機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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かくして、少女たちは宇宙(そら)に上がった

 かくして、少女たちは宇宙(そら)に上がった

 

 本作は宇宙世紀のパラレルです。

 

 それと、本作は、棄民とは侵略の先兵………国に見捨てられた民を装い他国の土地に勝手に入植、原住民とトラブルを起こして後、自らの保護を名目に植民地主義国家の軍隊を呼び込む………であるという、現実での事実を理解している読者のみ対象としている作品です。

 

 棄民/国家に見捨てられた人々

 

 であると、言葉通りにしか物事を捉えられず

 

 棄民/侵略のための道具

 

 という、言外の事実を読み取れない方は、速やかにブラウザバックしてください。

 

 一つ例を挙げれば、ガンダムシリーズ作中のジオン公国軍、残党側の人たちがいう「我々は棄民で体制側に虐げられた存在だ!」との自己アピール、被害者コスプレは、じつは、自分たちが加害者、侵略側であるということを、自ら認める自白なのです。

 

 これも遠回しな作中状況の説明、演出です。

 

 ですから、表面的な事柄にだけ捕らわれず、そういった言外のことも理解しましょう。

 

 さて、私事で恐縮ですが、本作の作者である私プリエ・エトワールは、過去、上記の事柄が理解できていない、自称、ガンダムファン(複数人)に粘着された経験があります。

 

 彼らは、ガンダム作中の加害者側である一部スペースノイドが、本当に地球連邦政府が実行した棄民政策(ジオン公国側の自己正当化のウソ)の被害者であるなどと信じており、まったくコミュニケーションが成立しませんでした。

 

 そりゃ、棄民=政府に見捨てられた人々と思い込んでいる人たちと、棄民=侵略者の手下、道具と理解できている人では、物語を視聴する上での前提が違い過ぎて、理解度合いもまったく違い、会話になりゃしません。

 

 その上、彼らは自分の無知に気付きません。俺こそが作中の真実を理解している側で、俺の認識こそ真実。それを理解できない愚者に真実を教えてやろうと、私が作品を更新すると、常に上から目線で感想を送りつけてきました。

 

 まるで、ヤバい新興宗教にドハマりした信者に、教団への入信を強要されているような気分でした。

 

 正直、こういった方々とは二度と関わり合いになりたくないので、こうして、先に断りをいれておきます。

 

 

 

 

 

 かくして、少女たちは宇宙(そら)へと上がった 

 

 

 

 

 

 大気圏離脱用シャトルが地球の重力を脱し、大気圏を抜けると、そこもまた人類の生存圏であった。

 

 

 

 宇宙世紀。

 

 地球連邦政府の下、過去の悪癖…各国家の身分制度や所得の格差、民族、人種などを原因とした差別等々…から解き放たれた人類は、

 

 「うるせえ!我々は等しくスペースノイドだ! 過去の差別など知ったことか!」

 

 との地球連邦政府の大号令の下、その生存圏を、地球を軸とした月の裏側までの広大な空間に拡げていた。

 

 いわゆる、地球圏という生存圏の宇宙開発による獲得、その維持である。

 

 そんな地球圏内の各ラグランジュポイントに設置された人口の大地スペースコロニー内部では、日々、スペースノイドたちは懸命に働き続け、人類の生存圏拡大という大業を引き継ぐべき子供たちを産み、育て、そして、死んでいった。

 

 地球の表面でのみの汲汲とした生活では決して得られなかった、満たされた幸せの中で。

 

 しかし―――

 

 時に宇宙世紀0079年

 

 かねてから地球連邦政府に対し敵対的であった月の裏側に位置するサイド3は、ジオン公国を名乗り独自の軍隊を創設。地球連邦政府に対し独立戦争を挑んだ。

 

 ジオン公国を支配するザビ家を筆頭とする多数の差別主義者たちは、地球圏は我々、優れた存在に管理運営されるべきであると主張し、決起したのだ。

 

 牢獄に等しいスペースコロニーへと!

 

 棄民として捨てられた我々には地球連邦政府を倒す大義がある!

 

 立てよ国民!

 

 斯様な弾圧の事実などまったく存在しないにも関わらず、自己正当化の末の狂気めいた差別主義の下、人類史において最悪の大虐殺は開始された。

 

 ザビ家率いるジオン公国軍は、自分たちに従わない者たちは生きる価値がないと切り捨て、多数の一般国民の居住する各サイドコロニーを次々に攻撃。容赦なく住民たちを殺害していった。

 

 ついには、わずか数週間で110億に達していた人類の総人口の半数以上を死に至らしめる。

 

 その時まで、地球連邦政府は、0079年の段階で総人口の大多数、じつに90億※もの人類を宇宙に上げ、スペースノイドとしての生活を送らせていた。

 

 ※宇宙世紀が半世紀を経過した時点で、人類の過半数が宇宙住まいに。この時点で地球人口から宇宙に移動する宇宙移民は停滞していたが、地球上の残った障害をもって地上に留め置かれた人々と、老人たちの死亡、宇宙での新生児増加という要因により、このような人口比率になった。

 

 過去の時代の国家間対立や、その他諸々の差別から解放され、統一国家の下、地球圏で有史以来最大の繁栄を極めていた人類であったが、ザビ家率いるジオン公国軍という、差別主義に狂った集団のため、一時的に文明社会を停滞、精神的には後退させるという大被害を被った。

 

 そんな狂気の時間は、一年戦争という大戦争の末に地球連邦政府の勝利と共に終了し、幕を閉じる。

 

 狂気の中心となっていたザビ家は事実上滅亡。

 

 その支配下であったサイド3政府も公国制を廃し、ジオン共和国を名乗って休戦協定を地球連邦政府と締結。

 

 事実上の降伏に踏み切る。

 

 こうして、一年戦争は人類にとって過去の歴史となった。

 

 再び人類は理性の光の下で団結し、失ったものは惜しみつつも、そのことに囚われずに前に進んでいくと思われた。

 

 だが。

 

 当然の如く、戦後の人々の心は荒んでいた。

 

 人類の全人口の半数以上を死に至らしめた、ジオン公国軍関係者の一部生き残りたちはもう後には引けず、敗戦後も敗北を受け入れずに死ぬまで戦い続けた。

 

 大義無き大戦争の戦犯、大量虐殺者としての戦後を生きることを、受け入れられなはしかったのだ。

 

 また、地球連邦側の人々も、凄惨な状況下では精神に傷を負わずにはいられず、生きるために戦い続けるという、人の業に飲み込まれようとしていた。

 

 もはや、戦後の地球圏において理知的な思考を保てる者は少なかった。

 

 官民、経済界共に理性的な行動は極少数。いつ他者によって生命を奪われるかわからない状況下で自己の利益確保に汲々とし、とくに連邦軍人たちの精神状況は最悪であった。

 

 先の一週間、一年戦争で多数の戦死者を出したため、極端な若年化が進み、軍内部の統制能力は著しく低下。

 

 その一方、前線の厳しい戦場に立つことの少なかった指揮官、後方の背広組の横行、官僚たちとの癒着が、新たな戦後の問題となっていた。

 

 とくに目立ち始めたのは、連邦軍内部の各派閥トップを事実上の盟主とした、軍閥化である。

 

 彼等は、それぞれの立場でジオン公国軍残党狩りを名目に、天文学的な軍事予算を地球連邦政府に要求。同時に旗下戦力を私兵同然に運用し始めた。

 

 さらに高級将校たちは、ジオン軍討伐の大戦果を盾に、地球連邦政府の上院議員資格までをも要求。力を失っていた地球連邦政府の政治家、官僚たちは、この過度の要求をどちらも飲み込まなくてはならなかった。

 

 結果、莫大な軍事費が軍側から連邦政府へと要求され、地球圏各地の復興資金を圧迫していく。

 

 軍側が新たな要求を議会に提出する度に、本来なら第一とすべき、戦争被害者である一般国民への各種ケアが疎かにされていった。

 

 民衆のケア含む地球圏各地の復興。

 

 軍事費の激増は、その復興の歩みそのものを遅らせ、緩やかなものにしていく。

 

 こんな時、連邦議会は力なき一般国民の代弁者でなくてはならなかったのだが、それをできる政治家は存在しなかった。

 

 いるにはいたのだが、それらの主張をしても黙殺された。

 

 そんなの状況では、他の物政治家たちも保身のために沈黙するしかなく、元々、大した政治力もない政治家たち含め、官民どちらの立場の誰も彼もが、その状況に文句を言えはしなかった。

 

 過去のジオン公国軍の悪行があまりにも酷過ぎたために、連邦軍側に、その残党討伐のための必要な措置だと言われれば、どのような立場の大物も反対などできはしなかった。

 

 いるとすれば、そういった状況を産み出す元凶であったにもかかわらず、すべては地球連邦政府が悪いと、自分たちの悪行、大罪の責任を敵対勢力に擦り付け、大虐殺行為を正当化したジオン公国軍残党ぐらいであった。

 

 

 ―――いや。

 

 

 そう言える勢力が、もう一つだけ存在した。

 

 もっとも、その勢力は、それを言葉にはせず、行動で示したが。

 

 

 後に、地球連邦軍内部の軍閥同士、そして、地球に舞い戻ってきたジオン軍残党勢力アクシズといった輩を、二虎競食の計によって互いに潰し合わせ、地球圏より排除した宇宙の電気屋さんアナハイムエレクトロニクスである。

 

 戦後、サイド3でジオン公国軍に各種兵器を納入していたジオニック社を、アナハイムは率先して買収。

 

 彼等は軍事産業へも進出し、その立場で連邦軍を支えるポーズを取りながら、各軍閥を地球圏の支配権を餌に焚きつけ、殺し合わせた。

 

 さらには、デラーズ・フリート、アクシズといった輩も巻き込み、今後の人類、再度、民主主義化していく地球圏にとって不要な連中を潰し合わせ、次々に排除していく。

 

 そう。

 

 無慈悲に。

 

 アナハイムのこういった一連の行動には、どういった意味があったか?

 

 答えは簡単だ。

 

 そもそもアナハイムエレクトロニクスは、一般スペースノイドと運命を共にするスペースコロニーのインフラの管理者であったということだ。

 

 すなわち、スペースノイド一般層の繁栄…イコール、アナハイムエレクトロニクスという組織の繁栄…という実態があったのである。

 

 全人類が統一され、民主主義で選ばれた政府。そんな体制下では、一般民衆こそが主役である。

 

 アナハイムエレクトロニクス社は、そんな一般民衆側が、どんな軍閥にも負けずに最終的に勝利すると信じ、それらの人々に寄り添った。

 

 それ故の、戦後の一連の政治への経済的、軍事的介入。軍事産業アナハイムグループとは、数多あるアナハイムグループ企業群の側面の一つでしかない。

 

 そのようにして、常に一般のスペースノイド側に立っていた宇宙の電気屋さんアナハイムエレクトロニクスは、たとえ長い時間を必要としても、執拗に人類社会の敵と戦い続け、当然の如くその闘争に勝利していった。

 

 宇宙世紀100年代初頭。

 

 アナハイムは、テロリスト、マフティーことハサウェイ・ノアが暴走するようにクスィーガンダムを提供。その一方で、地球連邦軍側には同レベルの性能のオデェッセウスガンダムペーネペローを提供。またも、二虎競食の計略を用い、両者を操り、殺し合わせた。

 

 結果、クスィーガンダムは電磁バリアーの罠によって連邦軍に敗北し、ハサウェイ・ノアは捕縛される。

 

 ハサウェイの罪の公表により、当時、地球連邦軍内の最後の軍閥の長ともいえる立場だった父親、ブライト・ノアは連邦軍内で立場を失い失脚。政治家の道を断たれた。

 

 こうして、アナハイムの闘争は一時的に終了する。

 

 ブライト・ノアの政界進出を阻み、地球連邦軍内部に残っていた、エゥーゴ閥から続いたロンド・ベル閥を事実上潰したことで、アナハイムによるこれら一連の、二虎競食の計略を用いた謀はすべて終了する。

 

 妻ミライの実家、ヤシマ財閥と旧エゥーゴの面々を後ろ盾とするブライト・ノア。彼を首魁とするロンド・ベル閥を潰したことで、アナハイムは地球連邦軍内部に居座った一年戦争後に雨後の筍のごとく現れた軍閥すべて排除したのだ。

 

 その連邦軍内部から地球圏の政治を壟断していた軍閥排除の終了もあり、地球圏に居住するスペースノイドたちには、改めて本来の選挙権が戻された。

 

 ジオン公国軍の大量虐殺によって、一時的に制限されていたスペースノイドたちの権利が晴れて戻されたのだ。

 

 残る地球連邦軍の将校たちも、ロンド・ベル閥の崩壊で、もはや戦後ではないと考えを新たにし、これに協力していく姿勢を示した。

 

 かくして、軍部の軍事力を背景とした政治介入・軍閥政治の恐れはなくなり、地球圏に居住する人々は、安心して選挙で自分たちの意見を届ける代表者を選出し、自分たちの未来を決める権利を回復したのだ。

 

 

 もっとも、それは今の時代よりもかなり先の話である。

 

 

 時に宇宙世紀0084初頭。

 

 

 この時、アナハイム上層部は、核武装のガンダムを与えてデラーズ・フリートを暴走させ、ジオン公国軍残党多数の排除。連邦軍内部のジョン・コーウェン閥、グリーン・ワイアット閥排除に成功していた。

 

 だが、地球連邦の一般民衆と、彼らに寄り添うアナハイムは、新たな敵対勢力との暗闘に突入していた。

 地球連邦軍内の特殊部隊ティターンズ台頭への対処である。

 

 一軍人の立場でありながらも、連邦上院議員の資格を持つジャミトフ・ハイマンという男に支配された私兵集団ティターンズ。

 

 アナハイム上層部は、この連邦軍内部の新派閥を叩き潰すべく、ジャミトフのライバルであるブレックス・フォーラとの接触をすでに開始していた。

 

 ブレックス・フォーラは、ジャミトフ・ハイマン同様に、選挙を経ずに地球連邦政府上院議員資格を持ち、戦後、宇宙移民時の宇宙引っ越し公社への借財故に、選挙権を制限された大多数の民衆の敵であった。

 

 この時代、宇宙引っ越し公社やコロニー公社へと多額の借財をしていた宇宙移民たちは、その返済が住むまで選挙権が制限されていた。

 もちろん、返済が完了すれば選挙権は再交付されるのだが、一年戦争の被害復興のため、その返済は滞りがちであった。

 

 戦前のように、人口を制限し、すべての宇宙移民たちに職と高い月々の給料を与え、安定的な借財返済をさせるとはいかなくなっていた。

 

 そんな状況下、地球連邦政府の上院議員の権利を得た軍閥の長たちが、民主主義と民衆不在となった政治の世界に、裏口入学のごとく入り込み、それを歪めて壟断していく。

 

 まるで、前時代の先進国指導層の国を越えた談合の如くに。

 

 アナハイム上層部は、このブレックス・フォーラという破廉恥極まりない男に、連邦軍内部で新派閥を立ち上げさせ、またも、後の人類、地球圏にとっていらない連中を対立させ、派手に殺し合わせるつもりでいた。

 

 二虎競食の計は、こういった連中を皆殺しにするまで続く。

 

 その準備は、軍事関連のアナハイム旗下の組織多数で急ピッチで進行していた。

 

 そんなアナハイム旗下の組織の一つ。民間軍事産業コロニー福祉公社の面々も、同様に忙しい日々を過ごしていた。

 

 

 「見て見て! 宇宙移民初期の人たちも、私たちと同じ風景を見ていたのかな!」

 

 

 大気圏からの離脱を果たしたシャトルの窓越しに、視認できる丸みを帯びた地平線を見下ろし、一人の少女が近場で宇宙遊泳する二人に声をかける。

 

 そう声をかけた少女…サニア・ミルキズムも、同僚のルーナ・フェアチャイルド、ステラ・サフィール同様、シャトルの客室ブロックで宇宙遊泳をしていた。

 

 地球の重力から解放された身体を、本来のホームグラウンドである無重力空間に再び馴染ませるための準備運動。真っ先にその準備運動を開始したのは彼女だった。

 

 そんなサニアの問い掛けに、ルーナ、ステラが順番に応じる。

 

 「そうかもね。ちょっとロマンティックよね。こんな光景が見られるなんて。戦時中には思いもしなかったわ」

 

 「本当。当時はコロンブス級の清掃員兼ジムキャノンのパイロットとして、若い身空で命を散らすものと思っていたものね」

 

 「そうそう! こうしてゆっくり生きて地球を見下ろせるなんて、今でもビックリよ! これも、我等の母艦ビッグフェアリーのみんなの御蔭よね。あの時、ゲルググを撃墜出来てなければさ………」

 

 「…そうね。でなければ、私たちがア・バオア・クーでメガ粒子に焼かれていたわ………」

 

 「…みんな、生きてるかなぁ………」

 

 「…うん…???…って! みんな公社で立派に勤務中でしょう! 勝手に殺さない!」

 

 地球連邦軍の軍服を基調にしてアレンジされた軍服に身を包む三人の少女は、そう語り合い、アハハ…と談笑し合った。

 

 そんなころころと楽しそうに談笑し合う彼女たち。その容姿を見て見れば、あろうことか、全員、15、16歳といった年齢である。つまり、戦時中は11~12歳だったということだ。

 

 どれほど、一年戦争当時の虐殺が深刻であり、そのため、どれだけ多くの若年兵が動員され、前線へと送り込まれたかを、彼女たちの今の年齢、容姿が物語っていた。

 

 そんな三人は、アンバックの要領で手足を動かし、無重力空間で可憐に舞い踊っていた。さすがは歴戦のパイロットといった所作だ。もっとも、衣服面はその可憐さをさらに高める効果には乏しかった。

 

 彼女たちが着用するコロニー福祉公社製アレンジ軍服は、少々、野暮ったかった。

 

 女性のボリュームある頭髪を納められるほど軍帽が大型化した以外、上半身部分に大した変更点はなかった。元々の連邦軍の若年兵用軍服と大して変わらなかった。

 

 その一方、下半身部には大幅な変更点があった。臀部が膨らんだボトムスを履き、その上に太ももまである黒のロングブーツを履くという仕様へと改変されていた。

 

 そのため、広がるプリーツをひらひらと踊らせるスカートとも、ピッチリとした身体のラインに張り付いたタイツとも縁がなく、本来の若年兵用の連邦軍軍服と一線を画していた。

 

 当然、若い肢体をより強調する本来の着こなし方も、喪失している。

 

 それでも、無重力化で遊泳し、自由に舞い泳ぐ彼女たちの魅力は、それほど削がれることはなかった。下半身のラインを晒さない軍服には、その軍服なりの長所がある。

 

 サニアも、ルーナも、ステラも、恥じらうことなく上半身同様、存分に下半身部分を動かし、無重力化でしか実現できない様々な動作を実現していった。存分に重力から解放された我が身を無重力へと慣らしていく。

 

 「…ねえ、そういえば今度、私たちが受領する機体のことなんだけど、何か聞いてる?」

 

 「ん? 残念だけど何も聞いてないし。トト姉も知らないみたいだったよ」

 

 「機密に該当するのかしらね? …まさか…新型なのかしら?」

 

 他に聞く者もいないのに、ちょっと声を潜めて語り合う三人。そうするに足るほど、三人の宇宙世紀ひそひそ話は物騒な内容だった。

 

 「まさかねぇ………ガンダムだったりして?」

 

 「ははっ! まっさか~!」

 

 「ないない。前のGPシリーズの件で、アナハイムのガンダムはお蔵入りでしょ? だからさ、うわさに聞く連邦軍とジオニックの技術を合わせた、ハイザックとかいうヤツかもね」

 

 「ワンチャン、そのプロトタイプとか?」

 

 「ジオニックの力が火を噴くのかしら?」

 

 「え~! 時代の流れとはいえ、敵だった連中の技術を使った機体は抵抗あるな~」

 

 「あら? そんな考えじゃ、これからのモビルスーツの性能強化には対応できないんじゃない?」

 

 「そっかな?」

 

 「たぶんね」

 

 「そこまでよ! まだ、実際にハイザックが受領されるって決まった訳じゃなし………それは、廃艦島に到着してからのお楽しみでしょう?」

 

 「う~ん、そうかな? そうかも!」

 

 「だね!」

 

 そんな彼女たちの他愛のない(そんなことはない)女子トークが終わる頃。宇宙引っ越し公社所有のマスドライバーから打ち上げられたシャトルは、目的地、廃艦島へと向かうルートへと違えることなく侵入していった。

 

 この後。

 

 廃艦島に到着したサニア、ルーナ、ステラは、そこで滞りなく新機体を受領することとなる。

 

 故郷サイド4での幼馴染であった男性パイロット、ユウ・カリンと再会して。

 

 そして知るだろう。

 

 四人がこれより先、仲間たちと共に駆り、命を預ける機体の名が、GP4ガーベラ改フルダブルであることを。

 

 GPシリーズの内訳1~3号機は、デラーズ紛争の後、ガンダム再設計計画自体がなかったこととされ、その存在を抹消された機体群である。

 

 しかし、元々、存在していないこととなっていた四号機ガーベラのみは、そのデータが改竄されて残されていた。

 

 その機体データの流用、強化を、アナハイム上層部は最優先業務として関係各位へと指示。今日この日、量産したそれを旗下のコロニー福祉公社の下へと運び込んだのだ。

 

 次の大規模作戦、ティーターンズ潰しの下準備として。

 

 ニュータイプに覚醒しつつある者の片鱗なのか、奇しくも、サニア、ルーナ、ステラのひそひそ話は、的を得た内容だったのだ。

 

 そう。

 

 アナハイム上層部は、ニュータイプ覚醒予備軍の者たちを新型ガンダムのパイロットに選ぶほど、ティターンズ潰しに本気だった。

 

 

 

 「…ようやくだ。あれを渡すべき巫女三名と護り手の戦士を準備できた。これでやっとシャア・アズナブルと交渉し、ティターンズ潰しに勧誘することができる………」

 

 「…いや、それだけではないな。ブレックスのエゥーゴとかいう名の新派閥の内部への侵入、内部崩壊の準備」

 

 「同じく、ティターンズに侵入するパプテマス・シロッコとの連携による、互いの組織の要人暗殺。それに、我々の手の届く地球圏にアクシズを呼び込む呼び水の役目も担ってもらう。その上で………」

 

 「…ジオン共和国のダイクン首相ではなく、地球連邦議員であったダイクン議員の真の遺産。それを開示するのだ。その程度の協力はしてもらうぞ、シャア…いや、キャスバル・レム・ダイクン」

 

 アナハイムエレクトロニクス社の重役のみが使用する高速艇の客室で、その男は独り呟いていた。周囲に人影はなく、秘書も今は同席してはいない。

 

 男は、困難な道とはいえ計画が順調に進んでいることで、少しだけ日々のストレス軽減ができていた。

 

 計画実行の下準備は、どれもこれも激務であり、一人考え事に浸り、計画本来の意義の確認も困難な日々であった。だからこそ、孤独になれたこの僅かな時間、男は普段よりも饒舌になっていた。

 

 その名を、パステルオス・ヒュー・カーバイン。

 

 実質上のアナハイムグループのナンバー2で、アナハイムグループ会長であるメラニー・ヒュー・カーバインの甥っ子であった。

 

 彼こそが、メラニー会長の実質的な軍師であり、地球連邦軍軍閥及び、ジオン公国軍残党の駆除計画を、黒幕として指揮する人物であった。

 

 二虎競食の計略を用い、今後の地球起源人類にとって不要な存在をすべて駆除する。

 

 為政者としての本来の役目を忘れ去り、他者を排斥し搾取することでしか政治を司ることのできない。

 

 そんな輩が存在するかぎり、地球圏の政治は力の理論に弄ばれ続け、一般民衆による民主主義を取り返すことは儘ならない。

 

 ザビ家率いるジオン公国軍の暴走により、こんな地獄同然となった戦後の地球圏。そんな地球圏の内部にあって、彼とメラニー会長率いるアナハイムグループ。そして、地球連邦内部の民衆派のみが、今もって正気を保っていた。

 

 地球連邦軍内部の各軍閥関係者たちが我が世の春と、華やかにパワーゲームを楽しんでいた頃、アナハイムグループと連邦政府内部の一般民衆派は、二虎競食の計を用い、邪魔物をすべて排除すべく、水面下で密かに暗躍していた。

 

 争え…

 

 争え…

 

 もっと殺し合って滅びろ…と。 

 

 

 かくして、少女たちは宇宙(そら)に上がった 終

 

 

 予告

 

 

 それは機械の獣か?

 

 それとも、悪魔の力なのか?

 

 否。

 

 それは人が解き明かした、中立なることわりの塊。

 

 それを無理矢理、巨大な人の形に押し込めた代物!

 

 その神にも悪魔にもなれる力。

 

 どう使う?  

 

 ユウ・カリン!

 

 次回 ガンダム!

 

 呼び合う想念が、再び地球圏を鮮血に染める!

 

 

 メモ

 

 作中の説明不足の穴埋めや、創作途中の愚痴などをここに書きます。

 

 正直、初代ガンダムから45年以上も経過して、棄民=侵略行為の道具という事実を認識できてない人々は、擁護の必要をまったく感じません。

 

 歴史をまったく理解していない人には何を説明しても無駄。だって、彼らは元々、人類の歴史を知ろうともしていないし、電脳言霊空間内では、他者からの何かしらの説明を求めているのではなく、自分に都合の良い意見に同意してくれることのみを求めているのだから。

 

 そりゃ、識者の大部分も、彼らを見捨てるのも当たり前だ。

 

 もういい年なのに、ガンダム、ガンダム…

 

 これじゃ、相手にするだけ人生の無駄でしかない。無視無視。

 

 それから、スペースノイド全体が、宇宙引っ越し公社、コロニー公社を経由して、地球連邦政府から莫大な支援を受けていたことを理解していない連中が嫌い。

 

 現実で、土地などを担保に住宅ローンを受けたり、車をローンで購入するなんて当たり前のこと。なんでスペースノイドたちが宇宙に上がる時にそれを受けてないと思えるのだろう?

 

 スペースコロニーは宇宙空間に浮かぶ人工の大地。人類史上最大の建造物だ。

 

 そこに住む人々が貧乏人の訳ない。エリート中のエリートよ。

 

 まして、棄民を閉じ込める宇宙の監獄の訳がないと何故気付かない?

 

 ジオン公国に与した連中が本当に人類の革新なんかのために独立戦争をしたと思う?

 

 革命勢力側に勝たせて、勝利者となって地球連邦政府からの多額の借金を踏み倒す。

 

 それこそが真の目的だろうって考えたことないのかな?

 

 無知は怖いね。

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