個性【不変】のヒーローアカデミア   作:アンデラ伝道したいマン

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今回の話は以下の注意点があります。
『僕のヒーローアカデミア』の雄英高校の入試に関して、実技試験を二次試験としております。
また、話の流れの都合上前回の内容と文章が最初だけ同じです。


No.002 雄英高校ヒーロー科入試説明会

あの日、爆豪勝己がヘドロ(ヴィラン)に襲われて、オールマイトに救われた日から緑谷出久は変わった。

これまでは正直、ヒーローに成りたいというだけの口だけの子どもだったのが、少しずつ筋肉が付きはじめ、朝や夜に日課にしていたランニングで一緒になる機会もあった。家が近いから、もちろん偶に勝己ともバッティングしてしまい、勝己が「チ゛」みたいな舌打ちをしていた。

 

まぁともあれ、言い方は悪いが出久は随分とらしくなってきたと思う。

 

そのせいなのか、出久と勝己の関係も少し変わって、あの日から出久に勝己が絡むことはなくなった。

 

冬の匂いが残った春の陽気はとうに過ぎ去り、楽しくも特訓三昧で苦しい夏休みも終わった。

トレーニングをし続けていた勝己、そして始めた出久に見習って私もしかっかりと今日まで計画をし、〝個性〟のトレーニングや時には勝己に絡まれて組手なんかもしてきた。

 

「おはよう。ついに今日だよ? あはは……私、自分がヒーローなんて考えてなかったんだけどなぁ……。でも、でも頑張ってみる。少なくともこの〝個性〟は皆を護れるくらいにとても素敵な力だから」

 

チーン、とおりんを鳴らし、朝の日課である家族への挨拶を済ませ、一つ息を吐いた。

今日はついに2月26日。雄英高等学校ヒーロー科入学試験、実技試験の日だ。

 

朝食や身支度を終わらせて、最後にもう一度持ち物の確認を行う。

実技試験は持ち込み自由で、毎年受験生が自分の〝個性〟に合った装備を持ち込んでいる。

 

「よし。じゃあ、行ってきます」

 

―――§―――

 

「うっわ……デッカ」

 

多様な個性にあふれ、超人社会となった現代のバリアフリーは、私の生前とは大きく異なっている。

身の丈の十倍もあろうか、という校門を見て、地元にも関わらず周囲の人々と同じようにあんぐりと、雄英高校の規模の大きさに慄いてしまった。

あまり人様には見せられない無様を晒していると、ドンッと人と肩がぶつかってしまう。

 

「あっごめんなさい。立ち止まっ……てッ!」

 

堂々と校門の前で唖然としており、いくら大きな門だからといって、歩行の邪魔になっている事実は変わりなく、私は咄嗟にぶつかってしまった人に謝罪をした。

腰を折って謝り、顔を挙げるとムスッとした物調ずらの爆破小僧がいて、思わず声を荒げてしまった。

 

「コラ勝己! わざとでしょ!」

「ケッ朝からボーと突っ立てんなよ邪魔だジーナ。何が人の事気にする暇があるか、だ」

「……みみっちぃ」

 

ボソッと呟いた声は幸い勝己の耳に届かず、そのまま少し後ろから眺めていると、勝己がどうやら()に来ていた出久にも突っかかっているようだ。

モゴモゴ、とギコチナイ挨拶を出久がしており、根は深いなと改めて思ってしまう。

 

「おはよう出久! お互い頑張ろ」

「ジーナちゃん! うん。頑張ろうね」

「勝己! アンタも挨拶しなさいよ! 光己さんに怒られるわよ!」

 

出久に挨拶だけして、駆け足ざまに勝己の方へと行く。

今の流れでどうやら周囲の注目を集めてしまったようで、ヒソヒソト周りが騒々しくなる。

 

「なあ、あれ爆豪じゃね? ヘドロん時の」

「ほんとだ。って、後ろに一緒に映ってた女子もいんぞ」

「あーなんだっけ、ジーナだっけ。あの二人も雄英受けんのかよ……そりゃそっか」

 

以前のヘドロ(ヴィラン)の被害にあった際、勝己と私、それと出久も実はテレビに映ってしまったのだ。

出久の方は専門家を自称するコメンテーターに無謀だのなんだのと言われるくらいだったが、勝己はタフネス中学生とかなんとかで一躍時の人、いやヘドロん時の人として有名になってしまったのだ。

 

そして残念ながら私もヒーローに言いたい事言ってちょっと悪い意味でネットの方で有名になってしまっている。

 

「はぁ……。勝己ー置いてかないでよ」

「はぁ゛? そもそも一緒に来てねぇだろキモイこというなや!」

 

―――§―――

 

校内に入ると、やはり中も大変広く、高い作りとなっており大変快適そうな作りとなっていた。

下駄箱で靴を脱いで、持ち込んだ室内履きに履き替えて勝己の後を進んでいくと、すぐに「雄英高校ヒーロー科試験説明会場」という立て看板と、誘導するスタッフが見えた。

案内に従って、会場までたどり着くと、今度は受験票を見て指定された席へ私は移動し始める。

 

「あ”ぁ? おい、いつまで付いて来る気だジーナ」

「わざわざ用もないのに後を付いて回る訳ないでしょ。カルガモの親子じゃないんだから。私の席はあそこなの。ほら分かったら早くどいて」

 

ピッと指でさした方を勝己は一瞬見たが、何か考えるように足が止まったのを疑問に思いながらも私は「またね」と勝己に声をかけて足早に席へと移動する。説明の会場となった講堂のような教室も類に漏れず大変広い作りだったが、映画館の座席のように、席の後ろに受験番号が張り付けられていたため、特に迷うこともなく自分の席を見つけることができた。

座る前にカバンを降ろそうとすると、ドンッと慣れた衝撃が肩に走る。

 

「あのねぇ……。遊んで欲しいなら口でいいなよ勝己くぅん?」

「ちげぇよ……退け。俺の席はお前の隣だ」

「……えッ噓。もしかして連番? 2232。アンタは?」

「2233」

 

ブスッと怪訝な顔で答える勝己に道を譲りながら私はなんとなくこの後の展開が読めてしまった。公立中学校から公立高校への入試なのだから人によって方法は様々だが、私はいや、私たちは皆一応に中学校側からの一括提出という方法だった。つまり、私と勝己が連番であるなら、もう一人もそういうことだろう。

そんな現実にどうか静かに、そして穏やかに説明会を終えたいと願うばかりだった。

 

―――§―――

 

案の定、私と勝己、そして出久は一列に並ぶ形で座っていた。

幸いにも勝己が自分から何か出久にちょっかいを出すことはなく、え? 舌打ちと暴言? アレは出久に限らずに全方向にデフォルトで付いてる勝己の機能だから……。勝己流の挨拶だからちょっかいじゃないでしょ? 私はそう思うことにしてる。

ともあれ、間もなく受験票に書いてある事前説明(プレゼンテーション)の時間である8時40分を迎えそうになり、コロッセオのように段々と広がる座席の先にある教壇をライブでも始まるのかとばかりに順次ライトが点灯され、照らしていく。そして、気が付くと雄英高校側の教職員と思われる人物が立っていた。

 

「受験生のリスナー。今日は俺のライブにようこそ! エブリバディ セイ ヘイ!!」

 

……。どうやらライブだったらしい。

 

小粋でかっこいい曲と共に、黄色の髪を故事成語にある怒髪、天を衝くという言葉のように、あるいは摩天楼のように上へと伸びる何ともパンクな髪型の男に私は直感的に「あ、この人先生(ヒーロー)だな」と理解した。

 

残酷かな。現代ではヒーローも人気商売であり、人々から認知されなければその道一本で食べていくのは余程の実力を持ち、事件を根こそぎ解決することができるような人でなければ難しいのだ。

 

大変聞き取りやすく、耳に残る声が会場中に響くが、残念ながら誰もこの陽気なコールにレスポンスする元気も勇気もなかったようだった。

「シヴィー」と肩をすくめるオウムのように跳ねたイカす髪型の教員は話を続ける。

サクッと実技試験の概要を説明してくれるそうなので、きちんと聞こうと姿勢を正し、座りなおした私の耳にブツブツ、いやハッキリと早口言葉が聞こえてくる。

 

呆れた顔で顔を向けると、ヒーローマニアの幼馴染がお気持ちを長文で表明していた。別に誰かに聞かせるつもりでやっているわけでもなしに無意識に垂れ流しているのがなおのこと質が悪いが、とりあえず目の前で説明をしてくれているヒーローが「プレゼント・マイク」という名前だと知ることができたので、個人的にはヨシッ! としておく。

 

「うるせぇ」

(うん。よく言った勝己)

 

まぁ、私が許しても爆豪様は許してくださらないようでキチンと礼儀作法がしっかりしている勝己は出久のブツブツに慣れたように聞き流して、プレゼント・マイクの説明をしっかりと聞きつつ、「うるせぇ」と出久を一刀両断した。残当である。

 

「入試要項通り、リスナーはこの後10分間の模擬市街地演習を行ってもらうぜ! 持ち込みは自由。プレゼン後は各自、指定の演習場へ向かってくれよな」

 

そういうプレゼントマイクに徐に皆が受験票を手に取って確認していた。

 

(なるほどね。受験票にある試験場所の指定ってコレの事だったのね)

「ジーナ。会場何処だ」

「ん? C会場だよ」

 

手元にある受験票を確認していると、勝己から質問が投げかけられ、それに返す。勝己は私の答えを聞きながら横目で出久の受験票も確認して、納得という顔をした。

 

「なるほどな、ダチ同士で協力させねぇってことか」

「あ……ホントだ。僕とかっちゃん、受験番号は連番なのに演習会場違うね。ジーナちゃんも?」

「そだよー私も連番。会場は今勝己にも言ったけどC。出久は?」

「あ、僕はB会場」

「うっせぇテメェら俺を挟んで話すじゃねぇ殺すぞ。チッ」

 

私たちが幼馴染らしく仲良く、和気あいあいと会話をしている間にもプレゼント・マイクの説明(プレゼン)は続いていた。

なんでも、演習場には三種の仮想(ヴィラン)が配置されていて、それぞれの難易度に応じてポイントが設定されているのだとか。各自が“個性”でその仮想(ヴィラン)を行動不能にしてポイントを稼いでいくのが実技試験らしい。

 

(随分と()()()試験ね……。それに()()じゃなくて()()()()ねぇ? アンチヒーローな行為はご法度て言うんなら、自分一人だけじゃなくて周りと一緒に協力してもポイントは等分とかで獲得できる、これが隠されたルールって所かな?)

 

そうやって思考を巡らせて、配布資料にもう一度目を通すと、アレと私は首を傾げた。すると、タイミングよく、一人の受験生(リスナー)がビシッと綺麗に手を伸ばして質問を投げかけてくれた。

 

「プリントには四種の(ヴィラン)が記載されております!」

(そうそう)

「誤載であれば、日本最高峰たる雄英において恥ずべき痴態!」

(ん??)

「我々受験者は規範となるヒーローのご指導を求めてこの場に座しているのです!」

(お、おう……。随分と生真面目な人がいるのね……。)

 

そう思って聞き流し、主催者側(プレゼント・マイク)の説明を待っていると、くるりとその生真面目そうな少年が振り返り、ビシッと指を向けてきた。

 

「ついでにそこの縮毛の君! 先程からボソボソと気が散る! 物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」

 

と。これには流石に出久も両手で口を塞ぎ、小さくなっていた。少し言い過ぎ、というより語気が強すぎる気もするが、大切な受験で気が立っているのだろう。まぁ、先ほども思ったが今回のコレは完全に出久が悪いので、生真面目くんには称賛の目を送り、ついでにクスクスと笑ってる奴らには冷たい目を送っとく。間違いを間違いだと指摘できるのは、多くの場合では強みになるだろう。

 

閑話休題。ともあれ、受験番号7111の生真面目君からの質問のおかげでプレゼント・マイクは説明を再開しだした。

なんでも、この四種目の(ヴィラン)というのは「お邪魔虫」ともいうべき存在らしい。各会場に一体配置され、所狭しと大暴れしているとか。なんでも強いみたいで避けることをお勧めされた。

しかし、その後にこの教員(プロヒーロー)はこう言ったのだ。

 

「最後にリスナーへ我が校の"教訓"をプレゼントしよう。かの英雄、ナポレオン=ボナパルトは言った」

 

そうして一つ区切り、会場の端から端まで見渡し、続ける。

 

「『真の英雄とは、人生の不幸を乗り越えていく者』と。更に(Plus)向こうへ(Ultra)

 

両手を前に仰々しく掲げ、少しばかり剣呑な、言い換えれば真面目な雰囲気で、思わず息を吞む。さきほどのおちゃらけた空気など夢だったかのようにプレゼント・マイクは話す。そして、最後に言祝ぐように言葉を紡いだ。

 

「それでは皆。良い受難を」




あけましておめでとうございます。
『僕のヒーローアカデミア』完結おめでとうございます。
『アンデッドアンラック』完結おめでとうございます。

実質これから三話は初投稿ですね()

以下駄文考察。

一次で筆記も実技も雄英高校で行う場合、受験者数が記念受験やワンチャン、といった具合に受験者数が大変多いと予想されます。実技における得点の一つはビデオを教員たちが見て、ひとりひとりに点数をつけていく方式ですので、すべての受験者を見るのは教員とヒーローの二足の草鞋を履いている雄英高校の先生方にとっては現実的ではありません。また、プレゼントマイクの行っていた試験説明会場での人数がそこまでいなかったなどのことを踏まえ、一次の筆記で大抵の人は偏差値79の壁に敗北したものかと。
それに加え、一部生徒たちが地方からきているので、おそらく一次の筆記は地元などいろんな高校、大学で行うことができ、合格者だけが雄英高校(静岡?)に実技試験を受けにきているのではないか、と思いました。

お待たせして大変申し訳ございません。
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