機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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 再開します。

 それに伴い、再度、本作の趣旨説明として作品内でのニュータイプの扱いについて説明しておきます。

 本作中において、ジオン・ズム・ダイクンが提唱したニュータイプ論で語られるニュータイプとは、地球圏を宇宙開拓によって形成し、移民を成功させた当時の人類すべてのことです。

 過去の地球上での悲惨な殺戮を乗り越え、宇宙移民という大偉業を達成した時点で、人類はニュータイプという人類の革新へと到達しています。

 地球表面の大気中に生存し、互いに殺し合うという病理に侵されていた地球固有種から、人類共同で宇宙空間に新たな大地を創り出し、移民することができた宇宙種。

 そうランクアップした時点で、人類の革新と呼んで差支えないでしょう。

 なお、後に出現した、アムロやララァといったエスパータイプのニュータイプとは別物扱いなので、その点は注意してください。


 さて、それでは何故、ジオンがムンゾ共和国…後のジオン共和国のこと…をサイド3に打ち建てたかというと、サイド3に集められた人々以外が住む地球圏=ニュータイプの生存圏…を存続させることが目的でした。

 なぜなら、ジオン・ズム・ダイクンがサイド3に集めた人々とは、せっかく人類全体でニュータイプという宇宙種になったというのに、過去の人類の悪癖、業に憑りつかれ、異常に攻撃性を高め、他者を差別、排斥することに血道を上げるようになった、精神的に退化した人々なのです。

 本来なら、人類の目の前には宇宙空間という大自然のフロンティアが無限に拡がっており、宇宙移民たちは、それらを相手として闘争本能を発揮していれば、それで良かったのです。

 数百年くらいの期間はね。

 しかし、ザビ家のような一部の権力亡者たちは、選民のみが地球圏全体を支配することを望むようになり、精神性を退化させた人々を操り、洗脳して、人類統一政府である地球連邦の解体を掲げ、宇宙移民たちが長年の宇宙開拓で得た成果物を掠め取ろうとし始めたのです。

 かくして、過去の時代の闘争本能を蘇らせ、ニュータイプからオールドタイプへと精神的退化を始めた一部の人々。

 彼らは癌細胞の如く増殖し始めました。

 影に潜むザビ家に操られたそういった人々の、地球連邦政府への要求と行為は常軌を逸し、まるで、過去の人類が地球上で複数の国家を形成し、殺し合っていた時代を彷彿とさせ、再現するかのようでした。

 自分たちは地球連邦政府の圧政によって宇宙に強制移民させられた犠牲者である!

 億兆を超える建設費をもってして建造された宇宙施設で、何不自由ない生活させてもらっているくせに何言ってんだ、こいつら???

 我々は、地球に残った一部のエリート(アースノイド)による圧政に苦しめられている!

 地球に残った人々の大部分は、宇宙生活に適応できない弱者たちだぞ。宇宙生活に耐えられる適応力を持った、優秀なエリートであるスペースノイドが何を言っている???

 過去の大極東帝国やナチスゲルマニアは、選民思想の大噓で民衆を騙し、彼らを下僕として世界大戦を勃発させ、敗れ、滅びたのだぞ。

 なぜなら、ヤーパン人はアジアの光であり、植民地主義の欧米列強をアジアから追い出す使命があるという選民思想も、人類でもっとも優秀なアーリア人は世界を支配する運命にあるという選民思想も、共にただの大嘘でしかなかったからだ。

 選民などではない同レベルの民族同士が戦えば、強い方が勝つ。

 我々は神に選ばれた選民であるなどという嘘で、現実の戦争に勝てる訳もない。

 それにも関わらず、なぜ、宇宙世紀の時代になって、選民思想の持ち主たちが、そんな過去の過ちたる思想をスペースノイドたちに注入し、同じ過ちをて繰り返させようとしているのか?

 その意味を考えてみろ。

 ヒットラーの尻尾共の言葉に惑わされるな。

 しかし、そんな理に適った識者たちの主張は、頭の狂った連中には届きませんでした。

 事、ここに至り、地球連邦政府と連邦議員たちは決断します。

 当時、連邦議会の左派議員であったジオン・ズム・ダイクンを盟主として、ニュータイプからオールドタイプへと精神的に退化し、堕落した人々を、他のニュータイプの人々から引き離し、住まわせ、管理運営する独立地区を用意すると。

 その施設こそが、サイド3のムンゾ共和国でした。

 じつは、宇宙移民の独立運動とは、堕落した思想を持つ人々を、正常な思考を持つ人々から引き離す方便でありました。

 また、ジオンがサイド3に集まった人々に語って聞かせた人の革新たるニュータイプの趣旨とは、本来は、精神的にも肉体的にもニュータイプであったが、オールドタイプへと精神的に退化してしまった人々に、正気に戻れと言っていただけだったのです。

 しかし、一度、ニュータイプから堕落してオールドタイプへと精神的に退化してしまった人々に、それは無理な話でした。

 彼等はすでに、他者を排斥、攻撃するための、選民、優生主義に憑りつかれており、それが真理、正義と誤認していたのです。

 そのため、哀れなオールドタイプたちはますます精神性を退化させ、太古の狩猟時代を思わせる類人猿も同然に成り果てました。

 仏教の六道でいうならば、人類は、畜生道へと堕ちたオールドタイプと、天道へと駆け上ったニュータイプに、道が別たれてしまったのです。

 そんな双方が、解り合えるはずもありません。

 精神は幼いままのオールドタイプで、肉体だけは宇宙に適応したニュータイプ。異常なほどに排他的で、他者に対する闘争本能のみが強い人々。

 ニュータイプの出来損ないの大集団。

 それがサイド3に集められ、隔離された人々。

 その扱いは難しく、ムンゾ共和国成立後、ジオンはその日々を過ごす中、次第に憔悴し、疲労を蓄積させていきました。

 そんなジオンの死後、彼等の行動はさらに常軌を逸していくことになります。

 地球圏の覇権を狙うザビ旗を旗頭とするジオン公国の成立。

 サイド3での、ザビ家支配に反対する人々の粛清。

 アステロイドベルトでのジオン公国独自の資源開発。

 軍備増強。

 月のグラナダへの侵略、等々。

 その果てに、彼らが犯した大罪こそ、多数のサイドの住民、数十億人を虐殺する凶行であり、地球上へのコロニー落しでありました。

 そして、さらなる犠牲を強いる一年戦争。

 地球圏は、畜生道の鬼畜共に蹂躙され地獄と化しました。


 この物語は、一年戦争終結後、地球圏に残るジオン公国軍残党の畜生共、他、畜生と成り下がった者共を狩り出し、地球圏の正常化を意図し、自ら修羅道に踏み込んだ人々の物語です。

 注意:本作はパラレルです。読者の皆様は、その点、お忘れなく。


殺し間とされた宙域で 7

 殺し間とされた宙域で  7

 

 

 多くの意思が、命が、戦禍に飲まれて消え失せていく。咲くことなく蕾のままに手折られていった花々と同様に。

 

 間もなく、僕の命も消え去るのだろう。

 

 その時はもう遠くない。

 

 

 ただ、恐怖に負けて悪しき者たちに立ち向かうことなく逃げ出す…そのように精神を枯らしたまま、精神を爛れさせ、腐れ堕としていくことだけは…御免被る。

 

 だからこそ、僕はこの砲座に立つ。

 

 せめて、公国軍の虐殺者と対峙して、戦いの中で死んでいきたい。

 

 男の子に生まれ落ちたのだ。

 

 その程度の矜持はある。

 

 

 コロンブス級リリーブラックの砲座から前方空間を見詰める少年、ユウ・カリン。

 

 彼は黄金の精神を発揮し、ミリシア艦隊と共にここまでやってきた。

 

 そう。

 

 その幼さに不似合いなほどの勇敢さを示して。

 

 そうして、ミリシアの人々と共にサイド4宙域へと向かうユウ・カリンであったが、同時に、自身の死も身近に感じ、その予感と向き合い続けていた。

 

 これまでの一方的な殺戮で、すでに数十億ものスぺースノイドたちが殺害されている。

 

 その大虐殺をなしたジオン公国軍の力は強大である。

 

 そんな狂気に支配された殺戮者たちから逃れ、自分だけが生き残れるはずもない。

 

 どの道、そう遠くない時期に、自分も続く虐殺の犠牲者として死者の列に加わることだろう。

 

 だからこそ、ユウは、次々に轟沈していく僚艦の姿や、トマホーク、セイバーフィッシュといった宇宙戦闘機が次々に撃墜されていく光景を目撃しても、その眼前の光景から目を逸らす真似はしなかった。

 

 自分と同じ矜持を胸に秘めた悪しき公国軍と戦い続ける勇士たちの姿を。

 

 その困難へと立ち向かう人々の最後の命の輝きを。

 

 しっかりと両の目に焼き付け、脳へと記憶しておく。

 

 そして、その想いを抱いて、彼等の後を追うことこそ、今の自分の役目だと信じて。

 

 次は自分の順番だ。

 

 だからこそ。

 

 散っていった勇士たちの声なき叫びを聞き入れ、その最後の時まで僕も戦い続けよう。

 

 その瞬間まで、僕は何度でも、何度でも、この悪夢のような現実に向き合い、立ち向かい続けようと。

 

 さようなら、愛しい人々。

 

 先に逝く易しい道を選んだ僕を許して欲しい。

 

 誰だって、与えられた環境、限られたリソースの中、人生を戦って、そして有意義な人生の末に死んでいきたいと願う。

 

 しかし、もう歩むべき道は他者によって定められた。

 

 この戦いから逃れられはしない。

 

 文句を今さら積み重ねても時は戻りはしない。

 

 今、この時。

 

 僕ができることは、この場に留まり、砲手の一人となって最後まで戦い抜くことだ。

 

 ユウは、幼いころに叔母であるマリー・サー・ルーズレインから引き継いだお守りである陰陽ハッケロと、翼がついた小さな靴のオブジェを握りしめ、砲座へと身を置いた。

 

 そうして、迫りくる敵機と死合う瞬間を待つ。

 

 すでに砲座使用方法のレクチャーは十分に受けている。

 

 やってやれないことはない。

 

 そう、武者震いに震える自分の身体を叱咤するのであった。

 

 

 

 まるで、宇宙空間に光の花が花開いたかのように拡散メガ粒子の大きな輝きが生じた後、被弾したメイフラワーが戦線から離脱していく。

 

 逃げたわけではない。

 

 舵が効かず、機関部も、十分なダメージコントロールができていないのだろう。複数あるサブエンジンのみが稼動し続け、本来の航路を維持できずに、明後日の方向へと艦は向かっていた。

 

 そのために、心ならずも戦闘宙域から離れようとしているのだ。

 

 その一方。

 

 戦線離脱の元凶たるザクⅡ3機がメイフラワーの後方に位置していたコロンブス級艦隊へと迫っていた。強欲な一つ目の巨人共は、次なる獲物を求め、宇宙を疾風の如く飛翔していた。

 

 さあ、自由な狩りを続けよう。

 

 獲物の手足を捥ぎ取り、その精神を圧し折り、無様に命乞いをさせよう。

 

 そうして後、こちらの望むものを、自ら差し出させようとしていた。

 

 

 あはははははは!!!

 

 はははははは!!

 

 くくっ…はぁっはっはあ!

 

 

 嘲笑。

 

 ザクⅡ各機のコックピットに嘲笑が響き渡った。 

 

 この時、メイフラワーによる最終防衛ラインを越えて、リリーブラックの直近へと攻め寄せてきたザクライダーたちは、すべての事柄は自分たちの望み通りに運ぶ。

 

 妨げる者など存在するはずもない…存在しても排除するのみ…と、傲慢となり、獲物と見做した力なき者たちを嘲笑していたのだ。

 

 先の戦いの戦訓も忘れて。

 

 我々こそがこの世…地球圏の主役。

 

 我等、ジオン公国の民こそが地球圏の支配者であり、それ以外のスペースノイド、アースノイド、その他の民は、すべて奴隷、家畜、或いは、精々、狩りの獲物でしかないのだ。

 

 栄光あるジオン公国民以外は…モブの一般人共は…弱者らしく搾取され、我々の糧となるがよい。

 

 それがお前たちにお似合いの立場。

 

 我々の糧になる…それはとても光栄なことであるぞ。

 

 敗北者たちは大人しく、勝利者である我々に道を開けろ…栄光のロードを!…と。

 

 

 このようにして、ユウ・カリンとザクライダーたちは、それぞれの誇りと望み、そして、その想いを貫くために、互いに殺し合う位置まで接近したのだった。

 

 

 

 「この俺が…被弾しただと!?」

 

 圧倒的な回避力を誇っていたザクⅡサバイブが被弾していた。パイロットであるマサシ・シザールは、最大限の注意を払い回避運動を取っていたのにも係わらずだ。

 

 無敵のはずのザクⅡサバイブ・ボルキャンサーは、武装破壊を担当していた空母艦ブラックリリーからの迎撃弾を受け、一時撤退した。

 

 リリーブラックの砲座からの迎撃弾を受けて。

 

 なぜか?

 

 複数あるリリーブラックの砲座の中、たった一つだけが着実に、ザクⅡサバイブ各機の高速移動を妨げていた。

 

 そうして、移動可能な範囲を阻狭め、追い詰めていった末に、着弾させた次第であった。

 

 まるで、行動を先読みしたかのように、ザクⅡサバイブの未来位置と思しき座標へと攻撃を実施したのだ。

 

 これまで、自機の過去位置を追いかけてくるように迫る砲撃を、ただただ、ルーティンワークよろしく躱していればよかったザクⅡライダーたちは、この結果を受け、一瞬で心胆寒からしめられた。

 

 これは、リーン・イオギーの翼の沓のお守りを持つユウ・カリンの仕業であった。

 

 砲座についたユウは、リーン・イオギーの翼の沓の加護に導かれ、いつの間にか、人のオーラの流れや、人体に似せて作り出されたザクⅡの駆動系流体パルスシステムのエネルギーの流れを感じ取れていた。

 

 (見える…僕にも見える!)

 

 そのために、ザクⅡサバイブの動きを先読みできたのだ。

 

 この進歩もまた、戦場で一秒でも長く生き残ろうとする者の生命力と黄金の意思の賜物か。

 

 ともかく、これまで一方的にミリシアを蹂躙していたザクⅡサバイブ各隊に、ユウは一矢報いた形だった。

 

 「なん…だと…?」

 

 「くっ! 援護に回るぞ!」

 

 「おお!」

 

 共にコロンブス級であるハルツゲソウ、キクイタダキへの攻撃を担当していたザクⅡサバイブ、エビルダイバーとメタルゲラスは、それを一端棚上げとする。

 

 そして、自機の踵を返し、すぐさま被弾した僚機ボルキャンサーの許へと向かった。

 

 牽制の弾幕を張り、被弾した僚機へのさらなる追撃を食い止める。

 

 もし、そうしていなければ、またとないと迎撃のチャンスと見たリリーブラックの砲手たちによる一斉射撃と、直鞍の宇宙戦闘機隊の一斉攻撃にボルキャンサーは晒されていただろう。

 

 冷たい宇宙にあっても、ザクライダーたちは彼らなりに戦友との暖かい仲間意識は持っていた。

 

 最悪の虐殺者たちの一員とはいえ、人並みに友の身を心配する情けも、そして打算もあるのである。

 

 戦力的にはシザールたちジオン側が圧倒的優位だが、数の面では不利。

 

 僚機が減れば、それだけ一機一機の負担が増大する。

 

 それは、ユウイチとガイも避けたいことだ。シザールの命と機体の心配もする。

 

 「シザール! 無事か!?」

 

 「助かったぞ! 肩部の射撃用レーザーポインターが破壊されたが他は無事だ! それより、気を付けろ! 普通じゃない砲手がいるぞ!」

 

 「チッ! 隠し玉をここに配置していたか! ミリシアの連中! 味な真似を!」

 

 「下手に固まるな! 狙い撃たれる! 分散してことに当たれ!」

 

 「そうは言うがな! あの位置を攻撃すれば艦が爆散するぞ! あの位置の砲座はおそらく! 増築されたものだ!」

 

 「各艦を再攻撃する際は引き続きザクバズーカは使うな! 低威力なマシンガンやクラッカーで対応しろ! シュツルムファウストの貫通力は危険だ! 機関部まで届けば爆散するぞ! いいな!」

 

 「そうだ………我々の任務はあくまで継戦能力を削いで降伏させることだ。忘れるなよ」

 

 「シザール! お前は宇宙戦闘機隊の排除に当たれ! 艦の戦闘力を奪う仕事は我々が引き受けた!」

 

 「頼む!」

 

 シザール機ボルキャンサーの被弾を知って驚愕し、一時的にヒートアップしたマサシ、ユウイチ、ガイ。

 

 だが、戦場では冷静さを失ったものから死んでいくと本能で知るザクライダーたちである。

 

 僅かの間にクールさを取り戻し、それぞれが担当する艦の武装破壊と宇宙戦闘機隊の撃破へと戻ろうとする………

 

 

 だが遅い! 

 

 それでは遅すぎる!

 

 漆黒の宇宙空間に潜むニンジャは甘くはない!

 

 ニンジャ相手のイクサでは、それでは遅すぎるのだ!

 

 

 その隙は命取りだった。

 

 彼らは、宇宙世紀のニンジャスレイヤー、ネオスニンジャに恰好のアンブッシュのチャンスを与えてしまっていた。

 

 そう。

 

 ニンジャたちはアイサツの前に、アンブッシュを一度だけ許可されているのだ。ナムの戦場より遙か以前、カツワンソーによってそう定められているのだから。

 

 

 殺し間にされた宙域で 8 に続く

 

 




 リリーブラック:弾幕をハルですよー!

 補足

 ザクⅡ後のジオン系モビルスーツの駆動システムですが、本作では流体型パルスシステムではなく、流体パルスシステムと表記しています。

 読む側としては大した問題ではないでしょう。

 …でも、一部、それじゃ納得しない面倒くさい人っているよね。

 空想の兵器のシステムの名称なんて、ちょっとくらい違っていても誤差の範囲でしょうに。
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