機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚 作:プリエ・エトワール
たまに表記間違いで、艦名を混同したりしているんよ。
さっきも数話閲覧して誤記を探していたら、案の定あった。
サラミス級メイフラワーの艦名が、マゼラン級のメイストームとなっていて修正しました。
早く撃沈させて、もう描写しなくていいようにしないと←ヒドイ!
「ザッ…ザクⅡ両小隊の認識用発行信号、とっ…共にすべて、きっ…消えました。のっ…残りの2小隊各機も、くっ…苦戦の模様…です」
凶報である。
もし、ミノフスキー粒子散布により通信不能となっていなければ、両小隊からの通信、途絶とでも、通信士官から報告されていたのかもしれない。
「なっ! そんな馬鹿なことがっ! ザクⅡ2小隊が壊滅…残りの2小隊も苦戦中…だと!」
(馬鹿な! 我々は優良なるジオン公国の民。その中でもエリート中のエリートであるMSパイロットだ! そんな我々が、パルチザンの反撃に苦慮している!?)
改修され、MS搭載能力と対艦攻撃能力を強化されたチべ級シャドール第一艦橋で、ハチワレン・ナイト提督が部下からの報告に触れ、困惑し、呻いた。
ナイトは、度重なる勝利を糧に育んだ…我々は絶対の勝利者である…とのイメージと、現状での苦戦のギャップ。
その差を容易に受け入れることができず、認識を改めることに苦慮していた。
一体、何だというのだ?
先程のニンジャスレイヤーとやらの叫び声?…想念?…感応波?…と、やらを使ってのアイサツより後、戦場の空気が一変した。
戦況もこちら側が推され始め、悪化の一途をたどっている。
優勢であったはずの友軍が一転、ミリシア側の艦隊と宇宙戦闘機隊に押し返され、次々と撃墜されている。
異常この上ない状況。
このまま、この戦場に残り続けることは危険であろう!
だが。
ここまで来て、ムゲンカンコスモフーズの生き残り、後継者たるユウ・カリンの身柄拘束を諦められるか?
否である!
本来なら鋭敏な判断能力を持ち合わせているハチワレン・ナイトは、優勢思想に浸り過ぎていたが故に、肥大していた自我と、栄達への欲望を押さえつけることができず、自ら勝ち目のない戦いへと飛び込んでいく。
今やミリシア・サイファー全軍が、ニンジャスレイヤーネオのバックアップを受け、真に怪物めいた集団と化しているとは思わずに。
「パッ、パプア級それぞれに共闘を呼びかけろ! 砲火を集中させて押し返すぞ! 急げ!」
「はっ!発行信号急げ!」
ハチワレン・ナイト提督の指示に従い、シャドール艦長以下、通信士官が2隻のパプアへの通信準備を整える。ミノフスキー粒子を戦闘濃度で散布している現在、距離を取って侵攻中の僚艦への通信手段は限られる。
そのための発行信号弾であった。
「速度そのまま! 大型Jミサイル発射準備! 両舷新設発射管開け! すでに敵艦隊は半減している! ここで残りの敵艦を撃沈してみせ、流れを引き戻す!」
「りっ…了解! 砲手! 発射管開け!」
「了解であります!」
艦橋に響く次の指示。それは、先の艦隊決戦前、チベ級両舷に施した新装備ミサイルの使用であった。
大気圏突入可能なザンジバル級に搭載される対艦用Jミサイルの使用である。
あらゆる手段を用い、一つでも多くの敵艦を撃沈せよ! 戦果を示せ!
そう吼えるキシリア・ザビ旗下の艦隊らしい、チベ級の装備強化であった。
その発射態勢を整える合間にも、離れていたパプア級2隻がチべ級シャドールへと接近を開始。一斉攻撃すべく態勢を整えようとしていた。
パプア級の直鞍として、数頼みのジッコ編隊も続く。
このジッコ隊も無視できない戦力である。
そんな両パプア級もまた、ただの補給艦ではなく、ザクのメガ粒子ライフルをメインジェネレーターに繋いで武装強化した改式の艦船であった。
ジッコ隊も、機体後方に複数連結して運ぶマウントラックより、ザクⅡ用の予備武装を全展開、一斉射撃できる体勢を整える。
その点、じつにキシリア・ザビ旗下の艦隊らしい強化といえた。
地球連邦宇宙軍に先んじてMSという新兵器を得ていたとはいえ、ジオン公国軍側の艦船数は連邦軍側に対して少数である。
その数の差を埋めるべく、キシリア旗下の機動突撃艦隊は、駆逐艦、駆逐戦艦、戦艦、空母、輸送艦といった画一的な運用方法に囚われるのではなく、戦える艦は武装せよと、補給艦にも戦闘能力を与えていたのだ。
基本、キシリア旗下の艦隊は、そのように狂暴であった。
それはともかく、戦況は刻一刻と移り変わっていく。
シュンライ提督旗下のミリシア軍パルチザン艦隊と、ナイト旗下のジオン公国軍機動突撃艦隊の激突の時は刻一刻と迫っていた。
「敵ミリシア軍パルチザン艦隊! マゼラン級を先陣として迎撃態勢を敷いています!」
「ふん! 生意気な! 敵の防備が整う前に仕掛けるぞ! シャドール最大船速! パプア級! 続け!」
「僚艦、横一文字陣形に移行しつつ船速上昇!」
「主砲副砲展開! メガ粒子砲で先制する!」
「了解! 全砲塔発射準備!」
「こちらパプア級バダン、攻撃準備完了。攻撃許可求む」
「同じく、パプア級フォッグ準備完了。指示を待つ」
ミノフスキー粒子の影響下でも通信可能な距離まで接近した2隻の僚艦より、シャドールへと準備完了との通信が入った。
淀みなく、ナイト提督の指揮通りに艦隊行動を取る機動突撃艦隊のパプア級。
流石に一戦して勝ちを拾ってきた艦隊である。
その艦体運動に乱れはなかった。
その一方。
「こちらカスガ。メイ・メイ艦長、Iフィールド・アンブレラ・システム、電磁トラクタービーム・システム起動準備完了です。指示があり次第、展開します」
「了解しました。本当にIフィールドは使えるのですね?」
「やってみるだけです! 今、メイストームが味方の盾にならねば、我が軍により多くの犠牲が出る! それだけです!」
「是非もない…か。メインエンジン、補助エンジン最大! 艦隊の先陣を切る! シュンライ提督に我に続けと!」
「了解! 機関最大船速!」
「発光信号! 明滅開始!」
斯くして、遅ればせながら動き出す、生き残りのミリシア・パルチザン艦隊。
「メイストームから発光信号! 告ぐ! 我に続け!」
「やってくれるか。頼むぞ、メイストーム………全艦、メイストームを先鋒に紡錘陣形を取れ!」
メイ・メイ、カスガ等の報告を受け、彼女等の座乗艦マゼラン級メイストームを先鋒…いや、盾として、敵艦隊を待ち受ける、シュンライ提督旗下の艦隊であった。
「ん? 脱出艇」
その時、Iフィールド・アンブレラ・システムとドッキングしたメイストーム艦首付近へと、接近するスペースランチがあった。
そのまま、メイストーム甲板へとタッチダウンする。
操艦の名人芸であった。
ニンジャスレイヤーネオの権能の一部を受け取り、その使徒たるフェイクニンジャとなった老人たちの小洒落た仕業である。
(こちら、オールドマン・フェイクニンジャ隊)
(ワシらがニンジャ粒子、フェイク・ギンカク・オブジェクト、フェイク・キンカク・マテリアルを使用し、Iフィールド制御を補助しよう)
(ワシらフェイクニンジャならば、これらの品々を操り、ミノフスキー粒子のフィールドをより精密に制御できるぞい)
(少しくらいの動作不良があってもワシらが補佐する。臆するなよ、若いの!)
(!? それはスゴイ! 頼みます! 御老人方!)
(任せんしゃい!)
(まだまだ若い者には負けんよ!)
(だ、そうです! メイ・メイ艦長、よろしいか?)
(無論です! ニンジャの方々のご助力、感謝します!)
ニンジャスレイヤーネオの統制する感応波を利用し、互いに思念波で情報交換。
それぞれの持ち得る力を持ち寄り、反撃の体勢を整えるミリシア(サイファー)軍の面々であった。
その感応波での連絡の速さが、パルチザン艦隊による短時間での反撃態勢構築に、多大な恩恵を与えていた。
「システムキーコード、バイオハザード! Iフィールド・アンブレラ起動! 艦前方に傘状に展開します!」
「助かる! 実弾換装済み砲塔! 準備は!」
(完了しています! 何時でもどうぞ!)
(こちらも終了しています!)
(怖いのはIフィールドをすり抜けてくる、打ちっ放しのミサイルだ! 上手に迎撃してね!)
(了解しました。 大丈夫です、我々にも感応波の影響で敵方の動きがわかります)
(任せてもらいます)
(そうこなくっちゃ! 頼もしいわ! シュンライ提督!)
(メイ・メイ艦長、何か?)
(征きます! 吾、単艦にて前進す! 後の頼みます!)
(了解した! 臆さず進みたまえ!)
「メイストーム! 前進!」
音声と感応波を状況に合わせて上手に組み合わせ、濃密に意思疎通を図るメイ・メイら。もはや、準備万端と、さらにメイストームを艦隊前面へと押し出した。
「敵、艦砲射撃! 来ます!」
「くっ!」
「ああっ!!
「きゃああっ!」
閃光と共に迫りくる幾条もの火箭。恐怖するメイストーム第一艦橋の面々。
如何にIフィールドがあるとはいえ、敵艦のメガ粒子砲を撃ち込まれることは怖かった。
もしも、Iフィールドが機能しなかったら?
もちろんお終いだ。
皆、十代後半の女性兵士たちである。
恐怖で悲鳴も上げよう。
しかし。
その灼熱のメガ粒子砲は、ついにメイストームの艦体へは一発も届くことはなかった。
Iフィールド・アンブレラは、試運転も儘ならぬままに実戦投入されて、多少、動作不良気味であった。
だが、サポートに入ってくれたオールドマン・ニンジャ隊の働きによって、当初の想定以上に防御性能を発揮していた。
「敵、メガ粒子砲! 全弾消失!」
「全艦ダメージコントロール! 損傷したブロックはあるか?」
「ありません! 全ブロック正常!」
そんな報告、確認をメイ・メイたちが終えると、全艦内にワアアッと歓声が上がった。
(やったあ!)
(私たち…勝てる!)
(ありがとう! カスガさん! ニンジャのお爺さんたち!)
(いっ、生き残れる希望が出てきた!)
(カスガさん! お爺さんたち! 生き残れたら、後でキスしてあげるわ!)
(それもキスの雨を降らせてね!)
(ははは…それは照れますねぇ)
(はははっ! ワシらは大歓迎だぞい!)
(老いらくの恋も悪くないかもしれんのう)
年若い十代後半の女性兵士たちらしい華やかな反応である。アンブレラ・システム制御室のカスガや、艦体に取り付いたスペースランチで控える老人たちも、その歓声に合わせて喜びを表した。
生き残れる希望がでてきたことも嬉しいが、これで、家族や多くの隣人を奪っていったジオン公国軍の虐殺者共に、一矢も二矢も報復できる。
ジオン公国の悪政に対抗するパルチザンとして、何よりもそれが嬉しかった。
(総員、気を引き締めて! 今がチャンスよ! ツシマ沖海戦スタイルで敵艦隊に吶喊します!)
浮かれる友軍の兵士たちに対し、メイストーム艦長メイ・メイが檄を飛ばすした。このチャンスを利用して、かねてより考えていた戦術で敵艦隊を撃破すると。
(ツシマ沖海戦スタイル?)
(そうよ! 説明する!)
メイ・メイが感応波で戦友たちへと伝えた戦術は以下の通り。
ツシマ沖海戦スタイルとは、旧世紀、ヤーパンのツシマ沖海戦で、ルーシのバルチック艦隊に対し、アドミラル・トーゴーが見せたトーゴーターンを参考とした戦法である。
アドミナル・トーゴーは、敵艦隊と相対するその折、アクシデントによりバルチック艦隊の正面へと出てしまい、どう立ち回るか決断を迫られる。
敵艦隊に対し、逃げ場を残す西側へと回る面舵を選ぶか、敵艦隊の進路を塞ぐ東側への取り舵を選ぶ。
その選択である。
その運命の時、トーゴーは東側ターンを選び、この時、敵艦隊より座乗艦が集中砲火を受けようとも、バルチック艦隊の進路を塞ぎ、これを撃破せんとした戦法である。
メイ・メイは、そのアドミラル・トーゴーの戦いを手本とし、メイストームを敵艦前方に押し出し、進路を塞ごうというのである。
無論、アドミラル・トーゴーのように捨て身ではない。
Iフィールド・アンブレラ・システムあっての勝算込みの戦術である。
Iフィールド・アンブレラがあれば、敵艦のメガ粒子砲は防ぐことができる。
生きて勝てる見込みは十分にあった。
恐ろしいものは、敵艦やジッコ攻撃艇からの、メガ粒子砲以外での攻撃である。
強力なミサイル弾を受ければ、メイストームとて一溜りもない。
それでも、メイ・メイは、この戦術を選んだ。
ミサイル対策やジッコ攻撃艇対策は、戦友の砲手たちが勇気を持ってやってくれるだろうと信頼して。
ここまで生き残った戦友たちだ。
やってやれないはずもあるまい…と。
何というオーダー!
強…いや、狂メンタル!
(あー! もー! やってやんよ!)
(足りない部分は勇気で補えって? ステキなオーダーね!)
(ええ…やってみせる…やってみせますとも!)
(みんな! 無茶いってゴメン! それでも一緒に! 征こう!)
(乗った!)
(征きましょう! 我々ならできますよ!)
(老い先短い老人を扱き使ってくれる………ふん…老人扱いされるよりマシじゃ。やって見せい!)
(ありがとう! みなさん!)
正面を塞がれた敵ジオン公国軍艦隊は、衝突を避けようと、何としてメイストームを集中砲火で撃破しようとするだろう。
そうすることで、メイストームは僚艦へと砲火が向くことを防ぎ、同時に衝突を避けて減速、方向転換しようする敵艦に、大きな隙を作らせることができる…はず。
そこを、味方後続艦に、集中攻撃させようというのである。
お味方側の戦力の少なさと、兵員の練度の低さを、勇気を持って補う戦法であった。
さあ、ツシマ沖海戦戦術が、吉と出か蛇と出るか?
メイストームの命運…いや。ミリシア・パルチザン艦隊の命運が決まろうとした。
殺し間とされた宙域で 11 に続く
まあ、あれだ。
ミノフスキー粒子下での精密なレーダー索敵が不可能な状況では、宇宙空間でも旧世紀の海戦術が有用になるってこと。
補足1
Iフィールド・アンブレラの余剰エネルギーを利用した、電磁牽引ビームの使用。
隕石やコロニーの残骸を誘引し、盾にするメイストームの戦法は、十分な準備ができていないので、まだ無理です。
簡単に説明すると、宇宙戦艦ヤマトが作中で見せた、艦の周囲を回る隕石防御リングみたいな装備ですね。
もしかすると、攻撃にも転用可能か?
マグネトロン・ハンマー!
ネタバレ
Iフィールド・アンブレラをビーム・ラムに転用させて、お爺ちゃんたちと一緒にメイストームを特攻させることは、また後にする。
Ⅴガン最終話付近のオマージュ戦法!
まだその時にあらず!