機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

5 / 35
地上の戦い1

 地上の戦い1

 

 

 これは、サニア・ルーナ、ステラが宇宙(そら)に上がる以前のこと。

 

 時は深夜。

 

 所は東欧旧ポーランド地区南部カルパティ山脈コロニー福祉公社地球出張所。

 

 一年戦争終結後、地球圏の人々を人身売買含む重犯罪から守護する役割を買って出た人々の集う、その一大拠点の一つ。

 

 その拠点のトップに立つ人物の名を、人々は親しみを込めてこう呼ぶ。

 

 キャプテントトと。

 

 

 

 

 なんかキャプテンフィーチャー風のオープニングにしてみました。

 

 

 

 

 「トトさん! 起きて! 連邦軍東欧方面軍からのエマージェンシーコール! クラクフ基地が襲われたって!」

 

 !?

 

 「おうっ! ジオン残党かお! 詳しく!」

 

 「えっと………」

 

 「私が説明しよう。攻撃は東方ウクライナ方面から。Iフィールド搭載型集積装甲を持つビグザムモドキと、モドキをタンク(ヘイト収集要員のメインシールド役)にするドムタイプ二機が確認されている」

 

 「そいつらを前衛にして、離れた距離から長距離砲による集中砲火を仕掛けてくる別動隊。ワッパ(ホバーバイク)複数機による攪乱煙幕部隊。ワルシャワの連邦軍が接敵し、確認できた情報はそれだけだ」

 

 「…だそうです。(スラスラと説明できなくて)すいません」

 

 深夜。就寝中であったトト・カサネテ…コロニー福祉公社東欧カルパティ出張所所属…を大声で起床させた隊員はモモネ・モモネという。

 言葉が閊えたモモネに代わり、トトの質問に応じた隊員はウタ・デフォルトという。トトの副官の二人だ。この三名は全員女性であり、元連邦軍に所属していた高級将校である。

 

 「確認が取れたのはって、そこまで豊富な戦力を攻め手は待っていたのかお?」

 

 寝起きのトトが頭部横のツインドリルロールを振り乱しながら、サイド2訛りでさらに質問した。事態は切迫しているはず。状況に対応すべく、トトは正確な情報を少しでも多く欲していた。

 

 「あ、はい。マゼラトップ砲と山越えハンマーと思しき弾痕が多数、基地にあったそうです。モビルスーツの格納庫にも見事に着弾してて………基地内部に残党軍のスパイがいたんだって、今、クラクフ基地は大騒ぎらしいです」

 

 「内応…嫌な話だお………マゼラトップ砲に山越えハンマー…ガッシャかお。大戦力だお。連中、昨年のデラーズ・フリートの(北米への)コロニー落しで尻に火がついたのかお?」

 

 寝起きの表情を歪めながらトトが絞り出すようにいった。話を聞いて、トトがもっとも嫌気が刺した内容はスパイのことだ。

 元連邦軍人であるトトは、その手の話を一番嫌っていた。潜入任務とはいえ、仮にも仲間として共に過ごした者たちを裏切るとは。

 

 一方、ポーカーフェイスのウタは、淡々と状況分析し、事実に沿った予測のみを語っていた。そうすることで、感傷的になるきらいのある上司の考えを眼前の問題対処へと引き戻すのだ。

 

 「可能性はあるな。北米の穀倉地帯が壊滅して困るのは、我々、地球連邦の一般民衆じゃない。地球上の不法移民と、地上に残った公国軍残党の亡霊どもだ」

 

 「そうですね。私たちは宇宙で作られた農作物やキノコ類、畜産で育てたお肉や卵を好きなだけ食べられます。でも、勝手に地球上で土地を占有した不法移民やジオン公国軍残党は、そうはいきませんからね」

 

 「そうだな。犯罪者である連中は容易く宇宙と交易できない。先のコロニー落しで大被害を受けたのは、我々、地球連邦側ではなく、デラーズ・フリートに参加しなかった残党たちと、不法な土地占有、生産活動をしていた不法移民側なんだ」

 

 「それはべつに可笑しなことじゃないお。サイド3に集まった連中は元々、弱者を人と見做さない差別主義者や、理想のためならどれだけ他人を犠牲にしても仕方ないと言い切った、反地球連邦政府主義者だお」

 

 「首魁のエギーユ・デラーズが、単に死ぬべきだと思っていた連中を始末しようとしただけともいえるお」

 

 トトの考えは間違っていなかった。

 

 地球連邦政府とジオン共和国は、ア・バオア・クー決戦後、終戦協定を締結した。地球各地に展開していたジオン公国軍の大半は大人しく、ジオン共和国となった本国の命令に従って帰国した。

 

 だが、一部の大量虐殺の関係者や、地上の住民の洗脳に従事していたジオン公国民の残党たちは、それを拒否。

 

 何と、これまで差別の対象としていたアースノイドの子女を誘拐して洗脳、性奴隷として調教し、一大繁殖を開始していた。

 

 まるで、一年戦争では敗北したが、我々の血を引く不法移民たちを大量繁殖させ、地球を乗っ取ってやろうとでもいうかのように。

 

 この事態に激怒した者の筆頭が、エギーユ・デラーズであった。

 

 デラーズが信奉したギレン・ザビの思想とは、サイド3の優秀なスペースノイドたちによる地球圏の支配であって、優秀なはずのスペースノイドと、劣った存在であるはずのアースノイドのハーフによる地球乗っ取りではないのだ。

 

 地球上に残ったジオン公国軍残党による血縁を使った地球乗っ取り作戦は、ジオンの大義(正確にはギレンの大義)に対する反逆行為。そうエギーユ・デラーズの瞳には映ったのだ。

 

 その末の、地球上からジオン公国軍残党を追い出すための、北米の穀倉地帯へのコロニー落しである。

 

 連邦に対する命懸けの反抗?

 

 そんなお題目は、裏切り者共を駆除するための方便に決まっているだろう!

 

 「たとえば、戦前、ダイクン首相がお亡くなりになり、ジオン共和国がジオン公国になってしまった当時の難民たちや、今、地球上でアースノイドと子供を作っているジオン公国軍残党の方々ですか?」

 

 「そうだお」

 

 「たしか、ザビ家の弾圧を恐れて、サイド3から北米へと逃げ込んだダイクン派の元スペースノイドたちとかいましたよね?」

 

 「………いや、もうない。そういった地球上のコロニーは、先々年の残党軍襲撃によってすべて全滅した。男は皆殺し。女子供は攫われて崩壊したよ」

 

 「え?」

 

 ウタの説明を聞き、モモネが驚愕と絶望の表情を浮かべた。容易く元には戻らず、そんな表情が貌に張り付いたままとなる。

 

 「そういえば、北米南部には旧共和国民の居住地があったな………滅ぼされていたのかお…公国軍の地球降下作戦での虐殺やらなんやらで、一度は散り散りになったあいつらも、また集まって、今もそこで暮らしている………そう思っていたお」

 

 「いくら公国が消滅して共和国に戻ったっていっても、いまさら多数の同胞を殺害したザビ家………そのお膝元だったサイド3には帰れない。もうあそこしか、彼らには地球圏に居場所がなかったのですが…ね」

 

 ウタの説明が終わっても、トトの寝室全体は暗い雰囲気のままだった。しばらくの間、沈黙が支配する。苦い沈黙の時が続いた。

 

 「そういえば、かなり前の誘拐犯捕縛任務では、そこで攫われて、ジオン軍残党に売られそうになっていた子たちもいましたね………その子たちだけでも、助けられてよかったです」

 

 やっとモモネが気を取り直し、会話を再開した。

 

 これまで、どれほど過酷な地球圏の実情に触れてきたのだ。これしきのことで、一々、心折れていては、地球圏の平穏など永遠に取り戻せない…と。

 

 そんなモモネの想いに応えるように、トトやウタも気を取り直した。

 

 「それが歪んだ連中の大義の正体だ。自分たち選ばれたスペースノイド…つまりジオン公国の民のみが真のスペースノイドである。それ以外は自分たちが支配すべき存在…つまり奴隷も同然。生かすも殺すも自分たちの自由…その、当然そうあるべき身分制度に反し敵対するならば、かつての同胞とて始末する」

 

 「だから地球連邦政府も、先のコロニー落しをデラーズ紛争ごとなかったこととして隠蔽、見て見ぬふりができたお」

 

 「地球圏に人類が十数億人以上も居住できる場所が六つもある以上、七つ目である地球の優先度は低いお。まして、そこに住む者たちが元スペースノイドの不法移民や公国軍残党なら、尚更だお」

 

 「どれだけ不法移民がコロニー落しで傷付いても、連邦政府は犠牲者として発表しない。なぜなら、地球連邦とは、犯罪者ではない正当なスペースノイドたちの国家だから。はじめから連邦政府は彼等、不法移民としてドロップアウトした者たちを自国民としてカウントしていない」

 

 「そう。だから第2のコロニー落しなんて存在せず、死者なんていなかったって工作できる」

 

 トトたちの語るこの内容もまた事実だった。

 

 戦前に90億もの人々が宇宙移民となり、人口が激減していた地球各地は、各コロニーサイドからドロップアウトした犯罪者たち、一年戦争後のジオン公国軍残党たちの格好の逃げ場所になっている。

 

 地球上は連中にとって都合の良い逃亡の地なのだ。

 

 戦前、地球連邦政府にとって地球上は自然保護とは名ばかりの、スペースノイドとして宇宙に上がれない人々…先の地球統合戦争によって身体障碍者になっていた人々や、知的障害者であったため、宇宙生活者としてやっていけない人々、その介護のために地球上に残った人々やその家族、所謂アースノイド…を留め置く態のよい収容所であったように。

 

 「お寒い時代になった…って、そんなこと悠長に言い合っている暇はないお! お嬢ちゃんたちを起こしてブリーフィングだお! コマネとスズネも呼び戻すお! 整備班は?」

 

 「もう整備班の各モビルスーツ立ち上げは終わっているし、別動隊はすでにルーティンワークの偵察任務に出撃済みだ」

 

 「ん。それは僥倖だお。お嬢ちゃんたちは?」

 

 「…あの、それが………」

 

 「何だお?」

 

 「…これを」

 

 トトは、モモネから渡されたスーパーのちらし裏に描かれた文字を読み、ずいぶんロックな内容だなと絶句した。さすがだ。ヤーパンのロックはまだ死んでいないんだなと。

 

 「はあっ!? 虫取りに行ってきます。御土産期待してねって!? 今は冬だお!」

 

 冬に虫取りって! おまっ! 公国軍残党への対応でクソ忙しいこの時に!

 

 部下たちの予想外の行動にトトが奇声を上げた。仮にもコロニー福祉公社は民間軍事企業だ。軍属である。その隊員が勝手に冬の虫取りに興じるとは。

 

 ヤーパン流には風流かもしれないが、この宇宙世紀中、それもジオン公国軍残党が暴れ回る地球上で実施するそれは、かなりの危険と隣り合わせの行為だ。

 本来の任務を放置して虫取り。連邦軍なら銃殺されても文句の言えない問題行動である。

 

 「いや、それがな、いるんだ」

 

 「はあっ?」

 

 「90億の人類が宇宙に上がり、人口がスカスカになった時代でのコロニー落しだ。地軸がズレた結果、ここポーランド地方には速い春がくる。コロニー落しの衝撃によって、凄まじい威力の衝撃波も生じた。それによって大量の粉塵と共に舞い上がり、気流に乗ってここまでやってきた別地方の虫もいる。少数だが気候に馴染み、繁殖に成功した虫もいる」

 

 「それは…知らなかったお。マジかお?」

 

 ウタの説明に今の状況も忘れ、へえ。そうなんだという表情を浮かべるトトだった。カワイイぞ! ババア!

 

 「ああ」

 

 「ジオン公国軍による環境破壊も極まれりですね。サニアちゃんたちは寒くなくて喜んでいましたが」

 

 「そうかお…って、今はそんなこと言い合っている場合じゃないんだお! すぐさまお嬢ちゃんたちを呼び戻すお! 同地区の戦闘の混乱に紛れてニタ研(ニュータイプ研究所)の連中に拉致されたらどうするんだお! 貴重なニュータイプなんだお!」

 

 「いや、それは大丈夫だ。虫取りはツキネに引率させた。それにモビルスーツで護衛させてある」

 

 「ええ、そうです」

 

 「はあ!?」

 

 なんか会話が漫才染みたものになっているトト、ウタ、モモネだった。さすがのトトも、これにはストレスフルになり、吐き出す言葉も刺々しいものとなっていく。

 

 「モビルスーツで虫取りって! ここはニュータイプ幼稚園じゃないんだお! だから! すぐに呼び戻すお!」

 

 「いや、トトよ興奮するな。すぐにビグザムモドキ虫やドム虫、ガッシャ虫やそれ以外も、サニアたちは無事ぶっ殺して捕まえてくるさ」

 

 「はあっ?」

 

 「そうですよ。サニアさんもルーナさんもステラさんも、言動や行動は幼さが残りますけど、立派な公国軍残党スレイヤーです。残党死すべし慈悲はないって、倒した獲物を御土産に無事帰ってきますって」

 

 「そうだぞ。コマネもスズネ、それにアマネも補佐に入っている。戦力は十分だ」

 

 え? 虫取りってジオン公国軍残党狩りの隠語だったの?

 

 事の真相を知ってトトは一時思考停止し、ポカーンとした表情を浮かべた。部下たちにそんな表情を見せてしまうなど、トト・カサネテ(36歳)一生の不覚であった。

 

 そんな状況をしばらく続けて後、トトは怒りの表情を浮かべた。頭部横のツインドリルロールを逆立てて。

 

 「あのなー! 何故報告しなかったお! 何でお嬢ちゃんたちの出撃を勝手に認めた! 答えろ、ウタ! モモネ!」

 

 「あわわっ(焦)」

 

 「そう怒るな」

 

 「怒るお!」

 

 「やれやれ。お嬢さんたちの事件前の出撃は、ニュータイプの直感あってのことだ。つまり勘での行動だ。東側から大きな悪意、プレッシャーを感じるってな。本来なら勘で行動するなと止めるところだが、私が独断で強硬偵察を許可した」

 

 「うぉおおおい! 何してくれちゃってるんだお!」

 

 地団駄を踏みながら、基地司令は私だお!

 

 …と、叫び出しそうになるトトだった。理性でそこまで子供染みた真似をすることはなかったが。

 

 「そう興奮するな。君の睡眠を邪魔しなかったのは、激務で睡眠時間を削っていた隊長さんを眠らせておいてくれ。そんなお嬢さんたちの要請を聞いたからさ。それに、サプライズで大金星を取ってくるから果報は寝て待っていてくれって…さ」

 

 「…」

 

 そんな言い訳を聞かされたら、黙る以外に選択肢のないトトだった。そこに通信が入る。それは、話題のニュータイプのお嬢ちゃんたちと同行する部隊からのものだった。出張所各部屋に設置してある通信機器に、着信アリとの緑色の明かりが灯された。

 

 早速、通信機器へと駆け寄り、インカムを装備して通信状態をONにするモモネ・モモネだった。

 

 「こちらカルパティ山脈出張所基地。ツキネさんにサニアちゃん? 戦果は?………そう!」

 

 「来たかお! で? どうだって?」

 

 「敵戦力のサーチ&デストロイに成功。こちらの被害は軽微とのこと。ただし、大破した敵機の残骸は、連邦軍がすべて鹵獲していったそうです………」

 

 「…うん、はい。戦果は、ジムコマンドイチヒメ隊がマゼラトップ砲装備のザク虫隊とガッシャ虫を撃破。ツキネさんとサニアちゃんたちは、ガンペリーの大型ミサイルで、連邦軍のビグザムモドキ虫撃破に寄与。我が軍のワッパ隊が、連邦軍と共にドム虫2機撃破…だそうです!」

 

 満面の笑みを浮かべて、トト、ウタにそう報告するモモネ。これには出張所指令のトトもニッコリだ。掌くるりである。

 基地でただ寝ているだけで、大戦果を持ち帰ってくれる部下。上司としてこれほどありがたい人材はいない。

 

 戦時中、連邦宇宙軍ミクニ・ミック艦隊勤務の頃に比べれば、どれだけ今の自分は部下に恵まれていることか。そのことがよく解る。

 過去、トトは宇宙で素人同然の若年兵指導に四苦八苦していた。

 

 そんな当時の連邦軍の状況に比べれば、コロニー福祉公社の上層部、人材、共に健全といえた。

 

 また、一年戦争後、期せずして自分たちが人類の支配的立場になると知った地球連邦軍上層部。その軍閥化と、今もその権勢を強めるべく、さらなる権力を手にしようとする態度に比べても…だ。

 

 トトは、軍閥化を開始し、地球連邦国民の権利を著しく侵害し始めた連邦軍から離れ、コロニー福祉公社という民間軍事企業に入社したことは、間違いではなかったと、この時確信した。

 

 「そうかお。モモネ、イチヒメ隊とお嬢ちゃんたち、それにライチたちによくやったと伝えてくれお」

 

 「はい!」

 

 「さあ、地球を荒らす鬼共を退治した英雄たちの凱旋だお! 宴の呼吸で盛大に向かえるお! ただし!」

 

 「ただし?」

 

 「警戒を怠るなお。我々の敵は公国軍残党だけじゃないお。ニタ研も、これでますますお嬢ちゃんたちに目を付けて狙うようになるお。我々はお嬢ちゃんたちの護衛任務に注力するお!」

 

 戦後、さらなる力の誇示を欲した連邦軍軍閥の一部は、ニュータイプ部隊の力をも欲した。コロニー福祉公社スタッフ中にニュータイプがいると知ると、オーガスタのニュータイプ研究所をはじめとする諸勢力が、アナハイムグループへと協力要請を打診してきていた。

 

 彼ら曰く、サンプルとしてニュータイプたちの身柄を引き渡せと。

 

 もちろん、コロニー福祉公社側はアナハイム上層部の威光の下、ニュータイプ研究所の協力要請を突っぱねた。だが、連中は貴重なサンプルだと、サニア、ルーナ、ステラの身柄を簡単には諦めようとしなかった。

 何とか三人娘の身柄を確保しようと、今現在も執拗にカルパティ基地を監視し、ストーカー行為を繰り返しているのである。

 

 立派な軍属が、ストーカーになってニュータイプ少女たちのお尻を追いかけまわしている。なんともお寒い時代になったものだ。

 

 トトたちは、ジオン残党含む性犯罪者たちから地球圏の少年少女たちを守護する任務と並行し、そのストーカーたちからニュータイプ三人娘をガードする任務も負っていた。

 

 「了解」

 

 「了解しました!」

 

 指示に敬礼して応えるウタとモモネ。この時、二人は大事に育てた娘たちを褒められたかのような表情となっていた。子供たちと悪い大人たちから守護するという任務に誇りを待っている彼女たちにすれば、トトという信用できる上司の言葉はありがたかった。

 

 「それと!」

 

 「それと?」

 

 「お前たちの命令伝達違反は、お嬢ちゃんたちの戦果に免じて帳消しにしてやるお。さあ、共に英雄の帰還を祝い、戦いの経緯を教えて貰おう」

 

 「寛大な処置感謝する。了解した」

 

 「了解であります」

 

 そんなやり取りを終え、格納庫へと向かうトト、ウタ、モモネのアダルト三人娘である。そこに祝いの席を設けるのだ。

 

 「いい機会だお。酒保担当に連絡するお! レーションや食料品の在庫一斉セールしちまうお!」

 

 「よい判断だ。アナハイムの管理マネージャー殿も許してくれるだろう」

 

 「了解であります!」

 

 三人は、サバイバル用の調理器具を多数用意し、簡素ながら十分な量の手料理と、お子様用のソフトドリンクを用意していく。また、大人たち用には秘蔵のワインやその他の洋酒を並べていった。もちろん、日本酒もあった。

 

 そうして、まるで自慢の娘たちをお迎えするかのように、彼女たちはまだ十代半ばのニュータイプ三人娘や、前線に出た戦友たちの帰還を待つのだった。

 

 

 地上の戦い 2へと続く

 

 補足

 

 カルパティ山脈出張所基地のコロニー福祉公社隊員たちは、大隊規模で全員女性だったりする。これは、先のジオン公国軍の大虐殺により、地球圏の人口形態が歪にゆがんでしまったからである。

 

 一年戦争での犠牲者は、官民ともに男性が女性を上回った。

 

 また、戦時中、地球連邦軍後方の補給部隊は、女性が輜重兵となることが多かった。少なくなった男性兵士が優先して前線に送られる一方、女性は後方に送られ、ジオン公国軍と真向から戦う前線の男性兵士たちの補佐役にされたからである。

 

 その結果、女性ばかりが輜重兵となる事例は少なくなかった。そんな状況下である。一つの輜重艦隊の90%が女性となる例も散見された。

 

 とはいえ、大戦末期は人材不足もまた深刻であった。地球連邦軍は、女性といえど能力のある者を遊ばせておくことはできなかった。

 どのみち、艦隊への兵員補充として、新規に創設されたモビルスーツ隊への女性兵士編入は必要だったのだから。

 

 そのため、モビルビルスーツ操縦適正さえあればよいと、輜重兵の立場から前線へと転属させられる女性兵士も多く存在した。

 

 民間軍事会社コロニー福祉公社で、地球上での未成年保護を担当するトト・カサネテ大隊もまた、戦時中、そういった前線に転属した元女性軍人たちを中心にして編成されたチームであった。

 

 基地司令であるトトは連邦軍元少佐で、ジム、ボールの混成モビルスーツ大隊を率いる大隊長。

 

 副官のひとりウタもまた少佐で、補給艦コロンブス級一隻を任された艦長。

 

 モモネもまた、トト、ウタ同様に少佐であった。コロンブス級を母艦とする工兵隊の隊長で、ア・バオア・クー決戦時に使用する予定であった、隕石ミサイル、デブリミサイルを用意する作戦の準備に貢献していた。

 

 余談であるが、トト、ウタ、モモネの三人が、レビル艦隊と一緒にソーラレイによって死亡しなかった理由はこれだ。

 

 ア・バオア・クー決戦で少しでも人的損耗を減らすべく、所属していたミック・ミクニ艦隊と共に、デブリ帯に、隕石、デブリミサイルの材料を回収しにいっていた。運がよかったのである。

 

 そんな三人を中心メンバーとして、多くの元連邦軍女性兵士たちが民間軍事会社コロニー福祉公社にスカウトされ、カサネテ大隊に集められた。

 

 そんなカサネテ大隊に、アナハイムの虎の子のニュータイプ三人娘、サニア、ルーナ、ステラは一時的に預けられたいたのである。 

 




 地上の戦いは1~7まであります。

 サニア、ルーナ、ステラの能力紹介のためのエピソードです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。