機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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 突然の戦況の変化は、敵味方を問わず混乱を加速させた。

 その混乱は、ニンジャスレイヤーネオにも例外なく襲い掛かるのだった。





殺し間とされた宙域で 13

 

 (しまった!)

 

 敵艦隊突撃と敵前逃亡者の処理に気を取られ過ぎた…あちらの連中が本命だったか!

 

 ネオが、クロショウゾクジャケット型に変容させたパイロットスーツ内部で身体を震わせた。

 

 命を奪い合う狂気の坩堝(戦場)では、僅かなミスで戦況が一変してしまう。

 

 一時的に有利な状況になってもそれは僅かな間のこと。

 

 決して気を緩めるな。

 

 勝って兜の緒を締めよ。

 

 そんなコトワザ通りの戦況の変化に、ネオは後悔せずにいられなかった。

 

 ニンジャスレイヤーとして受け継いだ記憶…ドラゴンケンドーソーやナラクの残したインストラクション…その通りであったのだから。

 

 (…いや、違うな………)

 

 (…あれ等はすべて………何らかの儀式のための…生贄だな)

 

 ハチワレン・ナイト駆るダークウイングを撃破すべく、戦闘の中心部より離れていた討伐者は、アサクラとミラードラゴンパワーアップを感じ取り、焦燥感に苛まれていた。

 

 それでも、ネオは思考を放棄せず状況を分析していく。

 

 あの2機だけが特別ではない。

 

 ザクⅡ13機すべてが、悪しき儀式のために必要不可欠な駒、道具だったのだろう。

 

 たまたま、あの2機が撃墜を免れ、そして、他の生き残りの機体より先に、その本質を露にし始めただけ。

 

 北欧の伝承ならば…魔女の大窯。

 

 あるいは…魔術師たちの間でのみ語り継がれてきた願望器、聖杯。

 

 人の身では決して実現できぬ願いを叶えるという、フユキの地を祖とした伝説再現術式の到達点。

 

 サイド4で失われた数億の命と、そのために生じた強大な怨嗟。

 

 それらを願望を叶えるための魔力とし、その魔力を注ぎ込むために錬成される器。

 

 

 アレ等は、その器を創り出すための依り代だ。

 

 

 あの2機がそういった代物と直感し、悪しきニンジャを滅ぼす討伐者が珍しく焦りの色を表情に滲ませる。

 

 悪しき存在を憎み切り、その憎しみの炎を己の討伐の原動力とするネオが、この時ばかりは怖気ていた。

 

 人に非ざるモノからの憎悪ならば、そうそうネオも恐れはしない。

 

 しかし、あれは間違いなく人に近しい何者かによってなされた人為的な歪み。

 

 同じ人でありながら、人を人と思わぬ悪鬼の所業。 

 

 同じ人でありながら、同じ人に対する何たる残酷な仕打ちか。

 

 人の生きた証である命の残滓や、恨みの残留思念。

 

 それらすべてを、まるで道具のように扱っている。

 

 悪鬼の所業…ヒドイネ。

 

 

 そんな事実に考えが至り、ネオは不意に人間の悪意の深淵を覗き込んでしまったかのような衝撃を受けた。

 

 

 ネオが、ニンジャの革新たるニュータイプの能力を活用し、周辺宙域の感応波をコントロールしていたことが裏目に出た。

 

 この戦闘宙域全体の多数の人々の意識を数珠つなぎとし、そこから多くの情報を救い上げていたため、ネオはサン値直送レベルの悪意の深淵に逸早く触れてしまっていた。

 

 アイエッ!? ナンデナンデ!!

 

 だが。

 

 (俺は…ここで立ち止まってはいられん! あれがより人間離れすれば、処置が間に合わなくなる!)

 

 精神に衝撃を受け、一瞬だけとはいえ戦意を喪失しかかったネオ。

 

 しかし、彼は自身に残されていた余力とイクサビトとしての矜持を振り絞り、再び光の翼を羽搏かせた。一度は距離を取った戦闘宙域中心部へと行き先を定め、取って返す。

 

 アサクラとミラードラゴン。

 

 これ以上の成長を阻み、手遅れになるその前に、すべてを滅ぼし塵に変える。

 

 そのために。

 

 流石はこれまで多くの修羅場を掻い潜ってきた忍討伐者である。

 

 折れかけた精神を再び奮い立たせ、倒すべき相手へと襲い掛かるべく戦場を駆けた。

 

 そう。

 

 宇宙戦艦の砲塔より撃ち出されるメガ粒子の輝きよりも速く!

 

 

 

 

 そんなネオを彼方から見守る者が存在した。

 

 

 

 対ショゴスニンジャ用レグ式ハイメガ粒子火葬砲もなく、サイキッカーが使うサイコオーラスピアーや、多次元空間結晶のカガミも生み出せぬ。

 

 魔術術式を無理矢理解体するオーラ力の幻想殺しもない。

 

 頼るべきはニンジャの革新たるニュータイプの力と、光の翼…ミノフスキーニンジャドライブ。

 

 そして、激しい鍛錬の末に身に付けたカラテのみ。

 

 そんな身体一つでどこまでやれる?

 

 

 怪異共とのイクサの経験豊富な、ネコメイジ、ヌエ、サイキッカーズ・パラ・ギルド、魔術結社トケイトウの助力もなく、眼前の修羅に単身挑むか?

 

 

 怪異を知らぬ、力弱きミリシア共の助力は、むしろ邪魔。

 

 どれ程の助けになろう?

 

 

 それでもイクサに向うか? 我が弟子たちよ。

 

 

 遠くヴァルハラと化したサイド4よりネオを見守る者…それはハヤシニンジャであった。

 

 ハヤシニンジャとは、旧神ソーより零落したカツワンソーの分身ともいえる存在。つまり、すべてのニンジャを育て上げるイクサ神も同然。

 

 北欧の神話のおいて、最終戦争ラグナロクに備え、勇者、英雄を育て上げる大神オーディンと同一視される存在である。

 

 故にハヤシニンジャは、自身の計画を阻まんとするネオを厄介な存在と認識しつつも、この私に挑むとは、今節、見所のある若きニンジャと一目置いていた。

 

 そう。

 

 弟子の成長を望まぬ師匠などいやしない。

 

 弟子が自分を追い越さないことを願う師がいるとしたならば、それは紛いものである。

 

 「若き希望たちよ………我が予想を超え、このヴァルハラへと攻め寄せてみせよ。その勝利、この身体の滅びこそ、我が喜び」

 

 「たとえ、地下に積まれた要石同様であろうと、主君の居城を支え貫く。そのようなイクサビトの心意気はよしとしよう」

 

 「しかし、精神論のみで強敵に挑むか? それでは我がザクⅡライダーたちには勝利できんぞ………むっ!」

 

 ハヤシニンジャの依り代たるオディーン・ハヤシが、もう一度戦場を見渡した後、ニヤリとほくそ笑む。

 

 若き希望は一つではない。

 

 戦場にあと二つ。

 

 戦場の外より高速で近付いてくる希望が二つ。

 

 その事実に気付き、オディーン・ハヤシはほくそ笑んだ。

 

 「見せて貰おうか。若き希望たちの実力と命を共にする機体の性能とやらを」

 

 

 

 

 「チィィッ! オージャー! 援護を頼む!」

 

 「こちらも弾数が残り少ない! 連携してくれ!」

 

 ザクⅡサバイブ、アサクラとミラードラゴンが、半端ない変容を遂げはじめた最中、他のザクⅡサバイブを駆るライダーたちは、それどころではなかった。

 

 すでに機体は満身創痍。

 

 いつ何時、撃墜されても可笑しくない有様。

 

 自機の維持以外の異常事態を気にしていられる状況ではなかった。

 

 だからこそ。

 

 彼らはアサクラとミラードラゴンそれぞれに食われ、強制融合させられてしまうのだ。

 

 哀しいかな。

 

 劣った者は優れた資質を示した者に、生き残るための養分とされる。

 

 それが古から続く戦場のルール。命の円環。その実態だったのだから。

 

 彼らはまだその運命に気付いてはいなかった。

 

 

 「全弾! 持っていく!」

 

 

 残るザクⅡサバイブの一機ベルデが、機体各部に残されていた武装を駆使し、一斉射に出た。

 

 不利な状況をその一撃で覆すための行動であった。

 

 考えてみて欲しい。

 

 いくら強力な武装を持っていても、使わぬままに撃破されてしまえば、ただの愚か者だ。

 

 宝の持ち腐れ、猫に小判、豚に真珠である。

 

 今この時こそが残弾すべての使い時と、リュウヘイ・ロイカーは持てるカードをすべて切った。

 

 その後の事は生き残ってから。

 

 吉と出か、凶と出るか。

 

 賭けであった。

 

 ジッサイ。

 

 ベルデによる広範囲攻撃の効果はあった。

 

 如何に感応波で敵機の行動の先読みができたとしても、トマホークやセイバーフィッシュといった宇宙戦闘機の回避能力は限られている。

 

 才能に恵まれた優れたニュータイプだとしても、実機の性能と幸運が低ければ死ぬときは死んでしまう。

 

 まして、オールドタイプのパイロットならば、生き残れる可能性は微々たるものだ。

 

 ベルデが放った一斉射に被弾した数機が撃破され、複数人のパイロットが命を散らせた。

 

 だが、ベルデはそこまでであった。

 

 「ん…援護にきてくれたか、オージャ」

 

 周辺状況が一斉射撃後の爆炎によって確認し辛くなっている状況下。

 

 至近距離まで接近したザクⅡサバイブ、アサクラの信号を確認したベルデのパイロット、リュウヘイ・ロイヤーの意識はそこで永遠に途絶えた。

 

 ベルデは………アサクラに食われたのだ。

 

 大蛇を思わせるようにアサクラ本体から伸びたザクⅡヘッドに食らい付かれ、そのまま丸呑みにされた。

 

 さらに、アサクラより伸びた複数のザクⅡヘッドは、次々にベルデの広範囲攻撃を受け撃破されたトマホーク、セイバーフィッシュの残骸を飲み込んでいく。

 

 「あ…あ?………ああ…あああっ!?」

 

 「はぇ?…え…ぇええええ!?」

 

 「…(声も出ない)!?」

 

 突如として戦場に出現した異形の怪物の姿と、次々に捕食されていく僚機の有様に、ミリシアのパイロットたちが恐慌状態へと陥っていく。

 

 目の前に突然、まるで宇宙的恐怖神話のごとき光景が広がったのだ。

 

 サン値直送にもなろう。

 

 その上、ミリシア軍の兵士たちの多くが、お互いに思念波で繋がっていたために、その恐怖はすぐさま全体へと広がっていき、多くの者たちが恐怖へと対抗できず、恐慌状態が拡がっていった。

 

 

 (逃げろ! 今すぐ!)

 

 !? !? !? !? !?

 

 そんなネオの思念波を受け、正気を取り戻した生き残りのパイロットたちが自機を最大加速させ、ザクⅡサバイブACT2ジェノサイダー(アサクラ)より距離を取ろうと持てる力を振り絞る。

 

 だが。

 

 アサクラからは距離を稼げたのだが、生きて逃げ伸びられた少女パイロットたちは少数だった。

 

 ザクⅡサバイブACT2は一体だけではなく、アサクラがベルデを捕食した影で、ミラードラゴンがシンジ・キッド駆るリュウキを捕食していた。

 

 生き残りの少女パイロットたちの機体は、ミラードラゴンの次の捕食対象とされた。

 

 そんなミラードラゴンから伸びたザクⅡヘッドに捕まり、逃げ遅れた大多数のトマホーク、セイバーフィッシュが丸呑みにされてしまう。

 

 少女たちパイロットたちは、生きながら食い殺されたのだ。

 

 無論、残るジオン公国突撃機動軍の誇るザクⅡも同様だった。

 

 タイガ・トージョー駆るザクⅡサバイブ、デスワイルダー。

 

 ミツル・ギガゼール駆るザクⅡサバイブ、ガゼルホーン。

 

 これらの機体も、戦友であったはずの僚機によって次々と捕食され、姿を消していく。

 

 戦友に捕食された彼らの恐怖と怨嗟を、極上の料理に足すソース代わりにされて。

 

 それと半比例し、ザクⅡサバイブACT2ジェノサイダー、アサクラ、ミラードラゴンの体積とザクⅡヘッドの数は、増大していった。

 

 

 殺し間とされた宙域で 14 続く 

 

 

 




 ネタバレ1

 別にここでザクⅡサバイブ13機が全滅しても戦いは終わらない。

 魔女の大窯(聖杯)の依り代。

 その代用品は、ハヤシニンジャがサイド4に新たに用意した。

 ザクⅡサバイブ、ファフナー・エルンヘイヤルモデル。

 パイロットは、死亡後、エルンヘイヤルとして復活させられたミコト・セキグチ。

 ヴァルハラとなったサイド4ムーアは地獄だぜ。

 死んでも復活させられて、儀式が終了するまで殺し合いを続けさせられる修羅の巷と化したのだから。


 ゆゆっ!?


 ネタバレ2

 次回で、ネコメイジのモビル・フォートレス・ヤタガラスと、フルコピーザクⅡアーマード・ユーギオーガが戦場に到着する。

 ヤタガラスは、その名称通りにヤタガラスの姿を模した機体。

 主な武装に脚部有線式ハイメガ粒子砲3門、頭部ビームバルカン2門、翼部フェザーミサイルビット。追加オプションにザクバズーカ用相当の核弾頭複数、近接戦闘用にオーラサイコスピアー。

 防御兵装に、サイキック増幅装置を利用した多次元空間結晶での攻撃無効化機能あり。

 一部の武装の元ネタは、超人ロックのサイコスピアとラフノールの鏡。

 フルコピーザクⅡアーマード・ユーギオーガは、ネコメイジがフルコピーしたザクⅡに、ルナチタニウムを使用した防御用アーマーとシールド、脚部に増槽と大型ブースターを追加装備した機体。

 アーマードユニットは変形機構付き。

 追加武装は、対ショゴスニンジャ用レグ式ハイメガ粒子火葬砲。

 火事の炎のような赤い機体カラーと火葬砲以外は、他に複数機存在するスターベア隊の仕様と同じ装備。

 ちなみに、指揮官用の一本角は取り外され、ヒートホーンが装備されています。


 ヤタガラスのパイロットは、ネコメイジのサイキッカーであるレイウルージ・オクウカイ。

 ハンゴクオーは獲り付いてはいない。

 同じくユーギオーガのパイロットはオーリン・リン。

 カッシャカシャにしてやんよ。

 にゃーん。

 主人公のユウ・カリンが、リーン・イオギーのオーラ力を使って、魔女の大窯(聖杯)に編み込まれた願望器精製術式を強制解体し、解呪しちゃうのはその後の後くらいかも。
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