機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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 いつもの。

 公開し終わってパソコンの電源を落としてから、あの場面はこう描写すればよかったと思いつく現象。

 少し手直ししました。


地上の戦い6

 地上の戦い6

 

 撃破したジムタイプ胸部を片足で踏みつけ、量産型ビグザム改はその片腕から大型シールドを捥ぎ取っていく。

 

 ジムタイプの掌型マニピュレーターはそれなりの圧力でシールドを握っていたが、そこを無理矢理奪い取るのだ。

 

 当然、ジムタイプの腕部装甲と関節部分に無理な負荷が生じる。加圧によってミシミシと破断音を立て、ほどなくジムタイプ腕部は崩壊していった。

 

 すでにパイロットが死亡している連邦軍所属のジムタイプは、この強奪に対して反撃することはなく、ただ、生き残っていたメインカメラが、その様子を意味もなく映すだけだった。

 

 如何にガンダムタイプを模して製造された機械の巨人とはいえ、パイロットが死亡してしまえば、ただデカいだけの機械の塊に過ぎない。

 

 「くっ! ずいぶんと冷静じゃねぇか!」

 

 (ただでさえ装甲が厚いっていうのに、さらにルナチタニウム合金製の盾で防御力の充実を図っていやがる………こいつ、継続戦闘能力維持も考えて!)

 

 そう。

 

 地球連邦軍少佐ガク・ポイドが、ジム・ライトアーマーコックピットで吐き捨てた言葉通りであった。

 ふたつのサブアームの中、片方でシールドを奪い取った量産型ビグザム改のパイロットは、呆れるほどに冷静だった。

 

 ジオン残党軍の一人、アギト・オルタリング隊長は、体中に熱い血潮を駆け巡らせながらも、頭脳は冷静なままだった。

 

 この場に残るジムタイプを全機屠って後も、この東欧で狂戦士のように戦い続けるために。

 死出の旅路の舞台の上で、暴れて、暴れて、死ぬまで暴れ続けるために。

 

 優れた武具が多いに越したことはない。

 

 (このままでは負ける。こいつらを退ける、何か突破口はないのか?)

 

 自機であるジム・ライトアーマーコックピットで、ガク・ポイドはギリィと歯噛みし、そう考えていた時のこと。

 

 ティキーン!

 

 (そうはさせない!)

 

 (その身体を愚かな星と散らしなさい!)

 

 (その魂を宇宙に飛ばし、永遠の喜びの中へと帰れ!)

 

 「何だ!?」

 

 ガク・ポイドは聞いた。

 

 いや。

 

 感じた!

 

 ジオン残党兵の狂気にも似たプレッシャーに負けぬ、強い精神力を持った少女たちの心の声…魂の叫びを! 

 

 俺は頭が戦場のプレッシャーで壊かれたのか? 

 

 そう、ガク・ポイドは驚愕の表情を浮かべる。いくら死地にいるからといって、悪い冗談だ。いや、逆に出来過ぎだとも思った。

 

 「敵機、左後方から大型ミサイルきます! 大佐! 友軍です!」

 

 「ひゃっほう! 騎兵隊の御登場だ!」

 

 「今だ! 連携して反撃!」

 

 「!? おおっ!」

 

 脳へと響いた少女たちの叫びに、ガク・ポイドが混乱していた僅かな間のこと。

 

 同部隊のジムタイプを駆る部隊員たちは、友軍であるガンペリーからの援護に気が付いた。

 

 まさか!

 

 そんな思いは、すぐさま喜びと変わる。喜色満面、ジムを駆る連邦軍兵士たちが次々と歓声を上げる。 

 

 この速度はミサイル! 敵機へと一直線だ! と。

 

 !?

 

 (なんだ!)

 

 一方、アギトたちはいくら冷静であっったとはいえ、突然、戦場の外から精密な攻撃が自分たちに向け飛んでくるなど思いもしない。

 

 ミノフスキー粒子散布状況下では、基本、目視によってしか狙撃は不可能のはずだ。だからこそ、この宇宙世紀、連邦軍とジオン公国軍残党はモビルスーツで戦っている。

 

 そんな状況を覆してくる一撃。

 

 自分たちが認識できないアウトレンジ外からの有効弾。戦況をかえてしまう一撃。そんなものを放てる存在がいるとすれば、アギトたちは一つしかその可能性を知らなかった。

 

 「まさか…ニュータイプ…なのか?」

 

 突然の奇襲攻撃。その一撃に量産型ビグザム改は反応しきれない。

 

 着弾。

 

 機体後部に大型ミサイルを被弾し、その衝撃で前方へと大きく傾くビグザム改。大質量が傾き、各部関節が悲鳴を上げた。

 

 厚い集積装甲によって撃破されこそしなかったが、サブアームの片方を失い、奪い取ったジムタイプのシールドを地面に取り落としていた。

 

 「隊長!」

 

 「無事か! どこからの攻撃だ!」

 

 隊長機の被弾に慌てたドムタイプ二機が、すぐさまモノアイ含む外部センサーを駆使して、索敵を開始した。しかし、周囲に敵影はなし。

 

 あるとすれば。

 

 「地上すれすれに動態反応!? これは…ワッパか!」

 

 「慌てるな! 周囲のジムタイプに気を付けろ! この隙に打って出てくるぞ! 胸部拡散ビーム砲で攪乱を! その隙に機体を立て直す!」

 

 「隊長無事ですか!」

 

 「了解した! 拡散ビーム最大出力で防御・攪乱を開始する。一つ所に固まれば負けるぞ! 動け!」

 

 「敵! 二撃目くる! 大型ミサイル!」

 

 本来、ドムタイプの胸部拡散粒子ビームは、低出力のために収束率が足らず、敵機への目晦まし程度にしかならない。

 しかし、最大出力での拡散ビームなら、接触したミサイルを爆散させる程度には利用できた。

 

 そうやって、ガンペリーから放たれた二撃目の大型ミサイルを撃墜する、ドム胸部から放射された拡散ビーム。

 

 しかし、そこまでである。

 

 「おおおおっ!」

 

 「死ね! 倒れろ! くたばれ!」

 

 「仲間たちの敵!」 

 

 「死んで! 虐殺したスペースノイドたちに! 謝れぇ!」

 

 このチャンスは逃さんと、ガク・ポイド機ライトアーマーを除くジムタイプ各機が躍り出ていた。

 

 少し前までの腰の引けた反撃ではなかった。このチャンスに賭けて行動しなければ、もう都合良く反撃のチャンスは訪れまいとの、一蓮托生の一斉反撃であった。

 

 その一斉射撃が、自分たちに対しジャイアントバズを向けていたドムタイプ一機へと着弾。

 

 歪な死の舞を踊らせた。

 

 さらに。

 

 別方向から低空で接近中のワッパ隊。

 

 「隊長! 敵機群、リジーナの射程に捉えました!」

 

 「了解。ワッパ各機、機体下部一番砲、二番砲、連続発射。発射後、すぐさま散開。脇目も振らず逃げろ。生き残れよ」

 

 「了解です! 発射!」

 

 「発射!」

 

 「発射です!」 

 

 女性隊長の指示により、ワッパ全12機が一斉発砲。計24発のリジーナが別方向から量産型ビグザム改、ドムタイプ2機を襲った。

 

 時として数の多さは、容易く敵機との性能差を埋める。

 

 「…無念!」

 

 「ここまで。先に逝くぞ………さらば」

 

 「くっ! おおおおおおおっ!」

 

 あれだけの数の砲火だ。その十字砲火を受け、すぐさまドムタイプ2機は沈黙、爆散。

 

 その戦士の魂は宇宙を飛んで、喜びの中へと溶け、消えていった。

 

 (おっ! お前たちィー!)

 

 ただ一機、装甲の厚い量産型ビグザム改が、だからといって! まだだ! まだ終わらん! と、アギトの雄叫びと共に立ち上がった。

 

 しかし。

 

 「今・だ・あー!」

 

 ガク・ポイドのジム・ライトアーマーが大地を蹴って高く飛翔した。そして、撃破された味方機のシールドを第二の足場にしてさらに高く跳ぶ。

 

 アタック・モーション!

 

 天空十文字切り!

 

 ジム・ライトアーマーは、その両手に持つビームサーベルを最大出力で開放。二刀流での落下斬撃攻撃に出た。捨て身の空中殺法であった。

 

 「ま・だ・だぁー!」

 

 そのライトアーマーの一撃を迎え撃つべく、残った片方のサブアームでビームサーベルを構え、量産型ビグザム改も上空へとビームサーベルを振るう。

 

 激突する両機のビームサーベルの刀身。

 

 しかし、三振りのビームサーベルの中、激突したものは二振り。

 

 ジム・ライトアーマーは、一振りのビームサーベル刀身で量産型ビグザム改のビームサーベル刀身をガード。

 そのまま落下し、もう一振りのビームサーベルを量産型ビグザム改のモノアイ上眉間部分に突き立てた。

 そのビームサーベルが、Iフィールド集積装甲を次々突き破り、機体へと深刻なダメージを与えていった。

 

 さらに、コックピットにも達したそれは、灼熱のメガ粒子でアギトの肉体を一瞬で焼き尽くし、その魂を物理的な枷から開放していた。

 

 アギト・オルタリング。

 

 彼の魂もまた、宇宙を飛び、喜びの中へと溶けて消えていった。

 

 その一方、量産型ビグザム改の機体は、深刻なダメージを受けたにもかかわらず、その原型を留めていた。やはりミノフスキー・イヨネスコ炉が、機体の破損に対し自動的に停止したためである。

 

 アギトらジオン公国軍残党に、この量産型ビグザム改を供与した善意の支援者たちは、モビルアーマー爆散による地球環境の悪化は望んでおらず、そのため、機体に深刻なダメージを負った場合、すぐさま炉が停止するよう、あらかじめ事前の措置を講じていた。

 

 普段よりも強力なプログラミングで。

 

 (あれ程、味方機を犠牲にしても敵機を討ち取れなかった戦況が、あの遠距離攻撃の攻撃のミサイルの一撃で一変した)

 

 (一時的に有利な状況にいたとしても、友軍の到着で盤面を覆され、僅かな装備の差で生死が別たれる)

 

 (もし、ビグザムモドキにもう片方のサブアームが残っていれば、倒されていたのは、俺とジム・ライトアーマーだったかもしれない)

 

 (これが戦場。この死と隣り合わせの感覚…久しく忘れていた)

 

 敵機群、全機制圧確認。周囲にジオン公国軍残党の影なし。ワルシャワ隊、全機ベーシックモードで待機」

 

 「繰り返す全機ベーシックモードで待機」

 

 ビームサーベルのビーム刀身を消失させ、ガク・ポイド少佐が戦闘終了を宣言した。その宣言を聞き、通信機越しに僚機パイロットたちの安堵の溜息が聞こえてくる。

 

 奇跡だ。生き残れるなんて…と、涙声での呟きも通信機から聞こえてくる。

 

 それはさておき、まだジオン公国軍残党側のワッパ隊が残っているが、それは別部隊のハンティングに任せることができる規模だ。

 

 モビルスーツ隊を総動員するまでの規模ではなかった。航空機隊による追跡と、歩兵を連れたホバータンクの機甲部隊で追い込みをかければ十分だろう。

 

 俺たちの仕事はここまでだ。

 

 こうして、連邦軍東欧方面軍MS大隊と、コロニー福祉公社地上部隊による、一連の東欧でのテロへの対応は終了した。

 

 しかし、まだ彼ら連邦軍人たちの仕事が終わった訳ではない。

 

 「後方ミデア輸送隊、本部に結果報告。生き残った戦友たちの安否確認急げ。撃破した敵機、及び、撃破された味方の機体の回収部隊の要請もだ」

 

 「了解です、少佐。ワルシャワの将軍には何と?」

 

 「ん…早急なモビルスーツ隊の展開、見事だったと」

 

 「え?…あっ! は!」

 

 事実としては、クラクフ襲撃がなされた後、その対策が遅い欧州管区のボンクラ将軍たちに代わり、ガク・ポイド少佐はじめ中堅の将校たちが、ジオン公国軍残党掃討に素早く動いたということが実情だ。

 

 しかし、ここで手柄を上官である将軍たちに与えねば、ジオン公国軍残党狩り部隊ティターンズの勢力が、またも急拡大するだけだ。

 

 それは、ジャミトフ・ハイマン、バスク・オムといった連中があまり好きではないガク・ポイドとしては、望むところではなかった。

 

 それを阻止するために、あえてポイドは将軍たちに手柄を譲る。

 

 (ふん………地球圏の民衆を無視し、軍の力で政治を壟断する軍閥のクズどもめ。そうそう好きにはさせんさ。自分たちこそ地球圏の覇者であるような顔をしやがって………)

 

 (…俺たち、地球連邦軍の将校たちの本来なすべきことは、民衆の命と権利を守ることだ。民衆の命と地球圏の平和を守るとほざき、もう一方の大事な権利を制限して許される訳がない………)

 

 (…いずれ、その罪は裁かれる。それまでは、いい気になって俺たちや民衆に嫌われ続けるがいいさ…ティターンズのお坊ちゃんたち!)

 

 「お前たちも御苦労だったな。今後、長期休暇を申請したいなら、関係各所に俺の名前で受理するように話を通しておく」

 

 !?

 

  「ありがとうございます! 少佐!」 

 

 クラクフ襲撃の敵機追撃に同行、敵機との接触前に別行動をとっていた連邦軍ミデア輸送隊にそう連絡を入れ、軍内部で自分のやれることはすべて終えるポイドだった。

 

 (さて、と。次は、と………)

 

 モビルスーツ、モビルアーマーの炉心を止めた今、ミノフスキー粒子濃度は徐々に低下していた。これなら、先程、加勢してくれた部隊にも通信が可能だろう。

 

 (…やることのみキッチリやって、戦場から離れていったあのワッパ隊。連邦軍側でワッパを使っている部隊は、コロニー福祉公社の地上部隊だったな。正直、助けられたよ。あのミサイルや、リジーナでの支援がなければ、撃破されていたのはこちらだった)

 

 「こちら、ワルシャワ隊のガク・ポイド少佐だ。コロニー福祉公社地上部隊の諸君、聞こえているか? 支援感謝する。いずれ、この貸しは何らかの形で返すよ。じゃあな!」

 

 そう全回線で呼びかけ、今度こそ本当に、すべての仕事を終わらせたガク・ポイド少佐だった。

 

 

 「…だってさ!」

 

 

 合流したガンペリー全3機。その1機のコックピット内。そこには、すでに収容されたワッパ隊隊長と、モビルスーツ搭載途中のUTAU隊の隊長が集まっていた。

 

 そんな戦友二人に、ガンペリー操縦士の一人コマネが語りかける。ガク・ポイド少佐からの通信を話題にあげて。

 

 「ふん。ならば、美少年の給士でもこちらに送って欲しいものだ。こちらには男子成分が不足しているからな」

 

 「それ、事案ですよ。自重してくださいよ」

 

 「本気にしないでくれよ。私だって冗談を言いたいときはあるさ」

 

 「そりゃ、そうですね、私だって若い燕を養いたいです」

 

 そう軽口を言い合って、あはは、と笑い合うイチヒメとコマネだった。ワッパ隊の隊長ライチが、笑顔になってその様子を眺めていた。

 

 「さて、冗談はこれくらいにしてトト大隊長に報告しよう。虫取りは何事もなく終了。連邦軍の少佐殿の言葉も含めてね。ミノフスキー粒子濃度はどう?」

 

 「もうかなり低下してるから通信は可能よ。でも………」

 

 「それはツキネやあの三人に任せて、少し休まない? せっかく生きて合流できたんだから」

 

 「そうですね。久々の実戦で疲れました。休みたいです。やっぱりワッパで基地と基地を往来する配達部隊をやっている方が、私の性には合っています」

 

 「それもそうだな。我々戦士にも休息が必要かもな」

 

 「そうそう。何か悪意がこちらに向かってくるようなら、あの三人が知らせてくれるから、ね?」

 

 同じガンペリーに同乗するコマネの提案に、ワッパ隊隊長のライチ・ソルトピーターが話を合わせ、イチヒメも同意する。

 三人とも操縦士や部隊長として多くの命を預かる身だ。旗下にある者たちを休ませてやりたかった。

 

 無論、ニュータイプ能力者が、レーダー役をしていてくれているという安心感も大きい。

 

 「もうすぐ、ジムコマンド全機の積み込み作業が終了します。最終点検が終了し次第、ひと眠りしてください」

 

 「次に目が覚めたら基地って訳ですね」

 

 「うん。それもいいか。それじゃ、機体収容の手伝いに出てくる。」

 

 「私も。まだ興奮状態のルーキーを落ち着かせてきます」

 

 「了解。全機搭載完了の報せがあり次第、出発します。イチヒメ隊長、くれぐれも最終確認お願いします」

 

 「ああ」

 

 「…」

 

 そんなやり取りの末、コックピットから退去していくイチヒメとライチを見送り、コマネが全身の緊張を解きシートへと崩れ落ちた。そのまま、ふにゃっとシートに身体を預けて何事か語り出す。

 

 「…ありがとう。今回、誰も失わずに済んだよ」

 

 その言葉は、今回のジオン公国軍残党狩りに多大な貢献をしたニュータイプたち、サニア、ルーナ、ステラに向けてのものだった。

 

 輸送隊所属であるコマネは、何度も戦友たちを死地へと送り出してきた身だ。自分自身も同様に、死神とダンスを踊った経験がある。

 

 それでも、これまで何とか死神から逃げ出してきたコマネだが、戦友を失くさずに作戦を終えることができた経験は少ない。

 

 今回含め、2度だけだった。

 

 今回の結果に安心して、一人、脱力してしまうのも仕方ないことだった。 

 

 「あんな子たちが常に近くにいてくれたなら、味方の損耗も少なくて済む。でも、そうはいかないよね」

 

 コマネは強化ガラス越しに上空を見上げた。その先に、サニアたちニュータイプ三人娘たち本来の勤務地がある。

 コマネは、ニュータイプ三人娘が程なく地上での研修を終え、宇宙へと戻ることを知っていた。

 

 だからこそ、この僅かな暇を利用して祈る。

 

 (みんなを守ってくれてありがとう。貴女たちにも宇宙で幸せな出会いがありますように)

 

 と。

 

 じつはもう一人、祈りを捧げる少女が同じガンペリー内部に搭乗していた。

 

 「お姉ちゃん、父さん、母さん、少しは敵を取れたかな?」

 

 一人、ワッパ隊の同僚たちから離れた小柄な少女、サワアはそう呟いていた。ガンペリー機体側面部の窓から、ほの暗い空を眺めながら。

 

 MSの搭載を終えたガンペリーは、すでにオートモードで動き出していた。輸送機のエンジンパワーは大質量を輸送するだけあって、中々の速度を有する。

 次々と風景が移り変わっていった。その光景を見ながら、サワアはある人物の面影を思い浮かべていた。

 

 サワアは、自分たち元ダイクン派の人々がジオン公国軍地上侵攻部隊に襲撃された後、子供だった自分たちを逃がしてくれたその女性が、両親たち同様殺されたことを知っていた。

 

 ジオン兵にレイプされることに抵抗し、眉間を撃ち抜かれたのだ。

 

 アヤとサワアは近くの森林地帯で、息を殺してその光景を眺めていた。そのひ弱さ故に、眺めている以外に方法がなかったのである。

 

 だからこそ、戦後、アヤとサワアはコロニー福祉公社へと志願し、入社したのだ。

 

 両親含めた恩人たちの仇を討ち、少しでも、ジオン軍残党兵による被害者を減らすために。

 これまで、辛く苦しい訓練を重ねた日々であったが、当時のトラウマを抱えたまま惨めに生きるよりは、張り合いのある人生だった。

 

 だからこそ、自分は良くやったと、この時サワアは己を肯定することができたのだ。

 

 この戦後の地球圏は、どこもかしこも悪意に満ち満ちており、弱い人々を次々と破滅させていく。

 それでもサワアという少女は、共に生き残ったアヤと共に、その悪意に立ち向かい懸命に生き抜くことを誓う。

 

 この世界の片隅で、密かに力強く。何があろうと懸命に戦い、生きていくと。

 

 「お姉ちゃん、私がお姉ちゃんや、お父さんお母さんの許にいくのは少し後になりそうです。どうか、それまで見守っていてください」

 

 そのように呟き祈るサワアの様子を、アヤやワッパ隊の同僚たちが、気付かないふりをして静かに見守っていた。

 

 

 地上の戦い7へと続く

 

 メモ

 

 カルパティ山脈付近はまだ植生が旧世紀と近い、暮らしやすい地域。

 

 なぜか喋る虫も捕まる。

 

 いえ、ニュータイプ部隊の許へと侵入した、虫の姿をした邪神の眷属です。

 

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