一之瀬帆波「……アイム、ジャグラー?」   作:桜霧島

9 / 9

『賭博行為は、一面互に自己の財物を自己の好むところに投ずるだけであつて、他人の財産権をその意に反して侵害するものではなく、従つて、一見各人に任かされた自由行為に属し罪悪と称するに足りないようにも見えるが、しかし、他面勤労その他正当な原因に因るのでなく、単なる偶然の事情に因り財物の獲得を僥倖せんと相争うがごときは、国民をして怠惰浪費の弊風を生ぜしめ、健康で文化的な社会の基礎を成す勤労の美風を害するばかりでなく、甚だしきは暴行、脅迫、殺傷、強窃盗その他の副次的犯罪を誘発し又は国民経済の機能に重大な障害を与える恐れすらあるのである。』

昭和24年 最高裁判例より抜粋



やっぱりプレハナが一番良かったよね

 

 

 ノーマルタイプの人気作と言えばジャグラーシリーズともう一つ、ハナハナシリーズがある。

 

 「光れば当たり」というシンプルな仕様は同じなので俺のように両者とも好む者もいるが、一部信者にとってはお互いが客と設定を奪い合う目の上のたんこぶ。

 全体的に見ればジャグラーシリーズの方が販売台数も設置店舗も上であろうが、ハナハナにはジャグラーには無い楽しみがある。

 

 たまに来るボーナス図柄一直線やスイカテンパイハズレなどの後告知を楽しむことも出来るし、特に設定推測要素はブドウやチェリーを数えるだけのジャグラーより多く、ビッグ中のスイカ揃い回数やレギュ中のサイドフラッシュ、ボーナス終了後の上部ランプ点灯など、「これ上なのかな? 下なのかな?」という状態を長く楽しめるのが良いところだ。

 パチンコもパチスロも客を如何に飽きさせないか、あるいは打つ理由を作ることが出来るかというのが大事なのだ。

 

「ところで……ねぇ、イサナ君。その格好は……何?」

「あァ? 正装だよ正装。ハナハナ打つならこの格好をしなくちゃいけねェってばっちゃが言ってた」

「安っぽいキャップに白い手袋、あとは……あごマスク? 制服には合わないと思う……っていうかキミに全然似合ってない」

「何事も形が大事なンだよ」

「じゃあ、今日は出玉勝負ってことでいいかな? 店はもう閉めたし、明日は学校も休みだし」

「上等だ! いや……ちょっと待て、電話だ」

 

 一之瀬との出玉勝負に興じようとしたまさにその時、オレのスマホがブルブルと震えた。発信者は……チッ、アイツか、めんどくせえ。

 

「はい、もしもし。……今からですか? ……わかりました、伺います」

 

 用件を伝えると一方的に切りやがった。アイツは多分、俺のことを一之瀬の席を奪った気に食わない奴とでも思ってるんだろう。奇遇だな、俺もだ。1秒でも長く話していたくねェ。

 

「イサナ君、もしかして生徒会の……?」

「あぁ、南雲副会長だ」

 

 一之瀬の顔に一瞬だが緊張が走る。彼女はいったいどういう感情をアイツに向けているんだろうか。

 

「すまんが、出玉勝負はお預けだ。きっと今度の学年混合合宿についての話だろう」

「そう……なんだね。うん、わかった。私はここでお留守番しているから」

 

 原作の一之瀬は中学時代に自身の弱さが引き起こした万引き未遂により、「人を傷つける嘘はつかない」「善人でなくてはならない」「自クラスも他クラスも退学させてはならない」という、ある意味においての贖罪意識にかられ生徒会入りを志望していた。

 一方、彼女にとってこの学校は特に愛着のあるものではない。学費無償と進路補償という実利があるからこそ選んだわけで、それが無ければその辺の公立高校に進学していたに違いない。

 そっちの方が彼女にとって幸せだったであろうことは疑いないが、少なくとも男を見る目だけは養ってから社会に出てほしい。コイツ多分綾小路がいなかったら普通に南雲のセフレになって枕営業ばっかりさせられてたぞ。

 

 

「一之瀬、お前、まだ生徒会に入りたいのか?」

「え、やだよ」

「……はァ?」

「だってジャグラー打つ時間が無くなるじゃない」

 

 

 だが皆さん、安心して欲しい。この一之瀬はクズだ。つまり我々の仲間だ。

 

 

 皆さんにも見せてあげたい、ジャグラーを打っているときの彼女の背中を。

 

 

 ハマらせている中、突然の「ガコッ」でビクッと震える彼女を。

 

 

 バー狙いに途中で飽きて逆押しを始める彼女を。

 

 

 20゜くらい首を傾けてダルそうにレギュラーボーナスを消化する彼女を。

 

 

 これぞプロの姿である。期待値あるなぁ〜。

 

 

 俺は安心して店を出て学校へ向かう。これなら南雲に体を売るとかアホなことは考えないだろう。

 

 

 

 ―――いや、種銭欲しさに売る可能性は無くは無いか……。

 

 

 

 まァいい。一之瀬だって俺が貯め込んでいることくらいわかってるから、その時はこっちに来るだろ。

 とりあえずけやきモールの傍らにある店から学校までの道中、南雲の呼出の内容と今後の展開についてさらっと検討してみる。

 

 原作では生徒会入りを代償として一之瀬は南雲に自身の「秘密」を打ち明け、その秘密を南雲から横流しされた坂柳によって誹謗中傷を受けていた。だが今はクラスを運営するために尽力する普通のスロカスだ。

 その姿を見ても南雲が自分の女にしたがるかはハナハナ……もとい、甚だ疑問ではあるが、まぁガワは最高級に良い女だ。堀北生徒会長との対決も含めて、おそらく原作通りに動くだろう。

 

 次に坂柳の動向だ。基本的には放置しているが、そろそろ探りを入れた方が良いかもしれない。とすれば、橋本だな。合宿中に接触するのが良いかもしれない。男女別だから坂柳の目の届かないところも多いだろう。

 彼女はおそらく、と言うよりは十中八九、一之瀬を攻撃してくると考えている。布石は神室などを使って既に打たれつつある。よって俺は独自にAクラスに対するカウンターを準備しなければならない。

 何故ならば俺は基本的に綾小路をこのクラスに介入させるつもりは無いからだ。

 

 その理由は……まぁ、原作を読んでいる人ならわかってくれるだろう。

 

 カウンター戦力としては()()がある。これも合宿中に接触するのが良いだろうな。ということは……なるほど、混合合宿における俺の行動指針はおおよそ決まった。後は手札をどのように切っていくかだな、

 

 一番の手札は俺が南雲・堀北と取引をして、生徒会に入ったことである。つまり上の学年へのアクセス権を俺はこの学年のおそらく誰よりも持っているのだ。

 そしてPP。表向きにはBクラスの金庫番は一之瀬となっているが、(ジャグラー)を通してその金のほとんどは俺にわたっている。それに店の売り上げを加えると……ゆうに2000万PP以上貯めこんでいる。このアドバンテージはデカい。

 

 であれば……。

 

 

 

 ふむ、南雲よ。お前の好きそうなネタを提供してやる。どういう風に料理するかはお前次第だな。

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 

「失礼します」

「待っていたぜ、《ブックメーカー》……ちょっと待て、何だそのダサい格好は」

 

 生徒会室に入ると南雲が一人で俺を待ち受けていた。

 

 しまった、店から直接来たから森●スタイルのままだった。キャップを外しながらポリポリと後頭部を掻く。

 

「なンですか、その渾名は。あとこの格好は正装です」

「お、おう……。お前、体育祭で賭博してただろう? 上手く正体を隠していたようだが、上級生で目端の立つ奴はは1年の誰かだろうと勘づいてたぞ。それで謎の胴元であるお前を『ブックメーカー』と呼んでいる。俺以外もな」

 

 『謎の胴元X』などとセンスのない二つ名を付けられるよりはマシってものか。俺がブックメーカーなどというのが公然のものとなってしまうと店の運営にも支障が出てしまうかもしれないからそれで許しておいてやろう。いずれはバレるだろうが、な。

 

 それにどうせ合宿についての話だなんて建前だけに決まっている。当事者である会長や桐山氏などがいないことからも、南雲の私的な呼び出しであることは明らかだ。

 

「その渾名を付けた方には、及第点を上げましょう。―――ところで、どのようなご用件で?」

「しらばっくれてんじゃねえよ、桜木。もう納期が来てるんだ。お前、約束したよな? お前の生徒会入りに協力する代わりに、帆波を手に入れるのに協力するって話はどうなったんだ?」

「正確には『一之瀬の秘密を手に入れろ』ということだったと記憶していますが?」

「変わらねえよ。で、どうなんだ? 出来なかったなんて言った瞬間、お前を退学させてやる。脅しじゃない、確定した事実だ」

「物騒なことですね。であれば先にお品物をお出ししましょう。『一之瀬帆波はクラスからの預かり金を私的に流用し、着服している』」

「!? 証拠はあるのか?」

 

 まさか、という顔をした南雲を横目に、俺は懐から自分の携帯端末を取り出し画像を出す。

 

「これは彼女の端末に記録されている残高を映したものです。本来であれば1500万程度のPPを彼女は所持していなければおかしいのです。ですがこの端末に記録されているのは220万PP、つまり1000万PP以上が行方不明となっているのです」

「お前に移してるんじゃ無いだろうな?」

「まさか。俺の画面も見ますか?」

 

 俺は自身の残高と「ついでに」と言いながら自身の店の帳簿、貸借対照表も見せる。

 いかなる不当な操作もしていない、まっとうな帳簿だ。店の預(PP)残高は僅かな黒である。

 

「つまり一之瀬は誰かに、もしくは何かにクラスのPPを流しているということか……」

 

 南雲は自身の細い顎を摘まみながら何かを思案している。恐らく俺が何か小細工をしている可能性と、どういう形で坂柳に情報を流すかを思案しているのだろう。

 

「桜木、お前、仮にそれが事実だとして流している先に心当たりは無いのか?」

「推測になりますが」

「言え」

「―――おそらくD、いや今はCクラスか、そこの誰かだと推測しています。あのクラスはCPがゼロという前代未聞の出発でした。現ナマは喉から手が出るほど欲しがるでしょう。容疑者としては櫛田、平田、堀北会長の妹、綾小路、―――」

「綾小路?」

「堀北妹のそばにいる、無口無表情の奴です」

「あぁ、アイツか。運動会でごぼう抜きしてた奴だな。あと平田は無いな。会長の妹も無いだろう。潔癖でプライドが高そうだ」

 

 サッカー部の繋がりだろうか。堀北ともども早々に容疑者から消されてしまった。ブラフにも使えねえ奴らだ。

 

「櫛田か綾小路……どちらもありそうだ」

「では副会長、俺はこれで」

「待て、桜木」

「なンですか」

 

 細工がバレる前にズラかろうとしたが呼び止められてしまった。

 よくあるよな、席を立とうとしたらGOGOランプが光るってこと。

 

「今度の混合合宿、俺は堀北会長と勝負する。忙しいからお前ら1年には基本的にノータッチだ。だから邪魔だけはするなよ」

「ええ、わかっていますよ」

「お前が何やら会長と企んでいることは知っている。だがな、覚えておけ。会長はあと3ヶ月でいなくなる。その時俺を裏切っていたら―――わかるな?」

 

 あまり小物っぽい言い方はしないほうがいいと思うけどな。だから『噛ませ』って言われちゃうんだよ。

 

「わかってますよ。それでは」

 

 俺は一礼して生徒会室を辞す。

 

 南雲というギミックは俺にとって最早お払い箱だ。入学ブーストに使って以降は割と邪魔だしな。

 

 だが学年混合試験は合宿以降もまだある。その時に諸々清算して……終わりだな。一之瀬が引き続き生徒会に興味を示さない場合は早々に生徒会を辞めるのも手だ。葛城か堀北妹に禅譲してやろう。

 

 さて、気分転換にスロットでも打つか!(中毒患者)

 

 





よう実2年生編発表記念!!

と見せかけた、よう実パチンコ化記念!!


見た感じ「とある」のLT機と同じ感じですかね……。

右打ちの当たりは次3000確、しかしながら上位ラッシュから通常への即転落は20パー弱……
つまりコイツもクソ台の匂いがプンプンするってことだ!やったぜ!

スイッチオンマン、頼むぜ!







よく考えたらよう実開始は2018年、ゴリゴリの5号機全盛期なんだよな……
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