えっちなことをしたら地位も名声も能力も何もかも失う聖女が、セーフ判定が出るえっちなことをしているお話

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そんなえっちじゃないかも


拗れた性癖を持つ聖女たちに特に何も起こらないお話

 聖女──それは一国に一人存在する偉大なる存在。そして壮大なる力を持つ女性である。

 

 例えば、ある聖女は祈るだけでその国の稔りを通常の数億倍にする。また、ある聖女は一騎当千ならぬ一騎当京の力を振る舞う。はたまた、ある聖女はこの世界の全ての出来事を把握できる目と全ての音を聞くことができる耳にその情報を処理する脳を持つとされる。

 その為、聖女の国に対する影響力というものは滅茶苦茶にとんでもなく、その国の王ですら聖女の意見を軽々しく否定はできない。だが、だからといって聖女はその力を超絶傍若無人に振る舞うことはない。

 圧倒的な力を持ち、そしてその力で人々を救う。それが聖女であり、そんな聖女は人々から愛され王に次ぐ地位すら持っているのだ。

 

 だがしかし、そんな聖女も力を失う可能性がたった一つ、たった一つだけ存在する。それは──()()()()()()()

 処女を失った聖女は当然のように力を失い、そして一般人へと成り下がる。そうなれば当然地位なんてものは奪われてしまうし、人々も自分を救ってくれない聖女など褒め称える必要はない。むしろ、途轍もない救いを存在しないものにした元聖女に対する恨みが生まれ、見かける度に石を投げたりするのかもしれない。

 だから、聖女は男性との交りを国から禁止されている。それは国が聖女という偉大なる力を失なわないためのものでもあるし、同時に聖女を守るためのものでもあるのだ。

 

────だが、もしも。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 これは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()────

 

 


 

 極東大和大陸(ニホンミタイナ)の西に位置する絶対安全国家(チアンヨイゼ)。そして、その国の中央に位置する教会から外出しようとする聖女が一人。

 

 一度も日に当たったことのないような白い肌。重量によって地面スレスレまで垂れ下がる金色の長い髪。さらにどこか遠くを見つめる黒い目、など様々は特徴があるが──最も特徴的なのはその服装。

 それは──()()姿()()()()()()。そんな「外なのにこの姿。もしや、この人は聖女などではなく単なる露出狂なのではないか」と、思わず疑問に思ってしまいそうなほど、特徴的で奇抜な格好。果たして聖女はどのような思考の末にこのような格好をしているのかと言えば──

 

「ああ……夜の風がとても心地好い……!!」

 

──ほとんど露出狂と同じ考えをしていた!!

 

 だからといって、「この聖女は露出狂である」という結論を出すのは少し早計であると言えるだろう。

 実はこの聖女は常にこの格好なのだ。教会で仕事をしている時でも、外出時でも、他の国の聖女と会議をしている最中でも、下着姿にマント一枚羽織った姿である。

 いくら露出狂と言えど、徘徊時以外は普通の格好をしている筈──故に、この聖女が露出狂でない。そんな結論に至るのは、太陽は東から登り西に沈むということと同じぐらい当然のことであろう。

 

 閑話休題。さて、そんなギリギリ露出狂ではないこの聖女の名前はウカイミコ。

 あらゆる未来を見通す先見ノ眼(ミライミエル)を持ち、その力で国民を良い未来へと導く、通称教導ノ聖女(マアツイテキナ)

 彼女がいるこの絶対安全国家(チアンヨイゼ)では、政治が失敗することもなく、事故なども未然に防がれる。更には、大規模な災害が発生する未来が見えてしまえば他の国と連携を取り、どれ程の自然災害であろうが大規模の魔物の襲撃であろうが()()()()()()()()()()()()()()絶対安全国家(チアンヨイゼ)の国民から愛され、一部では信仰すらされている程の聖女なのだ。

 

 そんなウカイミコは、変質者にも似た格好のまま夜の街を歩いて行く。家の明かりは殆ど消え、月の光のみが頼りの暗い道。けれど、ウカイミコの足取りはとても軽やかで、どうやら気分が高揚しているらしかった。

 一日の殆どを先見ノ眼(ミライミエル)を使いあらゆる未来を見通すことに使うウカイミコにとって自分自身のための時間は食事と睡眠以外には存在しない──ただ、一つの趣味を除いて。

 そしてその趣味こそが深夜徘徊。仕事の時間と被らぬ深夜、解放感溢れる姿で自分を信頼してくれる人々が住む街を闊歩する。ウカイミコは露出狂ではないので、要は単なる散歩という訳だ。如何にも健全な趣味である。

 

「では、今日はこちらの道を──まっ、不味い!」

 

 いつもは道を決めて一時間程度歩いてから帰宅するウカイミコだったが、今日は毛色が違った。まるで何かから逃れるように大通りから離れ、路地裏のゴミ箱の裏へと隠れる。いったい何があったのかと言えば──

 

「あー、飲み過ぎた……うぇ、吐きそう」

 

──酔っ払いだ。

 

 ここで、単なる散歩をしている最中、「酔っ払いが来たところでウカイミコに隠れる理由など存在しないのでは?」と思う方がいるかもしれない。しかし、それは大きな間違いだ。

 ウカイミコは聖女の一人。そして、「聖女とは一国に一人存在する偉大な存在」(冒頭より引用)。そんな存在が突然目の前に現れた一般市民はどうなってしまうのか?そう、()()()()。そんな悲しい事件を起こす訳にはいかない。だからこそ、ウカイミコは隠れたのだ。偉いぞ、ウカイミコ。

 

「さっさと帰えらねぇとなぁ……頭も痛いし、早く寝てぇ」

 

 幸い、酔っ払いはそのまま一直線に家へと帰るつもりらしい。それならば、酔っ払いがここから立ち去るのをただ待てば良いだけの話。

 酔っ払いが去るのを、息を荒くしながらゴミ箱の裏から見守るウカイミコ。しかし、気分が高揚し過ぎていて背を預けているゴミ箱に力を入れすぎてしまっていたらしい。音をたててゴミ箱が倒れてしまった。

 

「あー、誰かいるのか……?」

 

 当然、その音を聞き逃す酔っ払いではない。その目線は、音が出た路地裏へと向けられる。慌てて自身も倒れてゴミ箱の陰へと隠れるウカイミコだったが、ゆっくり近づいてくる酔っ払いに見つかるのは時間の問題だ。

 このままでは一人の尊い命が奪われてしまう。だが、未来を覗いて解決策を探る時間など到底ない。それでも、なんとかこの状況をなんとかしようと、思考を一気に巡らせウカイミコは一つの正解を導きだした。

 

「にゃ、にゃあぁ~」

「……なんだ、猫か」

 

 端から見れば苦し紛れの一声に見えるかもしれない。しかし、これは何事も「猫なら仕方ないか」と思ってしまう人間の心理を突いた、隙のない完璧な一言なのだ。

 そんな一言を追い詰められた状況であっても、人を救うためならとなんなく導き出すウカイミコ。能力があるから聖女なのではない。人柄もあってこその聖女だということがこれで分かるだろう。

 兎も角、これで一件落着。酔っ払いも去る──とはならない所が、現実の甘くない所である。

 

「まぁ、でもゴミ箱は立て直さねぇとな……」

「……!?」

 

 ここで絶対安全国家(チアンヨイゼ)の国民性が災いした。共用のゴミ箱が倒れているのならば、それを見なかったことになどできないのが絶対安全国家(チアンヨイゼ)国民というもの。

 普段ならば誇るべきその心意気が、今まさにウカイミコへと牙を向く。ゴミ箱を立て直しに来ているだけなのだから、猫のフリ作戦も通用はしない。では、いったいどうするべきなのか。ウカイミコの答えはシンプルだった。

 

「近づかないでください……!」

「……!?」

 

 そう、言葉での警告。いくら酔っ払いでも、会話によって意志疎通はできる。ならば、それを利用しない訳にはいかない。

 しかし、賢明な方はここで「先程まで猫だと思っていた存在が人だったと分かってしまうのは駄目なのではないか」と思うことだろう。ただ、この状況下ではその心配はない。

 

「猫が喋った……!?」

 

 そう、こんな深夜まで飲み明かしていた酔っ払いに正常な判断などできやしないのだ。

 そもそも冷静な思考ができたとしても、一度正しいと思った事柄は本来は間違っていたとしてもなかなか覆らないものだ。冷静な思考ができないとなればそれも顕著になる。

 つまり、既に猫だと思われている今、話しかけたとしても何も問題はない。考えつくされた作戦なのだ。

 

「このゴミ箱は私が倒したものです。貴方の手を煩わせる必要はありません。私が直しておきます」

「そうか……でも大変じゃないか?」

「何も大変なことなどありませんよ。お茶の子さいさいのグルグルパーというやつです。もう日は変わっています。お気をつけてお帰りください」

「……そうだな。おやすみ、猫ちゃん」

「はい、おやすみなさいませ」

 

 そんな別れの挨拶と共に去っていく酔っ払い。ウカイミコはどういう訳かゴミ箱を直すこともせず、その酔っぱらいを見つめ続けている。しかも、息は荒れて顔は赤く染め上がっていた。

 いったいウカイミコの身に何が──と思った次の瞬間には、その姿が嘘だったかのように、呼吸は落ち着き赤い顔の色も戻り、いつも通りの様子に戻っている。

 ゴミ箱を立て直し、ウカイミコは散歩をやめて教会へと歩き出す。

 

「流石に健康目的として下着マント深夜徘徊が流行るのは困りますね……聖女、信頼され過ぎなのでは?」

 

 そんな、良く分からない一言を残して。

 

 

 

 


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