機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚 作:プリエ・エトワール
前回を読んで、本作がなぜ、発表当初から二虎競食の計に拘っているか理解してくれましたか?
機動戦士ガンダムの一年戦争は、大東亜戦争でのヤーパン帝国の敗北を下敷きにしています。
ヤーパン帝国は、大陸の連中による二虎競食の計に引っ掛かり、列強同士殺し合わされ、大陸から追い出される結果となった。そう前回説明しました。
つまり、ヤーパン帝国の大東亜戦争での敗北理由を知ること=一年戦争をより深く理解することだからです。
それが納得いく、いかないかはさておき、こういった内容についてこれないなら、本作を忘れてくれて結構です。
別に私はお金を貰って二次創作をしている訳ではありません。
その点、資本主義と出版社に依存し、お金を稼ぐためにドクシャサンに媚びを売らなければならない本職の作家さん方とは立場が違います。誤解なきよう願います。
さて、本編の話の内容に戻ります。
今回からは、別視点からの大東亜戦争開戦理由をシャナズとキョーコの会話形式で記していこうと思います。
前回は、ユングの心理学的にいうと、男性的、父性的に現実主義の立場を取り、確定している事実のみを並べ、理知的に処理。
整理した確定情報を基礎とし、同じ民族だから大目に見る、同族の為政者だから罪を見て見ぬふりをする、等々の、感情的思考を排除した内容を伝えました。
つまり。
ミカドが開戦の詔で何を訴えていようとも、ミカドはトージョー総理による戦争主導を追認している。故に、敗戦のあらゆる面からの最終責任は、君主であり国の最高責任者であったミカドにある。その事実よりは誰も逃げられないし、被害が大き過ぎて、下手に歪めることもできない。
そんな容赦のない、ワイズマン的思考法を基礎とした内容でした。
しかし、今後はグレートマザー的、母性的、情動的な視点からの物語構成にしようと思います。ですので、かなりミカドに対して同情的な話の内容となります。
シャナズは、自分とは別に当時の状況を分析し、別の結論を見出し、それを著作物にしていた人がいる。その人はこう言っている。そうキョーコに伝え、その反応をみるといった内容となります。
その著作物の著者は、かなりミカドに対しては同情の色が強く、ミカド自身は選民思想には染まってはおらず、トージョー含め、周囲の者たちが選民思想と大陸勢力の陰謀によって狂い、彼を追い込んでいった。
その果てに、憔悴したミカドは絶望の中、大東亜戦争開戦に同意してしまった。
そんな内容となっております。
分析・解析する個々人が歴史のどの部分をフォーカスするかによって、その評価、結論もまた変化します。
また、当時の人々への理解もです。
その後には別のテーマも少し。
弱者の闘争方法あれこれ。
時として弱者は、その弱者の立場を利用して強者を操る場合があります。
時に自分の弱い立場やら人権やらを盾に使い、自分の願望を実現してくれ。それがあなたの役目でしょう?
と、自分たちにのみ都合の良い制度追加を政治家たちに迫ります。
時に弱者は、操る対象のトラウマや不満などを利用し、こうすればあなたの願望は果たされる。
そう唆して、精神的に追い詰められていた強者を操ることがある。
そういった事例を説明します。
また、昔からの民主主義の問題点もサービスでやっちゃいましょう。
資本主義、民主主義は至高の制度ではありません。
ただ、共産主義より幾分かマシ程度。
数の暴力を用いれば民主主義は脆い。
多数決で成立させてしまえば、公の立場に立って悪事を強行することも可能な悪法が成立してしまう。
民衆が調子に乗ってこれをやっちゃうと、因果応報で大災厄に見舞われることとなる。
自分たちをも巻き込む国家滅亡へと向かう道筋を、自ら整えることとなってしまう。
いくら建国当初、公明正大で善意に満ちた憲法を採用し、国民のための国家を立ち上げても、時の経過に伴い、民衆の多数が堕落し悪人と化してしまえば、もうどうしようもない。
内側から腐り始め、滅びへと向かい始める。
ヤーパン帝国の最後がまさにこれ。
大東亜戦争開戦以前からの、国家が売国奴によって乗っ取られていく経緯もやります。
前回のお話とは別方向からの説明。
ショーワのミカドは、自身が選民思想に毒されトージョー総理と共に開戦に踏み切ったのではなく、選民思想に染まって売国奴となった民衆たちに取り囲まれ、追い込まれて止む終えずに開戦に踏み切った。
ルーシに勝利したヤーパンは有用だ。
大陸から列強を追い出し、シナ民族の手に取り戻す。
そのための駒としてヤーパンを乗っ取る。
まずヤーパン国内へと侵入した大陸シナの連中が、ヤーパン一般民衆の思想操作からはじめ、その次に、操られたヤーパン民衆が、国の根幹である政府要人や軍部の支持者となり、政治資金の拠出含め、下層から上層を操る。
民主主義国家は、上層だろうが下層だろうが、みんな一票。
たとえ下層の民衆たちでも、そりゃ集まれば強い。
小金も集まれば大金となる。
俺たちゃあんたを支持するよ。だからあんたも俺たちの望みを聞いてくれ。
そう取引し、下層の人々が上層の人々を裏から操るようになる。
そして、ついには下層上層問わず衆愚に陥った民衆に操られ、二流、三流の政治家や軍人が歴史の舞台に上がる。
なお、一流の人間は邪魔なので、それ以前に暗殺…2・26など…などの強硬手段によって排除される。
そうして、国家の根幹部分は無自覚な売国奴に掌握され、列強との対決は国民全体の意思と偽った政府の者達はは、国家元首であるミカドに列強との対決を奏上する。
アジア全体の諸民族は、皇室の下、その臣下となり、平等な権利を与えられるべきであります!
我が国の民たる諸民族を支配し続けんとする欧米列強討つべし!
二流三流の政治家、軍人どもは、自分たちは民衆に支持されている。正しいことをしていると、民衆の裏にいる大陸の連中に思い込まされているため、自分たちが帝国を滅亡に向わせているとの自覚がない。
自覚のない邪悪の行進!
最悪のポピュリズム!
彼らは恥も外聞もなく高らかに宣言した!
鬼畜アメリア、グレートアバロン打倒は正義!
植民地支配されたアジアの諸民族解放はアジアの光であるヤーパンの義務!
こうして、周囲の売国奴たちによって己の意見を封殺され、追い詰められて逃げ場のなくなったミカドは、大東亜戦争開戦を選択してしまいましたとさ。
哀れ。
さて、そんな内容が終わってから、やっとこの時間軸での話が動き始めます。
ジオン水泳部(中身がジオン公国軍残党とは言っていない)が海側からやってくるよ。
北アメリア西海岸のムエンヅカに建てられた掘っ立て小屋に朝日が差し込む。
「でもね、ちょっと納得いかないの。ショーワのミカドって、そんなに無能な人には思えないのよね」
「うん」
「やっぱりお兄ちゃんもそう思う?」
「だね。だけど、ある歴史家によって記されたミカドが置かれていた当時の状況分析を読むと、あ、こりゃ逃げ道塞がれてどうしようもなくなっていたって、よく理解できたよ………それ、読んでみるかい?」
「そんな当時の状況の手引書があるの?」
「うん、よくここまで分析したなぁって僕も感心した内容のね。確かあそこに…今もってくるよ」
「お願いします!」
「歴史というものは、様々な視点からのアプローチがあって、はじめて当時の全体像が理解できる。一面的な物の見方だけじゃなく、様々な側面からの分析を知っておくことは有意義だよ」
残り少なくなっていたコーヒーを飲み干したシャナズは、座っていた椅子から立ち上がると掘っ立て小屋奥にある戸棚へと向かった。
他者には一見散らかっているようにしか思えないが、散らかした本人はどこに何が保管してあるか良く解っているのだ。ビブリオマニアのあるあるだ。
もっとも、それだけではない。
シャナズは弱っている自身の聴力補佐のため、ネズミミにネズミシッポのインターフェイスを使用している。
そのため、歩行によって掘っ立て小屋全体に振動が生じると、書籍にも振動が伝わり微かな擦れ音を生じる。
その微かな音を、人間以上の性能を誇るシャナズのインターフェイスが拾い、何処に何があるかを知らせるのだ。
一般人より自前の聴力が弱まっている者でも、それを補佐するテックが優秀ならば軽く常人を越える。よくあることである。
身体障碍者が健常者より劣るなど、誰がきめたというのか?
優秀なテックの補佐があれば、軽く健常者を越えるなど珍しくもない。
「ああ…これこれ」
程なく、奥の部屋からキョーコ御所望の書籍を見付けたとの声が聞こえてきた。
キョーコ自前の聴力だけでは、その声を認識することは不可能だったが、イヌミミとイヌシッポインターフェイスがシャナズの声を捉え、主へとシャナズ宝物発見という事実を伝えた。
キョーコは大事な書籍を携えて戻ってくシャナズを、食事の後片付けをしながら笑顔で迎えるのだった。
「はい、これ」
「ありがと! えーと…邦題、東方帝国の黄昏 著者:モンテステラさん? ガリアの人?」
「そう。ヤーパン国外からの視点だね」
「以外な感じ。フランクなガリアの歴史家さんがヤーパンのミカドを擁護してる。ガリアは昔、自分の国の国王夫婦をギロチンで殺しちゃったヤヴャイお国側なのに、王室とか皇室、擁護できるんだ???」
「それ以上はいけない。えーと………自分たちでなくして初めて、それが大切なものだったと理解する場合もあるんだよ」
「そうなんだ?」
「た、たぶんね」
著者がガリア人だと知って首をかしげるキョーコ。シャナズといえば、キョーコのオブラートに包まない物言いに冷や汗を垂らして応じた。
それ以上は事実でもいけないと。
消え逝く真実の語り部たち その果てに 4 に続く
ネズミを舐めるなよ。
つらあじ