機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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 たまに思い出したように、自作の歌詞を発表する私、プリエ・エトワールなのでした。



 voice 声



 voice    空の果て 祈りの声 響かせる

 Record   記録された 罪 どれほど過酷でも 

 oblivion 忘れ去ること できやしない

 pray     儚き祈り 

 soul     失われた人々の その魂

 rest     やすらぎあれと ただ願う
           

 哀しい 悲しい カナシイ 世界に 

 天の大地 降り注ぐ

 宇宙(ソラ)に置きざりにした 想い 燃やし尽くして


 まるで出来の悪い fantasy

 私たちに 何の落ち度が あったというの?

 私は 胸の前で Rosaryを握りしめ

 何度も 何度も 唱え続ける

 誰も 死ぬ必要はなかった と

 それでも 心の痛みは 消えはしない 

 あるはずのない 罪と罰に苛まれる


 phantom Pain


 今日もまた ありもしない

 幻の痛みに 苛まれている

 心が 悲鳴を上げる


 Endless


 終わらない 痛みと哀しみ

 あなたと一緒

 痛みを感じないのは その時だけ


 please


 愛しい あなた

 ああ どうか 傍にいて


 Heart to Hearts


 想いを繋いで


 fear     恐怖の最中

 Look     ただ 見続けることしかできなかった

 Atone    私は その償いと共に 生き続ける


 Pain Shouts


 痛みの記憶 叫び続けて


 Quiet Time


 愛しいあなた

 共にある その時だけが

 私の安らぎになる
 
 


殺し間とされた宙域で 19 エピローグ 

 

 オーラウォーロードとして、一つの戦いの決着をつけた少年は、両脚のリーン・イオギーの翼を羽搏かせ、戦友たちの待つ母艦へと帰還していった。

 

 その途中、役目を終えた灯火の剣を含めた諸々の武装は消え去り、少年は本来の宇宙服姿へと戻っていく。

 

 ベーシックな姿となったユウ・カリンがリリーブラック甲板へと帰還すると、英雄の帰還を待ち侘びていた戦友たちの歓声が巻き起こる。

 

 無論。

 

 この一時の安寧は、これより続く戦いの前の小休止だ

 

 それ以上の意味はない。

 

 それでも。

 

 戦いを終えた勇敢なる戦士たちは、この時だけはと、お互いの勇戦を喜び合った。

 

 たとえ、この先に待つ運命が己の死であったとしても。

 

 いや。だからこそ…なのかもしれない。

 

 

 ユミ・ミミックス

 

 ダイナ・アイラーン

 

 キモノ・ハタラ

 

 

 ユウがリリーブラック甲板を飛び立つ以前、艦内で行動を共にしていた三人の少女が、それぞれ両腕を伸ばし、宇宙を飛んで戻ってきた自分たちの英雄を向い入れた。

 

 そうして、三人の少女は甲板に降り立つユウを抱擁する。

 

 でかした!

 

 少年! 格好良かったぞ!

 

 みんなの力を集めてあの怪物に立ち向かった姿!

 

 本当に惚れ惚れしたわ!

 

 と。

 

 少女たちに抱擁され、なすが儘にされていた少年は、この日、初めて微笑み口元に浮かべ年相応な無邪気な笑顔を戦友たちに披露した。

 

 そんなユウに、周囲に集まる戦友たちも微笑み返す。

 

 よくぞ共に戦い抜いてくれたと。

 

 

 

 そのしばらく後、ミノフスキー粒子の拡散を待ち、周辺宙域をスキャニングして安全確認作業を終えたネコメイジの機体と、光の翼を羽搏かせたニンジャスレイヤーネオが、マゼラン級メイストームと共にリリーブラックの許へと接近してくる。

 

 さすがは激戦を戦い抜いた強者たちだ。

 

 勝って兜の緒を締めろ。

 

 周辺宙域の安全確認が終わるまで油断せず、己を戒め、安易に友軍の許には戻らなかった。

 

 また、老ニンジャたちといえば、メイストームからランチを離脱させ、被弾した戦艦含む艦艇や、宇宙戦闘機から投げ出された友軍の者たちを拾い集めるべく宇宙空間へと漕ぎ出していた。

 

 同様に、老ニンジャたちに続いて民間船舶でサルベージ作業を手伝う者も少なくない。

 

 彼等によって助け出される者も少なくないだろう。

 

 今後も強大な敵と戦うのだ。

 

 道連れは多いに越したことはない。

 

 

 そんな状況下、ミリシアの指導層によって今後の方針への擦り合わせが始まった。

 

 「こちらメイストーム艦長メイ・メイです。シュンライ提督はじめ同艦隊のみなさん、あの化け物の排除ご苦労様でした。多くの命が奪われずに済みました。微力ながら協力出来て光栄であります」

 

 「こちらシュンライだ。メイストームに残った諸君、これまでの奮戦、感謝しきれん。ユウ少年や友軍の諸君が反撃の態勢を整えるまで、よく戦い抜いてくれた。また、ネコメイジとニンジャの諸君も多大な支援と貢献、感謝する」

 

 「ネコメイジ所属、オーリン・リンさ」

 

 「同じく。拙僧はレイウルージ・オクウカイ」

  

 「そう言ってもらえると助かるよ。サイド1やサイド2で死んでいった友軍たちに顔向けできる。みんな少しでも人的損耗を減らそうと戦っていたからねぇ」

 

 「私たちは、今後もサイド4の生き残りのみなさんの救助に協力致します。我々の指導者の指示であります!」

 

 「辛いだろうが、他の戦場はこちらに任せて欲しい。君たちはサイド4救援に向かってくれ。そう指示され、みなさんの前に立っています。酷い状況はサイド4だけではありません。それでも、私たちはみなさんに助力すべくここまで来ました」

 

 「そういうこと。これまでの戦いで多くの仲間を失ってしまったけれど、あたいは提督さんたちの計画に最後まで付き合うよ」

 

 「申し訳ありませんが、戦友となったみなさんの屍を踏み越えるような真似をしても、拙僧たちは任務を果たすために戦い抜きます」

 

 現在のミリシア軍パルチザン艦隊のリーダーであるシュンライ提督からの感謝の言葉に、そう応じるネコメイジ所属のオーリン・リン、レイウルージ・オクウカイ。

 

 互いの所属や目的を明かす、短くも無駄のないアイサツだった。

 

 それもまた、轡(くつわ)を並べてイクサバを征く者の作法である。無論、己が命を落とした場合、自分がなぜ命を落としたか。友軍の者たちへとそれを伝えてもらうための意味もあった。

 

 こちらの名前を知っていてもらわないと、戦死後のことも儘ならない。

 

 それが、彼女たちの置かれた状況だった。

 

 「そうか。そうだな。元より我々も、サイド4に取り残された数千万の命を逃がすためなら、この命、使い潰すつもりだ。分の悪い賭け…そのチップとしてな。共に征こう! サイド4へ!」

 

 「もちろんだよ!」

 

 「同じく!」

 

 シュンライ提督の呼び掛けに、まずネコメイジの両名が応じた。簡単なアイサツと、双方の目的共有のための擦り合わせの半分はこれで終了した。

 

 「汝らの覚悟、頼もしく思う。この私もムーア開放に協力させていただく」

 

 続いて、もう半分の通話が始まる。

 

 「これまでの勇戦、感謝してもしきれん。君は?」

 

 「ドーモ。シュンライ=提督。ニンジャスレイヤーネオです。私はヤミに潜みヤミに生きるモノです」

 

 「ほう」

 

 「しかし、同じくヤミに生きてヤミに死すべきモノが、掟を破り、狂い暴走しています。今回のザビ家とジオン公国軍の大虐殺によって狂ってしまい、マドウ(魔導)へと堕ちたのです。私は、そのモノを討ち果たすためミナサンに協力することにしました」

 

 「…君と念派で繋がっていた時、少しだけあの化け物めいた連中の情報に触れることができた。今現在、ムーアを掌握している存在は、君と同様、ニンジャなのか?」

 

 「おそらく」

 

 苦々しいものをかみ砕くがごとき表情となり、シュンライの問いへと答えるネオ。

 

 「元々ムーアにいたジオン公国軍の者たちは、その者のカイゾウシュ=ジツにより、その配下とされているはず。厳しいイクサとなりましょう」

 

 「そうか。だからと言って我々に逃げるという選択肢はありはしない。戦うべき相手が入れ替わっていようとも、我々の基本方針は、ムーアに取り残された民間人たちの救助だ。そのために、これからも君に共闘を願う………」

 

 「頼むぞ! ニンジャスレイヤー!」

 

 「無論!」 

 

 こうして、今後も行動を共にすることとなった戦士たちによるアイサツと行動方針の共有は終了した。後々、ムーア宙域突入前に濃密なブリーフィングをしなければならないが、今はここまでだ。

 

 

 それよりも、この場でハッキリさせておくことがあった。

 

 

 「ユウ少年。そして、我が軍の勇気溢れる戦友たちよ。どうやら、力を合わせた君たちこそが、我々の最大の戦力のようだ。子供を戦場に連れ出してきた力なき大人が今更だが、どうか、今後も目的達成のために共に行動して欲しい。どうだ?」

 

 

 「これまでの経緯はどうあれ、これは僕が自分で参加すると決めた戦いです。ムーア生き残りの民間人開放まで戦い抜く覚悟です」

 

 

 シュンライ提督からの問い。

 

 ユウは、提督にそう応じてムーアでの最終戦まで戦い抜く意思を示す。

 

 「私たちも!」

 

 「はい!」

 

 「一緒です!」

 

 ユミ・ミミックスはじめ、ダイナ・アイラーン、キモノ・ハタラもユウに続いてそう宣言する。ユウと共に、オーラ力を共有し、増幅した者たちの多くも、同じように共に戦い続けることを宣言する。

 

 「そうか。君たちがそう言ってくれるならば、ワンサイドゲームとなって、我々が一方的に排除されていくという結果は避けられそうだ………君たちの健闘に期待させてもらう!」

 

 今や、自軍の一番の戦力となった者達とその軸となった少年。今後も彼等から共闘してもらう言質を取り、シュンライはニヤリと微笑み、その後、その場で敬礼した。

 

 頼むぞ、若き命たちよ…と。

 

 その映像は、映像としてミリシア軍パルチザン艦隊の各艇、各所へと放映された。

 

 これで、多くの仲間の死によって戦意を喪失しかけていた戦友たちも、戦う意味とその志を思い出すだろう。

 

 無論、負傷者、彼等に付き添う者など、これからの戦いに同行できない者たちの後方送りはどうしようもない。だが、一応の戦闘態勢の維持は可能だろう。

 

 人間、武器はもとより継続戦闘に必要な物資の他、戦い続ける意思が必要不可欠なのだ。

 

 それらを持続させるケアの一つも出来なくば、指導者としては失格。

 

 その点、シュンライ提督は中々の指導者振りを発揮した。

 

 

 そんな最中。

 

 

 ユウは、提督の演説を子守唄代わりにして、静かに瞼を閉じた。疲労感に襲われていた肉体からの求めに脳細胞が応じ、意識を落し、全身を脱力させてノーマルスーツ内部で眠りに落ちる。

 

 初陣での疲れ。

 

 その初陣を果たした安堵感。

 

 そして、様々な理不尽に対して自ら戦い抜くと決めた、自分自身の魂に対しての達成感とリスペクト。

 

 それらが、一戦して生還を果たしたユウの身体を眠りへと誘った。

 

 無重力空間がそんな脱力したユウの全身を抱き止め、その場で浮遊させる。初陣を果たしたマスラオとはいえ、まだ身体は子供のまま。

 

 意識を一時的に手放すことも、致し方のないことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 疲労感に苛まれる眠りの中、ユウ・カリンは夢を見ていた。

 

 ジオン公国宇宙軍による凶行以前の記憶を基にした、走馬灯めいた情報の一斉閲覧であった。

 

 

 愛情を持って自分を育んでくれた家族との日々。

 

 同じ時を共に過ごすことになった友人たちとの邂逅。

 

 本来、人類が生きる場所ではない人工の大地の内側で、連綿と続く生命の煌めき。 

 

 アースノイドという地球上での生命システムの一部でしかなかった存在が、スペースノイドという宇宙生命の巣ステムの一部となった奇跡の記録。

 

 すなわち、ニュータイプとなった生命の進化の記録の再上映だ。

 

 

 その上映の最中、ユウ・カリンは、性別を超えた一人の悪友との日々に惹かれ、次第に彼女…カトリ・リヴァイヴァとの日々ばかりを思い出していた。

 

 

 タタタタタタッ! バンッ!

 

 

 「ユウ! 大変よ!」

 

 「大変っダゼー! 部長とシアンを助けてくれっ! ダゼー!」

 

 放課後、園芸部の部室で可愛い草花と共にマッタリしていたユウの許に、学園のマスゴミ少女、清く正しいカトリ・リヴァイヴァと、彼女に連れられたプチモビ研所属のリンタ・ロウが駆け込んできた。

 

 ないことないこと面白おかしく捏造記事にしている場合じゃねぇ!

 

 馬鹿だけど気のいい友人がピンチ!

 

 退学必至!

 

 下手すりゃ前科一犯!

 

 母校の名前にも傷がつく事態!

 

 ユウよ出番だ!

 

 母校の問題児が二人も自分の許に駆けこんでくる。この時点でユウの悪い予感はメガマックスだった。

 

 「カトリにリンタじゃん…何事? 厄介事は勘弁して………」

 

 「残念でした! 思いっきり厄介事よ! ヤイバ・シャーク君とプチモビ研で飼育していたワンコのシアンが、他校のゲストの女の子たちに突入して、泣かしちゃったって!」

 

 すでに引き気味のユウを、カメラもメモ帳も放り出したカトリが、ズビシィ!…と人差し指で指差す。

 そうして、要件の大筋を説明する。

 

 反論は許さないわよ!

 

 そのように有無を言わせない勢いで。

 

 「…ええ? それで、僕にどうしろと?」

 

 「ユウは学園の各部活の顔役みたいな立場でしょ! 仲介よ! チューカイ! 速くしないとシアンが殺処分になっちゃう!」

 

 「助けてくれダゼー!」

 

 「ええ………僕の自由意思は?」

 

 「却下よ! 却下! あんたの自由も権利も! 責務を果たしてこそ! でしょう!」

 

 「顔役さん! 助けてくれダゼー!」

 

 カトリは、もう泣きそうになっているユウにそう宣言すると、リンタと共にユウを抱き抱え、えっほ、えっほと、無理矢理騒動の中心へと連れていく。

 

 ユウに暴れる暇も与えない、見事な捕縛ジツであった!

 

 ワザマエ!

 

 「くやしい! 正論だけにムカつく! 僕だって! 何かしら働けば対価は欲しいってば!」

 

 「ハイハイ! 言いたいことは理解するけど諦めて! あんたもコスモ貴族なんだから、ノブレスオブリージュを果たしなさい!」

 

 そんなカトリの言葉通りだ。ユウはコスモ貴族の端に連なる立場だ。もっとも、後に闇墜ちするブッホ・コンツェルンのロナ家のような偽の宇宙貴族ではなく、正真正銘のコスモ(宇宙)貴族だ。

 

 ユウの実家カリン家は、宇宙世紀以前の旧世紀から、人類全体の発展のために多大な貢献を果たしてきた家柄である。

 

 もちろん、宇宙世紀に移行して後は、人類は地球連邦政府と共にあってこそ健やかに繁栄するといった立場を取り続けており、その点、独立自治を叫ぶサイド3の連中とは一線を画している。

 

 そのため、ユウは周囲からも、そのコスモ貴族体現者の一人として認識され、年齢が二桁になる以前から、何かと周囲の者たちによって便利に使われてきた。

 

 実家からも、コスモ貴族として市井の人々のために尽力しろ。そう言い含められていて逃げ場なし。

 

 一般に属する人々には、一般の人々なりの悩みや責任があるように、上流階級に属する人々には、上流階級の人々なりの悩みと責任が付きものだった。

 

 つまり、コスモ貴族は金銭的に恵まれているから遊んで暮らせる…なんてことはなく、日々、様々な責任と向き合い、解決していかなければならず、年長者ならずとも忙しい日々を送らざるをえない立場であった。

 

 余談ではあるが、ユウが後に黄金の精神を発揮できる下地は、こういった日々の積み重ねあってのことだった。

 

 「せめてご褒美とかないのー! 少しは無理矢理厄介事に付き合わされる立場にもなってよ!」

 

 「///…それじゃ、後で…その、ね?」

 

 「///…リョーカイ」

 

 「GOー! ダゼー!」

 

 ならば、仕方ないわねと、ちょっとエッチな約束をユウと取り付けるカトリ。互いに赤面しながらも利害の一致をみてそのまま目的地へと向かっていく。

 リンタといえば、この場では何も聞かなかったことにして、友人たちを危機から救い出すことのみに注力するのだった。

 

 

 ところ変わって、学内の某所。

 

 

 「あ! ユウ! 来てくれたでやんすか!」

 

 「ありがとうクマー!」

 

 「お待たせダゼー!」

 

 ユウを連れたカトリとリンタが厄介事の舞台となった園芸棟に到着すると、ムツキ・ゴールドアイとバフ・サック・ウニクラが歓声を上げる。

 

 二人はリンタとハイタッチして、互いに友人の任務完了を祝福した。

 

 「ブチョー!もう大丈夫でやんすよ!」

 

 「ゲストのみなさん! 部長を開放してくれ…いや、ください!」

 

 「すまねえ、みんな。俺とシアンがバカやっちまって!」

 

 「クゥン………」

 

 プチモビ部の彼等にしてみれば、ユウを連れてこれたなら、問題の大部分は解決できたという認識であった。

 

 そんな訳で、ここからはユウやカトリの出番である。

 

 これよりユウは仲介役として、ゲストの他校の女生徒たちと折衝し、問題を起こしたヤイバ・シャークとその飼い犬シアン、生徒の問題行動を未然に防止できなかった学園側。その擁護と、被害者への謝罪と補償の話合いをしなければならなかった。

 

 本来ならば、学園側の教論が対応しなければならない事案である。 

 

 しかし、母校と他校間の問題になどにはせず、問題を早期に解決するにはどうすればよいか?

 

 そうユウの母校関係者たちが考えた結果、共に学園に所属しているコスモ貴族、その端に連なるユウに仲介役をしてもらい、解決してもらうことが一番だ…そんな結論に至ったという次第である。

 

 「ハイハイ、お待たせしたわね。ルリヨ先輩にタマオ先生、何時もでもゲスト側にいないで、ヤイバ君とシアンを開放してあげて。ほらユウ。彼女が今回の被害者のミス・アリカ・テンリョウよ。我が学院の代表としてお詫びの言葉をお願い!」

 

 そうカトリに促され、ユウがゲストたちと折衝の矢面に立たされる。これもコスモ貴族としての運命だ…ユウは、そう覚悟を決め、求められた役割を果たすべく声を上げた。

 

 「はじめまして。ミス・アリカ・テンリョウ。そして巻き込まれたゲストのみなさん。この度は、私の友人が不始末を犯してしまい、本当に申し訳ございません。本人になり替わり、私、ユウ・カリンがお詫び申し上げます」

 

 「至らぬ点が多々ありますが、何事かお申し付けしたいことがありましたら遠慮なく仰ってください。できる限りお気持ちに沿うように、私、コスモ貴族の端に連なるユウ・カリンが執り行います」

 

 本当にコスモ貴族の立場なんて碌なもんじゃない。カトリの前に出たユウは姿勢を正し、ヤイバとシアンになり替わりアリカへと頭を下げ、詫びを入れた。

 

 「…お顔をお上げください。ユウ・カリン様」

 

 口上を述べて頭を下げ、不動の態勢を取ったユウ。そんなユウに対し、アリカ・テンリョウは片手の扇子で顔の下半分を隠しつつ、居並ぶゲストたちの列から一歩前に出、そう言った。

 

 ユウが頭を上げて互いに対面を果たすと、アリカは上品に空いた片手でスカートの先を摘まみ上げ、カーテシーのポーズをとって自己紹介を始めた。

 

 「サイド1のコスモ宇宙貴族テンリョウ家の端に連なるアリカ・テンリョウです。この度は、私(わたくし)たちの揉め事の仲介に御出で戴き感激しております。カリンの家の方なら信頼できますわ。ユウ様には頼りにさせて戴きます」

 

 「こちらこそ。ミス・アリカ・テンリョウ、過ぎたるお言葉痛み入ります。このユウ・カリン。その信頼を裏切らぬよう善処させていただきます。さっ、あちらの教職員棟のサロンでお休みください。今後の保証はその後で」

 

 「よしなに」

 

 そうアリカは応じると空いている左腕をスッとユウの前に差し出した。ユウにエスコートしてくださいませと身振りで示したのである。

 

 ユウはその差し出された左手を恭しく取ってみせると、教職員棟サロンへと、サイド1のお嬢さまをエスコートしていった。

 その後に、サイド1からのゲストの女生徒たち一同と引率の女教師。本校での学内案内役であったルリヨ(学生代表)、タマオ(教師代表)が続く。

 

 「すまねえ、ユウ」

 

 「クゥン」

 

 ヤイバとシアンが、自分たちを残して遠ざかっていくユウに、沈痛な面持ちで頭を垂れた。ヤイバとシアン含め、カトリ、リンタ、ムツキ、バフ・サックとはここで一旦お別れだ。

 

 ユウは、一度だけこの場に残る同級生たちに手を振ると、もう振り返ることなくアリカをエスコートしていった。

 

 

 

 (ああ………そんなこともあったな………内々に上手いこと揉め事を収めた後、カトリにママになって貰って、膝の上で撫でてもらったな………)

 

 

 (…カトリ、ごめん。僕は大好きだった君を助けられなかった。今更だけど、僕は、君を本当に大切に想っていたんだ)

 

 

 (起きてしまったことはもうどうしようもない。時を戻せない僕は、その現実を受け入れる以外、手段がない)

 

 

 (だからこそ、僕は残された命を全部使って君を殺したジオン公国軍に復讐するよ。自らの思惑に沿わない者たちを皆殺しにしようとしたあいつら)

 

 

 (あいつらの思惑を挫くために戦い抜き、一人でも多くの人々を生かす。それが僕の復讐であり、カトリ、君たちへの贖罪だ)

 

 

 (そう遠くないうちに僕も君たちの傍に行く………いや)

 

 

 (自ら望んで殺し合う僕は、君や人殺しに手を染めていない他の人たちの許には行けないだろうね)

 

 

 (だから僕は祈っているよ。穢れていない君たちの魂が、円環の理の果てに幸せな場所へと行き付くことを)

 

 

 (もう僕たちの道は別たれてしまった。この身体が滅んで魂だけになった後も、二度と出会うことは叶わないかもしれない)

 

 (それでも僕は希望を捨てないよ。いつか、何時の日にか…どんな世界か…過去か未来かは、わからないけれど………星の海の何処かでまた巡り合えると………)

 

 

 過去の優しい日々の記憶を夢に見て、死別したカトリのことを一通り思考し終えると、ユウの精神は暗黒へと沈んでいった。

 

 ユウは、ついに思考する余力すら失い、身体が体力を回復させるために深い眠りに就いたのである。

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 (ユウ…ユウ………ユウ・カリン………どうか、私たちへの贖罪でために苦しみへと向かわないで………もうこれ以上、自分の身体と魂を虐め抜かないはいけない………このままでは………あなたの魂までバラバラに砕けてしまう………もう十分だわ………)

 

 

 地球圏の虚空に飛ぶ炎の翼の持主が、涙を流しながらそんなか細い思念を飛ばした。

 

 だが、か細い思念波は誰にも届きはしない。

 

 カトリ・リヴァイヴァ

 

 転生の炎によって無理矢理に蘇えさせられ、ヒノトリの分霊と一体化した少女ができる、たった一つの反攻。

 

 それは、とてもとても小さなものだった。 

 

 

 

 そう。

 

 自らの慟哭を誰にも伝えられない程。

 

 

 

 カトリはヒノトリの分霊と一体化したがため、未来を見通せる。

 

 その未来視通りならば、ユウ・カリンはヴァルハラでの闘争の末に発狂し、その魂も八つ裂きにされて数多の世界を別々に彷徨うことになる。

 

 残された肉体といえば、アナハイムエレクトロニクスの者たちによって回収され、偽の記憶を植え付けられて後、肉体に僅かに留まっていた魂すら、擦り切れるまでに使い倒されてしまう。

 

 また、ミリシア艦隊の勇士たちも、サイド4に残された人々救出のためにほぼ全滅する運命。生き残っていたサイド4の住民たちを救う代わりに命を落とすこととなる。

 

 生き残る者たちは、10名に満たない。

 

 

 その未来視の内容ゆえに、カトリは涙を流していた。

 

 

 

 もう十分だと。

 

 

 

 だが、戦いは終わらず、地球圏はこれより一年戦争という辛く哀しい闘争へと突入していってしまう。

 

 ユウ・カリンだけではない。

 

 多数の犠牲の上に戦争は続いていく。

 

 

 それ故に、カトリは願わずにはいられなかった。

 

 

 どうか、この僅かな時間のみは、戦いを終えた戦士たちに安らぎがあらんことを…と。

 

 

 機動戦士ガンダム フルダブル エピソード 殺し間とされた宙域で 終

 

 

 




 宇宙世紀0079初頭、罪なく殺されていった人々に安息を与えるべく戦った人々の物語は一旦終了。

 ユウたちとヴァルハラニンジャ等との闘争は、またの機会に発表します。



 補足

 コスモ貴族 理論的に考えればいっぱいいるだろうと前々から考えていたので、今回登場させてみました。


 拝涙 戦場で斃れたユウを蘇生させる。それだけの理由でヒノトリに取り込まれちゃったカトリ。

 ママ コスモ貴族は大変。ユウはカトリに度々ママ役を演じてもらいコスモ貴族を演じ続けていた。そういう間柄。


 ユウ・カリンは複数人存在する。

 じつはそう。

 別にクローンとかではない。

 シントウには神様の分霊という考え方があって分霊は本体と同じ実力を持つ。ただし、同時に別物でもある。

 たとえば、イザナミノミコトには、二神のイザナミと、黄泉に堕ちた冥府の女神としてのイザナミが存在するとか。

 その考えは、主人公にも適用してあります。

 宇宙世紀0079年の過去編と、0084年の本編では、ユウ・カリンの魂の形は似て非なる。記憶も異なります。つまり、別人と言っても差し支えありません。

 0084のユウは、サイド4がハヤシニンジャに乗っ取られていたとか知らない。

 普通にミリシア軍がジオンの艦隊を排除し、サイド4の生き残りたちを救ったと記憶を持っている。

 ほぼ、アナハイムエレクトロニクスに回収されて後に与えられた記憶。


 ここから今後のネタバレ含む。

 ユウ・カリンVr0079

 生命(オーラ力)の象徴ある妖精の力を操る人類の革新たるニュータイプ

 オーラウォーロード

 ハヤシニンジャとの戦いで、自分とミリシアの兵士たちのオーラ力をすべて燃やし尽くし、死亡する。

 その後、ヒノトリによって蘇生。

 死亡時、オーラウォーロードとしての部分は、魂の分割をなされ、分霊となって別世界へと消える。

 ゆう・かりん

 ユウ・カリンの双子の妹。母親の子宮の中にいた当時は確かに存在していたが、双子の出産に母体が耐えられないことから、その身体を兄と融合させ消失する。

 しかし、その魂は兄と共にあり、ユウ・カリンの肉体を兄と共有し続ける。意識の表層に出てくることは稀だが、ニュータイプとして兄とは別の形の成長を遂げていた。

 妖精拠りの妖怪の力を持つ人類の革新たるニュータイプ

 0084年、他の妖怪の力を持つニュータイプたち、吸血鬼などと同盟を密かに結び…ユウ・カリンは妹がそんなことを始めるとは知る由もない…四季のフラワーマスターとしてアナハイムエレクトロニクスに対して反乱を起こす。

 ユウ・カリンVr0084

 人類の革新たるニュータイプの革新たるニュータイプ

 妖精の革新たるニュータイプとしての能力は0079の戦いで失っているが、新たな脅威との戦いの最中、ユウ・カリンは別の形のニュータイプとして覚醒する。

 TSして女の子になったり、逆TSして男性に戻ったり大変である。

 地球圏編の後、メディ・スンと共にアステロイドベルトのトロア圏へ。そこでシャア・アズナブルと出会い、共に、トロア圏の破壊王ユーマ・アライアンスと闘争を演じることとなる。

 シャア・アズナブルVr0084

 ニュータイプの出来損ないの革新たるニュータイプ

 ユーマとの戦いの最中に死亡するも、イザナミ・オブジェクトの導きにより生機融合のエヴォルダーとして新生。

 トロア圏の戦いの後、ニュータイプの革新たるニュータイプエヴォルダ―としての部分は、ニュータイプの出来損ないの生体部分と分離。

 人間のシャア・アズナブルは地球圏へと戻り、エゥーゴに参加して後、アムロ・レイとの決着を付けるべくネオ・ジオンの総裁へ。

 ニュータイプエヴォルダ―たるシャアは、ユウやメディ・スンたちとともに外宇宙に。人類の進化は新たな形を具現化し、未来へと続いていく。

 ニンジャスレイヤーネオ

 ニンジャの革新たるニュータイプ

 0084でも活躍する予定。まも子さんと合体して殖装外骨格装甲ガイバ(鎧刃)となる。

 パステルオス・ヒュー・カーバイン

 仙霊の革新たるニュータイプ

 ジョーガ・ミッテイルカというもう一つの名前を持つ、アナハイムエレクトロニクスの副総裁。

 エゥーゴやコロニー福祉公社、イザナギ・オブジェクト等を利用し、地球圏復興に必要のない闘争本能に支配された者たちを同士討ちさせようと画策。二虎競食の計である。

 まも子・リグ・リグ

 蟲類の革新たるニュータイプ

 邪神であるトコヨノカミ ラルバ・ブルトームの眷属。

 ラルバは辰星の外神であったが、人類を取り込み自らがオーバーマインドになることを諦め、自らの因子を継ぐ者たちが人類と共に未来を築くことを望んだ。

 そのため、旧神ソー側に寝返り、人類を守護する側となったカミサマ。

 まも子はそんな主の意を汲み取り、ユウ・カリンたちに危機を知らせに来るのだが………遅すぎた。

 ポンコツかわいい蟲。

 マミ・F・キュウジュウジ

 妖獣…モデルたぬき…の力を操る人類の革新たるニュータイプ

 地球編でのユウ最大の敵。

 地球連邦政府及び軍内部に潜む、秘密諜報組織ヌエの一員。フタツイワン・マヌケィを名乗り、オーガスタ研究所の職員をしつつ、地球圏復興のために尽力していた。

 しかし、アナハイムエレクトロニクスの暗殺者によって次代の地球連邦政府の指導者に就かせよう育てていた少女を殺害され、アナハイムと敵対関係に。

 アナハイムとは地球圏の復興という点では目的は一緒なのだが、方向性が違い過ぎた。そのため、決定的事態が生じる以前からアナハイムとは不仲。

 F・キュウジュウジ…90の次だからF91。 


 最後

 なんとなく詩


 白き巨体は大地に立ち 彗星は宇宙を駆ける
 

 天を舞う白馬は その地より 出航(ふなで)していく

 多くの人々と 煌めく希望の武具を乗せて

 宇宙(ソラ)に浮かぶ大地 

 集う 七番目の場所


 戦禍を逃れた人々

 最期の拠り所


 そこもまた 戦場と化す

 現れる 一つ目の巨体

 緑色の身体を揺らし、暴虐の限りを尽くす

 か弱き人々は 次々に死に逝く

 逃げ惑う子供たち

 我が子等を逃がそうとする大人たち 真っ先に 犠牲となる


 大気を揺らす 雷のような銃声

 木々は倒れ 家々は燃え堕ち 地割れに飲み込まれる


 爆発に吹き飛ばされる者たち

 衝撃波を受け その命を落とす
 

 泣き叫ぶ少女

 少年は叱咤し 振り向かず 港まで走れ 速くと叫ぶ

 別たれる運命

 少年は 戦士となる道を進み

 少女は 残された幼子たち育てる 母となる


 勝利の名を与えられた書物

 拾い上げる少年 

 その導きに従い 白き巨体を起動させる 


 ああ 高く 高く 立ち上がる巨体

 素早く立ち回り 

 一つ目の巨体へと

 その剣 抜き放ち 突き立てる

 罪深き虐殺者に 現世との別れを言い渡すため


 ああ 大気失い 沈み逝く大地

 残された人々 白馬へと集い 青き惑星を目指す

 多くの戦士の魂は失われ 戦える者たちは

 少年 少女のみ
 



 仮面の復讐者は 己を偽り 戦場に立ち続ける 

 家族を奪い 国を歪めた 敵(かたき)たち

 彼等に近付き 討ち果たすため   


 ああ 赤く 赤く 加速する 彗星


 復讐を遂げるため

 自分自身も 他者たちも 犠牲にする

 優しさも 切なさも

 旧き記憶は 復讐の業火で燃やし尽くす

 そんな自分 嘲笑して

 赤き 彗星は ああ 加速し続ける


 対峙する 白と赤

 人類の革新に至る者たちは 互いをそうとは知らず 

 邪魔をするなと 殺し合う


 ああ 拡大し続ける 戦禍 犠牲


 巡り合う宇宙(ソラ)で 青き惑星の上で 

 何度も 何度も 邂逅し

 戦い続ける


 覚醒していく 力 果てしなく拡がる 認識

 革新へと至っても 解り合えない 想い

 手を取り合うべきと 頭では理解できても 決して相容れはしない

 それでも ああ 事態は 終局へと向かっていく

 残酷な世界は そんな二人に 猶予を与えはしない


 戦禍の果てに 滅び逝く 仇敵 

 宇宙(ソラ)に聳えた 星屑の要塞は燃え落ち

 最後には 空虚な 残骸のみが残る

 ああ

 ただ 嘲笑だけが 虚空に響く

 革新への導きは すでに聞こえはしない

 ああ

 ただ 疲れた体身を引き摺って 仮面と共に 未来へと向かう

 それだけ

 
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