機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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地上の戦い2

 地上の戦い2

 

 東欧上空の風は冷たかった。

 

 いくら温暖化が地球規模で進んでいるとはいえ、冬は冬だ。春風の妖精が舞い踊る緑萌ゆる季節はまだ遠かった。

 

 そんな東欧の上空を飛行する鳥に似た機械の翼が三つ。

 

 コロニー福祉公社地上部隊が誇る、ガンペリーというMS搭載の可能な輸送機群であった。

 

 

 「こちらガンペリー1。遠望によりクラクフから南東80キロ付近で戦闘を確認。ワルシャワからの連邦軍部隊が目標を補足、戦闘状況に突入した模様。指示を待つ」

 

 「こちらガンペリー2、了解。モビルスーツ隊の降下準備を。ただし、我々の標的は確認した敵機ではない。至近にマゼラトップ砲装備機とガッシャがいるはずだ。周辺部スキャンを続行せよ」

 

 「こちらガンペリー3。お嬢ちゃんたちの言うことにゃ北東だってさ。そちらに索敵集中して。憎しみと怒り、それに戦闘の高揚によるプレッシャーが凄いって」

 

 「確かにその辺りがもう一つのミノフスキー粒子発生源っぽ………見つけた! さすが天然レーダー! ニュータイプ能力の正しい使用法の一つね。何もモビルスーツに乗せて戦わせるだけが能じゃないわ! 遠望により敵機確認! 全機、高度、速度落とせ!」

 

 「モビルスーツ隊発進準備!」

 

 コロニー福祉公社輸送部隊操るVTOL輸送機(ガンペリー)の操縦席で、それぞれ、ツキネ、コマネ、スズネというパイロットたちが情報共有中であった。これからの戦闘で、僚機とそのパイロットたちを生き残らせるためのルーティンワークであった。

 

 そんな最中、追いかける目標の位置を特定する三名。

 

 早速、戦闘に必要な情報を取得すると、ガンペリーの胴体から伸びる三基のローター、四基のジェットエンジンを操り、機体高度を下げていく。

 コンテナ部に搭載するモビルスーツ隊の降下を容易とする高度、速度、位置へと、機体を巧みに操作し侵入させていく。

 

 「ガンペリー全機、MS降下可能ポイントへと到達!」

 

 「敵機はまだこちらに気付いていない。チャンスだぞ!」

 

 「こちら輸送隊長のツキネ・ルナール。モビルスーツ隊各員へ。コンテナ開閉を開始する。君たちの活躍と幸運を祈る! 発進してくれ!」

 

 「了解。良い仕事をしてくれた! 輸送任務感謝する。UTAU隊出撃する。全機、続け!」

 

 モビルスーツコックピットから戦闘指揮を執るのはイチヒメ・ニタ隊長。彼女が率いるUTAU隊六機のジムコマンドが、フィールドモーターを唸らせてガンペリー三機から降下を開始した。

 

 敵機の索敵範囲外での素早い展開行動である。彼女たちの降下を邪魔するものは、この時、どこにも存在しなかった。

 

 そんなイチヒメ隊長たちへと再びガンペリーから通信が入った。まだ周囲のミノフスキー粒子濃度は薄

く、電波通信可能な状況だった。

 

 しかし、小型化の進んだ複数のミノフスキーイヨネスコ炉稼働の影響で、いずれ周辺のミノフスキー粒子濃度は一気に跳ね上がり、満足な電波通信は不可能となるだろう。

 

 ジムコマンド各機に搭載されたメインエンジン、タキムNC-7強化核融合炉が出力をさらに上昇させていく。 

 

 「こちらツキネ、ガンペリー1だ。我々は牽制の大型ミサイルを目標方向に向け射出後、急速反転、離脱する。その後は臨機応変に対応してくれ」

 

 「助かる。マゼラトップ砲持ちやガッシャが焦って盲(めくら)撃ちしてくれれば、さらに容易に位置を特定できるってものだ」

 

 「発射!」

 

 「我が隊は二手に別れ十字砲火を狙う。全機楕円軌道を取り最大加速!」

 

 「「「「「やってやんよ!」」」」」

 

 ガンペリー1~3がツキネの指揮の下、大型ミサイルを現在地から北東方向に向け発砲。その後に、地上へと無事着地したUTAU隊が続く。同隊が出撃時かならず叫ぶ、やってやんよの雄叫びと共に。

 

 「頼むぞ、みんな生き残れよ」

 

 一方、ツキネ率いる輸送部隊は機首を反転させ、同ポイントから離脱していった。戦友たちへと激励の言葉を残して。

 

 

 

 この時、ガンペリー隊やUTAU隊によって一方的に所在地を捉えられ、その攻撃に晒されようとしていた輩は、マゼラトップ砲装備の地上型ザクタイプ3機とガッシャであった。

 

 じつは、彼等とそう遠くない位置に、ビグザムモドキとその両脇を固めるドム二機が存在し、こちら側の者たちは、連邦東欧軍所属の追手部隊と交戦状態へ突入しようとしていた。

 

 そのこともあり、ザクタイプ三機とガッシャは、コロニー福祉公社地上部隊の接近に気付くことが遅くなっていた。

 

 やはり戦争で数の優位は重要なのである。

 

 この時、連邦軍とコロニー福祉公社地上部隊の数の多さが、ジオン公国軍残党側の索敵能力を上回っていたのだ。

 

 

 彼らジオン公国軍残党は、デラーズ・フリートの北米へのコロニー落しによって、身の置き所がなくなった者たちによる決死隊の一部であった。

 

 行き場を失い、最後の逃亡の地とさだめた北アフリカへと、仲間たちのキャラバンを逃がす。その囮となるべく、この東欧の地に赴いた者たちだった。

 

 東欧での大規模テロ。

 

 それで地球連邦軍の目を逸らすことができれば、各地を転々として逃げ回っていた仲間たちを、北アフリカへと逃がす事ができるはずだと。

 

 北米、欧州の辺境を拠点としていたジオン公国残党軍は、デラーズ・フリートに協力せず、地球の不法移民たちと共に大量のハードドラッグを精製。宇宙へと流通させる麻薬カルテルと取引し、その売り上げで日々を凌いでいた。

 

 そこに、デラーズ・フリートによる北米へのコロニー落しである。

 

 麻薬の元となる植物や、その以外の日々の糧となる農産品は、コロニー落しによって大打撃を受けた。

 

 大破壊によって舞い上がった粉塵は太陽光を遮蔽、気候を寒冷化した。また、地上へと降った塵芥は各植物の葉に降り積もり、光合成を阻害。ダブルパンチでその生命活動を停止させていった。

 多少、室内で育成していた品種もあったが、それだけでは微々たる売れ上げにしかなりはしない。

 

 その他にも問題は山積みだ。

 

 たとえば、麻薬のシュア問題だ。

 

 犯罪カルテル側との取り決めたノルマは当然果たせないし、一度、ノルマを果たせなければ契約は更新されず、納めた少量の麻薬も安く買い叩かれる。

 

 当然、その空いた穴を埋めるべく、懇意にしていた犯罪カルテルは、宇宙で麻薬の原材料の育成、精製をしているライバルたちと取引することだろう。

 次に確実の商品を納入できるかわからない自分たちは切り捨てられる。確実にライバルの麻薬カルテルにシュアを奪われる。

 

 元々、端から地上での生活はギリギリだった。高価な麻薬の売り上げがなければ、これまでの生活は維持できない。

 

 当然のことながら、軍隊は軍資金と物資がなければ維持できないし、不法移民たちの生活も同様だ。食料と生活必需品がなければ生きていけない。

 

 その維持に必要なすべての物は、デラーズ・フリートのコロニー落しによって奪われた。

 

 ジオン公国軍残党のギレン派閥が、地球に居残ったキシリア派閥中心の不法移民たちを攻撃し、窮地に陥れる。………何とも、皮肉の効いた展開である。

 

 いや。

 

 ザビ家からして内ゲバばかりのジオン公国関係者たちとしては、当然の事態か。

 

 所詮、宇宙に生きていようと、宇宙に生きていようとクズはクズだということだ。

 

 まったく笑えない話である。

 

 何はともあれ。

 

 だからこそ、彼らは安住の地を欲し、地球上を彷徨った訳だ。

 

 だが、北米のコロニー落しによって地球連邦軍は、各大陸間の渡航を厳しく監視し、ジオン公国軍残党や不法移民たちの動向に目を光らせていた。

 

 噂では、ティターンズなる残党狩り部隊創設も聞いた。

 

 すでに北米、欧州に安住の地となる場所はなく、元居た場所に帰ることも儘ならない。

 

 頼みの綱となった場所。そこは、一年戦争後にいまさらながら民族の自決独立を叫び出し、民族主義に回帰し始めたアフリカ大陸のみであった。

 

 なんとか地球連邦軍の監視を掻い潜り、アフリカ大陸へと仲間たちを向わせる。

 

 しかし、そのためには犠牲となる者たちが必要だった。それ故に、決死隊となった者たちは東欧へと向かい、そこを決戦の地とした。

 

 なけなしの戦力をかき集め、虎の子のビグザムモドキやガッシャ、ドム、ザクを改修して。

 

 哀しいかな。

 

 所詮は地球上に居残った大量虐殺者の逃亡者と不法移民の群れだ。そんな犯罪者の集団は、重犯罪を再び繰り返すことでしか、仲間を救うことはできなかった。

 

 

 

 

 「ビグザム改の駆動音は随時捉えている! 至近に敵機駆動音捉えた! 数9!」 

 

 「大気振動解析完了した! 敵機の位置特定! 距離算出完了! 各機マゼラトップ砲発砲準備!」

 

 「ガッシャ了解。次弾装填も完了。同時に発砲する」

 

 「了解! ギルス隊長! トリガーは任したぜ!」

 

 「どれほどの腕を持つ部隊か知らんが、ミノフスキー粒子下でも精密射撃を実現した俺たちの実力を見せ付けてくれ!」

 

 「そうだな! 発射する!」

 

 モビルスーツ程度の大きさまで小型化したビグザムモドキ。その両脇を固める2機のドムタイプ。

 

 そんな僚機と戦闘中である敵機の位置を、ザクタイプ3機、ガッシャの混成部隊は、新型集音測定レーダーで捉えていた。その地球上限定とはいえ有用な新たな力の下、すぐさま第一射を放つギルス隊であった。

  

 「次弾装填!急げ!」

 

 「了解!マゼラトップ砲はこれで最後だ! 派手にぶち込んでやるぜ!」

 

 「ああ! 連邦の豚どもめ! 喰らいやがれ!」

 

 第一射を終え、彼らは今まさに第二射を放たんとしていた。

 

 その時である。

 

 ドンッ! ドォオオオオオ………

 

 「なっ!?」

 

 「着弾?! 至近! どこからっ!!」

 

 「こちらの位置を特定された!? 敵も新型のレーダーを持っているのか!?」

 

 「大気に振動あり…これは! 敵機! 南西から接近中! 二手に別れてくる!」

 

 「連邦め! やってくれる! アギト隊への援護射撃後、迎撃する! てぇー!」

 

 「ギルス隊! 吶喊する!」

 

 「続け!」

 

 マゼラトップ砲発射後、それを投げ捨て、両足にマウントしたザクマシンガン二丁を持ち迎撃態勢を取るギルス隊。ガッシャも同様、ザクマシンガン二丁を装備し前に出る。

 

 「できる………(こいつら、微塵の躊躇もなくマゼラトップ砲を手放した)」

 

 そんなギルス隊の動きを見て、ジムコマンドコックピットでイチヒメ隊長が舌を巻く。手練れだ。やり方を一手間違えば、こちらが全滅しかねない相手だと。

 

 だが、それで弱気になるイチヒメやUTAU隊の面々ではなかった。彼女たちもまた、生きてア・バオア・クー決戦を乗り切った手練れだったからだ。

 

 UTAU隊のジムコマンド各機は、ルネチタニウム合金製のシールドを機体前面に押し出す防御態勢を取りつつ、歩みを止めない。もう一方の腕に持つ実弾型マシンガンを構え、発砲指示を待った。

 

 「!? 全機散開!」

 

 イチヒメ隊長が叫んだ。戦士の勘によって、一つ所にまとまっていてはマズイと気付いき、部下にそう指示を出したのだ。3機のジムコマンドが、機体関節部のフィールドモーターシステムを駆使し、それぞれ左右に飛び、距離を取る。

 その元居た地点を、ザクマシンガンから撃ち出された弾丸が襲い、土砂を散らせた。

 

 そう。

 

 先手を取ったのはギルス隊のザクタイプ二機であった。

 

 流体パルスシステムを最大駆動。大地を蹴った二機は、背部ランドセル含め機体各部のブースターをも駆使し、飛翔。

 上昇しつつザクマシンガンを連射して、イチヒメ隊長機含める3機に対して発砲、砲撃を浴びせようとした。

 

 戦車などの地上兵機では絶対に再現できない、巨人型のモビルスーツの特性を最大限に活かしたバトルモーション(戦闘機動)。同時に、その機動性を活かした吶喊であった。

 

 高速ジャンプによって一気に間合いを詰め、接近戦に持ち込む。

 

 その一方、残るザクタイプとガッシャは、ジャンプと地上の蛇行駆動によって別行動のUTAU隊ジムコマンド3機へと迎撃を開始。

 

 多数の敵機に対し、足を止めて撃ち合う愚を犯さず、高速機動での撃ち合いに持ち込む。

 

 もちろん、こちらのザクタイプとガッシャも、砲撃に有利なマゼラトップ砲、山越えハンマー砲を投げ捨て、得物をザクマシンガンに待ち換えている。

 

 攻撃よりも、速攻と回避に重きを置いたフォーメーション機動であった。防御重視のUTAU隊とは対照的であると言えよう。

 

 地上の戦い3に続く

 

 

 メモ

 

 ガンペリーコンテナ側面部に大型ミサイル発射ギミックあり。操縦席で発射可能であるが、予備発射装置がコンテナにある。

 

 この機体はコロニー福祉公社での改良により、12ミリ機関砲を新たに搭載している。兵員の輸送も可能。胴体部に左右対面式の兵員室あり。12名が登場可能。

 

 ニュータイプ三人娘はそこで敵機の位置を捉えるレーダー役をやっている。

 

 この搭載されたミサイルは、ゴッグも一撃だったりする。テレビ版。

 

 トト・カサネテ旗下の部隊は全員が女性。美少女動物園である。

 

 なぜか?

 

 コロニー福祉公社は、地球圏の性犯罪に巻き込まれた少年少女保護を第一の任務としている。保護する側の人員が、脂ぎったオッサンや、性衝動の抑えられない若造じゃまずいのです。

 

 腕は良いが普段の行動に問題のある輩を配置し、レイプ事案を増やしてどうするのかと。

 

 それでは、アースノイドの子女を攫って地上で繁殖しているジオン公国軍の残党軍と同じである。

 

 だからこそ、UTAU隊は女性中心の部隊なのである。

 

 その保護の過程で、犯罪者集団であるジオン公国軍残党との戦闘が避けられないから、武装はかなり強力なものを取り揃えている。

 

 建前上はそういうことになっているが、その実体として、コロニー福祉公社地上部隊も、一部がアナハイムの秘密作戦の実行部隊である。

 

 サニア、ルーナ、ステラの三人は、便宜上はトト旗下の部隊に出向という形で配置されているが、その秘密作戦部隊が本来の所属である。

 

 ちょっと前まで、ガンダム・メジェドさまや、ラー(ティターンズのとは別物)、アヌビス、宇宙用グラブロのテストパイロットをしていて、ジオン残党軍相手に、宇宙で活躍していた。

 

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