人間を謳歌せよ   作:雲間

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人間を謳歌せよ

 

 SPW財団にある花京院のデスクに備え付けられている専用の電話が「リリリリ」と鳴った。人数は少ないが、同じ空間にいる者の視線が一斉に花京院に集まる。この電話番号を知る者は限られていて大概が緊急の用事だ。勤務時は常に暗緑色のスーツを着用している花京院はパソコンの画面と向き合うのをやめ、受話器を素早くとった。

 

「はい、花京院です」

『……花京院、助けてくれ』

「どっ、どうしたんだい承太郎……」

 

 まさか承太郎の口から助けてくれなんて言葉が出るとは1ミリたりとも思っていなかった花京院は、死ぬほど動揺して受話器を落としかけ、伸ばしたままにしている束ねた後ろ髪が揺れた。頼ってくることはあっても、直接的な言葉で言ってきたのは初めてだ。慌てて触脚で手と受話器が離れないように巻きつつ、どういうことなのか把握しようとし始めた。

 

「ええっと……、何があったんだい?」

「近頃クソじじいの遺産整理をしていてな……。その際に発覚したことなんだが、あのクソじじいに隠し子がいやがった」

「……かっ!?」

 

 叫んでは駄目だと慌てて口をつぐむ。努めて冷静であろうとするが、心臓はバクバクと音を立てていた。ジョースターさん嘘でしょうと思ったが、本当のことだからこそ承太郎がこんなにも参っているのだろう。真っ白になりそうな思考を引き戻しながら、承太郎が助けを求めてきた意味を聞いていく。

 

「えーーっと、それで、僕は何をすれば?」

「流石、話が早いぜ花京院。リヴィンについてだ。アイツにはまだこの事を知らせてねえ」

「あーー……」

 

 全てをそれで察した。『あの』リヴィンだ。この事を知ったら何をしでかすのか全然想像がつかない。以前不倫について話をしたにはしたが、それを踏まえてもどのような反応をするのか分からなかった。隠し子はリヴィンが一等大切にしているジョナサン・ジョースターとエリナ・ジョースターの曾孫にあたるのだ、その親族を溺愛している当人が放っておくはずがない。とにかくその事実を知って明後日の方向へ暴走する前に、捕まえておいて欲しいということだろう。

 

「分かった。それで、いつ本人に知らせるんだ? それに合わせて僕が側にいるようにする」

「もっと面倒なことにだな、その隠し子は杜王町に住んでる。その上高校一年になる年齢だ。先に出会っちまって訳のわからねーことになるのを避けたい。リヴィンに知らせるのは4月に俺がソイツに会ってからだな。それから俺とおまえでリヴィンを止める」

「えっ、ええ……」

 

 そんな偶然があっていいのだろうか。怒涛の情報に頭がくらくらしそうになった。まさかの故郷に、よりにもよってリヴィンのいる場所に、しかも高校生だなんて神様のいたずらがすぎる。これは承太郎の言う通り、罷り間違ってリヴィンが先に会ってしまう前に、急いで行かなければならないと頭の中でスケジュールを整頓し始めた。

 

「こっちはこっちでスージーおばあちゃんがカンカンでな、話が進まねえし他にも相続関係をやんなきゃなんねえ。すまねえが、頼む」

「いいんだよ承太郎。僕と君の仲だろ? 気にすることはないさ。それにリヴィンは……、うん……僕もほっとけないし」

 

 色々な意味で。言外の言葉を読み取ったらしい承太郎は、受話器の向こう側で頷いてからじゃあなと言って通話を切った。花京院は読み取れたが、電話で頷いても意味ないぞと思いつつ、巻いていた触脚をほどいて予定調整の為に関係者へと連絡をしようとした時だ。

 

 再び電話から呼び出しの音が鳴り始めた。直通の音なので、承太郎が言い忘れたことがあって再度かけてきたのかと思いながら受話器を取る。

 

「はい、花京院です」

『リヴィンねーちゃんがストーカーになっちまってるッ!!』

「……うん?」

 

 声量を考えない億泰の声が花京院の鼓膜を盛大に揺らして頭がキーンとなったものの、よく知る人物に結びつかない言葉が繋がっていて、花京院は耳を疑った。

 

 

 秋にリヴィンが人間になってから、リヴィンは日が昇っている中で大切な人たちと出かけるようになった。徐倫と公園で遊んだり、虹村兄弟とアスレチックにいったり、イギーと朝の散歩をしたり、仲間と野球観戦しにいったり、空条一家でテーマパークへ遊びに行ったりと、今まで堂々とできなかったことを笑顔でやっている。

 眠気だったり食欲だったり、人間である以上当然の生理的現象に悩みながらも、ここ最近の鬱屈とした雰囲気はなくなって非常に楽しくしているようだ。

 

 なお、いくら人間になったとはいえ外で肌を晒すのにまだ抵抗があるらしく、どんな天気でもどんな場所でもパーカーのフードを被って長ズボンを履いている。本当はサングラスもしたいらしいが、全力で阻止をしたのはいい思い出だ。女性陣がもっと似合う格好をさせたいと息巻いていたのは余談である。リヴィンは他人に服を選ぶセンスはあるのに、自分になると途端にトンチンカンな格好になるので、服装は女性陣に任せるのが正解だと密かに花京院は思った。顔の作りは良いだけにもったいない。

 

 そうしながらリヴィンはアヴドゥルやポルナレフと同様に、今まで通り弓と矢を探しつつ各地を回る……はずだった。ジョセフからのある言葉があるまでは。

 

「リヴィン、学校に行ってみんかのう」

「学校に……?」

 

 ジョセフの意図としては、他人に興味の無さすぎるリヴィンに集団生活というものを経験させてやりたいのだという。確かにリヴィンから聞く限り、ちゃんとした集団生活を送ったとは思えない。そこから他人への興味のなさが出ているのだとしたら納得がいく。そうでなかったとしても、出会った当初よりはだいぶマシになったとはいえ、情操も十分育っているとは言い難いし、今後を考えると通った方がいいだろう。

 リヴィンはジョセフからの言葉に少し悩んだものの、興味はあるからと了承をしてくれた。そこからは学校選びだ。

 リヴィンは成人期であるからと、体は人間の二十歳相当のものにしたと言っていたのだが、顔が甘めなので学生と言っても通りやすいはずだ。とはいえ小学校は無理であるし、中学も同様。となると高校か大学になるのだが、大学で集団生活というものを経験するには、場所によるがあまりない。そうしてリヴィンは高校へと通うこととなった。ちなみにだが戸籍や学歴などは、ジョースター家へ養子に入るにあたってジョセフとSPW財団の方でなんとかしたらしい。

 

 ではどこの学校に行くか。みんなで意見を出し合いつつ選定をしていたところ、リヴィンから高校の話を聞いた億泰がこう言ったという。

 

「それならリヴィンねーちゃん、俺と兄貴と一緒に通おうぜ!」

 

 その言葉に惹かれまくったリヴィンは、目を輝かせて「日本の高校に行く!」と主張をし始めたのだ。確かにリヴィンの事情を知る人が誰もいないよりかはいいかもしれないし、なにより本人が乗り気であることも踏まえて、リヴィンの日本行きが確定した。

 学年は1年からの開始で億泰と同じになる。学力的にはどの学年でも問題ないくらいだが、どうにも『作者/登場人物の気持ちを考える』読解力問題系が壊滅的だったのもあり、1年から3年までみっちり学生をすることになった。

 

 虹村父が杜王町の長期調査をSPW財団の指示によって命じられ、虹村家は4月に杜王町へと引っ越すことになっている。花京院の故郷でもある杜王町に、空き家を改築した一軒家に虹村家が住み、そこへリヴィンがホームステイのような形で居候することになった。入学式と初めの授業は間に合わないが、致し方ない。

 

 ……と、ここまでが承太郎から電話をもらうまでのあらすじである。

 

 4月の初旬。花京院は承太郎がくるまで杜王町のホテルに泊まる予定の為、スーツケースを引きながら歩いて行く。久しぶりの故郷に懐かしさと変化した部分に感慨を覚えながらも、教えられた住所へと歩いて行った。

 

「億泰ゥ! リヴィン『さん』だろうがッ!」

「すまねえ兄貴! リヴィンね……さん! 人のこと追っかけちゃあダメなんだぜェ!」

 

 虹村家となった家に赴くと、玄関先でこのようなやりとりが繰り広げられていた。引越しで色々な物を整理整頓していたからか、2人は動きやすいラフな服を着用している。

 確かに同級生ともなる人間に対して、今までの呼び方を続けるのはどう考えてもおかしい。形兆が怒るのも当然だなと思いながら、手を上げて軽く挨拶をする。

 

「や、久しぶり。生活は大丈夫そうかい?」

「アッ! 典明さんッ!!」

「花京院? どうしてここに」

 

 リヴィンは相変わらずパーカーを着用していた。これから毎日制服を着なくてはならないのに、大丈夫だろうかと心配になった。

 

「億泰君から聞いたよ。君、ストーカーしてるんだって?」

「違うよ花京院。私はただあの男の子が気になるだけなんだ。ジョースターの家系に見られる骨格をしているし、なにより目の形がジョセフに似ている。瞳はジョナサンとエリナの色を混ぜたような優しい青色をしていてね。ジョナサンの親戚がいるであろうイギリスならまだしも、日本にこんなにも似ている人がいるだなんて不思議だろう? だから私は彼のことを知ろうと思って……」

「リヴィン、それはストーカーであることに違いないよ」

「何故? 私は彼を害そうと思っていない」

「ストーカーはみんなそう言うんだ」

 

 まさかストーカーの実例を目の前で見るとは思わず、花京院は首を振りながら片手で頭を抱えた。そんな花京院を心配してか、リヴィンが背中をさすってくる。原因が自分であると理解していないのがよく分かった。

 

「気になる理由は理解したけど、駄目なものは駄目だよ。とにかくリヴィン、ストーカーはやめるんだ。……都合がつき次第に承太郎がこっちにくる。それまで待ってくれないか」

「どうしてこの話に承太郎が? ……ああ、私の手続きの関係か何かで来るのかい?」

「……まあ、そんなところだよ」

 

 リヴィンはまさかジョセフが浮気しているとは1ミリたりとも思っていないのだろう。汚れのない瞳がこちらを見つめている。真実を知って純粋なリヴィンがどうなってしまうのか、かなり不安で仕方がない。

 億泰はリヴィンのストーカーが終わりそうで安堵しているが、形兆は何かを察したような顔でこちらを見つめてきていた。事情を分かってくれていそうなのが1人増えたのが唯一の救いか。そんな風に思いながら、起こりうるであろう事態に胃を痛めた。

 

 ★★★

 

 リヴィンは承太郎がついていきたいと駄々をこねたらしい徐倫を連れて、本日杜王町にくると知らせを聞いて心を躍らせた。学生をしている間は連休が3日以上重なる日でないと会うのは厳しいと聞いていたので、思っていた以上の早い再会に喜びいっぱいだ。明日からほぼ毎日、肌を隠せない制服を着用しなければならない憂鬱が吹き飛んでいった。

 

 お昼に虹村家へ来るというので、虹村兄弟と花京院と承太郎と徐倫と自分の分のお昼ご飯を作っていく。虹村父は基本的に一日中外出しており家にはいない。リヴィンは『適量』もしくは『少々』という記述に悩みはしたが、レシピ通りにすればなんでも作れる為、基本料理を担当している。味は『普通に美味しい』と食べた者からよく言われていた。個人の嗜好は別として、まずいと言われたこともなく、特別美味しいと言われたこともないので、レシピ通りすぎて普通にしかならないのではと思っている。リヴィンは味に頓着しないので、その辺りの感覚が全くわからなかった。

 ひき肉と卵の甘酢あんかけにチーズドリア、海鮮パエリア、サンドイッチにチキンナゲットにシーザーサラダと、家にある食材で作れるものをとにかく作っていく。徐倫用に様々な果物で作ったカラフルゼリーも準備済みだ。夜までに買い物へ行かなくてはと思いながら、様々な料理を並行して完成させていった。

 

「リヴィンさん、俺が並べる」

「ああ、ありがとう形兆」

 

 荷物の整理が終わったのか、キッチンへと来た形兆がリヴィンの作った料理をテーブルへと並べていく。普段の億泰ならばいい匂いがすればすっ飛んでくるのだが、まだまだ荷物整理が終わっていないようだ。ちなみにリヴィンはそもそも荷物が少ないのでとうに終わっている。

 

 ピンポーン、とチャイムの音が家に鳴り響いた。おそらく承太郎達だろう。そのまま形兆に配膳を任せて、リヴィンが玄関へ迎えに行ってサンダルを軽く履き玄関を開けた。

 

「リヴィン! こんにちは!」

「My sweet honey! 22日振りだね、元気にしていたかい?」

「もちろんよ!」

 

 えっへんと胸を張ってリヴィンを見上げてくる蝶モチーフを身につけた徐倫を抱き上げ、その温もりを確かめるように優しくギュッとする。愛おしい存在に癒されながらも、承太郎と花京院に目線を向けると何故か2人とも難しそうな顔をしていた。しかも承太郎の帽子が最初からそういうデザインだったかのように歪みまくっている。

 

「どうしたんだい?」

「……花京院」

「そうだね。……徐倫ちゃん。リヴィンはきっと君に知った時の顔を見られたくないだろうから、形兆くんの元で待っていてもらってもいいかな?」

「……Okay. リヴィン、あなたなら大丈夫よ!」

「うん?」

 

 謎の会話をされたかと思うと、徐倫がリヴィンの頬にキスを送ってからリヴィンから降り、靴を脱ぎ散らかしながら中へと入って行った。承太郎が徐倫のマナーの悪さにやれやれだぜとなっている横で、花京院が「外でいいかな」と言ってきたので玄関から完全に出る。

 

「何かあったのかい? よく話が理解できていないんだけれど」

「……リヴィン、てめーどこにもいくなよ?」

「いくなとは」

 

 何故かスタープラチナとハイエロファントが彼らの背後に出現している。ますます深まる謎に困惑をして、思わず頬に右手を当てた。

 

「クソじじいなんだがな……」

「ジョセフに何かあったのかい!?」

「違ェ、やらかしてやがったんだ。クソじじいが65歳の時に日本で浮気してできた息子がいる」

 

 パチリ、と目を一度瞬かせた。

 

 65歳、日本、浮気、息子。ジョースター家に似ている骨格、目の形、色。そして、おおよその年齢。

 

 ──全てが、繋がった。

 

 予備動作も無しに、人間が限界まで出せる能力を全て使ってリヴィンは駆け出す。

 

『スタープラチナ・ザ・ワールド!』

 

 だがリヴィンはいつの間にかスタープラチナに両腕を取り押さえられ、次の瞬間にはハイエロファントでほぼほぼ簀巻き状態にされていた。

 

「ありがとう承太郎、君がいなかったら取り逃がしてた」

「いや、スタープラチナだけじゃあずっと抑えられていられねえ。助かったぜ」

 

 リヴィンは肉体の使い方を理解している。常に火事場の馬鹿力が使えるようなものだ。安易にスタンドが使えなくなった今、ほぼ武器は肉体である。軽度の拘束だったら抜け出すことはできただろうが、いかんせん厳重すぎて不可能だ。溜まっていく怒りの感情をどうにかしようと、口で吐き出すしかなくなった。

 

「……Damn it!Qué burro eres! Merda! Pauvre con! 笨蛋! गंदा आदमी है !」

「おい花京院、コイツ何言ってんだ」

「全部は分からないけど、世界各国の罵倒を言ってるよ……」

 

 リヴィンは純愛派である。大元の要因はジョナサンとエリナであるが、小説や映像作品などを見てその傾向が大きくなっていった。

 それはそれとして、リヴィンが一番許せなかったことはスージーを裏切ったことだ。ジョセフを一番愛しているのはスージーであり、不動産業で忙しい時はどんな人よりもスージーが一番支えていたのを見ていた。ここまでこれたのもスージーとホリィのおかげだと言っていた。

 ジョセフもその愛に応えていたはずなのに、なのに! 誓いを破り浮気をしていたとは! よりにもよって、そんなことは起こりえないと思っていた大切な人がやっていたとは!

 怒り心頭で呪詛のように世界各国の罵倒を吐き続けるリヴィンに、承太郎が眉間の皺を深くさせながらもなだめてくる。

 

「もうスージーおばあちゃんがこってり叱った。クソじじいも歳が歳だ、てめーの突撃で体を更に悪くするかもしれん。怒るのは分かるが抑えろ」

 

 その言葉を聞いて流石に頭が冷えていく。確かにジョセフは許されないことをしていたが、被害者であるスージーが散々怒ったこと、体を悪くさせるのは本意ではないが故に怒りを一旦抑えた。リヴィンが静まったからか、スタンドの拘束が解けていく。

 

「今度会う時にでも『じっくり』と叱ってやれ。その方が効くだろ」

「はぁ……。うん、そうするよ」

 

 手で顔を覆いながらそう返事をした。すぐにアメリカへと行かないとなると、次に問題になってくるのが『浮気してできた息子』のことだ。年齢からいってリヴィンと同じ学年の可能性がある。そのことを聞くと、承太郎から無慈悲な言葉が出てきた。

 

「おまえと同じ一年生だとよ。東方仗助って名前だ。クラスが同じになるかどうかは知らん」

 

 頭を抱えた。リヴィンはちゃんと、その仗助という子が何も悪くはないことは分かっている。しかしジョースター家の一員だ。とはいえ……、と脳内で様々な物事が入り乱れていく。思考がまとまらなくなったリヴィンは、頭に置いた手をこねるように動かしながら助けを求める。

 

「わ、私は、どっ、どう接すれば?」

「対面することがあったら笑顔で接して、彼が困っている時には助けてあげればいい。そうすれば君が困っている時にきっと助けてくれる。当然意見などが一致しない場合もあるだろうけど、そういう時は話し合えばいいさ。他のクラスメイトにも同じように応対すれば、基本的には問題ないはずだよ」

「がっ、がん……ばる……」

「無理すんなよ。ダメな時はちゃんと言え」

「……うん」

 

 彼らからの言葉を胸に刻みながら頷いた。二人はリヴィンの頭を軽く撫でた後、リヴィンを促して3人で家へと入っていくのであった。

 

 

 ★★

 

 

 昨日は大変だった。

 

 『甥』を名乗る自分より背の高い男の人──空条承太郎が、又姪の徐倫を連れて驚くべき真実を打ち明けてきたのだ。仗助はアメリカの不動産王であるジョセフ・ジョースターの息子で、4分の1財産を受け継ぐことになる、と。自分の存在で家庭内に不和が起こったと聞いて肝を冷やしたし、徐倫には見えないとはいえ父親にスタンドで殴りかかってしまった。その上、血は繋がっていないが、義理のきょうだいにあたる人が学校に入ってくるという。

 昨日だけで大きく変わった状況に悩んで寝不足になった仗助は、あくびをしながら退屈な朝のホームルームを聞いていた。だらだらとした話をしていた先生は、「さて」と言って話を区切る。

 

「転校生……というわけではないんだが、お前達からしたら転校生だな。アメリカからきた子がこのクラスに入ることになった。日本語は完璧なんだが、日本の習慣や風習に慣れていないそうだから、しっかり面倒見てやれよー。んじゃ、入ってくれ」

 

 教師の掛け声と共にしまっていた扉から1人の外国人が入ってくる。後ろで括られてはいるが腰まである為に藍色の髪の毛が揺れおり、茜色した瞳はおっとりと目の前を見つめていた。そうして教壇の上に登ると、芯のある美しい立ち姿で皆の心を奪っていく。教室の端まで届くしっかりとした声で、かの人は自己紹介を始めた。

 

「家庭の都合というもので、少し遅れて入学することになりました。アメリカから来ました、リヴィン・ジョースターと申します。よろしくお願いします」

 

 そのリヴィンという人は新品であることが分かるパリッとした制服を着用し、ほんのりとした笑みを浮かべて手本になる綺麗なお辞儀を披露した後、仗助に向かって笑顔をむけたのだった。

 





これで完結となります。
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