仮面ライダーヴァーニィ   作:黒井福

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どうも、黒井です。

今回から数話に渡ってゲストキャラが登場します。


第44夜:疾風の来訪

 S.B.C.T.が現場に到着すると、そこは既に混乱状態となっていた。現場は街の中心部に近い歓楽街なのだが、そこでは既に無数のゾンビがそこかしこで死体を貪り、新たな犠牲者を求めて徘徊し、悲鳴を上げる生存者に襲い掛かっている。

 まだトレーラー内部に居る隊員達は、ヘルメットに内蔵されたHMDの片隅に映し出されるその光景に一様に顔を顰めた。

 

「クソ、こんなのB級映画だけで十分なんだよッ!」

「おい、まだ降りれないのかッ!」

 

 今すぐトレーラーから降りて憐れなゾンビ達を永遠の眠りにつかせ、生き残った人々を救いに行きたい。δチームの隊員達は大なり小なり同じ事を考え、今にも飛び出さんと意気込んでいた。

 その彼らの要望に応える様に、敦はヘッドセットのマイクに迅速な行動開始を命じた。

 

「よし、δチームは直ちに行動開始ッ! ゾンビの殲滅、並びに生存者の救出を行えッ!」

 

 敦が命じると各隊員達からは威勢のいい返事が返って来た。鼓膜を打つ返答に顔を顰める事無く敦がモニターを見つめていると、それぞれの隊員達の視界を映したカメラの映像が慌ただしく動きトレーラーから飛び出し展開すると手にした武器を構え発砲し始める。

 

「撃てぇッ!」

 

 一斉に始まる銃撃に、街中を闊歩しているゾンビが次々と倒れた。ゾンビは死体が動いているだけでノスフェクトの様な理不尽な頑丈さや再生能力はない。脳を確実に撃たなければ撃たれても動きを止めないと言う厄介な所はあるが、弱点を潰せば確実に倒せると言う事はそれだけで彼らの負担を軽くしていた。

 

 とは言え、ゾンビの厄介な所はその数が多いと言う事であり、後から後から出てくるゾンビを前に、彼らは前に進めないでいた。

 

「チッ、相変わらず数だけは多いぜ……!」

「我々だけではジリ貧になりますッ! 増援はッ!」

 

 δ2が早くもリリィに救援を求めた。このままではゾンビ相手に弾切れの危険もあるし、何より生存者の救出が満足に行えない。逃げてきた生存者の何人かはこの場から逃す事が出来ているが、ゾンビの群れの中には今も尚車の中や何かの上に乗ってゾンビの攻撃から何とか逃れるも孤立して今にも襲われそうになっている人々が見える。彼らはやって来たδチームに頻りに助けを求めているが、そこに行くまでに無数のゾンビが居て前に進めずにいた。

 

 とは言え現状、増援は難しいと言わざるを得ない。γチームは多数の欠員を出し支部で待機。生き残りの隊員を再編成して出動させるには少し時間が掛かる。εチームは全員揃っているが、別の要件で出動している為直ぐには動けない。

 

 二進も三進もいかないこの状況、しかしδチームには希望があった。

 

「俺が行く。連中のど真ん中で暴れて数を減らすから、その間に生存者を救出してくれッ!」

 

 レックスがワゴン車の運転席から飛び出すと、腰に巻いたドライバーにキープレートを装填して変身する。

 

〈Set〉

「変身ッ!」

〈In focus〉

 

 グラスに変身したレックスは、全身のスラスターを噴かせて上空に飛び上がるとそこから今度はゾンビの群れの中に飛び込み、周囲を取り囲むゾンビに手当たり次第に両腕のバックラーから伸ばした短剣を振るい片っ端から首を切り飛ばしていく。全身のスラスターを巧みに扱い、勢いをつけての斬撃はまるで竜巻の様であった。次々と首を切り落とされ倒れていくゾンビ、その際に飛び散る血液がグラスの装甲を汚していくが、彼は微塵も気にすることなくそのまま動き続け周囲のゾンビを軒並み減らすと僅かに出来た猶予の中でメインの武器であるバスターショットを取り出し銃撃モードで離れた所に居るゾンビを撃ち抜いていった。

 

 グラスの活躍によりゾンビからの圧力が大幅に減った。この隙を見逃さずδチームは進撃速度を上げ、ゾンビの群れを逆に押し返すと生存者の救出に取り掛かった。

 

「こっちですッ! 慌てず、落ち着いてッ!」

「怪我をしてる方はこちらにッ!」

「そこで待ってて、今行きますからッ!」

 

 δチームの迅速な動きで取り残されていた生存者は次々と助け出されていく。その光景に敦やリリィの後ろから様子を伺っていた京也も安堵の溜め息を吐いた。

 

「良かった……生き残った人達は助けられそう。でも……」

「うん……ゾンビの、原因……まだ見えない」

 

 ゾンビは自然発生しない。必ずそれを生み出したノスフェクトがこの戦場の何処かに居る筈だ。そこは京也とアルフだけでなく、オペレーターのリリィも理解している為、隊員達に指示を出しながらモニターに異変が無いかをつぶさに観察していた。その甲斐あってか、彼女は前線に出ているδチームに迫る危機にいち早く気付き的確な指示を出せた。

 

「δ6、そこから離れてッ! δ5ッ!」

『了解ッ!』

 

 気付けば陣形から突出しそうになっていたδ6を引き留めつつ、グラスに彼の援護を要請するリリィ。グラスも彼女の指示に何が起きようとしているかに気付くと、彼は地面の上を滑る様に移動して素早くδ6の傍を通り過ぎ、彼に襲い掛かろうとしていたクロコダイルノスフェクトの大きく開かれた口を斬撃モードのバスターショットで切り払った。

 

「ガァァァァッ!」

「させるかッ!」

「グッ!?」

 

 横から殴りつける様に振るわれた剣を喰らい、クロコダイルノスフェクトは口を切り裂かれながら吹き飛ばされる。クロコダイルノスフェクトの体はそのままその先にあった店舗に突っ込み、ショーウィンドウを突き破って内部へと飛び込んだ。店舗の中は忽ち砂埃で視界が悪くなり、中に飛び込んだクロコダイルノスフェクトの姿が見えなくなった。

 

 ここでグラスは、即座に内部に銃撃で追い打ちをかける様な真似はしない。見えない相手に下手に追撃しようとして、何も居ない所を撃っては意味が無いからだ。故に彼はまずバイザーを下ろし、視界モードを赤外線に変更し熱で相手の動きを伺おうとした。

 

 それが結果的に彼を救った。視界モードを赤外線に変えた瞬間、彼は目の前に明らかな異形が手を振り上げているのに気付いたのだ。

 

「うぉっ!?」

 

 突然目の前に現れたその存在に驚きつつ、明らかに攻撃しようとしている相手から離れようと咄嗟に横に転がる事で回避。熱でないと姿が見えない相手の攻撃を辛くも逃れると、彼はそのままバスターショットの銃口を向け引き金を引いた。

 

「こなくそっ!」

「おっと!」

 

 咄嗟の反撃だったので狙いが甘く、射撃は回避されその後ろの壁に穴を開けるだけに留まった。だがそんな事は重要ではない。今の瞬間、この目に見えない敵は明らかに喋ったのだ。つまりコイツは下級のノスフェクトではなく、上級のノスフェクトかそれに匹敵する知能のある厄介な敵と言う事になる。

 

「何だお前はッ!」

 

 グラスが銃口を向けながら問えば、姿の見えなかった敵は姿を現した。蜘蛛と蟷螂を組み合わせたような顔をした、背中から4本の足を生やしたその異様な姿を通常の視界に戻して確認した彼は咄嗟にファッジを思い浮かべる。

 

「キメラファッジ? 蜘蛛と蟷螂の?」

「違うんだなぁ、これが。俺も立派なノスフェクトさ。た・だ・し、次世代型の最新型って違いはあるけどな」

「じ、次世代型ッ!?」

 

 つまり今でもノスフェクトの研究と開発が進んでいると言う事。グラスが危機感に歯噛みしていると、店舗の中から瓦礫を吹き飛ばしながらクロコダイルノスフェクトが飛び出しマンティススパイダーノスフェクトの肩を掴んで自分の方を向かせた。

 

「お前、ガルマンッ! 何でここに来たんだッ!」

「そりゃお前、ここに来ればヴァーニィに会えるかもって思ったからだよ。俺はまだヴァーニィを話に聞いてるだけだからな。ってか、少しは感謝してくれても良いんじゃないか?」

「余計なお世話だッ!」

 

 突然目の前で口論を始めるクロコダイルノスフェクトとマンティススパイダーノスフェクトに、グラスは今の内にと体勢を整えた。敵はどちらも上級ノスフェクトで、しかも片方は最新型と自称するだけの厄介な能力を持っている。高精度の擬態能力に両腕の鎌による接近戦、更には名前から蜘蛛の糸を用いた戦いも予想される。つい最近もスパイダーファッジと戦った経験のある彼は、クモ特有の極細で強靭な糸がどれほど厄介かを理解していた。

 

「くそ、面倒な……」

「まぁ良いじゃねえか。それより、ヴァーニィはまだ来ないのか?」

 

 グラスが呼吸を整えていると、クロコダイルノスフェクトとの会話に飽きたマンティススパイダーノスフェクトが周囲を見渡した。余程ヴァーニィに会いたいらしい。その姿にグラスは俄然この状況で京也を動かす訳にはいかないと、通信機に小声でリリィに短く告げる。

 

「リリィ、分かってるな?」

『勿論』

 

 今京也を変身させればこの得体の知れないノスフェクトの餌食となる。グラスは絶対に自分達だけでこの2体のノスフェクトを始末してみせると心に誓い、リリィも2人が動く必要が無いようにと気合を入れて支援しようと意気込んだ。

 

 だが天は彼らの覚悟を踏み躙り、状況を更に混迷なものとさせた。

 

「撃てぇッ!」

「ッ!?」

 

 出し抜けに頭上から声が響くと同時に銃弾が雨霰と降り注いだ。S.B.C.T.もノスフェクトも関係なく放たれた奇襲に近い銃撃は、残りのゾンビを始末するが同時にδチームにも被害を及ぼした。

 

「うぉっ!? わぁぁぁぁっ!?」

「δ7ッ!? くそ、何だいきなりッ!?」

「δ0、何が起きてるッ!」

 

 こんな攻撃、自分達は勿論増援に来た別の部隊でもあり得ない。咄嗟に何が起きたのかと問い掛けてしまったが、彼らはこんな事をする連中に見当が付いていた。

 

『皆、上よッ! 教会の連中が居るッ!』

 

 見上げれば、何時からそこに居たのかアッシュに率いられたイジター達が手に硝煙を上げる銃形態のイジターレイピアを持っている。完全に不意を突かれた事にグラスが歯噛みしている前で、アッシュ達は次々と地上に飛び降りそのまま混乱から立ち直っていないδチームとノスフェクト達に襲い掛かった。

 

「コイツ等、この面倒な状況でッ!」

「応戦だッ! 応戦しろッ!」

「δ0、こっちの増援はッ!」

『まだ時間が掛かるわッ!』

 

 状況は忽ち乱戦状態となった。入り乱れるのは主にライトスコープとイジターであり、奇襲された形のδチームは何とか陣形を整えて徒党を組んで対応する。しかし先に奇襲を許した事はやはり大きく、勢いを削がれたδチームの隊員達は自分達と違い素早い動きで翻弄してくるイジターを相手に苦戦を強いられていた。肝心要のグラスはと言うと、クロコダイルノスフェクトにマンティススパイダーノスフェクト、そしてアッシュを相手に完全に釘付けにされている。幸いなのはグラス1人にノスフェクトとアッシュが集中攻撃を仕掛ける様な事になっていない事だろうか。

 

「アハハハハッ! さぁ、神に許されぬ不届き者共ッ! その命でもって神に贖いなさいッ!!」

「うわっと!?」

「おいおい、見境なしかよ」

 

 アッシュから見れば自分達以外は全て敵と言う考えなのだろう。δチームもノスフェクトも関係なく目についた方を優先的に攻撃していた。場を引っ掻き回されるに等しい状況だが、それでもノスフェクト達も攻撃に晒されているのは幸いだった。

 

 とは言え、他のδチームの隊員達が苦戦を強いられている状況には変わりなく、先程の奇襲で負傷したδ7の事もあり、グラス以外の隊員達は追い詰められつつあった。

 

『δ2、後退を優先に考えろッ! δ8、δ9は敵の包囲突破の用意、δ10はその援護ッ!』

『δ3と4、6はδ7の援護をしてッ! δ5、そいつらを引き離せる?』

「そうしたいのは山々なんだけどなぁ……クソッ! この女、しつこすぎるッ!」

 

 アッシュはノスフェクトもグラスも逃がすつもりは無いのか、彼が後退の仕草を見せると即座に攻撃を集中させてきた。動きの読めない鞭による攻撃を、彼はバックラーで防ぎながら何とか仲間達と合流する隙を伺おうとした。

 しかし彼女以上に厭らしいのがマンティススパイダーノスフェクトだった。彼はアッシュが自分達とグラスを区別していないと見るや、アッシュの攻撃がグラスに向いた瞬間それを援護するようにグラスの行動を阻害しに来たのだ。

 

「逃げんじゃねえよッ!」

「お前ッ!? チィッ!」

 

 両腕の鎌で斬りかかって来たのをグラスがバスターショットで防ぐも、マンティススパイダーノスフェクトの攻撃は止まらない。素早い斬撃を何度も繰り返し、しかもその動きはグラスの反応速度を超えていた。次第にグラスの装甲には傷がつき始め、斬りつけられる度にあちこちから火花を上げ始める。

 

「ハハッ! どうしたどうした? 動きが鈍くなってきてるぜッ!」

「お前が、速過ぎんだよッ!? んの、野郎ッ!」

 

 アッシュにより動きが乱されたグラスに襲い掛かり彼を追い詰めるマンティススパイダーノスフェクトであったが、一方でクロコダイルノスフェクトはアッシュの方に狙いを定めていた。

 

「ガァァァッ!」

「ッ! こっちにも化け物がッ!」

「あぁっ? おい、先にコイツを仕留めようぜッ!」

「やるなら勝手にやってよ。僕は知らないからね」

 

 クロコダイルノスフェクトとマンティススパイダーノスフェクトは決して仲間と言う訳ではなかった。そもそも最初の出会いからして印象は最悪だったし、何よりもマンティススパイダーノスフェクトがヴラドを見下しカミラに手を出そうとした事を彼は許していなかった。こんな相手と共闘するなど真っ平御免なのだ。

 それに何より、修道騎士団は明確にヴラドの命を狙ってくる危険な連中である。ノスフェクトを敵視しているのはS.B.C.T.も同じではあるが、ノスフェクト討伐に対する執念は修道騎士団の方が圧倒的に上。クロコダイルノスフェクトからすれば、グラスの相手をマンティススパイダーノスフェクトに押し付け自分はアッシュの相手に集中すると言う状況であった。

 

 混迷する戦場をモニターで見て、京也は居てもたってもいられず背後のドアを開けてアルフと共に外に出た。その背中にリリィと敦の声が掛けられる。

 

「あっ!? ちょっと待ってッ!」

「ダメだッ! 君はここに居ろッ! 今行くのは危険だッ!」

 

 特に危険なのはアッシュだ。今はノスフェクトとグラスを見境なく攻撃しているが、ヴァーニィの姿を見れば優先的に狙ってくるかもしれない。今の京也は精神的に安定しているとは言い難い為、そんな状態の彼がアッシュの様な輩と相対すればどうなるかなど考えたくもない。

 

 身を案じる敦とリリィの声に京也の足も一瞬止まるが、しかし2人の背後で苦戦しているδチームの姿をモニター越しに見てやはり止まる事は出来ず、申し訳なく思いながらも彼はアルフと共に戦場へと飛び込んでいった。

 

「ごめんなさい……アルフ、行くよッ!」

「うん」

「あぁっ!? 待ってッ!?」

 

 リリィの悲鳴に近い声を聞きながら京也はアルフと共に駆け出し、腰にヴァンドライバーを装着すると袖を引いて腕をアルフに差し出し吸血させる。

 

「アルフッ!」

「ん……カプッ」

「うぁっ! う……!!」

 

 吸血される際の快楽に足が止まりそうになるのを我慢し、必死に足を動かし続ける京也。走りながらの吸血なので少し時間が掛かったが、アルフはクロスブラッドを生成し彼に手渡した。

 

「んぐ……かはっ! ふぅ……京也」

「ありがとう……よし、変身ッ!」

〈ダイシリアス! キョウヤ!〉

 

 キョウヤはヴァーニィに変身すると、先ずはδ2以下の隊員達を追い詰めているイジターに狙いを定め攻撃を仕掛けた。同時にアルフも、ノスフェクト態に変異すると彼と共にイジターへと攻撃を仕掛け蹴散らしていった。

 

「おぉぉぉっ!」

「はぁぁっ!」

 

「な、何ッ!? ぐぁっ!?」

「え? がはぁぁっ!?」

 

 稀血が無い為、今のヴァーニィは通常形態。それでもそれなりに長く戦って経験も積んだ彼であれば、イジター程度であれば蹴散らせるだけの力があった。加えて今はアルフも共に居る。上級ノスフェクトとしての力を取り戻しつつある彼女の協力もあって、δチームを包囲しているイジターの集団に穴を開ける事が出来た。

 

「き、君らは……!」

「今の内です、早く後退をッ!」

「大丈夫?」

「あ、あぁ……すまねぇ」

 

 ヴァーニィとアルフ、2人の援護のお陰でδチームの後退が出来るようになった。δ7を始め、修道騎士団の攻撃で負傷した隊員を下がらせる為部隊が下がっていく様子に、グラスは安堵に胸を撫で下ろしながら目の前のマンティススパイダーノスフェクトと相対する。

 

 そのマンティススパイダーノスフェクトは、参戦したヴァーニィとアルフの姿に凶暴な笑みを浮かべた。

 

「見つけた……!」

「あ、おいッ!」

 

 ヴァーニィ達が現れたのを見たマンティススパイダーノスフェクトは、グラスの相手などそっちのけでそちらへと一気に突撃した。自分を無視してヴァーニィ達の方へと向かうマンティススパイダーノスフェクトを、グラスは咄嗟に引き留めようと銃口を向けた。しかしそこにアッシュにより鞭で簀巻きにされたクロコダイルノスフェクトが鎖付き鉄球の様に振り回されて叩き付けられる。

 

「フンッ!」

「うわぁぁぁぁっ!?」

「ぐぉっ!?」

 

 完全に意識の外からの攻撃にヴァーニィは狙いを外し、マンティススパイダーノスフェクトがヴァーニィ達へと襲い掛かるのを許してしまった。グラスは自分の上に倒れ込む形となった、クロコダイルノスフェクトを押し退けて立ち上がりながら文句と口にする。

 

「テメェ、邪魔すんなッ!」

「五月蠅いなッ! お前に言われる筋合いないよッ!」

 

 そのままクロコダイルノスフェクトはグラスに襲い掛かり、大きく開いた口で食らい付こうとしたのを彼は横に転がる事で回避。そこを狙って振るわれた尾の一撃は、殆ど体を寝そべらせた状態でスラスターで体を僅かに浮かせて地面の上を滑るように動く事でやり過ごした。

 

 クロコダイルノスフェクトの攻撃から逃れ反撃しようとバスターショットを構えるグラスだったが、そこに今度はアッシュが襲い掛かり鞭を振るってきたので彼はそれを手にした武器で咄嗟に防いだ。

 

「クソッ! お前ら、何なんだよッ!」

「神に代わって、不敬な者共を始末するだけですッ!」

「狂信者がッ!」

 

 グラスがアッシュとクロコダイルノスフェクトとの三つ巴の戦いから抜け出せずにいる中、マンティススパイダーノスフェクトはイジターの相手をしていたヴァーニィに背後から襲い掛かった。

 

「ハハハァッ!」

「あっ!? がぁぁっ!?」

「京也ッ!?」

 

 擬態能力で姿を消しながらの接近に気付かなかったヴァーニィは、見事に背後を取られて無防備な背中を切りつけられる。アルフが奇襲に気付き悲鳴のような声を上げる中、腕の鎌でヴァーニィに斬りつけたマンティススパイダーノスフェクトはそのままの勢いで回し蹴りを放ち彼を近くに停車していた車に向け蹴り飛ばし、ダメ押しに鎌に纏わせたエネルギーの斬撃を飛ばしてヴァーニィごと車を爆破させる。

 

「おらっ!」

「ごふっ!?」

「コイツでぇッ!」

 

 両腕の鎌から放たれた飛ぶ斬撃で車は完全に粉砕され、ガソリンに引火したのか大きな爆発が起こりヴァーニィの姿が見えなくなる。アルフが炎の中に飛び込んでヴァーニィを助け出そうとするが、マンティススパイダーノスフェクトはそれを許さず彼女の頭を掴むと近くの塀に叩き付けそのまま塀を破壊しながら彼女の頭を横にスライドさせその場から連れ去った。

 

「あぐっ!?」

「俺が用事があるのは、どっちかって言うとお前の方だッ! 付き合ってもらうぜッ!」

「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 塀を破壊しながらアルフが連れて行かれる。ヴァーニィが炎から出てきたのはその直後で、彼は離れていくアルフの叫び声に覚束ない足取りで後を追いかけていった。

 

「ア、アルフ……ま、待て……!?」

 

 ヴァーニィの追跡も空しく、アルフは戦場となっている場所から離れた場所に連れて行かれると、そこで投げ捨てる様に地面に叩き付けられた。

 

「あ゛ッ!? うぐ、うぅぅ……」

 

 乱暴に地面に叩き付けられ、痛みで視界が明滅する中アルフは震える手足で体を支えて立ち上がる。マンティススパイダーノスフェクトは彼女が立ち上がるのを待って、彼女が構えを取ろうとしたその瞬間に攻撃を再開。接近して腹に膝蹴りを叩き込んで彼女の体をくの字に曲がらせ、口元から反吐を吐きながらも腕に血の様なエネルギーを纏って放たれた反撃を体を逸らして回避するとお返しに彼女の顔面に拳を叩き付け怯ませると頭を掴んで地面に押し付ける様に叩き付けた。

 

「こ、のぉっ!」

「鈍いんだよッ!」

「あがっ!?」

「おらっ!」

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ!?」

 

 立て続けに仮面に強烈な一撃を喰らい、アルフの頭を覆う仮面に罅が入る。マンティススパイダーノスフェクトは彼女の頭を掴んで持ち上げると、そのまま何発も彼女の頭を殴りつけて仮面を粉砕し彼女の素顔を露にさせた。

 

「あぐっ!? がぁぁっ!? がはぁっ!?」

 

 額から血を流すアルフの姿が露わになると、マンティススパイダーノスフェクトは舐める様にその顔を眺め苦痛に歪んだ顔に愉しむ様に肩を震わせると、頭を掴んでいる手を離し両腕の鎌で体を守っている鎧部分を切り裂き引き剥がしていった。

 

「あぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 イジターの相手程度なら問題ない今のアルフだったが、上級ノスフェクトレベルの敵を相手にするにはまだ力不足。見る見るうちにアルフの身を護る鎧は引き剥がされていき、傷だらけのボディースーツを身に纏うだけとなってしまう。邪魔な鎧を全て剥がすと、マンティススパイダーノスフェクトは蜘蛛の糸で彼女をXに磔にするように壁に固定すると残るボディースーツの首の所を掴んで一気に下に引っ張り引き千切って彼女を半裸にさせた。

 

「あぁっ!?」

「へへへっ、お前もなかなかいい体だなぁ?」

 

 マンティススパイダーノスフェクトは大事な所を僅かにボディースーツで守っているだけのアルフの姿に下卑た笑いを浮かべながらガルマンとしての姿に戻ると、存在を主張する乳房を無遠慮に揉みながら首筋に舌を這わせる。

 

「う、あぁ……!? い、いやぁ……!?」

 

 京也以外の男にこんな風に触られたくないと抵抗しようとするアルフだったが、先程痛めつけられた事で体力を消耗した今の彼女ではこの糸を引き千切る事が出来ない。それ以前にこの糸は万全の状態のカミラとギュスターが揃って身動きを封じられるほどの強度を持つので、仮に彼女が体力を温存していたとしても身動きする事は出来なかっただろう。

 

 胸を弄ばれ舌が首筋を這いまわる不快感に悶えるアルフの姿に、ガルマンは心底楽しんでいるような笑みを浮かべた。

 

「いいねぇ、その顔。まだ人間だった頃を思い出すぜ」

 

 このガルマンと言う男は元々は死刑囚であった。まだただの人間であった頃は、強姦殺人で何人もの女性を手に掛けてきた極悪人だ。遂に逮捕され後は死刑を待つだけだった彼に、まだ欧州で隠れ潜んでいたペスター博士は目をつけ裏から手を回して引き込みノスフェクトに改造したのである。

 

 肉体は人間からはかけ離れたものとなった彼だが、中身はその頃のままどころかさらに醜悪となっていた。欲望の赴くままに女を嬲り者にし、最後は血を吸って殺す事に快楽すら感じている。

 

「これからお前の事もたっぷり可愛がってやる。楽しみにしてなッ!」

 

 そう言うとガルマンは牙を剥き、彼女の首筋に突き立て血を啜り始めた。牙が皮膚を突き破り血を吸い取られ、代わりに唾液が沁み込んでくる感触にアルフは磔にされて動けない体を震わせながら悲鳴を上げた。

 

「あ゛ぁ゛ッ!? うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 

 周囲にけたたましく響くアルフの悲鳴。ガルマンがそれを愉しんでいると、遅れてやって来たヴァーニィが彼女を助け出そうと殴り掛かる。

 

「止めろ……! アルフを、放せぇぇぇぇッ!」

「ん?」

 

 後ろから殴り掛かられたガルマンであったが、彼は特に動じる事も無く後ろに蹴りを放ち逆にヴァーニィを突き飛ばした。ブラッディ形態であればともかく、通常形態では力不足感は否めずあっさりと吹き飛ばされ背中から倒れるヴァーニィを、ガルマンはほくそ笑んで見下しながら自分が食らい付いて血が流れる首筋に舌を這わせた。

 

「うぅぅ……!?」

「お前はそこで大人しく見てろ。今からこの女が、俺に嬲られる様をな」

「止めろ………止めろぉ……!?」

 

 ヴァーニィが地面を這って必死に手を伸ばすが、ガルマンとアルフには届かない。ガルマンは虫の様に地面を這いつくばるヴァーニィの姿を嘲笑いながら、アルフの片足を持ち上げつつ自分のズボンに手を掛けた。これから彼が何をしようとしているのかを悟り、アルフは顔を青褪めさせ恐怖に震えながら助けを求めた。

 

「いや……いやだっ!? 京也ッ! 京也、助けてッ!?」

「アルフ……!? お願いだ、止めて……!?」

「ヒヒッ! いい声で泣いてくれよ?」

「あ……あ、ぁぁ……!?」

 

 ガルマンが再びアルフの血を吸いながら、さらに彼女を凌辱しようとする。迫る絶望の瞬間にアルフが涙を流し、恐怖に思わず目を瞑った。

 

 その時である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「執筆忍法、風遁の術」

【忍法、風遁の術ッ! 達筆ッ!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如竜巻の様な突風が吹き荒れ、ガルマンが吹き飛ばされていった。正確にガルマンのみを狙った突風は大型台風の暴風雨のそれをも上回り、突然の事もあってガルマンは耐えきれず吹き飛ばされていってしまった。

 

「な、何っ!? うおぉぉぉぉぉっ!?」

「え? な、何? 何が……?」

 

 何が起きたのかはガルマンだけでなく傍から見ていたヴァーニィにも分からなかった。視認出来るほどの濃密な空気の塊が突然ガルマンを吹き飛ばしたようにしか見えず、しかし普通はそんな事あり得ない。あまりにも現実離れした光景に、嬲られる寸前だったアルフは思考が追い付いていないのか呆けた顔で前方を見つめていた。

 

 取り合えずアルフに迫る危機が去った事に、ヴァーニィは急いで彼女に駆け寄り拘束している糸を引き千切りに掛かった。しかし流石の蜘蛛の糸と言うべきか、腕の力だけで引き千切るのは難しかった。

 

 それを見兼ねてかどうかは分からないが、悪戦苦闘する彼を助けてくれる者が居た。

 

「大丈夫か? よっ、と」

 

 そう言って声の主は手にした刀でアルフを拘束している糸を切断した。拘束から解放されたアルフは、吸血で力を吸い取られたからか崩れ落ちるように倒れヴァーニィがそれを受け止める。

 

「あ、ととっ! アルフ、大丈夫?」

「う、うん……」

「ありがとうございます。今のも、あなたが?」

「あぁ、そうだよ。危ない所だったな」

 

 感謝しつつヴァーニィは改めて助けてくれた者の姿を見て、その姿にハッとなった。その男は全身を緑色の装束で覆い、首にはマフラーを巻き裾が風に煽られ靡いている。

 

 特徴的なその姿を一言で表せば忍者の一言に尽き、そしてヴァーニィは彼の事を少しではあるが知っていた。

 

「あなたは、もしかして……!」

 

 自分の事を知っていると言うヴァーニィに、その忍びは仮面の下で笑みを浮かべながら答えた。

 

「俺の名は仮面ライダーコガラシ。故あって助太刀するぜ、仮面ライダーヴァーニィ!」




と言う訳で第44話でした。

前作からゲスト出演でコガラシが仲間に加わってくれます。やっぱり連作ものなので、こういう前作からのゲストキャラを出せるのは楽しいですね。

執筆の糧となりますので、感想評価その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。
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