機動戦士ガンダム フルダブル 幻想純化奇譚   作:プリエ・エトワール

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 ヒャッハー! 一年戦争後の地上は地獄だぜ! 


地上の戦い3

 地上の戦い3

 

 空中を高速で飛ぶ相手に対し、精密誘導ができない地上からの火砲は当たり難い。そんな弾丸飛び交う上空を、ザクタイプ2機分の巨体が飛翔していた。

 

 「喰らえゃあ!」

 

 背部ランドセルブースターと機体各部を駆使し、先鋒ザクタイプが体幹を維持したまま落下。

 

 ジムコマンドを飛翔落下からの飛び蹴りで弾き飛ばそうと迫る。

 

 見事な機動、機体制御。

 

 熟練したアンバックとブースター制御が実現した、空中から奇襲攻撃。

 

 もう一機のザクタイプもそれに倣い、狙ったジムコマンドへと飛び蹴りで吶喊する。

 

 「ちぃ!」

 

 まずは隊長機らしい機体を潰す。

 

 先鋒ザクタイプが狙ったジムコマンド。そのパイロットであるイチヒメ隊長は、機体左腕に持つルナチタニウム合金製シールドを駆使。ザクマシンガンからの弾幕を防ぎつつ、敵機に向って右へステップ。ザクタイプの重心を乗せた飛び蹴りを回避した。

 

 しかし、もう一機の狙われたジムコマンドはそうはいかない。構えたシールドに重い蹴りを喰らい、上半身関節部を軋ませて後方へと弾き飛ばされた。

 

 このダメージはかなり重い。

 

 このまま格闘戦に移行するには無理がある。関節が歪み、照準通りには腕部を動かせはすまい。

 

 それどころか、ビームサーベルを抜き放つことすら困難かもしれない。

 

 「いただく!」

 

 すかさず、手負いとなったジムコマンドへの追い打ちに移らんとする、飛び蹴り攻撃を成功させたザクタイプのパイロット。

 

 戦後に施したその改造は、地上用機のスペックを十全に発揮させていた。

 ジオン公国滅亡後、補給も儘ならない状況ながらその整備だけは疎かにしなかったが故の、ザクタイプのスペックを活かした先制攻撃成功であった。

 

 「させないっ!」

 

 「うおっ!」

 

 態勢を崩した手負いのジムコマンドに、至近からザクマシンガンの弾丸を浴びせかけようとするザクタイプ。

 

 しかし、その挙動を別のジムコマンドが阻止。そのロックオンに気付いたザクパイロットは、慌てて機体上半身を捻らせて攻撃を回避。

 

 三連バーストの実体弾が空を切る。

 

 さらにバックステップで後退し、それ以上の反撃から逃れる。

 

 一瞬前までザクタイプの上半身が位置した虚空を実体弾が続け様に通り過ぎていく。

 そんなアクロバット染みた挙動で飛び退いたザクタイプを、逃がさないと、さらにマシンガンの銃口が追った。

 

 弾丸の幕が生じ、両雄の駆るモビルスーツに距離を取らせる。

 

 続く銃撃に対し、このザクタイプは一時後退を余儀なくされた。牽制の弾丸をばら撒きながら、ジムコマンド3機からやむなく距離を取る。

 

 ザクタイプ2機による飛び蹴りによる先制攻撃は、その意義を半分しか果たせていなかった。

 

 だが、イチヒメ機を襲ったもう一機のザクタイプは引かなかった。

 

 そう。

 

 先制の跳び蹴りの半分は成功だったからだ。ギルス隊長機は、接近戦可能な間合いへと見事に距離を詰めていた。

 

 「おおおっ!」

 

 跳び蹴り攻撃は躱されはしたが、ギルス隊長機の連続攻撃は止まらない。1丁のザクマシンガンで弾幕を張りつつ、もう1丁のザクマシンガンを躊躇なく投げ捨て、ヒートホークを抜き放つ。

 

 さあかかって来な! 近接戦闘の時間だ!

 

 そんな意思を、後退せずにその場に残ることで示す。その挑戦に対し、イチヒメ隊長もまた覚悟を決めた。

 

 「願ったり叶ったりだ。」

 

 (我々のモビルスーツ格闘術も日々進歩している。過去の手法で勝てると思うなよ) 

 

 イチヒメ隊長は目の前の強敵に対し、新規に組み上げていた防衛術プログラムで対抗する決意を決めた。

 そのモーションプラグラムを起動させ、ジムコマンドは射撃戦モードから格闘戦モードへと移行。

 

 それは、旧世紀の東洋ヤーパンの機動隊が、暴徒鎮圧時に駆使していた強化盾術の応用。そのモビルスーツ版であった。

 

 「各部武装シンクロ! シールドアタック準備!」

 

 アタックモーション! シールドクローチャージ起動!

 

 ジムコマンドの持つシールド下部ツインクローが、獣が牙を剥きだすように突き出された。この時、ギルス機はマシンガンを撃ちつつ、さら接近。

 イチヒメ機が回避できる箇所を弾幕で減らしつつ、ヒートホークを振りかぶり、隙あらばいつでも切り込める体勢を取っていた。

 

 しかし、イチヒメ隊長は臆さない。さらに迫るギルス機に対し、自機を下げるどころか接近、間合いを詰める。

 接近戦上等と前進させ、ギルス機がヒートホークを振り下ろす時を待った。

 

 「いい度胸だ!」

 

 「…」

 

 手練れ同士の鋭い攻撃の交差。

 

 ギルス機のヒートホークが振り下ろさせる度、その突き出したシールドクローで弾きは返し、二度、三度と逸らして見せるイチヒメ機。

 

 これでは、早々、接近戦での決着は付きそうにもない。そう思えた。

 

 「ちぃ!」

 

 ならば! 

 

 と、至近からのザクマシンガン連射でジムコマンドの胴を撃ち抜こうとするギルス。

 

 「その動き、予測済みだ」

 

 しかし、それを予想していたイチヒメは、右手のマシンガンを警棒代わりに使ってギルス機のザクマシンガンの銃口を逸らす。

 

 イチヒメは、もう手持ちのマシンガンすら格闘戦用の武器として割り切り、そのように使っていた。

 

 銃器とは、その銃口からしか弾を撃ち出さない。その銃身を押し上げ、逸らされたならば、もう撃ち出される弾は目標に当たりはしない。

 

 所詮、銃は遠距離用の兵装。

 

 距離を詰められては、その優位を保てはしない。

 

 接近戦となれば、銃は鈍器として使用することが正解。その点、銃器を警棒代わりにしたイチヒメ隊長は、ザクマシンガンを鈍器として使わなかったギルス隊長を、覚悟と技量で上回っていた。

 

 じつは、この時、ギルスは後々のことを考えザクマシンガンを片方捨てられずにいたのだ。

 

 ジオン公国軍残党は、容易に補給を受けられない立場だ。そのため、こういった緊急時でもその貧乏性を捨て去れなし、長年、愛用してきた武具を捨て去る決意ももてない。

 

 一方、潤沢に補給が受けられる立場のイチヒメは、マシンガンを警棒代わりにして一つ破損させてしまっても、まあ、撃墜数を増やせるなら、一つくらい壊してしまってよい。そう考えていた。

 

 所詮、消耗品は消耗品さ。

 

 武器を大事にして勝機を逃すことと、武器を犠牲に戦いに勝利し生き残るチャンスを得ること。

 

 どちらが重要か、言うまでもない…と。

 

 その精神性の違いが、この勝負の決着を左右させた。

 

 戦いの勝敗を決めるのは、モビルスーツの性能差やパイロット個人の力量だけではない。時として、こんな普段の行動の差から決してしまうこともある。

 

 マゼラトップ砲や、もう一丁のザクマシンガンは躊躇せず投げ捨てられても、長年愛用し、戦場を共に駆け抜けてきた相棒は捨てられやしない。

 

 そんな人間らしさが、貧乏軍人ギルスという男の運命を決めたのだ。

 

 「それでもぉ!」

 

 「今っ!」

 

 機体の体勢を立て直し、再びヒートホークを振るうギルス機。その次のヒートホークの一撃を、イチヒメ機は逸らすだけではなく、フルパワーで弾き返した。

 

 ジムコマンドのフルパワーはヒートホークを弾き返すだけではなく、さらに得物を手にしたザクタイプの腕をも押し上げていた。

 

 がら空きとなったザクタイプの胸部、腹部が、ジムコマンドに晒される!

 

 「なっ!」

 

 「ナムサン!」

 

 ヒートホークを弾いたシールドのツインクローが、そのまま、むき出しになったザクタイプの胴体へと向かう。

 

 決着を告げる破壊音を響かせ、抉られるザクタイプの胸部装甲。貫通してさらなる破壊を演出していく、ジムコマンドのシールドクロー。

 

 強固な造りのザクタイプコックピットへと、シールドクローは到達しこそしなかった。

 

 だが、それで十分だった。

 

 重い攻撃を受け、ミノフスキー・イヨネスコ型炉心の安全装置が作動していた。

 モビルスーツの動力源は、基本、核爆発抑止のため、破壊される寸前で緊急停止するように設定されている。地上用の機体なら尚更だ。

 

 その緊急停止により、もう一方の腕にも動力が送られず、その手に持つザクマシンガンの引き金は、二度と引かれることがなくなっていた。

 

 「ちっ!動け!クソッ!」

 

 「…」

 

 接触通信で敵側の焦りが伝わってきた。しかし、情けは無用。

 

 イチヒメ隊長は無言のまま、機体右腕に持つマシンガン下部にマウントされたビームサーベルをONにした。

 

 エネルギーCAP技術によってすぐさまビームサーベル刀身が精製され、それがギルス機ザクタイプのコックピットを貫く。

 

 この一瞬の出来事で、ギルス隊長はメガ粒子に焼かれ、その意識を拡散させた。

 

 コロニー福祉公社側のモビルスーツ隊、隊長機と、ジオン軍残党側の隊長機の一騎打ちは、こうして僅かな時間で決着した。

 

 とはいえ、これで戦闘は終わった訳ではない。

 

 イチヒメ隊長は、戦闘不能となったギルス隊長機を盾に、残る1機のザクタイプに対し突進していった。

 

 「たっ、隊長!」

 

 焦るザクタイプパイロット。2丁のザクマシンガンを連射し、弾幕を張る。そうして、ギルス機を盾にするイチヒメ機を押し留めようとするが、当然、イチヒメ機は止まらない。

 

 「うっ! うわあああああ!! 来るな! 来るなあ!!」

 

 残るザクタイプパイロットの意識は、頼っていた隊長を失った恐怖と焦りにより、迫りくるイチヒメ機へと引き付けられていた。

 

 健在であるジムコマンド2機の動きになど、その気を向ける余裕はありはしなかった。それが彼の命取りとなった。

 

 ジムコマンド2機は素早く左右に展開。足の止まったザクタイプを十字砲火に捉える位置に移動を果たしていた。

 

 発砲。

 

 「あっ! あああっ!」

 

 十字砲火による多数の実体弾の着弾により、ザクタイプの機体が踊る。そのダンスが終わりを告げた頃、コックピットに重大な損傷を受け、ザクタイプパイロットは返らぬ人となっていた。

 

 そして、ほぼ同時刻。

 

 残るザクタイプ1機とガッシャ1機との戦闘も終了していた。無論、UTAU隊の勝利であった。

 

 一方は、暗黒メガコーポたるアナハイムエレクトロニクス社旗下の民間軍事会社として、常に最良の補給、整備を受け、モビルスーツ隊の訓練、戦闘用モーションの研究に明け暮れることができた部隊。運用するMS隊の機体も多い。

 

 もう一方は、満足な補給もなく、残された武装でやり繰りしなければならず、また、生きていくために、麻薬精製などの犯罪行為に手を染めていかなければならなかった、落ち目のジオン軍残党部隊。

 

 当然、訓練も、新たな戦闘方法の研究も満足にすることは儘ならなかった状況だ。MSの機体数も少ない。

 

 整備の多くも、使えなくなった機体のパーツを利用したニコイチ共食い整備である。

 

 そんな両雄がぶつかり合えば、どちらが勝つか。言うまでもないことだ。

 

 「こちらUTAU隊、4、5、6。全機健在、損傷軽微です」

 

 「了解した。こちらも全機健在だ。合流後、連邦軍ワルシャワ部隊の援護に向かう」

 

 「撃破した連中の機体はどうしましょう?」

 

 「放置しろ。連邦軍の回収部隊が仕事をするだろうさ。それより、あちらさんの状況がわからん。情報が取得できる距離まで近付くぞ」

 

 件の方向のミノフスキー粒子濃度は高かった。

 

 これでは、中、長距離でのまともな情報取得は不可能であった。

 

 「了解です」

 

 「それと、全員、よく生き残った。褒めてやる」

 

 「わーい。褒められちゃった」

 

 「私は一向にかまわん」

 

 「もう隊長、遠足は家に帰るまでがそうなんですよ。くれぐれも油断は禁物ですよ」

 

 「ほら。下手にみんなを褒めちゃ駄目ですって」

 

 「そうそう。戦いが終わるまでは私たちを正しく引率してよね」

 

 「あのな…なにが遠足だ。気を抜くな。これからが本番かもしれん。場を茶化してないで気を引き締めろ」

 

 「は~い」

 

 「了解でーす」

 

 「おい………もういい。遅れるなよ」

 

 「「「「「はぁ~い」」」」」

 

 女三人集まれば姦しいとはよく言ったもの。戦いを終え、おまえら女子高生かよと突っ込みたくなる会話をはじめたUTAU隊の面々だった。

 

 いや、実際、全員、女子高生くらいの年齢なんですがね。

 

 まあ、とにかく初戦は勝利した。こうして一時的にリラックスするのも良いだろう。

 

 かくして、命を賭した一戦を制したUTAU隊は、次のバトルフィールドへと向かう。味方である連邦軍部隊を救援するために。

 

 そうやってジオン軍残党を一人でも多く叩き潰すことが、明日の地球圏の平和につながると信じて。

 

 地上の戦い4に続く




 実験機の話の続き

 宇宙用グラブロは、オリジナルが海底用で気密性が高かったため、宇宙空間でも多少の改良で運用が可能だった。

 中にバステトが搭載されていることは秘密だ。

 シードのズゴックのガワ内部に、インジャ弐式が入っていたことリスペクト。
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