機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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 殺し間とされた宙域で 7から書き直していますので、よろしければそちらも読んでください。

 前回のサイド3の話の続き。

 前回、サイド3に集まった宇宙移民が、なぜ棄民にされたかを簡単に説明しましたが、順番が違っていることを理解してくれたと思います。

 まず、一般の地球上の人々が棄民同然に宇宙に捨てられたのではなく、宇宙移民が開始された後、一部の危険思想に染まってしまったスペースノイドたちが、隔離施設として整備されたサイド3へと捨てられ、閉じ込められたのです。

 宇宙開発で宇宙に送り出されたスペースノイドは、基本、精神的にも肉体的にも強靭なエリートたちです。エリートでなければ、宇宙という過酷な環境に適応できません。

 地球に残された人々(アースノイド)は、宇宙に適応できない理由を持っていました。身体障碍者や知的障碍者、宇宙空間で絶対に必要な、自力での高度な計算、数学のできない境界知能の人々である…そんなどうしようもない理由です。

 いわゆる弱者。

 地球上に残る地球連邦政府の役人たちは、そういった人々を地球上で保護する立場であり、民間の人々は、政府の主導の下、弱者たちの生活の手助けと、地球環境を維持する役割を果たしている訳です。

 さて、サイド3に追いやられた人々も、当初はエリートとして宇宙に上がった訳ですが、その後がいけなかった。

 選民思想、差別主義という人類の病理を寛解不可能なほど発症してしまい、その時点で、選民思想、差別主義に染まらず、まともな思考を維持していた他のスペースノイドたちや、彼等の指示する地球連邦政府に、こいつらはどうしようもないと嫌われ、サイド3へと追放された訳です。

 あ………駄目だこいつら、共に生活してはいけない。

 過去、地球上で聖地(イスラエル)とされた地域に隔離されたシオニストたち同様、宇宙の隔離施設にあいつらを閉じ込めないと、地球圏全体が危険だ。

 連中は自分の目的を遂げるためなら、何をしても許されると思い込んだ狂人だ。各サイドで過度の権利を求めてテロを起こされては、地球圏全体が崩壊してしまう………とね。

 その末に、サイド3に集められ閉じ込められた連中は、自分たちの自己正当化のために、自家中毒の戯言を繰り返しさらに先鋭化していくという。

 曰く、自分たちは地球上に住む一部のエリートによって宇宙へと追放され、棄民とされた。

 だからこそ、自分たちでサイド3に集まり、独立を求めたのだ。これは聖戦だ…と。

 彼らは、選民思想、差別主義に基づいた数々の悪行によってサイド3に追放されたとは認められなかったのです。

 選民を称する輩の、歪みに歪んだプライドがそれを許さなかった。

 優秀な選民である自分たちが、それ以外の劣った人々(そう思い込んでいるだけ)によってこんな扱いを受けてよいはずがない…と。

 その上、弱者であるが故に宇宙移民になれなかった人々と、彼らを保護下に置く地球連邦政府を、地球上に残って世界を支配する腐ったエリートと呼び、自分たちの愚かな独立運動の正当化に走るという………救えないなあ。

 おお…怖い怖い!
 


殺し間とされた宙域で 8

 「そこっ!」

 

 二連装砲の照準装置の操作菅を震えた両腕で握った少年は、生きた人間の搭乗する機体を攻撃する覚悟を決め、引き金を引いた。

 

 先の連邦宇宙軍の大敗北を受け、急遽、コロンブス級リリーブラックの甲板に増築された新区画。

 

 そこでの出来事だ。

 

 ミノフスキー粒子下ではレーダー他、高度な索敵技術は使用不可能だ。電磁波がミノフスキー粒子によって阻害されてしまう。

 

 ならば、急造でも砲台を増やし、目視で索敵し、迎撃せねば、我々の座乗艦は、ただただジオン宇宙軍の的になるのみだ。

 

 現状、そうする以外にこれといった対抗策はないのだ。

 

 少しでも有効なら、やらねば。

 

 そのような戦訓を受け新たに設置された砲台に座り、目視によって敵機を補足したユウ・カリン照準器を動かし、狙いを定めて引き金をさらに引き込む。

 

 再び二連装砲から連続で実体弾が発射され、宇宙の虚空を切り裂いていく。

 

 一度引き金を引けば、複数の実体弾が発射される方式の砲であった。

 

 砲弾が正確に、敵影がこの後達するはずの未来位置を撃ち抜いていく。

 

 いや。

 

 正確には敵影を捉えての迎撃行動ではなかった。

 

 ユウは、人を構造を模して製造された巨人兵器のエネルギー…オーラ…の流れを感知し、その未来位置を特定して迎撃行動に出たのだ。

 

 ユウには視えるのだ。

 

 人体から発せられるオーラの揺らぎが。

 

 そして、人体を模して製造された巨人兵器の流体パルスシステムのエネルギー流が。

 

 だからこそ、敵機の未来位置を予想することが可能だった。

 

 これより、ザクⅡサバイブがどのように移動し、駆動していくか。

 

 ユウは、敵機のオーラの流れを感知、検出し、その情報を脳内で視覚情報として処理する。

 

 そんな、アムロ・レイやララァ・スンというニュータイプにすら不可能な絶技を、己の脳内で実行していた。

 

 それ故、人体を模した巨人兵器を駆動させる流体パルスシステムの流れも読み取ることができていた。

 

 オーラ視認、それとほぼ同時にやってのける脳内超演算による未来予知。

 

 続く迎撃。

 

 斯様にして、迫りくるザクⅡサバイブへの反撃行動に出るユウであった。

 

 見事…いや。

 

 見事を超えた異能者めいた超絶カウンターであった。

 

 そんな、人類の革新であるニュータイプの革新であるニュータイプや、ニュータイプの出来そこないの革新たるニュータイプめいた離れ業をユウが実行できることには、無論、特別な理由があった。

 

 一つは、大いなるオーラ力を宿すリーン・イオギーの翼の沓の加護。

 

 もう一つは、陰陽ハッケロ内部に搭載された、元気…万物生成をなす精気…を増幅する機能を有する、発気炉の影響があった。

 

 ユウは、この二つの宝具の影響をその身体に受け、生きながら、人間から妖精、妖精から妖怪へと転生を果たすが如き、超常の力を発現させていた。

 

 嵐の中、花吹雪と共に舞う、アルティメット・サディスティッククリーチャーめいて。

 

 

 「うっ!?」

 

 (なんだっ! この正確な迎撃は!?)

 

 余裕を持ってリリーブラックの周囲を周回。低威力の武装を駆使し、徐々に艦の戦闘能力を奪っていた、ザクⅡサバイブ。

 

 そのボルキャンサーのパイロット、マサシ・シザールは、砲台の一つから突然、正確無比な迎撃を受け、驚愕の呻き声を上げた。

 

 表情を強張らせ、自機の各部バーニアをフルドライブ。

 

 強引に進行方向をずらし、次々に迫りくる砲撃を躱していく。

 

 アンバックを交え、舞踏めいて宇宙を駆けるザクⅡサバイブ、ボルキャンサー。

 

 直撃こそせずとも、砲弾が次々にボルキャンサーの四方八方を過ぎ去り、虚空へと消えていく。

 

 全弾回避成功。

 

 (これは! まさか!)

 

 しかし、すぐさま感じる違和感。

 

 マサシは背筋に冷たいものを感じ、歯噛みした。ヘルメット奥の額から冷や汗が噴き出す。

 

 (あの砲手は! 砲撃によってこちらの回避方向を制限し、各砲座がより狙いやすい空間座標へと! 俺のボルキャンサーを誘導している!!!)

 

 何たる賢しさ!

 

 何たる絶技!

 

 それらを共に持ち得る一流の戦士があそこに存在する!

 

 まるで、恐るべき妖怪ツチグモが張り巡らした、巨大蜘蛛の巣に誘い込まれるが如き所業!

 

 改めて、恐るべき敵対者の存在に驚愕するマサシだった。

 

 ビー! ビー!

 

 「はっ!?」

 

 別の敵機から捉えられ、狙い定められたことを知らせるロックオン警報がザクⅡコックピットに響き渡った。

 

 リリーブラックからの砲撃にのみ気を取られていたマサシは、砲台だけではなく、トマホークやセイバーフィッシュといった敵機にも狙われていることを思い出し、再び呻く。

 

 その時。

 

 ザクⅡサバイブ、ボルキャンサーのコックピットが衝撃に揺れた。

 

 「この俺が…被弾しただと!?」

 

 一瞬、迫る宇宙戦闘機へと意識が逸れたことを逃さぬ一撃。

 

 それは、肩部を直撃し、そこに配されていた照準用レーザーポインターを破壊していた。

 

 その事態を受け、マサシはじめ、ユウイチ、ガイといったザクⅡライダーたちは、これまで絶対としていた自信を打ち砕かれ、一時的に狼狽する。

 

 与し易しと見ていたミリシアたちの中にも、恐るべき実力者が存在し、下手を打てば自分たちも死に直面する。

 

 そんな現実に直面して。

 

 もう、ザクⅡの性能頼みの突撃は通用しない。

 

 悪戯に敵を侮れば、死あるのみ。

 

 これまでの思い上りに動く理由としていた、当たらなければどうと言うことはないといった考えと、それを当たり前のこととしていた考えなしの突撃は、必ずや死を招く。

 

 よくよく気を抜かぬべし。

 

 一度、同座標に集まった三人のザクⅡライダーたちはそう思い直し、これより慎重に攻撃すべしと、再び散開しようとした。

 

 強敵と相対し、傲慢となった自分たちを一時的に戒め、すぐさま、戦場の高揚と血に己を見失い、再び、強敵に出会い傲慢さは死を招くという戦訓を得て己を戒める。

 

 忙しいことだ。

 

 

 

 だが………それも遅すぎた。

 

 

 

 そんな戦訓はもう意味はないのだ。これより死に逝く者に、未来のための戦訓など必要あるまい?

 

 

 慎重にアンブッシュの準備を重ねに重ねたニンジャに隙を見せたなら………何者も未来はありはしない。

 

 その時は、当然のように訪れた。

 

 閃光と共に多数の命の花が散っていく戦場を、ミサイル忍殺弾が切り裂くように飛翔していく。

 

 それは、メガ粒子よりも速く宇宙空間を貫いていった。通常の三倍のスピードを誇る赤い機体すら凌いで。

 

 続く、ユニーク・ジツを放ったニンジャ本忍も同様だった。速い!

 

 

 

 直撃コースを取り、そのまま無慈悲にボルキャンサーへと着弾するミサイル忍殺弾。

 

 

 

 着弾の衝撃と爆発に飲み込まれ、何が起きたか認識することも許されず、マサシは意識は閃光と爆発に飲み込まれ消えていった。

 

 (まずは一つ)

 

 それだけではない。

 

 射出されたミサイル忍殺弾を追いかけるように宇宙を駆けたネオスニンジャが、エビルダイバーとメタルゲラスの至近へと迫り、クナイ型メガ粒子スリケンの弾幕を撃ち放つ大盤振る舞いを演じた。

 

 まるで、黒ひげ危機一髪のトイ同様に機体全体を串刺しにされる両機。

 

 粒子スリケンが次々に弾け、装甲と内部の電子機器を焼き穿つ。

 

 すぐさま機体維持の限界を迎え、爆発四散するエビルダイバートとメタルゲラス。

 

 (二つ、三つ)

 

 冷酷に斃したカイゾウシュジツ済みニンジャモビルスーツの数を数えるニンジャスレイヤー、ネオスニンジャであった。

 

 さて、マサシ同様、ユウイチとガイも、我が身と自機に何が起きたのか理解できぬまま、その命を散らし、諸共に爆散四散。サヨナラと相成った。

 

 スゴイ! ツヨイ!

 

 (残るは九つ…いや十か?)

 

 しかし、ネオスニンジャ、その程度のことは当然、大したことではないといった態で、これより殺すべし対象の数を数えるのだった。 

 

 サツバツ!

 

 

 

 「やれる!」

 

 

 

 ユウは、砲台の座席の上で、もはや震えることのなくなった身体を奮い立たせ、鋭く叫んだ。

 

 もう、戦場に立つ恐怖によって、二連装砲の操作管を握る指先を震わせていた少年はそこにはいなかった。僅かな時間ながら、敵機に立ち向かい着弾させた経験により、少年は戦士としての成長を果たしていた。

 

 男児、三日会わざれば刮目してこれを視よ。

 

 そんな諺を思わせる成長振りであった。

 

 「このまま…撃墜す…」

 

 (よくやったお、少年。後は任すお!)

 

 「えっ!?」

 

 突如、何処からか届いた思念がユウの頭の中に届いた。獲物をしとめる算段を終えた、凶悪なる殺戮者の思念だった。

 

 そんな思念には、お前たちがザクⅡライダーたちの気を引いてくれたおかげで、ずいぶんと屠り易くなったとの想いが含まれていた。

 

 (誰!? 一体???)

 

 感応波を受け、ギョッとしたユウは、戦闘中であるのにも関わらず、その感応波の送り主を探してしまう。

 

 無意識に、己の脳内酵素スウェッセム・セル…ミノフスキー粒子を通じて意思を伝える脳内細胞…を働かせ、問い掛けの思念感応波を放っていた。

 

 (オイオイ…いくら驚いたからって、敵機から目を逸らすなお…まあいい、すぐに解るお)

 

 そのような感応波の返事をユウが受けて程なく、ブラックリリーや直鞍の連邦宇宙戦闘機軍各機とも別の座標から、メガ粒子よりも遙かに疾く速い閃光が輝き、宇宙空間を貫き、ザクⅡサバイブ、ボルキャンサーを無慈悲に屠っていった。

 

 さらに!

 

 ボルキャンサーへと接近していたザクⅡサバイブ、エビルダイバーとメタルゲラスも、同様の閃光を放ち次々と撃墜されていく!

 

 おお!

 

 何たるタツジンか! 

 

 しかし、その一瞬の修羅の光景も、これより積み上げられるシザンチイカワ(屍山血河)のサキガケに過ぎなかったのである!

 

 殺し間にされた宙域で9へと続く

 

 





 ユウ・カリン

 陽光の如き黄金の精神を魂に宿し、妖精たち舞う太陽の畑を見守る、大妖怪めいた少年の姿を幻視したりする。

 後々、おにいちゃんはおしまいみたいなTSもありかも?


 ネオスニンジャことネオソクディ・ヤルオーダー

 宇宙世紀のニンジャスレイヤーで、サイド2のブイアイピーバンチ出身のアナハイムエレクトロニクス社員。

 コロニー福祉公社地上部隊の司令官トト・カサネテ31歳とは同級生であり、普段は彼女と同じサイド2なまりで会話をする。

 語尾に、だお、お、を多用。

 なお、ニンジャ化した者は長命になっており、見た目通り肉体は20代前半を維持している。

 ニンジャ粒子変異混成ミサイル忍殺弾・メガ粒子もオマケしてあるよ!

 うーん、ネーミングが長すぎる。

 ニンジャ粒子ミサイルや、変異混成ミサイル…あるいは、単に忍殺弾表記でいいかな。

 それはともかく、アンブッシュによって戦場へとエントリーした彼のアイサツは次回で。

 トト・カサネテ

 人工音声みたいな容姿と設定しやがって!


 補足

 スウェッセム・セルとは、ニュータイプとされる人々が、特に脳内に多く持つという酵素のこと。小説F91の鉄仮面の言葉によると、ニュータイプの感応波を生み出す正体とされている。

 補足2
 
 真のニュータイプの定義とは、争いを避けることでできる人々とされていますが、それ、地球上での殺し合いを終結させて、人類全体が協力して宇宙開発に乗り出した時点で達成されています。

 宇宙世紀0079年、一週間戦争を開始、続く一年戦争をも勃発させた連中は、一度、ニュータイプに到達したけれど、選民思想、差別主義に触れて退化してしまった劣化スペースノイドと言える。

 おお! 哀れ哀れ!

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