦えだぁ? オマエはご馳走を前にしたガキに『ゆっくり落ち着いて食べなさい』って言うのか?」

「………言うんじゃないですかね」

「そうだな、これは割と言うかもな、例えが悪かった。俺の一度目の人生は『腹八分目』ってとこだった……骨のある奴と戦った、いい女にも巡り会った、正直悔いが残るかと言われるとそうでもねぇ。

 こういう漠然とした渇きっていうのは厄介だぜ、乙骨。皆『何が不満だ?』って(ツラ)で俺を見やがる。

 ……このタバコ、吸った後少し甘いんだ、俺の人生にはデザートがなかった」

「(……来る)」

 

 その判断は正しかった、話が終わるや否や石流(いしごおり)は肉弾戦を仕掛け二人の肉弾戦は激しいものとなった。「(高い出力とそれを出すまでの呪力の瞬発力! キレが鋭くちゃんと防御(ガード)しないと僕でもダメージを受ける)」そう思いながらも石流(いしごおり)の猛攻を防ぎ、一方石流(いしごおり)も「(呪力の総量に裏づけられた耐久力(タフネス)! バカデカい水槽をノックしているようだ!)」と似たような事を考えていた。

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「(乙骨、何が不満かって!? 分かってんじゃねぇか!!)」

 

 最後の一撃は背中をぶつける『貼山靠(てつざんこう)』と呼ばれる技だった。そして同時に呪力が迸り、押し負けた乙骨は吹き飛ばされた。

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「(満ちてねぇから、不満なんだろ!!)」

 

 吹き飛ばした乙骨を追って建物を飛び移り近づき乙骨に呪力砲……『グラニテブラスト』を放つが、乙骨は呪力強化した手で弾きそれを見て「(弾いた! 素手で?)」と驚き、間髪いれず乙骨が近づきリーゼントの先端(ポンパドール)目掛け殴り、石流(いしごおり)は建物を踏みしめリーゼントの先端(ポンパドール)からグラニテブラストを放ち拳とグラニテブラストが衝突し「オマエが、俺の、デザートか!? 乙骨!!」と叫び、拳とグラニテブラストが拮抗していたが乙骨は吹き飛ばされ、乙骨の奥から『空』を捲り闖入者(ちんにゅうしゃ)が現れる。それはーー烏鷺亨子(うろたかこ)だった。

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「(叩くのは『人』ではなく『空』の『面』。相手ごと捉えた『面』を薄氷を割るように……)」

 

宇守羅彈(うすらび)!!』

 

「邪魔すんじゃねぇ!! ゲロ女! グラニテブラスト!!」

 

 乙骨との戦闘を邪魔され青筋を立てグラニテブラストを放つが、『空』を掴み「るせぇチンカス!!」と叫びながら回転しグラニテブラストを『空』を歪ませグラニテブラストの軌道を回し石流(いしごおり)向けて離す。すると歪んだ道筋を辿りグラニテブラストが石流(いしごおり)に当たり吹き飛んだ。

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「ハッ」

「自分の技を喰らったのは初めてだ」

 

 瓦礫に埋まり「中々にキクぜ」と呟いた。

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「しぶとい……まあいいわ、アンタが菅原の子孫なら優しく仕留めてあげる」

「(反転術式は厄介だが呪力の消費がハンパじゃない、黒沐死(くろうるし)烏鷺(うろ)俺の決め技を何度も受けてその度に使っていた。漸く底が見えてきたな、乙骨。

 どんなに美味い高級なケーキ屋も閉店間際のスッカスカのウィンドウじゃガッカリするもんさ……)……オマエじゃなかったのか、乙骨」

「(石流(いしごおり)は一般人を狙いはしないが、巻き込む事に躊躇しない。烏鷺(うろ)(ポイント)の区切りから多分術師としか戦ってない、理由は……プライド……かな。

 皆の居るスタジアムは里香ちゃんが居るし、これくらい離れれば問題はない。……仕方ないか……)おいで『美香(・・)』、半分だ(・・・)

 

 乙骨に呼び出した式神は凡そ小学校五年生程の少女だった。

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「(なんだあの式神は、完全顕現? イヤ、違うあの式神はまだ全力じゃない。なのにーー)」

「(なんだありゃあ、あのガキが式神なのか? それだけじゃねぇ、乙骨自身の呪力もまた湧いてきてやがる。どう言う理屈だ?)」

「〔おとーさん(・・・・・)、はんぶんでいいの?〕」

「うん、半分でいい。半分で充分だよ」

「〔わかった、どうするの?〕」

「そうだね……加茂先生のにしよう、一番使いなれてるからね」

「〔はあぁい〕」

 

 ━━━━

 乙骨が呼び寄せる『式神亜種・美香』、その正体は祈本里香を成仏させるのではなく『守護呪霊』へと変成(へんじょう)させその後に『守護呪霊・里香』となった。『守護呪霊・里香』の呪力と、乙骨憂太の呪力が混ざり合わさり生まれたのが『式神亜種・美香』である。

 里香と選んだ二つ目の指輪(・・・・・・)を付ける事で『式神亜種・美香』と繋がる事で『式神亜種・美香』の術式を外付け術式として完全に使えるようになり、更に『式神亜種・美香』は過呪怨霊(かじゅおんりょう)時代の祈本里香の性質を有しており呪力の備蓄・供給、そして『式神亜種・美香』独自の能力として出力の増幅(・・・・・)がある。『式神亜種・美香』が持つ外付け術式は乙骨の術式・模倣(コピー)が変異した術式で名を『羽織(コピー)』、羽織(コピー)するには対象の人物の呪力を『式神亜種・美香(・・・・・・・)』が二十四時間浴び続ける事。

 この条件をクリアすれば羽織(コピー)した人物の姿と術式、そして呪力を文字通り羽織り(・・・・・・・)その人物の術式順転が使えるようになる・・・・・・・・・・・・・・・・・・。そして式神亜種・美香との接続時間限界はーーー無い。

 ━━━━

 

 

「何度も使ってるけどこの術式は難しいな、加茂先生の凄さを痛感するよ」

「(見た目が変わった? それが乙骨の術式か?)」

「(なんだありゃあ、見た目が変わるとかどんな理屈だ? しかもそれだけじゃねぇ、乙骨自身の呪力が湧いてきやがる……どんな術式だ)」

「よし、いこうか。先ずは厄介な烏鷺(うろ)さん、あなたからいきます」

「(私からか)ナメるな! 道真の子孫!! (アレは蛇の目に牙! しまった呪言か!)」

 

 隠されていた口には独特な紋様が浮かび「『動くな』」の一言を発すると烏鷺(うろ)の動きが一瞬止まり、すかさず接近し凄まじい速度で殴り続ける乙骨と遠距離から呪力砲を放たれ逃げ出せなかったが、不意に乙骨の連撃が止まりその一瞬を見逃さずに『空』を掴み全身を覆い姿を隠す。

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「(全身に纏う事で姿を消せるのか、術式を考えればできて当然かな)」

「(速い!! なんて速さだ! それだけじゃない、出力も上がった? どう言う事だ! 

 それに、式神との連携が厄介。だが式神を叩いても意味は無い。乙骨を倒す)」

 

 離れた場所に姿を現し術式を使おうと『空』を掴んだ時、『美香』が手を向けて呪力砲を撃ち込み地面へと吹き飛ばす。

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「(一回使うだけで筋肉が引き千切れる、体が悲鳴をあげる。五条先生の術式とは別ベクトルで使いづらい、使えるのは五分が限界! その内に仕留める!)」

 

 そこからの猛攻は凄かった。凄まじい速度で襲い掛かる乙骨に対象できず、更に『式神亜種・美香』が連続で、断続的に放たれる高密度の呪力砲が逃げ場を減らす。

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「クッ……そがぁ!!」

 

『面』を掴み歪ませ大多数の呪力砲を散らし、乙骨の攻撃は自分の体に『空』を纏う事で躱して戦うがそれでも恐るべき速さの乙骨に追い付けず、躱しきれずに攻撃を喰らう。

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「(なんなんだコイツは! 戦い方そのものが変わった!! (・・・・・・・・・・・・))」

「はぁはぁ……ハァ!! 固有時制御・(Time alter・)二倍速(double accel)!」

「(速さに追いつーー)」

 

 凄まじい速度で烏鷺(うろ)を翻弄し、反撃の隙さえ潰し圧倒する。

 ━

「ふっ……ザッけるな!! 宇守羅彈(うすらび)!! 

「クッ……固有時制御・(Time alter・)三倍速(triple accel)

 

 動きの止まった乙骨に術式を当てようとしたが、気がつけば横から殴られていた。

 ━

「(更に速く! だが血を吐いている、限界は近い筈)宇伽螺渦(うからうず)!」

 

 掴んだ『空』を雑巾を絞るように限界まで捻じり超高密度の『空間の渦』を作りだし、迫ってくる乙骨に向けて……否、偏差射撃のように乙骨が来るであろう場所に突き刺す。

 ━

「(ヤバい! 見破られた! 体に負担が掛かるけど止まるしかない、止ま……れ!)」

 

 固有時制御・(Time alter・)三倍速(triple accel)を急停止させ空間の渦が突き刺さる場所の前で止まれたが、無理な動きをして全身の筋繊維がズタズタになっだがすぐさま体に反転術式を使う。

 そして急停止からの超加速し烏鷺(うろ)の背後に回り拳を振り抜く。

 ━

「(クソッ! 躱された! だがまだだ!)はい……だ、らぁあ!!」

 

 今度は空間を捻じ切った宇伽螺渦(うからうず)を幾つも投げ飛ばす。

 ━

「(そんな事もできるのか! 駄目だ、止まれない!)う、ぐぁ……」

 

 またもや移動先を見破られ、幾つもの『空間の渦』が体を抉る。

 ━

ハッ……。(早く、早く治せ!)」

 

 移動しながら抉れた体を治し、烏鷺(うろ)から距離を取る。

 ━

「オイオイオイ……放ったらかしとか、SWEET(スウィート)じゃあ……ねぇなぁ! 乙骨ぅ!!

 

 溜めに溜めた極大のグラニテブラストを乙骨目掛けて放つが『式神亜種・美香』が割って入り呪力砲で相殺する。

 ━

「(俺のグラニテブラストを相殺した!? マジか!)SWEET(スウィート)! 激甘じゃねぇか! グラニテブッ……。(いつの間に!)」

 

 その小柄な体躯からは想像できない膂力で殴り飛ばされた石流(いしごおり)は、吹き飛ばされながらもグラニテブラストを使い攻撃と共に反動で距離を取る。

 ━

「(簡単に相殺してくれるもんだぜ、しかもそれだけじゃねぇ。あの式神、速かった(・・・・)。恐らく乙骨と同じ事ができんだろうな)いいぜ嬢ちゃん、少しの間遊んでやるよ。グラニテブラスト」

「〔おとーさんのじゃまはさせない。えっと……えい!!〕」

 

 放たれる極大の呪力砲同士が衝突し砕けた塵が舞い、その塵に紛れ『式神亜種・美香』に近づき「子供を殴る趣味はねぇが仕方ねぇよな」と肘から呪力を噴出させ『式神亜種・美香』を殴り飛ばす。「〔いたい〕」と、何もなかったかのように立ち上がり「〔吹き飛べ(・・・・)〕」と叫ぶ。

 ━

「!? (呪言か!? 仕組みが分からねぇ、だがーー)まだまだ食べ盛り、モリモリいこうか!!」

 

 まるで何かに弾き飛ばされるように石流(いしごおり)が吹き飛び建物に衝突し壊していく石流(いしごおり)を見て立ち止まり、一度羽織(コピー)を解いて「『美香』」と呼ぶと戦っていた『式神亜種・美香』が乙骨に近寄り「〔どうしたのおとーさん?〕」と聞き返し、「全部だ、全部使おう」と答えると「〔わかった、ぜんぶだね〕」の言葉と共に半透明だった『式神亜種・美香』の体がしっかりと見えてきた。

 そして『式神亜種・美香』に『全部だ』と、言った途端に乙骨の呪力が更に沸き上がり、出力も上がる。

 ━

「(完全顕現!? 今までのは全力じゃなかったって言うの!?)」

「(マジでどう言う理屈だ、乙骨の呪力がまた湧いてきやがった。今度こそ全力か)いいね、マジでSWEET(スウィート)だぜ乙骨!!」

「『美香』は石流(いしごおり)さんを頼めるかな」

「〔わかった!〕」

 

 ハツラツした声で手を上げ言葉を返した。

 ━

「(ふぅー……呪力量と出力にモノを言わせれば先生と同等の性能を引き出せる、その代わり体が悲鳴をあげる。でも、やるしかない)『美香』、もう一度加茂先生だ」

「〔はあぁい。えい!〕」

 

 可愛らしい声で乙骨に手を振りかざすとまたもや見た目が加茂晴蓮へと変わる。

 ━

「もう一度だ」

「やってみろ道真の子孫! 宇伽螺渦(うからうず)!!」

 

 先程同様空間を捻じ切り投げ槍の要領で乙骨目掛け投げつけるが、「固有時制御・(Time alter・)三倍速(triple accel)」と発した乙骨は瞬間移動かのような速さで烏鷺(うろ)の背後に回り込み強力な拳を叩き込む。

 その一方で、石流(いしごおり)と『式神亜種・美香』の戦闘は近接戦をしたかと思えば距離を取り石流(いしごおり)はグラニテブラストを、『式神亜種・美香』は単なる呪力砲を放ち苛烈を極めていた。

 ━

「ふぅー……。(限界ギリギリを攻めていけ)いこうか! 固有時制御・(Time alter・)四倍(square)ーー(accel)!!」

 

 

 烏鷺(うろ)が驚いた一瞬の間に乙骨が目の前に迫って拳を振りかざしていた。

 ━

「な、速……ガッーー」

 

 瞬間的に亜音速を超えた一撃に反応すらできず防げずに烏鷺(うろ)はただ殴り飛ばされていた。

 ━

「はぁはぁ……クッ、はぁはぁ。よし。(烏鷺(うろ)さんはこれで一先ず片付いた、次は石流(いしごおり)さんだ)」

 ━

 一方『式神亜種・美香』と石流(いしごおり)が遠近で戦い、一進一退の戦闘を繰り広げていた。

 ━

「(この式神マジでバケモンだな、カテェしハエェ上に出力がダンチだ。なんだこの式神は、だが!)マジでSWEET(スウィート)だぜ、グラニテブラスト」

「〔やっ!〕」

 

 蛇口の大きさは当然石流(いしごおり)が上、されど乙骨の呪力総量と『式神亜種・美香』本来の出力の高さが拮抗させていた。するとそこにーー

 ━

「〔うっ〕」

「ハァッ!」

 

 踞る(うずくまる)『式神亜種・美香』に当たる寸前に乙骨が現れ弾く。

 ━

「マジかお前!!」

 

 乙骨と『式神亜種・美香』、そして石流(いしごおり)の三つ巴が始まる。

 ━

 遠距離からは『式神亜種・美香』の呪力砲、近距離は視認できない速度の乙骨を長年侍として培ってきた勘でギリギリ捌き、しかしそれでも幾つかの攻撃を受けてしまい尚且つ迫り来る呪力砲を片手で弾きなんとか喰らいついていたが、弾いた隙をつかれ一撃を腹に受ける。

 ━

「グッ……オォオ……。イテェなぁ、でもよ捕まえたぜ(・・・・・)?」

「(しまった! 釣られーー)」

 

 本来は放出する術式を反転(・・)させ、その出力を体内で爆発させ拳を振り抜き殴り飛ばす。

 ━

「〔おとーさんをいじめるな!!〕」

 

 更に出力が増した呪力砲を反転させた状態のままであった肉体出力でいずこかの方向へと弾き、体内にグツグツと煮える呪力をグラニテブラストとして放つ。

 ━

「吹き飛びな嬢ちゃん」

 

 凡そ二十mもの距離を一瞬で戻り超極大のグラニテブラストを防ぐ。

 ━

「やるじゃねぇか乙骨」

「ここで負けていられませんので」

「(乙骨にとってあの式神は肝、守るのがその証左。どうする)」

 

 二人の視線が、思惑が混じる中宇伽螺(うから)(うず)の声が響く。

 ━

「私を無視するか道真の子孫」

「オイオイ、お前は退場しとけよ」

「黙れ侍!! 道真の子孫、オマエは何を望む! 何の為に戦う!」

「さっきも言いましたが友達の為、尊敬できる人達の為です」

「言い心意気じゃねぇか」

「ハッ!! 誰かの為に戦うか、その誰かはオマエを褒めそやすか!」

「褒めてもらおうとは思っていません、ただの自己満足です。僕が戦う事で誰かが怪我をしないですむのなら僕は誰かの為に戦います」

「ハッ! やはりオマエは道真の子孫だな、だからこそ藤原の連中によって謀略に嵌められ死んだ! 誰かの為に生きたからだ! (髪を引き抜いて式神にした? 何をするつもりだ)私は私の為に戦い、私は私として何者かに成る為に戦う! (鬱陶しい式神が!)」

 

 空間を歪ませ式神を足元に引き寄せ踏み潰す。

 ━

「私は私の名を持つ! オマエのような甘ったれた思想が己を殺す事にーー!? (これは、式神の軌跡を領域とするドルゥヴの術式! 乙骨は式神術を扱える呪言師じゃない、乙骨の術式は『模倣(コピー)』!!)」

「(アレはドルゥヴの術式!? ただの呪言師だとは思っていなかった、乙骨の術式は模倣(コピー)。だが余程の条件がある筈だ、いつだ?)」

「僕はご先祖様がどうとかは知りませんし関係ありません。僕のご先祖様がアナタが嫌う人達に何かされていたとしてもそれは過去の話です。

 自分の為だけに生きるのはきっといつか限界がくる」

「黙れ……黙れ小僧!! 『誰かの為に生きろ』、『何者にも成る必要はない』。そうやって嘯くのはいつだって何者かに成った者だ!!」

 

 その時太鼓の音が鳴り皆が振り返る、音の出所は石流(いしごおり)が自身の心臓を叩く音だった。

 ━

「ごちゃごちゃうるせぇ!! ここまで来たら、もう言葉じゃねぇだろ!!!」

 

 心臓を叩く音が響くなか三人の声が重なる………。

 

「領域展開!!」

 

 領域の押し合いになればそれぞれこ必中術式は打ち消し会う。その間の主導権(イニシアチブ)を乙骨に譲らない為に『『式神亜種・美香』を結界内に入れない』。石流(いしごおり)烏鷺(うろ)の利害が一致する。

 ━

「(たとえ後から結界に侵入されようと!)」

「(ダラダラやるつもりはねぇ、甘い決着をつけようぜ!)」

 

 直前、石流(いしごおり)に二十m強吹き飛ばされた『式神亜種・美香』は二人が策を弄するまでもなく結界の構築に間に合わない。だが、『式神亜種・美香』の父への強い意志が許さなかった。『式神亜種・美香』の出力(ギア)が更に一段階上がる。

 ━

「〔おとーさんを、返せ!〕」

 

 その時、いなくなった筈の存在が……「私ハ!! 鉄ノ味ガ、好キダ!!」乱入する。

 

現代の黒い悪魔が結界内にーー舞う。

 

 結界の外では強化されたゴキブリから『式神亜種・美香』は逃げていた。

 黒沐死(くろうるし)は休眠前に単為生殖を成し遂げていた。親が祓われ、子に再び日本中の畏怖の呪力が注がれていた、泳者(プレイヤー)としての黒沐死(くろうるし)は死んでも呪霊としての黒沐死(くろうるし)は未だ健在、新たな黒沐死(くろうるし)と言う存在の介入により起きた様々な現象。この中でもっとも大きかったのが三者の領域への予定外の侵入。

 

その結果が結界の崩壊だった

 

 乙骨は結界崩壊後にすぐ烏鷺(うろ)へと近づき蹴りを入れる。

 ━

「チッ!」

 

 領域展開直後は、術式が焼き切れ使用が困難となる。その隙を狙われ黒沐死(くろうるし)の持つ爛生刀(らんしょうとう)で腕を斬られ、斬られた箇所から小さなゴキブリが突き破り引き千切られ転がり、そこに『式神亜種・美香』は呪力砲を移動に使い三次元的に動き腕を手に取り両手で潰し珠にして呑み込む(・・・・・・・・・・・・・)

 ━

「(あの膂力なら潰して丸めるのは簡単だろうな、しっかし徹底してるな乙骨。例え烏鷺(うろ)が反転使いでも無い腕を生やすなんて芸当はそうできねぇ!)」

「う……クッ……。道真の子孫! 貴様ぁ!」

「もういいだろ、烏鷺(うろ)

「オマエはこのテーブルに呼ばれてねぇ」

 

 石流(いしごおり)の術式は単純な『呪力の放出』、故に『グラニテブラスト』を石流(いしごおり)は術式を使う使わない関係なく同等の攻撃(パフォーマンス)が可能な唯一の術師。

 ━

「さあ……卓に着こうぜ、乙骨」

 

 乙骨の術式は未だ回復していない。だがーー

 ━

「いくよ『美香』」

 

 乙骨は『式神亜種・美香』の性質である呪力出力上昇、そして高出力指向放出。しかし上昇していてもなお石流(いしごおり)が上回っており、乙骨はより早く呪力を溜め石流(いしごおり)が最大出力に達する前に放つ………筈だった。

 

出し切ろうぜ、乙骨

 

 四百と余年の渇望、渇きに比例した熱い眼差しがーー

 

一回だけですよ

 

 恐らく今後も戦いそのものに意味を見出だす事のない乙骨憂太の心を解かす。

 

 超高出力の呪力砲同士がぶつかり合い拮抗し爆発する。

 ━

「マジでSWEET(スウィート)だぜ、乙骨。!! そうだな! 何回でもやろうぜ! 乙骨! (呪力砲はあの式神だけでも使える、なら)だよなぁ! そうだよなぁ! お前ならそうくるよなぁ! でもなぁ! オマエらにできる事は俺にもできるに決まったんだろ!! (つってもバカみてぇな威力しやがんなコイツぁよ)」

「(このまま突っ込む!)」

「(領域展開に俺との食事(ギグ)、流石のオマエも)キメるぜ。(もうたいした回復はできねぇだろ)グラニテブラスト」

 

 絞り出したグラニテブラスト、確実に当たる躱せない距離。『当たる』そう確信した、しかし乙骨の術式はーー既に回復していた。

 ━

「!! (今のは烏鷺(うろ)の術式!? 恐らくはあの嬢ちゃんと乙骨とは別の術式を持っているとは思っていたが違った! 嬢ちゃんの術式は乙骨の術式が変異したもの! いつ条件を満たした。俺の見ていない間? まさか無条件? ーーー)まさか、あの時か!」

「『宇守羅彈(うすらび)!!』」

 

 羽織(コピー)による晴蓮の『固有時制御(Time alter)』による連続宇守羅彈(うすらび)による攻撃、そして『空』を引っ張り『式神亜種・美香』を引き寄せ上からの呪力砲を受けてもなお攻撃の手を止めずに高出力の呪力で強化をした拳を『式神亜種・美香』に叩き込み吹き飛ばし『式神亜種・美香』は完全顕現の『式神亜種・美香』でさえも持て余す一撃よる消失。同時に羽織(コピー)は解ける。

 そして羽織(コピー)が強制的に解かされた反動が肉体を襲う。

 ━

「ウッ、くっ………」

「(これが守る理由か!)隙ができたな乙骨! グラニテブラスト!」

 

 晴蓮であるが故に十全に使いこなせる固有時制御(Time alter)を使った反動の過呼吸、筋繊維の断裂、内出血。心臓の過活動による破裂寸前まで体に反転術式を使いなんとか回復させ、そのまま肉弾戦へと突入。

 ━

「まだ、まだぁ!」

 

 グラニテブラストを先程と同じように宇守羅彈(うすらび)横に曲げ(・・・・)逸らし、石流(いしごおり)に近づき肉弾戦を仕掛ける。

 ━

「知らなかった!! 出し切った後があるなんて!! これが!!!」

 

これがデザート!! 

 

「まだだ! まだ終わらねぇ、終わらせねぇ! 乙骨!!」

 

 乙骨は石流(いしごおり)の襟首と腰辺りを掴みコンクリートの屋根を踏みしめ動きを止める。

 ━

「いえ、ここまでです」

「あ?」

 

 降り注ぐは己のグラニテブラスト、石流(いしごおり)はすぐに分かった。これはさっき自身が放ったモノだと。しかし捕まれているが為に避ける事ができずに呪力の柱に呑まれる。

 ━

「ありがとう…………満腹だ」

 

 そう言い仰向けに倒れる。

 ━




 原作をなぞるだけだと二次創作じゃないもんね。

━━
 因みに晴蓮くんの術式順転で出せるのは四倍速(square accel)までです。

━━
 途中で切ろうかと思いましたがなんかバランス悪いなって事で仙台戦を書ききりました、その分長くなりましだがこれくらいが丁度良いのかもしれませんね。

━━
 誤字脱字がありましたらご報告してくださると助かります。

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