主人公の生える庭を管理する人間は都度入れ替わる仕組みになっている。
これはその引き継ぎを行った際の一番古い記録。

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どきどきファームの管理人

三代目どきどきファーム管理人 オギワラ・シノブ様

 

 

どきどきファームで一度目にしたものは何度もそこにあらわれる。

いつなんどきそれを目にしてもきちんと記録しておかないと今度いつそれがまたどきどきファームに現れるかわからないから気を付けよう。

 

どきどきファームの二代目の管理人として君を三代目の管理人に選ぶことを僕は迷わなかったよ。

だって君ほど、どきどきファームの動物たちを大事に思ってくれた人はいなかったから。

本当のところ、これを書きながら君が本当にどきどきファームを引き継いでくれることに、本当によかったのかって思う気持ちはある。

だってそこに生まれれてくるファーム・キッズはやんちゃで言うことを聞かないし姿かたちも予想がつかない。

君は勉強が得意だ、だから余計に難儀すると思う。

きっとはじめのころ君は予想のつかないどきどきファームの動きについていくのがやっとで、その法則やコントロールの仕方を編み出したい、編み出せると考えて取り組んでいてくれていたのだと思う。

でもどきどきファーム(以下ファームと略す)のことを知っていくごとに、どうやらファームをコントロールするなんて無理なんじゃないかって思うようになったんじゃないかな。

僕は正直、そうなってきたところで君には無理せずファームから離れるように言うべきだった。

でも、正直言えば、これが最後の機会になるかもしれないから正直に言うけれど、君がいなくなると寂しいと思って、離れる時期を伝えるのをためらってしまった。ごめん。

あのとき、君が多少ファームの管理に倦んできたころ、正規の管理人としては、通常の生活に戻るのを促すべきだった。じつはこれまでもそうしてきたし、君にも夏休みを終えるころには本格的に人間の通常の世界に戻るように言うべきだと頭ではわかっていたんだけど、そうしなかった。それはファームの無期限管理者を任された正規の管理人としては怠慢だったけど、困ったことに僕はそれを後悔していない。

だって君とファームで格闘したこの一年ちょっとは、この100年なかったくらい本当に楽しかった。

だから君の生活や今後の人生を決定的に変えてしまったかもしれないのに、僕は自分が最後に楽しかったその思い出を持って去ることができることをとても嬉しく思っているし、満足している。

君は僕より立派なファームの管理人になるだろう。

今後いろいろなプロタゴニストが生まれてきては君を悩ませるだろうけど、君に伝えるべき管理人としての心得はすべて伝えたつもり。

そればかりか、君には僕にはなかった資質がある。

それは君に明かしてしまうとせっかくの良さを台無しにしてしまうかもしれないから、これまでなんでも正直に明かしてきたけれど、これだけは僕の好ましく思う君の無自覚な美点を損なわないように秘めておくことにする。

こんなことを言うと、だったら初めから言うな、と君なら言いそうだけど、ちょっとこれは僕なりのいたずら心というか、前の管理人は何か自分では知らない、自分の良さに気づいてくれていたんだな、と君に思っていてほしいから伝えたよ。

もしかしたらあの人は、自分のこういう点を良いものだと思ってくれていたのかもしれない、とそういう風に、ことあるごとに君が君を肯定できるといいと思う。そして僕が思う美点と同じものを君自身が君について気付くといいと思う。

そうやって僕のこともついでに思いだしてくれるとうれしい!

実はこれも前の管理人が僕に残した手紙の受け売りなんだけどね……。

初代といいつつ、これまで何人の管理人がここにいたのか知れないけれど、先代の管理人の(多分嘘だろうけど)言っていたことにのっとるならば、僕は二代目の管理人として、三代目の管理人に君を任命する。

どきどきファームは今日から君のものだ。もっというとずっと前から君のものだったどきどきファームは、とうとう本当の管理人を新しく迎え入れたのだと思う!

楽しい管理人生活を送ってほしい。

それでは幸運と健康を祈って。

さようなら、いつかまた!

 

 

二代目管理人・どきどきマスター・アラタ

 

 


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