※ピクシブにも平行投稿しております。
前回、緑先輩と水族館に二人で行ったので今回はそのとなりの鉄道博物館に行った。僕たちはJRの宇治駅の改札前で正午に待ち合わせることにした。僕が駅前に十一時五十分頃に着いてエスカレーターに乗って券売機の方へ向かおうとすると、すでに緑先輩はそこに待っていた。
「待たせてすみません」
と僕が言うと
「気にしなくていいです。緑もほんのちょっと前に来たので」
僕たちは梅小路京都西駅で降りてしばらく歩いて京都鉄道博物館に着いた。そして入場券を買って中に入った。そこでは、C六二型蒸気機関車、八〇系電車や〇系新幹線電車といった歴代の名優たちが出迎えてくれた。
「力強そうでかっこいいです。それでいて精密機械だよ」
緑先輩はC62を見て興奮気味に言った。
「この機関車、別のが動いていて後で乗れるよ」
僕がこう言うと、
「本当ですか?うれしいです」
緑先輩は目をキラキラさせながら返した。
さらに進むと食堂車と一〇三系電車が現れた。ここにあるのはオレンジ色の大阪環状線仕様だけど僕たちにとっては、ついさっきまで愛車と言っても何の問題もないくらいおなじみの電車だった。目をつぶると元気に走っている黄緑色の電車たちを思い出す。
「緑もいつも乗ってました」
もちろんそうですよね。緑先輩の住んでいるところから宇治に向かうときにわざわざ遠回りの京阪を使っていたのか謎だったから。
「緑先輩ってなんで京阪の定期券買ってるんですか?』
「久美子ちゃんとか葉月ちゃんとかとギリギリまで一緒にいたかったんです」
僕はそんな美しい友情の中に入れるのだろうか。
先に進むとEF五八形とEF八一形電気機関車が姿を現した。そのEF八一は濃い緑に黄色いラインという豪華特急という感じの見た目だった。さらに進むと同じ色をした客車もあった。
「緑先輩はトワイライトエクスプレスって乗ったことがある?僕は乗れなかったから」
「名前は聞いたことがあるんだけど実際に見たのは初めてです」
「そうだよね」
緑先輩の反応は予想していたけど……やっぱり残念だった。
僕たちは建物の中に入って、古くて小さな蒸気機関車・二二〇形の右にあるエスカレーターに乗ってカフェテリアに向かった。緑先輩はご飯が黄色い新幹線のように盛り付けてある「ドクターイエローハヤシライス」、そして僕はチーズがはしご、ではなく線路のようにかけてある「線路チーズのミートソース」を頼んだ。
食事が済んだ後は僕たちが初めて見るような古い自動改札機を抜けて切符関連の展示を見た。今ではもう見なくなった鉛活字や活版印刷旗があった。僕は小さな厚紙に刷られた昔の切符を見て、なくしたら大変だと思った。日常の足ならともかく、これで丸一日、いや、数日間乗り続けたこともあったから。その先には今も使われている「マルス」という予約ネットワークシステムの古い端末が置いてあった。たしか子供の頃これが置いてあった窓口で切符を買ったことがあった。緑先輩はまるで異世界の機械を見ているような表情だった。そして切符購入体験コーナーで一緒になって券売機のボタンを押した。それを目の前の改札機にいれるとアクリルのふたの下で動く切符が見えて、緑先輩はそれを興味深そうに見ていた。
その先には遠い昔に使われていた琺瑯製の行先表示板が色々展示されていた。今は回転幕を通り越してほぼ全て電光掲示になってしまった。それでこれらはコレクション対象として価値があるものとなった。足を進めると古い客車のモックアップがあった。緑先輩はそれを見て、
「見た感じ、固くておしりが痛くなりそうです」
と一言。昔はこれに乗って十時間二十時間乗り続けるのは当たり前だった。今の基準で言えばほぼ苦行だろうと僕も思った。
その次は貨物輸送コーナーがあって荷札の他にここでの展示のためにわざわざ注文された新品のコンテナがあった。コンテナの中はダミーの段ボールが満載だった。壁際の展示ケースの中にはOゲージくらいの大きな貨車模型があって僕はその出来にしばらく見とれていました。
先に進むと八十年くらい前の昔の駅を再現したコーナーがあります。壁や改札口はニス塗りの木で作られていて美しかった。そして運転指令室のように新幹線の運行状況が出るパネルが現れた。その手前には運転シミュレーターがあって緑先輩が挑戦していました。僕は後ろから見ていたけど初めての割には上手だった。
そしてジオラマスペースに向かった。地元の電車から僕たちがほとんど乗らないような東京方面の電車や東北新幹線の電車まで縦横無尽に走っていた。ここで走っている模型は僕が持っているNゲージよりも大きなHOゲージなのでそれなりの迫力があった。家ではとても作れないような巨大ジオラマに憧れた。
「緑色の長い新幹線、乗ってみたいです」
緑先輩は言ったけど、その機会は来るのかな。僕たちはそこから階段を上がって外の展望デッキに出た。眼の前の線路にはひっきりなしに新幹線や新快速が走り抜けていた。いつも乗っている電車たちだけど上から見ることはめったにないのでそれは新鮮だった。
一階に戻ると四八九系、五八三系特急型電車とまだ現役で残っている五〇〇系新幹線が出迎えた。先に進むと古くてゴツいEF五二形電気機関車、丸っこい〇系とは対照的な一〇〇系新幹線電車、キハ八一形特急用ディーゼルカーとまだ残っているEF五八形電気機関車とDD五一形電気機関車が待っていた。このDD五一、宇治には昔は工場への貨物列車、今は保線用としてたまに来る。キハ八一形の横には昔の駅とホームが再現されていてエモさを味わった。
そしてその先には、外の線路と繋がっていて現役の車両が観察できる特別展示室があった。そこには、今だけここで見ることができる、デビュー前のHC八五形と引退目前のキハ八五形特急用ディーゼルカーがそれぞれ二両、先頭車同士が向かい合ったように組まれて並べられていた。まだ使われていなくてピカピカなHC八五にこんにちは、洗車されてはいたけどだいぶくたびれていたキハ八五に長い間お疲れ様と言った。横に高山観光のパンフレットがあったので、緑先輩に、
「今度の夏、高山に行かない?」
と言ったら、
「夏の予定はまだわからないから考えておきます」
と言った。
そこから出ると車両の構造を紹介するスペースとなっていてEF六六を下から見ることができたり、昔、環状線を走っていた一〇一系電車のモーターを動かせるようになっていて、動く様子を見ることができるようになっていた。
そして安全設備や保線器具の展示コーナーがあった。まずタブレット発行機で昔はこれのやり取りがないと列車を走らせることができなかった。タブレットと言っても板状の小型コンピューターのことではなく丸い金属板で専用のカバンに入れて列車の乗務員に渡したり受け取ったりしていた。この他に信号機やポイント切替器が展示されていた。
これが見終わったらいよいよ機関庫。僕たちは蒸気機関車たちをひと通り見た後にスチーム号のりばに行き、切符を買ってホームに上がった。もうすでに後ろ側でで煙を出していて、短い間だけどこれからお世話になるるC六二にあいさつした後中のトロッコ客車に緑先輩と二人で乗り込んだ。ホームはあっという間に人で埋まって全員が乗ったところで出発した。SL列車は短い道のりを力強く走って、前回緑先輩と行った水族館の前まで行って折り返した。途中、緑先輩は山陰方面の特急電車と並走したときに手を振っていた。僕たちは列車を降りた後C六二が回転台に乗って向きを変えた後給水塔や石炭が積んであるところまで進み、水や燃料を補給するところを眺めた。
閉館時間が近づいてきたので出口手前の売店に行った。ここで僕はキハ八五のグッズを買うつもりでいたけど、とっくに売り切れていてがっかりした。でもそれを緑先輩にはなんとか悟られないようにした。緑先輩は鉛筆のような箱に入った五〇〇系ロングバームクーヘンをレジに出していた。
僕たちは稲荷駅まで緑先輩と手をつないで彼女のぬくもりを感じながら座った。そして彼女が降りた後僕はそのまま乗って宇治駅まで帰った。